第三の寿司
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3ページ目 コハダイン

"名前が無い寿司"の圧迫されるような闇を感じる。確かにコハダインでこの力に対抗するのは難しいかもしれない。しかし、闇寿司の根源たる"永遠の闇"と同じ土俵で戦うのはそれこそ奴の思う壺だ。よってラーメンではなく、小回りの利くコハダインで食い下がる他はない。

ほう。コハダインを選んだか。だが一度捨てた寿司で何ができる?終わらせてくれる。

両者は寿司を構える。

「「3、2、1、へいらっしゃい!!!」」

栄のコハダインと"名前で呼べない寿司"がぶつかり合う。衝突の度に二つの寿司が発する振動と光が増していく。コハダインと"名前を奪われた寿司"が共鳴しているのだ。

「これはシンコ(新子)。シンコロンか!」

シンコロン。かつて闇と名乗る前に栄が使用していた寿司である。シンコは、成長していくごとにコハダ、ナカズミ、コノシロと名前を変えていく。つまり、この二つの寿司は兄弟寿司の関係にあるのだ。そして、成長前の方が価値が高いという逆出世魚というべき性質を持つ。

やはり気がついたか。そうだ、この寿司はシンコ。さしずめアンノウン・シンコロンといったところか。

シンコは、その小ささ故に複数の身を重ねなければならず、また塩と酢の加減がコハダより一層難しい。その分、腕の持つものが握れば莫大な力を持つ。このアンノウン・シンコロンは蛇腹のように6枚の身を使用したものであり、操作もかなり難しいが、その柔らかい身から繰り出される攻撃力は絶大である。

真の名を看破された後でも、あふれる負のオーラにより、その軌道は朧気でつかみどころがない。それでも、かつての経験と勘を頼りに栄はアンノウン・シンコロンの攻撃を的確にさばいていく。しかし、怒涛の攻撃に栄は反撃の機会を伺えずにいた。

「そんな、これほど王道な寿司がこんなに闇に染まっているなんて…」

と衝撃を受けるタカオ。確かにシンコは江戸前の華ともいえる寿司である。しかし、思い返してみれば、王道中の王道ともいえるアルティメット=A=マグロも、ブレーダーである根田一寛の闇寿司への憎しみによって、一時期、闇のオーラをまとったことすらあった。一方マックスや"教会"の扱うカリフォルニアロール系統の寿司は、邪道とされることはあっても、まったく暴走するそぶりを見せていなかった。そして、明らかな"邪道"でありながら、闇の支配を抜け出したハンバーグ・グローリー。結局はブレーダーの使い方次第なのだろう。

コハダインが受け流した衝撃が地面を削っていく。両者の攻防がはじまってから20分間たった。決して栄のコハダインが有利なわけではないが、"永遠の闇"の表情に苛立ちが混ざり始めた。

なぜだ。なぜ捨てて顧みなかった寿司でこれ程戦える?王道な寿司などには価値などないのではなかったのか!?

"永遠の闇"が言葉を紡ぐとともに、アンノウン・シンコロンの一撃がより重く、そして速くなっていく。しかし、回転スピードが増したがためか、シンコロンを覆っていた黒いもやが少しだけではあるが薄くなった。栄が答えた。

「違う!俺が間違っていた。邪道だろうと王道だろうと強い物を、うまい物を活かせばよかったんだ。それが今わかった!もっと早く気付いているべきだった。今からでも遅くない。共にまた寿司を握ってくれないか。早苗!」

早苗の表情に迷いが生まれ、アンノウン・シンコロンの負のオーラが薄れ始める。コハダインへの攻撃が、徐々に弱くなっていく。"永遠の闇"と早苗の精神の共鳴が今解かれようとしているのだ!

耳を貸すな!どうせ嘘に決まっている。何も考えず、我の言葉だけを聞いていればよいのだ。

そう"永遠の闇"は早苗に囁いた。しかし、

「嫌だ。」

何だと。

「あなたは…何であれ孤独だった私に寄り添ってくれた。でもそれもここまで。」

それを聞き、"永遠の闇"は肉体の支配権を強引に乗っ取ろうとする。しかし、その前に、早苗は自ら身をコハダインの軌道上に投げ出した。ブレーダーの意識が失われたことにより、行き場をなくした"永遠の闇"の力が過剰に流れ込み、シンコロンは木っ端みじんになった。



「早苗!」

倒れる娘に駆け寄る栄。

「大丈夫。傷は浅いよ!」

とマックス。確かに、ゆっくりであるが栄の手の中の早苗の呼吸はしっかりとしていた。

「わざと寿司に当たりに行くなんて…。」とタカオ。

「まあ栄が急所に当てた試しがないしな。」とカイが言う。

「お前なぁ。」

安心しつつ、こんな時にも憎まれ口を忘れない元弟子に呆れる栄。

ええい、愚かな。だが、もう遅い。脆弱な人間の体はもういらぬ。我の握る究極にして最悪の寿司で、直接始末してくれよう。

頭上を見ると、早苗の体を離れ、真の姿を現した"永遠の闇"が浮かんでいる。人の大きさをゆうに超えた異形の姿。まがまがしいオーラはさらに増し、急速に当たりが暗くなっていく。反重力浮遊戦艦"レジティマシー"がに砲撃を加えるものの全て吸収され、"永遠の闇"が引き起こした急激な重力波の変動によってコントロールを失い墜落していった。

「これが…"永遠の闇"。」

「すごい闇の力を感じます…。」

「勝てるのか…?」

「やるしかない!」

先程から、様子を伺っていたAgt.斑鳩に早苗を任せ、タカオ達四人は"永遠の闇"に立ち向かう!"永遠の闇"が操る究極にして最悪の寿司とは?そしてタカオ達は"永遠の闇"を倒し、スシブレード界に平和を取り戻せるのか!?次回、最終決戦!



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