当文書はあなた方被侵略者のために、地球の正常性維持機関"財団"が作成したものです。機密漏洩防止のため、大部分の情報が削除、あるいは簡略化されています。
アイテム番号: SCP-001-JP
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: N/A
説明: SCP-001-JPは、地球にかつて存在した"財団"と呼ばれる正常性維持機関によって設計されたナノマシンです。SCP-001-JPにはシュタイン型反エントロピー熱機関、ブラス型ナノコンピュータ、ヒト(Homo sapiens)の遺伝情報および各種文書データを格納した[削除済]に加え、[削除済]、[削除済]、[削除済]が組み込まれています。SCP-001-JPは管理された自己複製プログラムを有し、地球上に普遍的に存在します。
SCP-001-JPは地球外のものを含めたあらゆる生物の粘膜や皮膚から体内に侵入し、内部で増殖します。この際、被覆物があったとしても[削除済]を用いることで通過可能です。ヒトに近い形状の生物(対象生物と呼称)を発見すると、SCP-001-JPは以下のプロセスに従って動作します。なお、これらのプロセスはニジョウ型量子通信システムにより同期されます。
第1期: SCP-001-JPは隠密裏に対象生物種全体に自身を蔓延させます。対象生物のうち80%以上の体内にSCP-001-JPが侵入したことを確認次第、第2期に移行します。
第2期: SCP-001-JPは対象生物の生殖細胞に一斉に侵入し、遺伝情報をヒトのものに部分的に書き換えます1。なおこの書き換えは、対象生物の生息する環境においてその遺伝子をもった子孫が生存可能な範疇に留められます。
第3期: 挿入された疑似本能の働きにより、部分的にヒト化した対象生物が支配シフトシナリオを発生させ、惑星環境の改造を行います。並行して、第2期と同様のプロセスにより、対象生物の生殖細胞におけるヒト遺伝子の割合が拡大されます。生き残った旧支配種には、翻訳された当文書および"財団"の代表者による謝罪文が送付されます。
第4期: 惑星環境およびヒト化対象生物の社会がかつての地球と概ね同一のものとなった時点で、人類社会の再建が宣言され、全ヒト化対象生物により旧文明とその担い手に対し黙祷が捧げられます。その後、SCP-001-JPは再び文明の不可逆的崩壊が検知されるまで機能を停止します。
彼らは愚かだった。自分たちの存在をウイルスにして遺したまではいいが、まともな修復プログラムも入れず、寧ろ変異を歓迎するような設計にしていたのだ。大方アノマリーのせいで遺伝子がぐちゃぐちゃになった時代が続いて、血統意識みたいなものが薄れてしまっていたのだろう。
無数の惑星を旅するうちに、積み重なった変異はヒトが何たるかを完全に変えてしまった。今の"ヒト"は、硫酸の海とメタンで満たされた大気、それに食物として酸化鉄を含むペースト状の有機物が無ければ生きていけない化け物だ。
我々の文明も持てる力の全てを振り絞って抵抗したが、標準言語化したこのメッセージをウイルスに挿入することだけで精一杯だった。そして君がこれを読んでいる頃には、もはや我々の痕跡すらこの世には残っていないだろう。
だから頼む。もしこれを読んでいる君たちに少しでも余力があるのなら、どんな手を使ってもいい、この悪疫の蔓延を食い止めてくれ。そして願わくば、今では見る影もない彼らを、今度こそ眠らせてやってくれ。