アイテム番号: SCP-001
オブジェクトクラス: Keter Safe
特別収容プロトコル: ロバート・モントーク博士による最近の研究に基づくと、SCP-001を収容するための行動は特に必要ではありません。それは機能的な自己収容状態にあり、財団による干渉はその収容を不可逆的に損傷もしくは変化させる可能性があります。
すでに財団の収容下にある関連アノマリーを例外として、財団の職員はSCP-001に関する新たな事案に関与してはいけません。
説明: SCP-001は一般に緋色の王と呼ばれる実体です。SCP-001は現在複数の並行次元に同時に存在しており、基底次元には侵入できません。しかしながら、数千年300年以下の周期で繰り返し侵入を試みてきたと考えられています。SCP-001の肉体、精神、そして概念的な属性は財団には未知であるにもかかわらず、実体は多数の基底次元の人間やイベントに強い影響を与え続けています。
SCP-001の存在は進行中ながら休止状態にあるタシュケント-クラス"異花受粉"シナリオ1を示していると考えられています。万一にもSCP-001が基底世界線に侵入することがあれば、正常性への修復不可能な改変が起きます。SCP-001の収容は再優先事項、しかしながら不要です。あらゆるSCP-001の分類もしくはオブジェクトクラスの変更の試みはO5評議会からの即座の解任をもたらします。
芸術や口伝でのSCP-001に関する言及は、世界中の様々な人間、および非人間の文化に見られ、それらの文化には相互に接触がなかった場合も含まれます。これらの伝統での一般的な描写は、通常金の冠、あるいはその他の王位を表す頭部の飾りを装着した、巨大なサイズの赤いクリーチャーです。SCP-001を表す名前は変わりますが、多くの場合2つの要素を含みます。何らかの王位であることを表す言葉と、赤色を表す言葉です。赤色という概念を持たない文化の場合も、英語におけるredの概念に類似する色を用いこの命名のパターンに普遍的に従います。
SCP-001に関連したアノマリーに従事するものを除き、殆どの職員はこの実体についての知識を持ちません。SCP-2317の収容プロトコルの一部として、レベル4職員2はSCP-2317は実はSCP-001であると伝えられなくてはなりません。これは評議会のメンバー数名が強く提唱する仮説ですが、真実かどうかは未知です。しかしながら、SCP-001は多面的な性質を持つと考えられるため、SCP-2317がSCP-001の一つの側面に過ぎないという可能性は高いです。
SCP-001がいつ発見されたのかは定かではありません。1889年の"スナーリング・クープ"3での財団の起源に関するいくつかのアーカイブの喪失により、[データ消去]の後間もなく調査が行われたにもかかわらず、出来事の完全な再構成ができなくなっています。年来、SCP-001を基底次元に移動させようと献身的な努力を払ったいくつものグループが出現してきました。それらのうち、最も近年のものは"緋色の王の子ら"ですが、2018年1月のGOCとSCP4の共同作戦により壊滅されました。その元リーダーであるディペシュ・スピヴァクは現在財団の拘留下にあり、PoI-3172と指定されています。
アップデート2018/06/01: SCP-001は近日来SCP-001、SCP-231、SCP-2317の計画主任であり、処置110-モントークの発案者であるロバート・モントーク博士による精力的な研究の対象となっています。
この研究の結果に基づき、SCP-001はO5評議会による決定よりSafeにダウングレードされました。元O5-13の要請により、この研究に関連する多くの文書が、経緯およびこの理論に関連するさらなる情報を提供するために以下で閲覧可能です。 これらは元O5-13自らにより、O5-1の許可のもと、精選、カテゴリー化され、この再評価のある程度の経緯を提供するため収録されています。
文書1: 以下はロバート・モントーク博士とPoI-3172間のインタビューです。
日付: 2018/04/01
インタビュワー: ロバート・モントーク博士。
インタビュー対象: PoI-3172
場所: サイト-713インタビュー室2。
<ログ開始>
PoI-3172: また会ったなモントーク博士?君たちが私に何を求めているのかわからないな。
モントーク博士: ハロー、ディペシュ。何度も申し訳ない。正直なところ私もバカバカしいと思っているよ。我々が君からほしいのは答えだ。
PoI-3172: もう何週 —、何ヶ月にもなるか?君たちは私をここへ、君らのインタビュー室のひとつへ連れてきて、そしてこういう果てしない質問を続けている。君か君の子分がな。
モントーク博士: 居心地が悪いようなら申し訳ない。これは私の本意ではなかったが、これ以上あらゆるものを監視するのは難しいんだ。いくらか手荒く扱う警備員がいたのかね?
PoI-3172: いや。全く。不平は言えんよ。気になるところがあるとすれば、彼らの目についてだよ。彼らの目はあまりに死んだようで、そして冷たい。
モントーク博士: もし君が望むなら、職員を何人か入れ替えて誰か別のものを君の特別警備隊につけよう。今の所ここは少し人手不足でね、それに優秀なスタッフも離れている。書類仕事もあるし監視業務は果てしない。それにいくらかトラブルが —、いや、これに関しては君は知る必要はあるまい。
PoI-3172: 君は思っていたのとは違うな。
モントーク博士: 財団についてもっと違うイメージがあったのかね?
PoI-3172: いや、君についてさ。
モントーク博士: 君は私を知っていたのか?
PoI-3172: 君のしたことをな。処置110-モントーク、そう……あれが我々の手にあったときには、我々の組織の人間も、いくらか後ろ暗いことをしていた。だがあれは —
モントーク博士: 私はただ必要なことをしただけだよ、ミスター・スピヴァク。財団の研究者として、そして彼の愛したものが死ぬのを見たくない者として。
PoI-3172: ああ。まさに財団らしいな、そうは思わないか?必要性によって何でも肯定される。世界を見てみろ。その中の人々を、ただ数字としてしか扱われない命、社会と物理の一般法則を。全てはそういう法則を通して理解されなくてはならず、そしてその外にあるものは収容されなくてはならない。全くシンプルな話だ。
モントーク博士: ここで働けばそうは言えないだろうよ。
PoI-3172: 我々の中には君を邪悪だというものもいる。私はそうとは思わないが。
モントーク博士: そう呼んでくれて構わないよ。私も正直に言うと、君も私が思っていたような人間ではないな。特に君の評判を聞くと。
PoI-3172: 私は付き合いにくい人間だと言われてきた。あまりに"秘密主義"だとか、一人は"空気のようだ"とすら言ったな。
モントーク博士: 私には"空気のよう"とは思えないな。君の頭は世間離れてしているかもしれんが、君はそれに恐ろしく満足しているように見える。もっとも、ここに収容され、そして去っていった思い込みの激しいカルト信者には君より満足しているものがいたが。少なくとも私はそれに感謝するべきだろうな。
PoI-3172: それは侮辱ではないと思うとしよう。だが私が理解できないことが一つある。君の処置、110-モントーク。こいつは —
モントーク博士: 申し訳ないがそれについて議論することはできない。我々は乗り遅れるわけにはいかないのだ。時間、流れ、そしてあれらのくだらないもの全てに。緋色の王の子らの総合的な目的は何なのか話してくれ。
PoI-3172: 子らは死んだ。君に話すことはもう多くは残っていない。
モントーク博士: 君自身の言葉でそれを聞きたい。
PoI-3172: ならば我々の"目的"は世界を救うことと言えるんじゃないかな。
モントーク博士: それで、そのためにどんなことを計画していたんだ?
PoI-3172: もちろん、この現実に緋色の王を運び込む事によってだ。君はこれをもう知っているだろう。
モントーク博士: だがそのことがなぜ世界を救うことになるんだ?
PoI-3172: 博士、この現実は必要なのか?君たちは彼の娘たちを何年も前に連れ去り、結局その殆どを殺すことになった。君たちはすでに我々の組織を滅ぼし、そして私は君たちがそこで何が行われていたかについて全て知っているとわかっている。我々は彼がサタンか何かの邪神であるかのように装いながら王を崇めていた。我々の幹部たちは冒涜こそ究極の聖なる行いだと信じていた。我々は失敗し、君たちと焚書者たちは我々を破壊し、問題は解決した。
モントーク博士: 自分の人生をかけた行いが無になったことを話しているというのに、恐ろしいほど冷静だな。
PoI-3172: 他に何ができる?その行いが終わろうとしていることはわかっている。もしかしたら私はずっとわかっていたのかもしれない。
モントーク博士: なぜ君は世界オカルト連合を"焚書者"と呼ぶんだ?君たちのグループは蛇の手と関係があったのか?
PoI-3172: それは — 複雑な話だ。
モントーク博士: 単純な質問だ。
PoI-3172: だが答えは単純ではない。イエスではある、我々は蛇の手と関係があった。我々の殆どはある時期にあそこへ行った。もちろん、君が彼らに我々について尋ねたら、彼らは我々を批判するだろうな。彼らは我々のような怪物ではない。知っての通り、彼らには倫理がある。彼らの総体的な目的は驚異を探すことだ、そして彼らは王に驚異を感じなかったので、我々を全く拒絶した。しかし彼らは内心では我々を必要としていた。
モントーク博士: 彼らは君たちを必要としていた?何のために?
PoI-3172: いくらかの理由のために、彼らは我々を生かした。我々は図書館を襲撃し、彼らと戦い、論争をした。彼らは我々を大いに非難した、君らよりずっとな。しかし彼らは決して我々を終わらせなかった。彼らは自分たちのやり方が実は苦手だという点において、君たち看守と似たようなものだ。同じ分類、同じただ一つの目的。彼らの存在は何も確かなものに基づかない。歴史の空虚、それがすべて。実を言うと、彼らが存在し始めたのは君たちと同じ頃だ。君たちと彼らは、君たちが思うよりずっと似ている。
モントーク博士: ありえない。蛇の手は財団のどの前身組織よりも、ずっと以前から存在していたと記録され-。
PoI-3172: 違う、違う、君は論点を取り違えている。そう、図書館は常に存在していた、だが蛇の手は違う。蛇の手は君たち全てと同じように新しいものだ。君は古代でも皆が"驚異"を求めていたと思うのか?誰も驚異など気にしていなかった。ただ食料や、家族、そして血統を気にしていた。
モントーク博士: 何を言いたい?
PoI-3172: つまり……ああ、いずれにせよ君にはわからんよ。だが蛇の手ならわかるだろうな。焚書者どもでもわかるだろうな、彼らなりに。だが蛇の手は恐れていた。彼らは我々を弱らせ、忘れようとした。知っての通り、我々は彼らがなるべきで、だが決してなれなかったものだ。
モントーク博士: ディペシュ、私は君に便宜を図ろうとしてきたはずだ、だがギブ&テイクだ。君は陳腐な修辞と謎掛けばかりを喋っている。だが私が欲しいのは答えだ。
PoI-3172: 私は君にすべてを言うことはできない。君たちは情報を正しく扱えないだろう。君たちはそれを科学的な事実として扱うだろう。何か飲み込み、理解し、文脈づけるべきものとして。
モントーク博士: その何が間違っているのだ?
PoI-3172: 博士、なぜ君たちは調べ続けている?なぜこのことをまた掘り起こそうとしているのだ?
モントーク博士: 本当は君に言うべきではないのだろうが、だが……ああ、複雑な話でな。私はもうこれには疲れたよ。私はSCP-001に20年取り組んでいる。手続を考案して、計画主任となってからもほぼ9年になる。わからない。私は疲れた。どこを見ても緋色の王の話ばかりだ。だがそれについては何も意味が通らない。大角をつけた悪魔か?神秘の血の神か?全てはあまりに不明で、あまりに曖昧だ。見ての通り、財団はこの10年で変わった。我々は概念上の悪魔、敵対的な物語の住人、7にまつわる破壊者と出会ってきた。これらすべてが、古代の生贄を求める神性よりも遥かに悪い。だが全ての向こうに、私には炎の中に嘲笑する顔が見える。あの恐怖、古の恐怖が焼き付いて離れない。こいつは嘲り、見つめてくる恐怖だ。はるかに御し難く、はるかに幽かで、日一日とこの世界を破壊しようとしている。私はただ理解したいのだと思う。薄皮をむくように、幾重にも重なった矛盾した物語を解いて。そして彼が真には何であるかを。
PoI-3172: 恐ろしく率直になったな。
モントーク博士: 正直言って、プロトコルにかまうのをやめたんだ。この仕事は君にかかっている。君がしなくてはいけないことは、残念だが……ああ、今や私はあまりに地位が高くなり、意見するものはいない、そして私はこれまでに、プロトコル通りでは行き詰まる壁に当たり続けてきた。何か話してくれ、ディペシュ、何でもいい。
PoI-3172: OK、そうだな、気に入ったよモントーク。君はあるときには冷血なクソ野郎であり、また時には — ああ、偉そうに言えた義理じゃないな。始まりから話そうか。
モントーク博士: よく聞くこととするよ。
PoI-3172: 緋色の王について理解するべきことは3つある。合わせれば完全な絵になる3つの法だ。ひとつは血の法、もうひとつは凝土の法、そして最後が咆哮の法だ。
モントーク博士: 3つの法?それは緋色の王が信者に課すものか?彼自身に課されるものか?
PoI-3172: 両方だ。1つ目は彼自身の法。2つ目は他の誰かの、そして3つ目については、そうだな、君が最初の2つを理解したときにわかるだろうよ。
モントーク博士: 実に秘術的だな。
PoI-3172: 今君に言えるのはここまでだ。君は正しい道を学ばなくてはならない。
モントーク博士: 本当にそれで全部なのか?
PoI-3172: 全部だ。
数秒の間がある。
モントーク博士: オーライ、ディペシュ。これまでで一番有意義な会話ができたな。
<ログ終了>
文書2: 以下は緋色の王の子らからの離反者であるジャック・ハーストの手記の抜粋です。ハーストは高レベルの現実改変者であり、過去の人物の肉体に入り、その思考と動作を直接経験することができました。以下はハーストが"ゲメレスGhemellethの戦い"と呼ぶ、称されるところによるとSCP-001とその信者の、"骨壷の子ら"と呼ばれるグループとの戦いの描写です。ハーストはSCP-001の軍の歩兵の視点から体験しているように見えます。この手記は1976年のハーストの死の少し前に書かれました。これはモントーク博士の研究において、最初に調査された文書群の中にありました。
砦は堂々としており、固まった溶岩とギザギザの鉄を素材とし広大な山の形へと作られていた。あらゆる寸法、あらゆる角度は王の理想を表すために計算されていた。鋼鉄のスラットと棒は無作為に乱雑に刻まれた向きに突き出ているように見えたかもしれないが、全体を見れば対称性を見い出せる。それは宇宙の秩序の完全な再現であり、終わりなき七に表現されていた。
思い出すことは難しいが、断片的に浮かんでくる。おそらく、我々は奴隷だった。我々は遥かに離れた地から連れてこられた。身分の高いものが冷酷な目で我々を見下していたが、王は気にしなかった。彼は我々に報酬を与え、そして我々は彼の支配のための道具となった。ある村に王の正義が必要なときには、我々は血と鉄を持って彼らのもとに送られた。村人たちは我々を恐れ、私にとってそれは心地よく感じられた。かといって村人たちは、かの遊牧民が燃え盛る炎と彼らの自由の雄叫びとともに来たときにも、我々を恐れたのと同じくらい彼らを恐れた。私が思うに、それは支配者への恐れではなかった。混沌への恐れだった。彼らはどちらへつくべきかわからず、結局の所、殆どが我々を裏切った。彼らの多くが、我らの王に娘を奪われた。古き儀式。血の儀式。秘術の儀式。
しかし我々は終わりなき忠誠とともに狭間城壁に立ち、その全くの正当性にあって心臓は幸福により高鳴った。私は未だに何が起きているのかを正確にわかっていたわけではなかったが — 全てはただ混沌としており、赤い煙に満たされていた — しかし私は宿主の血への渇望を感じることができた。我々は立ち、見て、そして待っていた。瓦礫と爆発の音が丘から響き、最後の戦いが始まった。
そこで何かおかしなことが起こった。宿主は突然に恐怖を感じ、彼と私はどこか別の場所にいた。空は赤ではなく黒だった。私は奴隷ではなく、集まった群衆の一人だった。農民たちが我々を見上げていた。彼らは皆飢えていた。彼らは手を伸ばし、請い、嘆願し、祈っていた。風が彼らの主であり、それが彼らに叫んでいた。遊牧民たちが来つつあったが、彼らもまた飢えていた。
その時光景は点滅し、私はまた真紅の空の下の宿主の中にいた。王が憤怒を込めた声を上げた。もはやただの群衆と化した彼の軍が門へと逃げ、しかしそれらは開かなかった。我々は炎と松脂に包まれた矢をもう一度射返したが、遊牧民たちは恐れなかった。私の心からは炎、王の炎しか見えなかった。私は剣を抜いた。我々は皆剣を抜いた。我々は皆乱戦へと飛び込んだ。
そしてその時、先程のように、光景はまた変わった。城壁はなく、暗い空と風と、更に乱れて孤独な空。農夫たちは懇願し、流浪の民は笑い、歓声をあげ、泣いた。「風はもはや荒れ狂わぬ!」彼らは言った。
二つの光景は次々と切り替わった。赤い砦は滲み黒い平原と混ざった。私はこれについて長い間考えているが、それらは同じ戦いを二つの違った視点を通して見たものだと思う。あるいは少なくとも二つの違った戦いの記憶だろう。全ては奇妙に感じられた。私の旅の多くとは異なる。それは曖昧な不協和音で、互いを引き裂こうとする二つの思想。あの黒い平原には真に起こったことを示す世界線があった。そして真実に基づいてすべての時間に押し付けられ、真実となるように作られたものがあった。
私が思い出せる最後は、流浪の民の剣により斬られるところだった。彼らは高く掲げた骨壷の、城から奪われた七人の花嫁の部族であった — それとも彼女らは、何処かの失われた平原の何かの不明な部族により平原から戦利品として奪われたのだろうか?私は王が封印されつつ叫び、もがき、のたうっていたのを憶えている。
そして私は死に、儀式の場で目覚めた。少しの間、私は他の者たちが王を作り上げ、彼の心象を過去へ送ったのかと疑った。だがそうではないと思う。彼らは力を欠いており、そして加えて、あれが完全な嘘であることなどありえない。あの私に古の儀式の何らかを思い起こさせる邪悪な風には何かがあった。
そのときに、私は組織を離れようと決めたのだった。私は何も言わず、あの夜に出ていった。彼らは私を止めなかった。おそらく労力に見合わないと思ったのだろう。彼らは計画を成功させることにとても自信があるようだった。しかし私はそれ以上そこに参加したいとは思わなかった。私が見たものは血の法に基づいている。そして私は、それが決して実現しないよう祈ることしかできない。
文書3: 以下はSCP-231の収容以来の、すべての既知の、SCP-001を基底次元に顕現させようとする異常なグループによる行動の記録です。
日付 | 要注意団体 | 行動の詳細 | 結果 |
---|---|---|---|
09/03/01 | 暫定・緋色の王の子ら(Provisional Children of the Scarlet King) | 召喚の試みは、血液を塗布する儀式と、ミズーリ州セントルイスの住宅複合体であるコクラン・ガーデンスの解体現場から回収された瓦礫の破壊により行われた。緋色の王の子らは解体を行わせるよう州の公務員たちを数年に渡って操作し、この分派組織は元来の組織が衰退する間も活動を続けていたと考えられている。 | 行動は財団の襲撃により阻止された。 |
12/05/12 | 赤の衛兵団(Red Guards) | SCP-001へのポータルを作成するために数体の動物の血液、骨、髄液を用い、儀式的な詠唱を組み合わせたと見られている。骨を組み合わせて作られた多数のSCP財団のロゴが、儀式の場所の周囲に防御的に配置されていた。これらのロゴはわずかに不正確に作成されていた。 | 試みはあらゆるGoIにより感知されず、成功に極めて近いところまで来ていた。しかし、儀式の言葉の致命的な間違いが大規模な爆発をもたらし、集結していた当該団体のメンバー全員の死をもたらした。儀式のために財団の防護を引き出そうとしたように見えるが、なぜかは不明である。 |
14/07/02 | 世界オカルト連合 | 不明。 | 不明。ただし成功ではない。この件に関するGOCの記録は、「歴史のフロンティア作戦」という名と、「進歩をもたらし重大なオカルトの脅威を阻止するために歴史時代の緊張を増大させる」というミッション声明以外失われている。数名のGOC工作員が試みの最中死亡したと考えられる。 |
17/01/01 | 新黎明軍(Army of the New Dawn) | グレゴリオ暦のカレンダー数編を燃やし、メンバーがSCP-001の彫像に対し血液に浸したユリウス暦、ヒジュラ暦、イラン暦のカレンダーを掲げる事により行われた。 | 行動は蛇の手のメンバーたちにより阻止された。すべての素材は回収され放浪者の図書館へと持ち去られた。 |
17/09/17 | 蛇の手 | 大部分が不明。詳細は不明瞭だが、放浪者の図書館の特定の厳選された書物の破壊を伴ったと考えられる。 | 試みは当該団体の分派により妨害されたと伝えられる。結果として発生した損害は図書館の激しい損傷をもたらした。 |
文書4: 以下はロバート・モントーク博士とPoI-3172間のインタビューです。
日付: 2018/04/14。
インタビュワー: ロバート・モントーク博士。
インタビュー対象: PoI-3172
場所: サイト-713、インタビュー室2。
<ログ開始>
PoI-3172: 今日もこんにちは、ロバート。
モントーク博士: こんにちはディペシュ。君たちの法について調べたよ。申し訳ないが私は賢くなったわけではないが。
PoI-3172: そのうちそうなれるさ。何がわかった?
モントーク博士: その「血の法」はあちこちで何度か言及されている。だが具体的な情報は何もなかった。
PoI-3172: そうだろうなと心配していたよ。
モントーク博士: 実際に使われたことに関する情報が一つだけあった — ゲメレスの戦いと呼ばれるものの描写だ。子らからの離反者によって書かれたものだ。
PoI-3172: ああ、ハーストか。私も一度読んだことがある。王の封印を実際に目撃した唯一の人間だ。信頼できるとは言えないがね。
モントーク博士: 一体どういう —
PoI-3172: ああ、彼は話を盛っているのさ。彼はすんなりとは去っていかなかった。私は彼が去る少し前、彼の書いた初期の下書きを見つけたんだ。その頃私は若く、そして彼が自分の見たビジョンについてどれほど情熱的に論じたか覚えている。彼は我々は王を全く誤解していたと言った。彼は悪魔でも君主でもなく、風の中の声なのだと。そして私が歳をとった時、すべてがわかった。彼が完全な理解に近いところまで来ていたことに驚いたよ。彼はただ……そこに至ってないだけだった。
モントーク博士: あの記述は嘘だと受け取るべきだったか?
PoI-3172: 嘘じゃないさ、厳密に言えばね。ただ少し見落としていただけだ。そして君は私の言い分しか聞いてないだろう?博士。財団によると総体的に信頼できないと判明した私の言葉を。
モントーク博士: 君を疑う理由がない。もう失うものなどないだろう?君は私自身と同じくらい、私に真実を学ばせたがっているように見える。
PoI-3172: そうだな。その上で、もしできるなら、一つ質問がある。
モントーク博士: いいぞ。長く話せば話すほど、君が何か言うべきじゃないことを漏らす可能性が高くなる。
PoI-3172: 君は処置110-モントークがなぜ実際に有効なのか知っているか?
数秒の間がある。
モントーク博士: すまないがディペシュ、それについて話すことはできない。
PoI-3172: いいさ、いずれにせよ私は答えを知っていると思う。教えてくれ、君は……誰かを失ったか?
モントーク博士: 何を言いたいのかわからない。
PoI-3172: 辛い記憶を思い出させてすまない。だが私も財団の文書を見たことがあるんだよ。その頃には必要だったんだ、君たちが彼の娘たちに何をしているのかを知るためにね。私は君の弟が —
モントーク博士: やめろ。このインタビューは私のプライベートな出来事についてのものじゃない。
PoI-3172: すまないな博士。私はそういう —
モントーク博士: この「血の法」の意味を説明してくれないか。
PoI-3172: 明らかではないか?緋色の王が支配するやり方だ。秩序はあった、だがそれは農民に鉄の意志を課すことによって、奴隷の軍隊によって、冷酷となるように育てられた貴族によってなされるものだ。この地球の彼の領地で、彼の支配する世界の現実だ。
モントーク博士: それが緋 — SCP-001の性質と何の関係があるんだ?他の法とは何だ?
PoI-3172: 2つ目を調べることをおすすめ —
モントーク博士: 君の遊びに付き合う暇はないんだ。今話せ、PoI-3172。でないと独房へ戻ることになる。
PoI-3172: おお、モントーク博士、すまない。君は凝土の法について調べる必要があるな。それは —
モントーク博士: インタビューを終了する。
<ログ終了>
文書5: 以下は1891年のエージェント・デ・ボーヴォワールの報告の1ページです。当該報告は1889年のスナーリング・クープ後に遺失した財団アーカイブに含まれ、1895年のボーヴォワールの終了の後間もなく、財団アーカイブの数点の他の文書とともに喪失しています。このページはモントーク博士により不明な手段により回収されたものです。これらのデータ喪失から発見された他の文書はありません。
まとめると、喪失した文書は非常に大量であり、財団の初期の歴史に関する広範なデータが含まれている。特に、SCP-001に関する文書数点が行方不明であるというのは注目に値する。しかしながら、私の調査により多数の情報がもたらされ、私はある程度の確度を持って、スクラントンの「包括的歴史」に記載された歴史的記録は、私が以下に詳述する修正点はあるが、広い範囲で無事であると言えると考えている。
スクラントンの著述によると、財団は異常な活動を目撃することを防止することに特に注力している13の世界中の組織の統合により、1824年に創設されたとされている。これらのうち主なものは、不自然なるものの確保収容財団Foundation of the Secure Containment of the Unnatural、魔法省Devan-e Jaaduyih、未解明問題部門サイト統合体Unified Sites of the Department of Unexplained Affairs、五監督者評議会Council of Five Overseers、超自然倫理委員会Commitee of Paranormal Ethicsである。スクラントンはこれはSCP-001によりもたらされた脅威に対応して行われたものであり、初期の財団は異常の収容に広範な役割を担っていたと述べている。
しかしながら、私が今前にしている文書はやや異なった像を描いている。財団はSCP-001に対応して創設されたのでは全くないようである。実際に、私はSCP-001に関する記述を1826年以前には見出すことができない。多くの目撃者もいるSCP-173によるニューヨークの襲撃が財団の形成の最初の動機となったようである。SCP-173の、現在でも未解決の1854年の収容違反が記録の改変の理由であると私は思う。というのも、スクラントンの当惑は
文書6: 以下はモントーク博士により編纂された表です。確定的なものから、可能性のあるものまで含めたSCP-001に関する事案についてのO5評議会の可決された投票を示しています。
投票日 | 投票の詳細 | 関連するSCP-001イベント |
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1844/07/09 | SCP財団全体への、文書を公式に基準化するための投票。13-0で可決。 | SCP-001へ捧げられた一連の賛美歌がサイト-001の外にて聞こえた。 |
1857/02/01 | SCP-001の収容プロトコルの基準化のための投票。12-1で可決。 | すべての05評議会メンバーが不明な南アジア系の男性が泣いている夢を見たと報告。 |
1895/11/09 | エージェント・ボーヴォワールの終了のための投票。6-5で可決。棄権2。 | O5評議会メンバーそれぞれの寝室に血痕がつき、「SCP-001」と書かれた多量の紙片が自然発生した。血液は後にエージェント・ボーヴォワールと不明な種の家禽類のものであると同定された。 |
1902/10/10 | サイト制度の施行のための投票。10-2で可決。棄権1。 | 北アメリカ某所にて突然の野火が発生。住民は「炎でできた龍」や「角のある王冠」が当該地域の夜空に見えたと報告した。野火は2007年に後のサイト-19の位置から発生したと判明した。 |
1922/01/23 | SCP-2317の収容プロトコルへの投票。4-3で可決。棄権6。 | 収容エリア-179の付近の地面に数本の地割れが発生。地割れからは7分間赤い煙が立ち上るのが観察され、地割れは突如閉じた。 |
2011/02/08 | SCP-001、SCP-231、SCP-2317のプロジェクト権限統合への投票。10-2で可決。棄権1。 | 笑い声を時折含むSCP-001へ捧げられた一連の賛美歌がサイト-001の外にて聞こえた。 |
2018/03/31 | SCP-2317のオブジェクトクラス再割当てへの投票。9-4で可決。 | 収容エリア-179の外にて数個の次元の割れ目が発生。これらの割れ目はカッパ-エリケシュ宇宙と不明な次元への開口に交互に切り替わった。この不明な次元は内部からの多量の赤い煙と不明な数の人間の叫び声の発生が特色である。 |
文書7: 以下は1972年の、緋色の王の子らのメンバーであるアリアドネ・カートライトによる「古き秩序への宣言」の抜粋です。カートライトの著作はSCP-001に関与する異常なグループ間での一般に出版されていない印刷物としてしか見出されていません。このような断片は、モントーク博士により調査の過程で回収されています。
現代社会の罪を理解することは重要である。と言っても我々は前現代を賛美しようというのではない。苦しみはまさに実在し、大きなものであった。我々は過去を、メイポールの周りに村人が踊り、羊飼いが喜びに満ちた無政府状態に生きていたような、美しい理想郷の連続であったとみなす陥穽に陥るべきではない。
過去は野蛮であり、しかし同時に現実的でもあった。それは本当は"前現代"的でもなかった。それはただ歴史家たちが定義しただけのものだ。彼らは彼らの近代化の理論に執着し、現代の西洋世界への単一の進行のみが唯一の進歩の形式であると考え、他の生活様式は想像上の歴史の初期地点か何かで行き詰まったとみなした。これらは全くナンセンスである。過去の人々は世界をそれが真にあるがままに見ることができた。我々のうち、王の軍勢に加わった者たちはこれを全くの真実であるとみなしている。我々が生きるこの世界では何かがとても、とても間違っているのだと。我々の建物は石灰化し、剥がれ落ちる凝土コンクリートで作られ、一方我々は日々仕事へと、我々自身のシステムを維持する目的のみに作られた人生へとよろめき歩く。
しかし他に生きる道はない。社会主義、無政府主義、労働組合主義 —、これらすべて、空想を組み合わせたものより少しましというものに過ぎず、自らを取り巻く世界へ時代遅れの偏見を挿入しようとする卑小な者たちの脆い考えである。違う。唯一つの、もうひとつの生き方がある。血の法を掲げるために、凝土の法を取り下げるのだ。
我々は死とは何かを学ばなければならない。奴隷となるために — 我らの主人から、哀れみも良心の呵責もなく、真に、冷酷に奴隷化されるために。我々は唯一の目的へと駆り立てられることとは何かを学ばなければならない。我々の無力さを真に理解するために。我々は神々と暗闇の世界に恩情により生かされる、嵐に舞う愚者の種族の塵芥である。我々は現代性と前現代性を、その分析と冷笑的な観察とともに捨て去らねばならない。ただひとつの理がある。混沌の理だ。人類のために!命のために!緋色の王のために!
文書8: 以下はロバート・モントークとPoI-3172間のインタビューです。
日付: 2018/04/29
インタビュワー: ロバート・モントーク博士。
インタビュー対象: PoI-3172
場所: Site-713、インタビュー室2。
<ログ開始>
モントーク博士: こんにちはディペシュ。
PoI-3172: こんにちはモントーク博士。インタビューは前回で終わりだと思っていたが……?
モントーク博士: プロらしからぬ振る舞いをして済まなかった。君が……デリケートな話題に触れたもので。
PoI-3172: いいさ、私ももうああいうことはしないように務めるよ。
モントーク博士: 始めてもいいか?
PoI-3172: 今回はな博士、私から君に質問がある。
モントーク博士: ほう?まあ前回より悪いことにはならないと思うが。
PoI-3172: では、緋色の王の起源とは何だと思う?
モントーク博士: 多くの理論がある。冥府のクリーチャー、古からの放浪者、アラガッダの住人……
PoI-3172: それらは全て……私は嘘をつくつもりはない。だが経典は変わった、知識は変わった、そして過去そのものも、その後に続くものにより変わった。
モントーク博士: 彼が過去を変えたのか?
PoI-3172: 違う、彼の過去が彼のために変えられたのだ。だがそろそろ、君に何かを話してもらわなくてはな。これはギブ&テイクであるべきだ。
モントーク博士: 違うぞ、これはそういう —
PoI-3172: なぜ君はモントーク手続を承認した?
数秒間の間がある。その間モントーク博士はPoI-3172を見つめている。
PoI-3172: 気を悪くしたなら謝るよ。
モントーク博士:それは君とは関係ないとはっきり言ったと思うが。
PoI-3172: まあ聞け、私がわからないのは、それがうまくいくはずはなかったということだ。財団がやったようなやり方では —
モントーク博士: それを議論するつもりはない。
PoI-3172: ヤコブに何が起きた、博士?君の弟に何が起きた?
モントーク博士: このインタビューは —
PoI-3172: ああ、オーライ、オーライ。すまなかった。君を傷つけたいわけじゃない、博士、本当さ。私はただわかりたいだけだ。ただ — そいつがうまくいったはずはない。子供はもう生まれているはずだ。
数秒の間。
モントーク博士: 私……は怒っていた。それを書いたとき。プロらしくなかった。
PoI-3172: 我々がヤコブを連れ去ったと思ったのか?
モントーク博士: ああ、一体他にどう考えればよかったと思うんだ?私は君たちの拠点を調べることからはじめ、発見に次ぐ発見をした。そしてあいつは消え — いや、この話は関係ないだろう?
PoI-3172: オーライ、オーライ。聞いてすまなかった。だがそいつが科学的な決定でなかったことだけは確かだろう?そいつは一瞬の怒り、激昂、憎しみでなされたのだろう?
モントーク博士: 私は — 違う、あの少女、私はそんなつもりでは —
PoI-3172: だが君はやった、博士。すまないな、古傷を掘り起こしたいわけじゃないんだ。
モントーク博士: ではなぜだ?
PoI-3172: ただ私は理解したいだけだ。そして今理解したと思う。
モントーク博士: どういうふうにだ?
PoI-3172: 君は……いや、どこから話せばいいのかわからないが、順を追って話させてくれ。ここ数ヶ月、君の部門はそれほど活動的ではない。蛇の手がゲートを開こうとしてからな。そうだろう?君の手続はあの少女が出産するのを防いでいる。遊牧民たちは彼らの終わりなき戦いを続け、槍は焚書者たちにより封印されている。そして貪るものは — そう、今君たちが貪るものに本当にできていることは何もない、そうだろう?
モントーク博士: SCP-2317はSCP-001ではない。
PoI-3172: SCP-001ではなかった。だが今はそうだ。君は皆にそうだと言ってきた。私が財団のヒエラルキーを正しく理解しているなら、厳密に言うと、君はそうであると考えるように仕向けられたんだ。結局、君はレベル4に過ぎない。
モントーク博士: 何を言いたいのかわからない。
PoI-3172: あらゆる文化を通じて、あらゆる街、民族、文明で、君は緋色の王の概念に出会ってきた。いつも同じだ。燃える王冠と何か古風な女性性への恐れに根ざしたエトスを纏った赤い皇帝。彼はいつも同じだ。全てを消費する恐ろしい怪物。だがとても理解しやすい。強姦と火と古い血の儀式で満たされた、闇の巨大な悪なるもの。こんなものが奥底に隠されたものだと言っても、気味が悪くはないだろう?君自身が私に語ったように、君はもっと偉大でもっと幽かな怪物たちを見てきた。だがいつも、いつもそこには消えない恐怖と、その後ろに立つこの隠された、だが見ればとてもシンプルなものだけがある。
モントーク博士: 君は私が気味悪く感じた事をわかっている。私は君に、自分自身と同じくらい語りかけてきた。だが私は随分前に、この世界を道理にかなったものとして理解するのをやめたんだ。アノマリーは人のルールには従わない。私は世界の再定義を始めるには歳を取りすぎてしまった。
PoI-3172: だけど君の覚えていないこと、知らないことはこれが唯一の過去ではないってことだ。緋色の王はかつては何かとても違ったものだった。彼は支配者ではなかったし、常に赤かったわけでもなかった。彼は農民たちを働かせ続け、彼の公正な飢饉の恐怖を掻き立てる風の中の囁きだった。彼は人間の力の誤りを示し、我々を超越して存在する、神々と悪魔の世界の生得的な知識だった。彼はリズムも理由もなく、だが我々を超越する超自然の冷たい無関心をそなえた、飢饉の冷たい空腹感だった。そして、十分な信仰を与えられれば、彼は貪るものにもなる。彼は真実のクリーチャーだ。
モントーク博士: 君は — 彼は形を変えると言いたいのか?ある種の神性から別の種へと?
PoI-3172: 緋色の王は神性ではない、博士。緋色の王とは思想だ。
モントーク博士: な — 何だと?だが彼は現実 — 物理存在だ!我々は彼を見 —
PoI-3172: 私はこれ以上話すことはできない。今はまだな。君は凝土の法について何か見つけたか?
モントーク博士: ……いや、少しだけな。緋色の王の信者と評議会の決定の間に不穏な相関があることを見つけた。
PoI-3172: なるほど。
モントーク博士: だがそれ以外には全くない。痕跡を追っていくつかの無くなった文書を見つけたが、見つけたもの全てが手詰まりになった。財団の起源についての文書、そして頭のおかしい昔の子らのメンバーが現代社会をいくらか批判している文書だ。
PoI-3172: 思うに、カートライトか?それならそうだろうな。
モントーク博士: 君は極端に苛立たせる人間だな。なぜただ物事を適切に話すことができない?
PoI-3172: 私は君の囚人だ。君は私の人生をかけた仕事を台無しにした。なぜ私が君に協力しなくてはならない?
モントーク博士: 君は退屈している。君はこの件について何も考えてない。そして君は私を苦しめることを楽しんでいるのだろう?
PoI-3172: 楽しんでなんかいないさ。
モントーク博士: 緋色の王は思想だと?一体それが何を意味しようというのだ?
PoI-3172: 君は今やいい所まで来ているぞ、博士。真実に近い。君の中にそれが見える。君は理解するだろう。そしてその時、君は私を理解するだろう。私がしてきたことを、なぜ私はしたのかを。なぜ私は子らのメンバーなのか — いや、だったのかを。私にはわかる。君には好奇心がある。
モントーク博士: 君には悪魔崇拝者の素質があるように見えるよ。
PoI-3172: 気をつけろ、博士。咆哮の法が君を破壊するかもしれんぞ。
モントーク博士: 相変わらず謎ぶっているな、スピヴァク。よし、続きは次にしよう。
PoI-3172: ごきげんよう、博士。
<ログ終了>
文書9: 以下は1953年のベンガル語の作品であるラーラ・ラーヤLāla Rājāの抄訳です。作品は一旦行方不明となっており、モントーク博士により調査の過程で再発見されました。
そしてイギリスの支配が続く限りそうだった。一欠片また一欠片と、何かが彼らとともに来はじめた。はじめには影として、赤きものが。しかしそれが全てではなかった。欠片ですらもなかった。それは一欠片ずつ、ゆっくりと這い上がる何かだった。それは我らが国の影に出会い、ネズミたちは水田で血を流し、そしてそれは形を取り始めた。
それは心を持たなかった。最初には。それは現実のものとなるには不十分だったが、やがてそうなるものだった。それは一連の心象であった。それはヒンドゥーの儀式の古代の魔術師の上に設置された、何かのキリスト教の悪魔の心臓から取られた血の赤色の皮膚の一片であった。しかしそのときそれは分類され、記述され、適切な科学用語で描写された。それはそのようなものではなかった。互いに混ぜ合わせることを意図されていなかった魔法、技術、帝国に属するものたちが、全て一体となり、世界の法則を曲げ始めた。
ヨーロッパが我々の世界に更に更にと押し寄せ、我々が"文明化"されることを知る間、我々の宗教も変わり始めた。アナンタシェーシャは巨大な蛇の姿をした古代の移り気な神ではなく — それは記憶喪失薬amnesiacs5を産生し、認識障害を起こすと記録された、科学的には通常でない大きさのウツボなのだった。英国人たちは分類も、説明も、ピンで留めた蝶のように殺すことのできないもうひとつの生き方にも十分心地よさを感じられなかったので、我々は自身がそれまでも、そのときもヒンドゥーであり、そして我々全ての多様で混合した信仰は、全てひとつの理想のバリエーションであったことに気づいた。
しかしその状況の下には怒りが隠されていた。我々が彼らの言語や彼らの分類で自分たちを表現する間にさえも、彼らへの我々の苦闘の中にさえも、確かさへの、現実感を求める叫びがあった。それはタゴールやその他の、我々の文学の中に含まれていた。それはアッダ6や事務員としてのつまらない仕事の中に含まれていた。果てしない、古いものと新しいもの、現代性と前現代性が相克する緊張。そしてそれらの断層線の中に、激怒と憤怒の叫びの中に、古いものへの、新しいものへの憎しみの中に、ほかの何ものでもなく、咆哮の法のみへの混合した服従が立ち上がったのだ。ラーラ・ラーヤが立ち上がったのだ。
なぜこのようになったのか?彼は何者なのか?失われた時代への叫びであろうか?彼は赤い空を見上げるイギリスの農夫であり、頭を剃って泣くベンガルの未亡人であり、他者の心臓を切り出すアステカの司祭である。彼は現代性が全てを変え、やがて現代自身の破壊へと至る間に、変わってしまった全てである。彼は抵抗であり、怒りであり、現在存在する全てを肯定するもの全てへの憎しみである。
我々は良きもの、悪しき者、そして全ての他のものの混合である。幸福、言葉の美しさ、苦闘と胸の痛みとその現実全てである。しかし今や我々はそのほぼ全てを機械へと失ってしまった — 憤怒を除いて。それが残された全てである。そしてそれゆえに王は現れた。破壊されたもの、忘れられたもの、そして抑圧されたものの咆哮。彼の唯一の目的は破壊し、強姦し、不具にし、奴隷化し、そして笑うことである。その王の笑みを前に、彼の敵は咽び泣くのである。
彼の目的全ては現代性によって与えられるがゆえに、彼は現代性のないところには存在できない。彼は血の神であり、脊椎と骨と腱の神であり、この世界の住人に現状が良いものではないことを知らしめるものである。それは残酷であり憎しみに満ち、そしてそれは良く、正しい。現代性とは罪であり、そして彼は我々がもう一度あるべきように — 寒さの中で飢え、そしてとても、とても恐れながら — 生きられるようにするための修正である。
文書10: 以下のノートはモントーク博士の個室で発見されました。これはモントーク博士がラーラ・ラーヤを発見して程なく書かれたと考えられます。
SCP-001は現代と前現代の境界で創出された概念存在である。
緋色の王は血と骨と腱の存在である。彼の支配は正しく、闇の正義である。
SCP-001は 生物、皇帝概念存在として顕現するよう意図された物理存在である。
彼は恐怖と、憤怒と炎を滴らせる剣とともに現れる
SCP-001は古代のトルクメニスタン起源である。元来は古代スキタイの神格であり
彼らは弓を背にし、屠るたび笑い、蹄を轟かせ進軍する
SCP-001は科学的現象である。それは分類されるだろう。それは収容描写されるだろう。それは異常な実体として理解されるだろう。他のすべての
しかし彼は割れ目に、断層線に存在する。彼は描写を養分とする。科学を、客観性を、そしてその質を養分とする。七つの鎖!七人の花嫁!七つの封印!緋色の王のた
私はロバート・モントーク、レベル4研究員、SCP-001プロジェクト主任。私は研究者。私は厳格で、合理的な意思を課してきた。私はコントロールできている。私には力がある。私には力がある。
私は暗く曇った空を見上げ、全能の神を恐れて震えるもの。私は自由だ。私は鎖に繋がれ私は博士私は子供
文書11: 2018/05/22、PoI-3172の収容チャンバーに巨大な亀裂が発生しました。亀裂は他の次元へと開いているように見えました。多量の赤い煙がそこから噴出しているのが見え、内部から不明な人数の人間の叫び声が聞こえました。
財団の職員はPoI-3172の収容チャンバーに入れないことが判明しました。PoI-3172は職員にモントーク博士しかチャンバーに入れず、他のものとは会話しないと告げました。若干の議論のあと、モントーク博士は収容チャンバーに入りPoI-3172にインタビューすることを許可されました。以下がそのログです。
日付: 2018/05/22
インタビュワー: ロバート・モントーク博士。
インタビュー対象: PoI-3172
場所: サイト-713、ヒューマノイド収容チャンバー77。
<ログ開始>
モントーク博士はチャンバーに入りPoI-3172に近づく。PoI-3172は奥の壁の稲妻型の亀裂の前に立っている。赤い光と煙が亀裂から出ているのが見える。
モントーク博士: こんにちは、ディペシュ。
PoI-3172: こんにちは博士。
モントーク博士: いつもフォーマルじゃないか。最後までな。質問してもいいか?これは……何だ?
PoI-3172: 注目してくれという嘆願だ、概ねな。私はもう一度君に会いたかった。そして私の要請は拒否された。何週間もな、博士。
モントーク博士: 私には……私には君に聞きたいことなどない。
PoI-3172: だろうな。君は真実を推理した。そうだろう?
モントーク博士: そうかもしれんな。
亀裂は僅かに縮む。
モントーク博士: それは — ただ —
PoI-3172: これは状況に応じて広がったり縮んだりする。行動が違えば意味も異なり、すなわち違った影響となる。全ては文脈に依存する。他の子らは決してこれを理解しなかった。だが — そう、彼らは本当には何も理解していなかった。彼らは我々は皆悪魔崇拝者で、破壊に突き進んでいると思っていた。私だけが要点を理解していた。
モントーク博士: 私も理解するにはしばらくかかったよ。
PoI-3172: 私も君が理解できるとは思わなかった。
モントーク博士: 教えてくれ — 手続は意味があったのか?我々が何をしようが、関係があったのか?
PoI-3172: 誕生を防ぐためには、それは何か恐ろしいもの、何か苦痛と激怒と憤怒の中で表現された邪悪なものでなくてはならなかった。だから有効だった。それは決して科学的な手続を規定するための真摯な努力ではなかった。君の役職らしくもない。それは客観性に見せかけた純粋な、全くの憎悪だった。君は王が君から弟を奪ったと思い、王を害そうと思ったのだ。だが勿論、そうはならなかった。そして君が毎日、あの哀れな少女にしていることは、ただの残虐行為と殆ど変わらない。だが効果的な残酷さだ。詳細は重要ではない。問題は意図だ。それが全てにとって重要だ。
モントーク博士: と……止めなくては、私はそんな —
PoI-3172: そしてどうなる?財団にはわからんよ。彼らは決して咆哮の法を理解しない。
モントーク博士: 私が説明すれば —
PoI-3172: 彼らは想像できんよ。これは彼らの現実についての理解を越えている。だが君ならできるかもしれない。では、博士、説明してくれ。君はなぜ緋色の王が存在すると思う?
モントーク博士: それは、現代性と前現代 —
PoI-3172: 違う。SCP財団が存在するからだ。現代性は彼が形作られる助けとなり、彼の怒りの輪郭を規定する。だが彼が具現化するのは現代性が彼の王国に干渉し始めたときだ。現代性は君の存在にある。君の肉体がまずあった。君は、君の啓蒙された理性の哲学に沿わない全てを、閉じ込め、隠し、分類し、解明するために生まれた。全ては理解され、説明され、妖精や神から、シンプルで理解しやすい論理と事象の塊へと変形されなくてはならなかった。忌まわしい。そしてそんなことは永遠に続かない。何かが生まれなくてはならなかった。何かが反対側に立ち上がらねばならなかった。
モントーク博士: ……我々が最初なのか?本当に?ボーヴォワールは — これが全て我々の過ちなのか?
PoI-3172: それは場合による。知らず知らずに何かをしたら、それは自分の過ちなのか?
モントーク博士: わからない。
PoI-3172: 私にもだ。
モントーク博士: 儀式について思い出したよ。皆その対比があった。
PoI-3172: 王はその緊張無くしては存在できない。我々にはあの現代性のシンボル、あれらの純然たる灰色のイメージが、まずはじめに亀裂を作るために必要だった。あれは完璧な計画だった。
モントーク博士: だが君は失敗した。
PoI-3172: そうだ。
数秒間の間がある。
モントーク博士: 財団は1820年代に創設された。闇から世界を守るために、勇気ある人々を集めて結成された。か — 確保し、収容し、保護するために。それが我々の目的。正常性には美徳がある。君には理解できないと思うが。世界は理解できる。真実、道理、合理性。啓蒙。これらが我々の基礎だ。これらが我々を客観的にさせるのだ。
PoI-3172: 君は本当にそれを信じているのか?
モントーク博士: そうでなくてはならない。
PoI-3172: 君は科学者だ。どんな科学にも、客観的に真の発見と言えるものはないことを知るべきだ。疑いの余地、過ちの余地は常にある。
モントーク博士: だがそれはただ人間であるからだ。我々の精神には欠点があり、完全な解釈はできない。だが我々が観察したものは信頼でき、現実だ。そのもとに、法則、基礎が —
PoI-3172: 基礎は7という数字で規定される。七つの鎖、七人の花嫁、七つの封印、七、七、七……私の人生全体がその数字で規定されてきた。それが私を苦しめる。終わりなき七角形が私の目の裏で舞い続ける。我々は生きることを許されていない、人となることを許されていない。それは現代性の贅沢だ。だがそこには冷たさと、軋む傷が — 完全な人となれるようにするための冷たさと傷がある。七、七、七。風の悪魔が咆哮し続ける中、寒さの中で七人の少女は侵略者に奪われる。だから緋色の王は七人の花嫁を持たねばならぬ。
モントーク博士: 現代性は常に冷たいわけではない。奴隷制よりは残酷ではないだろう。
PoI-3172: だがそれが何になる?それが唯一つの目的なのか?ただ残酷さがないことが?平和と優しさがあることそれ自体の意味は何だ?それで空虚な墓場に死んで落ちる前の数十年を笑って過ごせるのか?有限な自己の肯定。私には理解できない。決してできなかった。そう試みなから育った。私もそうなりたかった、君のように。だが社会はただ私を嘲り見下すだけだった。それは冷たさではないかもしれないな、博士。冷たさは客観性にも見える。だが決してそうではない。なぜなら客観性など存在しないからだ。ただ叫びと狂気と目的への渇望があるだけだ。
モントーク博士: 君は本当に真実などないと考えているのか?
PoI-3172: 真実はある。だが決して……究極とはならない。究極の現実などないのだよ、博士。完全性などない。世界がそれに則り作動する確実な法則などない。ただ我々が理解したものがあるだけだ。我々が結びつけ、粗雑に粘土で形作ったものがあるだけだ。
モントーク博士: そんな自省は全て……
壁の亀裂が大きくなる。叫ぶ声が聞こえる。
モントーク博士: そこに彼以外には誰がいる?
PoI-3172: なんとも言えないな。彼の七人の花嫁、忠実な遊牧民、古代の従者、さらなる現実性のはざまで創造されたもの。私にはもはやわからない。結局はすべて壊れるのだ。もはや私に見えるのは炎だけだ。私には世界も、神も、王も見えない。炎以外何も見えない。他に何がある?現実の存在など、全て平凡、全て陳腐だ。私に見えるのは、燃える脆いものから生成された我が王の微笑みだけだ。それは強い痛みをもたらす光景だ。私の目の奥で、とても痛いんだ。それは燃えて、消費されていき、そして決して、決して終わらないんだ。
モントーク博士: ではなぜ彼を崇拝するのをやめないのだ?
PoI-3172: 私は脆いものだった。私は冷たさと闇の中で生まれた。とても若い頃には、物書きになろうとした。カルカッタの経済で、物々交換し、飢え、生き延び、色々なことをやろうとしたよ。我々は皆そうだった。君たち西洋人が、我々の忘れ去られた富で肥え太っていく一方でね。私の中で狂気が育っていった。引き裂かれていく国では、意味などなかった、目的などなかった。私は神に帰依してみたが、彼らは沈黙していた。私は合理主義、無神論に縋ったが、それらはただ空虚で非現実的だった。なぜならそうなるのが道理だからだ。なぜなら —
モントーク博士: やめろ。
PoI-3172: 君はこれを聞かねばならない。
モントーク博士: わ — 私は聞きたくは —
PoI-3172: だめだ。聞くんだ、ロバート。君は緋色の王が何かわかっている。彼は渦を巻くアノマリーたちの創造物だ。世界中のとてもたくさんの、異なった時代からのな。彼は失われた世界の、前現代の記憶だ。現代性、新しいもの、人間中心主義、そして我々の日々の存在を示すあざ笑う冷たさへの憎しみという形で顕現するように作られている。調和しないアノマリーと壊れゆく我らが精神の完璧なバランスから鍛造されている。彼はこの圧倒的な、避けられない緊張から作られた実体だ。冷たく、灰色で、目的なき新しいものに出会ったときの古い世界の咆哮のものだ。彼は我々の堕ちた過去の復讐だ。彼は捨て去りながらも偏愛する世界の中の、古きものの概念だ。
モントーク博士: 彼は現代と前現代の狭間の緊張感が顕現したものなのか。
PoI-3172: そうだ。彼は2つの調和しない世界の間の断層だ。そして結局は、彼は全てを破壊できるだけだ。そしてそれこそが正しいことだ。
さらに数秒の間がある。
モントーク博士: これからどうする?
PoI-3172: 私を撃って、彼らに私の死体を取らせるんだ。そして自分の世界へ帰るがいい。もはや長くは保たない。王が来ることは避けられぬ。君はそれを止めるために何かをするだろうが、うまくは行かないだろう。危機を迎えるには、財団が抱えるものはあまりに多い。財団は自らの気風を保つことにあまりにこだわりすぎている。彼らは世界をコンクリートの灰色で覆い、王は灰から立ち上がる。子らは指一本すら持ち上げる必要もない。
モントーク博士: 信じないぞ。
PoI-3172: 信じたいものを信じればいい。さあ博士、そろそろ時間だ。
モントーク博士は火器を取り出し、PoI-3172に向ける。
モントーク博士: もう一つ — 聞け、もう一つ話してもらうぞ。ヤコブをさらったのはお前か?
PoI-3172: いや。我々は彼が誰なのかも —
モントーク博士はPoI-3172を終了する。亀裂は消える。
<ログ終了>
文書12: 以下はO5評議会投票#4985の記録です。
評議会投票#4985、"SCP-001の収容を改善するための財団の運営手続についてのロバート・モントーク博士の提案への賛意についての投票。"O5-13により2018/05/30に提起。
賛成 | 反対 | 棄権 |
---|---|---|
O5-2 | O5-1 | O5-4 |
O5-6 | O5-3 | O5-5 |
O5-7 | O5-8 | |
O5-10 | O5-9 | |
O5-13 | O5-11 | |
O5-12 |
投票結果: 拒否。
O5-1による声明: モントーク博士の研究はその多くが謎を解き明かすものであった。彼の研究は確かにここ数年、財団がどのように運営されてきたかについての重大な懸念を提起してきた。しかし我々は彼の提案は過剰であると感じるものである。
財団の精神とは、包括的な理解である。客観的な世界の真実というものの誤りやすさというポストモダン的な観念は、学術的な世界では総体的によく知られているが、財団は厳格な科学に基づいた分析と疑いようのない真実に基づき、常に第一に応用に関心を寄せるものである。我々の意図と手法を変えることは、率直に言って、不合理な提案である。我々の義務は現在も、これまでも、光の中で生きる者たちを守るために闇の中で死ぬことである。もし我々が何が闇で何が光であるかという考えを放棄、もしくは再定義し始めたら、急速に圧制、非合理、そして我々のミッションの完全な放棄へと堕落する危険がある。このようなことを起こしてはならない。我々は財団の真髄そのものとは何かを再定義することに資することはできない。
我々はモントーク博士に、その仕事について感謝し、従ってSCP-001の分類をSafeにアップデートする予定である。SCP-001は未だ危険ではあるが、その収容はもはやかつてのように難しくはない。もしモントーク博士の情報が正しいなら、財団はSCP-001の収容については単にさらに無干渉主義的態度を取るべきであるということは明白である。我々は我々にとって最も古いアノマリーとの収容に関する関係が、今後より生産的となることを期待するものである。
私は彼らのブルドーザーが来るのを、隠れて見ていた。最良の土地は木々にはもったいない、と彼らは言った。彼らは木々を裂き、根を切り、テーブル、椅子、その他の単調な物品を作るために取り去った。そして何週間も、何ヶ月もかけ、彼らは土地を平らにした。彼らは土台にコンクリートを流し込んだ。それは秩序だった流儀で均され形を整えられ、正確な四角形へと切断され、正確に並べられた。
コンクリートの大いなる壁がいくつも立てられた。大きさが正確に揃えられた窓が付けられた。他の部分は規格化された煉瓦で埋められた。建設に従事する者たちも、他の労働者たちも、効率的で正確に長く働き、細部を、調度品を、正確で抽象的な模様の壁紙を、そしてその他の全てを満たし、施設を作り上げた。
ついに、それは完成した。一本の新しい木が、中央の中庭のそのまた中心に植えられた。気まぐれや娯楽の意識から発想されたのではなく、むしろそれらを、灰色の中心にある現実に添えた少しの自然感覚の中で与えるために。
私は見て、そして彼ら — 我々 — が成したことについて考えた。彼らが望んだ世界について考えた。彼らの強さの欠如について考えた。私には何が善で、何が悪かはわかっていた。そしてどちらにも、それを見出すことはできなかった。私は藁で作られ、濃いペーストで互いに継ぎ合わされ、何百も、何千もが同じ方法で、何千もの同様の店で売られる人々の虚ろさについて考えた。我々が失ったものについて考えた。そして私は咆哮した。
サイトが完全に稼働する前日の夜に、私は木々の種を掘り起こして取り替えた。私が作った種に。サイト-231の上には血と骨と腱のものが立ち上がるだろう。滴を垂らし、欲望の目でものを見、自らの腹を満たす木。それは奇妙な炎を滴らせるだろう、そしてその炎は燃やし、同等に温めもするだろう。そして彼らはそれを見上げ、取り返しがつくうちに、声を聴くべきだったと悔やむだろう。
この途が間違っていることはわかっている。だが少なくともそれは途なのだ。
思索と祈りとともに、
ロバート・モントーク、緋色の王の子。