“特定の事をする物” - 特定の事をする物なアノマリーについてのエッセイ
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“特定の事をする物” — 特定の事をする物なアノマリーについてのエッセイ

by Nico


1: やぁ!


缶切りは缶を切って開け、消火器は火を消し、コーヒーカップはコーヒーを受ける。ある特定の事をする物。これらの物品にはそういう役割があります。特定の事をするのが物でない場合は、おそらく人間または動物が代わりに役目を果たしますが、その話はまた次の機会にしましょう。特定の事をする物には無機物や場所が含まれます。これは特定の事をする物の執筆についてのエッセイです。

しかし、具体的にSCP Wikiで“特定の事をする物”Things that do a thingとは何なのか?

これは、煎じ詰めれば“何らかの異常性を持つ物体”にまで単純化できるオブジェクトを指してよく使われる用語です。この異常性は多くの場合、平凡なものか、その物品が既に持っている特徴と関連しています(もっと酸っぱいレモン、非常に効率的に物を固定できるホチキスなど)。これはWikiと批評フォーラムのどちらでも一番よく見かけるオブジェクトであり、普通は初心者向けです。

特定の事をする物を執筆するにあたっては、4種類の非常に一般的なやり方があるので、これからその全てを軽く見ていきましょう。これは特定の事をする物を書くための手引書ではなく、こういう記事が嵌まりがちなよくある落とし穴、その避け方、執筆を成功させるためのヒントのリストでしかないことに注意してください。

そしてもう一つ。もし読者がベテランの著者なら、多分とっくにこれらの事を知っているはずなので、このエッセイはあまり役に立たないでしょう。これは主に新しい著者向けのものです。

SCP-005 - 錠を開ける鍵。
SCP-1831 - 色々な事を感じさせる写真。
SCP-2398 - 人を爆発させるバット。
SCP-4514 - お前を殺す物。

これらが今日の主な見本です。レッツゴー!


2: “ご覧の通り”


SCP-005はまさに見たままのオブジェクトです。使えばどんな錠でも開けられる合い鍵。本来の機能を果たすのが得意な物です。ある意味では、これは最も純粋な“特定の事をする物”です。この記事は300単語を少し超える程度の文字数で、このオブジェクトが何をするか、どういう制限があるかを単純に伝えています。単純なオブジェクト、単純な記事。

この類のオブジェクトは執筆のハードルがかなり低かったおおむかしのざいだんye olde Foundationの遺物であるため、近頃はそれほど見かけません。もし(仮に現在の005が存在しなかったとして)今の時代に同じ記事が投稿されたら、多分その記事はDownvoteされて、Anomalousアイテム記録に追加するほうが相応しいと言われるでしょう。実質的な記事の中身はごく僅かです。005は年の功で成立していますが、真似して書くのはお勧めできません。読者が最後まで読まないうちに推測できてしまうオブジェクト、内輪ネタ、アイデアの盗用なども絶対に避けるべきです。

この単純なアプローチの現代的な一例がSCP-4546で使われています。この記事に登場するのは、アメリカ独立記念日に愛国的な模様を描き出す生きた打ち上げ花火です。バックストーリー無し、隠された意味も無し、ただ花火が花火らしい事をやっているだけです。ではどうして評価されているのか? SCP-4546はキュートで、馬鹿げていて、パンチの効いた、予測不可能な記事だからです。全体としてなかなか可愛らしい奴です。

一見簡単なようですが、この形式の記事を執筆するのは見かけよりも難しいです。“ご覧の通り”という土台に根差す記事は通常、関連性があって、楽しく、普遍的なコンセプトである必要があります。そういう普遍的なコンセプトは、読者にとってオブジェクトと結び付けるのが容易なため、読者はより良い作品を求めて背を向けてしまうかもしれません。ここでは新規性が重要であることを忘れずに。


3: “ログ”


SCP-1831は始まるや否や、記事全体の2/3を占める実験ログに突入します。このオブジェクトもまた単純です — SCP-1831は子供時代に虐待を受けたという偽の記憶を刷り込む写真です。このような単純なオブジェクトには、実験が容易であり、経験を通して得られる解釈が様々だという利点があります。

この一作はますます陰鬱になるイメージを巧妙に描き出し、ログを読めば読むほど落ち着かない気分になります。虐待の記憶を通り抜けることで、SCP-1831は読者の共感に訴えます。最後のログは衝撃的で痛ましいクライマックスを迎え、読者を不安の中に取り残します。

このような記事から学べる主な教訓は、段階的な深刻化です。深刻化は実験ログにおいて極めて重要なものです。というのも、それはあなたが小さな事から始め、最終的には予想だにしない物を築き上げることを可能にするからです。あなたのログの深刻化を植物の成長として思い描きましょう。まず種子から始まり、根が生え、茎が伸び、やがて花を咲かせます。結局のところ、種を播かなければ花を育てられないでしょう?

大切なのは、ログは新しい情報を伝えたり、オブジェクトが役割を果たした時の例を示すのに適しているという点です。“説明:”の項目でオブジェクトの機能を列挙した後に、オブジェクトが全く変化の無い事をしているログを50回分載せても全然面白くありません。余計な詳細を加えて文字数を増やすだけで終わらないようにしましょう。無意味な穴埋め文章など読みたい人はいません!

SCP-1831はログを使って不穏な雰囲気を呼び起こしますが、ログは場合によって様々な仮面を被ります。滑稽な使い方としてはSCP-3900、恐怖心を煽る例としてはSCP-2128を読んでみましょう!


4: “論理的やり過ぎ”


この例に当て嵌まる“特定の事をする物”は、自分の役割を果たすのがとても上手です。正直言って上手くこなし過ぎます、異常なほどに。SCP-2398の場合は、何であろうと打てば場外ホームラン間違い無しの史上最高のバット! これは、残念ながら、人間を打つと爆発させてスプラッタな肉塊に変えてしまうという意味でもあります。

SCP-2398のような、とても上手に特定の事をする物は、前述した“ご覧の通り”オブジェクトの従兄弟のようなものです。この2つの違いは方向性です。この類の記事は、単純なアイデアとコンセプトを採用してから、それを論理的に極端な物に変えています。最も切れ味のある(笑)一例としてはSCP-2207、次元さえも切り裂くほどに鋭いナイフがあります。

こういう記事が評価されるのは、例えば便秘解消薬のような無害な何かを、何処とも知れない胡散臭い場所から止めどなく流れ出す下痢の奔流1に変える状況を作り出すからです。それはごく普通の物を、ひょっとしたら危険な、あるいは世界を滅亡させかねない存在に変貌させます — 多くの人にとっては面白い発想です。読者には今まで想像したことが無いような物事を考えさせてあげましょう。“どうすればもっと危険になるか”は、“どうすればもっと読者を予想外に怖がらせられるか”と同じではありません。


5: “どんでん返し”


SCP-4514はどこまでも陳腐で標準的なオブジェクトです。人を殺すナイフ。一体なぜ財団は古臭いナイフなんかを気に掛けているのか? 初めてこの記事を読む全ての読者は、オシャレなナイフの説明文と、ナイフが人々を刺して殺すログを目の前にしてそんな風に自問自答します。アハ体験の瞬間が訪れるのは記事の最後の最後、一連の出来事が死の終焉カノンの世界で繰り広げられていることが明かされる時です。

また別の例として、SCP-3803を見てみましょう。名刺を作り出す名刺入れです。このコンセプトは完全な直球勝負で実行されますが、やがて最後の折り畳みを開いた時、出てくる名刺は読者の予想ほど無限ではないことが判明します。何だかんだ言っても、名刺を作る紙は何処かから持ってこなければいけません。

お定まりのワンツーパンチに対する読者の先入観を利用すれば、予期せぬ展開で意表を突くことが可能です。これをやる際は通常、待ち構えているどんでん返しへの直接言及を説明文に入れないのがベストです。どんでん返しは綺麗に終わらせるのが最も難しい物語の一つです。気の利いた目くらましを仕込むのは困難ですし、まさかの展開が読者にバレバレでは楽しくありません。

読者にどんでん返しを見抜かせない一番簡単な手段は注意を他に逸らすことです。SCP-4514は全く財団らしくない事をやり、何かがおかしいという雰囲気を早々と確立します。被験者の年齢がわざわざ記録されているのもまた別の変化球で、150歳近い被験者が登場すると読者はますます困惑します。SCP-3803は代わりにユーモアを選択し、馬鹿馬鹿しい肩書きを読者に披露してからまさかの展開をぶつけてきます。

ユニークなどんでん返しと、そこに至るまでに読者の目を逸らし続ける手段を考案できるなら、成功への道のりを歩んでいるということです。


6: “特定の事をする物についての更なる注意事項”


特定の事をする物について沢山見てきましたが、紹介された記事に幾つかのテーマが繰り返し現れるのに気付いたでしょうか。その通り、実験ログ単純なオブジェクトです。単純なオブジェクトは様々な形式の解釈がしやすく、数多くの状況に気安く当て嵌められるので、これら2つの要素はしばしば密接に関係してきます。

例えばナイフは細かく切断したり、勢いよく切り裂いたり、突き刺したりできます。しかし同時に、瓶を開けたり、刺した物を支えたり、削ったりすることもできます。単純な道具には用途が具体的過ぎないという利点があるのです — ほら、アイスクリームコーンメーカーはアイスクリームコーンを作る機能しかないでしょう? もっと単純に説明すると、四角い釘を丸い穴に嵌めこむことはできませんが、これといった特徴の無い曖昧な塊ならどんな物にでも押し込むことができます。

殆どのお手本に見られるもう一つの目立った特徴は、物語です。SCP-005以外の全てはオブジェクトの、オブジェクトを取り巻く人間たちの、オブジェクトが存在する理由についての物語を伝えています。最近のSCP Wikiで記事が生き残るには物語が必要だとよく言われますが、私もある程度それに同意します。物語は読者に期待を抱かせ続けますし、誰かを引き付ける最も簡単な方法です。

オブジェクトを最高にクールな物にするか、最高にクールな事をさせるか、その両方を満たす記事を書くという手段も確かにあります。しかしこれを成し遂げるのは非常に難しく、失敗すると“上辺ばかりで内容が無い”といった批判が来るかもしれません。これは個人的な好みに依るところが大きいので、あなたの見方は異なるかもしれません。

先程も言いましたが、特定の事をする物を書く際には、オブジェクトの説明だけで終わりにはならないというのを忘れないでください。以上が、しばらく前からこのサイトに居て、サイトの内外で沢山の批評をしてきた私なりの、こういう記事に対する見解です。特定の事をする物の執筆にあなたが興味を持った時、このエッセイが助けとなり、あなたの特定の事をする物が成功することを願います。


7: “まとめ”


特定の事をする物には多くの書き方があります。特に頻繁に見られるのは、

ご覧の通り
飾りっ気無し、物が特定の事をするだけ。この場合は大雑把な、または関連性のある何かに狙いを定めよう。平凡なオブジェクトに居場所は無いのだ!

ログ
実験ログを利用し、出来事の深刻化を演出して、君のオブジェクトの異常性を読者に探求させよう。余計な詳細を付け加えて文字数を増やすだけで終わらないようにしよう。

論理的やり過ぎ
ある物が何かをする能力を110%に高めよう。この場合の執筆は遠慮なく、ただし魅力的なオブジェクトにするのを忘れずに。

どんでん返し
予想を裏切り、読者の注意を逸らしてから、驚きの展開をぶつけよう。

それはさておき、私からの一番大切なアドバイスは、何かを意味するオブジェクトを作るべきだということです。これは必ずしも物語の追加を意味しません。ただ、何らかの意味を持たせてあげましょう。何でもいいので。

それで私が書いたやつはこれで終わり。

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