4ページ目 ヴィクトリー
さあ早く選べ。コハダインか、ラーメンか。どちらを選んだとしても、闇、お前は滅びる。
「そのどちらでもない。」
闇は答え、寿司を取り出した。
何だと?
二つの蓮華に挟まれた寿司が輝き始める。
新鮮な魚介を惜しむことなく使った濃厚な黄金色のスープ。
その中でさらに輝く色とりどりの海鮮と小麦色の麺。
いつからだろうか。
兄を越えるために一人の寿司職人がラーメンをメニューに取り入れた時だったか。
それとも誰もが飢えていたあの時代、ラーメンが人々の腹を満たした時だったろうか。
あるいは文化の出会いの結果としてラーメンが誕生した時だっただろうか。
答えは、すでにそこにあったのだ。
もちろん全てが綺麗であったとは言わない。
だが、我らはここに存在する。腹を満たし、そして闇を晴らすことができる。もう怖れることはない。
さあ、我の名を叫べ。
嘘だ。そんな、寿司ですらないものに縋っているというのに、我の支配を超越するというのか。
「嘘じゃねえよ。腹を満たしてやりたいという願い。勝ちたいと思う努力。それを否定することに何の意味がある?邪道も、王道も等しく肯定する。これが、俺の覇道。これが、俺のラーメン……」
栄は叫んだ。
「ヴィクトリーだ!」
栄の呼びかけに反応し、勝利の名前を冠する寿司が、その輝きを増していき、暗闇を晴らしていく。
馬鹿な。第三の寿司だと。
「来いよ。お前が寿司の全てを否定するというなら、俺も力をもって示してやる。俺たちがここに立っている意味を!さあ、お前の寿司を構えろ!全て受け止めてやる!」
「「3、2、1、へいらっしゃい!!!」」
"名前が無い寿司"がラーメン・ヴィクトリーに激突する。しかし、ヴィクトリーは溢れ出す黄金のオーラを麺のようにして紡ぎ、まるで翼のように成形しその一撃を受け止めた。ブレーダーの栄ですら気づいていないことであるが、ラーメンとしても破格の力を持つヴィクトリーによって麺界の王者、ラーメンの翼神竜1の一部が具現化しているのだ!
攻撃を完全にガードされた"永遠の闇"の苛立ちを反映するかのように、"名前無き寿司"は猛攻を続ける。しかし、完全にその翼で受け止められ、ヴィクトリー本体はおろかその背後へ伝わるはずの衝撃すら吸収されてしまっている。ヴィクトリーにダメージを与えるべく、"永遠の闇"は、依り代となっている早苗を通じ、"不明なる寿司"にさらに多くの力を引き出し、送り込む。
たが、ヴィクトリーがぶつかり合う度に、力が増すどころか、"名前で呼べない寿司"の勢いが削がれていき、そしてタカオ達の、サルモン、ベイロール、グローリーの光が増していく。栄と共鳴したヴィクトリーが、光と闇の境界を書き換えているのだ。これは"永遠の闇"の力が弱体化し、"寿司の意思"へと力が流れ込むことを意味した。
「そうか!"永遠の闇"という不条理に対抗するためには別の不条理ラーメンは寿司で対抗する必要があるのか!」
タカオがそう叫ぶ。ラーメンを寿司として肯定するということは、すなわち正道から外れた寿司への怖れ、悪意、絶望をその根源とする"永遠の闇"の力を削ぐことに他ならないのだ!
こざかしい真似を。ならばこれでどうだ。
徐々に力を奪われていくことに業を煮やした"永遠の闇"は、ついに必殺技を解き放つ。暗黒のオーラが押し寄せる。栄も同じく必殺技で迎え撃った。
アーク・エクステンション!
「空即是食 コトブキ・レボリューション!!!」
ヴィクトリーと"名前を奪われた寿司"が激突する。一瞬拮抗するが、吹き荒れる黄金の嵐に"名前がなかった寿司"を覆っていた負のオーラが引きはがされ、本来のシンコロンの名が露わとなった。そしてラーメン・ヴィクトリーの理屈を越えた力がシンコロンを通じて伝わり、"永遠の闇"を早苗から容易く引き離した。
「こんな答えをここで出してくるなんて、やっぱりずるいなぁ」
そうつぶやいた早苗の表情は、穏やかだった。意識を失い静かに横たわる早苗に、栄は言った。
「済まなかった。全部終わったら、ちゃんと話し合おう。」
早苗の体から引き離された"永遠の闇"が上空に浮かんでいる。反重力浮遊戦艦"レジティマシー"が"永遠の闇"に砲撃を加え、何発かが着弾した。"永遠の闇"の反撃により"レジティマシー"は墜落したものの、その16インチ棄却/追放砲弾は少しではあるが確実にダメージを与えていた。
ええい。お遊びはここまでだ。人間の依り代などもはや不要。すべてを滅ぼしてくれる!!
なんとまがまがしいオーラか。しかし、タカオ達四人の眼に最早迷いはない。
「力が湧いてくる…」
「これなら!」
「いける!負ける気がしない!」
「やるぞ、お前ら。」
Agt.斑鳩に早苗を任せ、タカオ達四人は"永遠の闇"に立ち向かう!果たして永遠の闇"を倒すことはできるのか?そして次回、真の闇が姿を現す!