Tomatomania ハブ
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Tomatomania(名): 蕃茄狂








 
トマトを満載したトラック数台がプエブロ広場を中心に走り、トラックの荷台からは市の職員がトマトをトラックの外に投げ、それを群集は誰彼構わず互いに投げ合う[1]。ある程度トマトが減ってくると、トラックは荷台を傾けて残っているトマトを一気に落とす。通りにいる人は、トラックに轢かれないよう十分注意しなければならない。

このようにして、街はあっという間にトマトで満たされ、群集はトマトまみれになり、街中には潰されたトマトの湖さえ出来上がる。

- Wikipedia 『トマティーナ』(トマト祭り)









 

遥か昔、ガレノスという医学者がいた。ガレノスは人間の生命は血液と共に流動する精気によって保たれると考えた。幾たびもの解剖学的発展に伴う批判──それはときに焚書によって成し遂げられた──によって、もはや太古の妄言とされたその学説とは何の関係もないが、ある調味料を作った集団がいた。彼らは己が崇拝植物の身より、粘度の高い輝きを、その後ケチャッ……トマトマと呼ばれる紅色の液体の原型を見出した。彼らはその瞬間、この世で初めて”美味しいトマト味”を現出させた。ガレノスの学説は、特に関係はなかった。

20██年、ある一つの発明が世間を賑わせ始める。ゼーバッハ中央製薬なるベンチャー企業が打ち出した概念は、「トマトの旨みの抽出」──ピューレという果肉そのものを吸い出し、極めて限られた嗜好と確実な死を招く毒(塩分過多的な意味で)を手にする技術。それは、初めのうちは(美味しいトマトとか)荒唐無稽だと笑い者にされて、しかし2年と経たぬうちに、その有用性を以って人類社会に定着した──トマトを忌避する表社会にも、トマトを嗜好する裏社会にも。

彼らはトマトを遠ざけた、彼らはトマトを手中にした。

一雫のケ……トマトーマに、それが満ち足り過ぎた生に、人は何を思うのだろうか。

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