生命反応検出。
ミーム接種を確認。
ようこそ、監督官。
アイテム番号: SCP-001
オブジェクトクラス: Maksur1
特別収容プロトコル: 関連する異常オブジェクトにおいて、SCP-001に関する情報は各オブジェクトの文書から除去されます。壊れた神の教会との繋がりに関する情報は残すことが可能ですが、アイテムの起源に関する情報は除去または曖昧化されます。
不活性化したSCP-001構成部品は現在の場所に維持され、この海域ではいかなる船舶航行やダイビングも認められません。民間人によるSCP-001の発見報告は抑制され、機密保護のために記憶処理が施されます。SCP-001構成部品の積極的な捜索を試みる壊れた神の教会の関係者は、財団の拘束下に移して尋問してください。SCP-001に関する情報は、物理的か電子的かを問わずに没収され収容されます。
不活性化したSCP-001構成部品は無生物的状態にあり続けると考えられています。しかしSCP-001が自発的な蘇生を開始した場合に備え、近隣のサイト-27、サイト-44、サイト-90、サイト-101の全ての活動中の機動部隊が積極的対抗手段として割り当てられています。現代の世界においてこのイベント(現在のところ001-神格化イベントと指定)が発生した場合、現在の情報抑制手段は不十分だと考えられています。001-神格化イベントはSK-クラス"虚構の破綻"シナリオ2に続くXK-クラス"世界終焉"シナリオを引き起こすことが強く示唆されています。
いかなる場合においても、現存するSCP-001の活性部品をSCP-001の不活性部品から20キロメートル以内に持ち込まないでください。
説明: SCP-001は一連の異常物品の総称です。かつてこれらは、壊れた神の教会の信者によってメキシコ、ラパス近郊で1942年に組み立てられた単一の巨大な機械的実体でした。アイテムにはSCP-217、SCP-1139、SCP-882、SCP-629の複数の内部部品3等が含まれます。完全な一覧は こちらを参照してください。
教会の信者は自身の神を復元するために様々な異常オブジェクトを組み合わせました。伝聞によれば、起動したSCP-001は自身に金属物体を統合しながら、積極的に他の異常オブジェクトを探し始めたとのことです。SCP-001と、その完成の結果として発生した「001-神格化」イベントはメキシコ西部における大規模な環境変化を引き起こし、これは現在までに最も大規模な記憶処理を必要とした事件の1つとなりました。イベントの後、SCP-001の活性部品は封じ込めのために財団サイトに移送され、非活性部品はカリフォルニア湾の底、座標23.807269, -108.418369の地点に残されました。
補遺001.01: SCP-001に関して収集された情報
ホルヘ・カスティーヨ神父による1945年8月の陳述の転写
彼らが心臓を発見した後……最初に私に接触してきたのは、多分フェルナンドだったと思います。彼らの説明振りと、その目に宿る情熱に私は魂を奪われました。そして私は理解しました。彼らはついに成し遂げたのだと。
妹の堅信礼を済ませた後、週末にアントニーとサルバドールに会いに行きました……彼らにそれを見せられた私は面食らいました。それは歯車、ピストン、時を刻む時計仕掛けの断片、潤滑された機械部品の塊に過ぎませんでしたが、それら全ては動力源もないのに律儀に一塊となって駆動していました。彼らが説明したように、私はその中に心の存在を感じました。
それは私に語りかけてきました。あなたと私が互いに話しているような形ではなく……イメージや、感情の形で。そして痛みです。それは激しい痛みを感じていました。それに生命を与えた火花のようなものが、それがかつてどのようなものであったか、どのようなものでなかったかを気付かせていました。それは、もう一度完全な形に戻る、という欲望だけを抱いていました。
「欲望」と言うと多分言い過ぎですね。「衝動」という方が適切でしょう。その生き物の中の何かが、それを何も考えずに確固たる結末へと突き進ませていました。彼らが私に披露した生き物は、私が発見して祝福した他のアーティファクトとは違っていました。これは違っていたんです。その中の何かが間違っていました。そして、彼らがあんなことをしてしまうまで、私はそれが何か分かりませんでした……
私はサルバドールに、これは正しいことではないと、あの浜辺にそれを戻せと懇願しましたが、彼らは耳を貸そうとしませんでした。私がそこを離れる前、それは動き出しました。体を大きく左右に揺すり、それはついに歩き出しました。それはレンチに向けてよろよろと進み、レンチをその体に取り込みました。彼らはこう言いました。「我らの神は壊れてなどいない!」
彼らの姿を見たのはそれきりです。
フランシス・ボリンガーへの1946年のインタビューの抜粋
それは単語や、いかなる形の言語も使っていませんでした。私達がその周囲にいれば、それが金属音を立てると同時に……心にイメージや概念が浮かぶでしょう。あなたは、心の中に完全な形で何か考えやアイデアが浮かび、それを言葉にしたらどう感じるかが分かっているにもかかわらず、それを表現する言葉をまだ考えている、という状況を経験したことがありますか?ちょうどそのような感じでしたが、ただ、それは完全に人間と異なる心に由来するものでした。それは真に神の言葉です。
異常事件課 (UIU) のエージェント、トリクシー・シルバへの2007年のインタビューの抜粋
そこには何匹かの狼がいたわ――待って、何のこと言ってるか分かってるわよね?彼らは……境界線イニシアチブのために働く、狩人みたいなものよ。彼らはサンタ・マルガリータの教会の近くで私達と対峙して、私達がかつてアブラハムの宗教に属する物品を引き渡した時のように、私達が壊れた神の教会から収集した物品を引き渡すことを求めたの。
私達はそれを引き渡すべきかどうか協議したわ――私達のHIに対する対応はちょっと一貫性がなくてね。最近の記憶では特にそう。私達は地元の壊れたる教会の信者とは仲良くしてたけれど、狼はもっと……ええと、もっと攻撃的でした。私達は物品を見渡して、そうしている内にあの女性が歩いてきたの。彼女がどこから来たのかは知りません。ヒッピーみたいな格好で、髪は細い鉄の鎖でした。終始よそよそしい雰囲気を出してたかしら。彼女の眼差しと異常な微笑みから、彼女がまるでそこに居ないかのような感じを受けたわね。
彼女は私達の持ち物を見渡して、これが欲しかった、とだけ言った。ええと、私はそれが本当は何だったのか知らないのだけど、カチカチ言ったり唸ったりする鉄の箱で、私が拾い上げると端から細い光線が出てきた。思ったよりも軽かったわ。なぜこれが重要なのか尋ねると、彼女は、説明するより経験するほうが分かりやすい、とだけ言ったの。
彼女は目を閉じて頭を下げた。彼女はそれ以上喋ったり動いたりしなかったから、私も同じように目を閉じた。彼女はその額を、中心から少しずらして私に近づけ、とても変な格好だけど、私達はしばらくそうして立ってた。そして、彼女は突然顎を引き、私は少し引っ張られた。
私の下で世界が崩れ落ち、私は落下した。心に何かが閃き、以前は噛み合っていたけれど、今は離れてしまっている2個の歯車のイメージが浮かんだ。身を屈めた時みたいに背骨に突起が浮き出るのを感じ、惑星だった多次元の歯車に沿ってステップを刻み、重力の鎖に繋がれて太陽の炉を周回し、無限に巻き戻されるバネの力で、油塗れの宇宙を凄まじい速度で飛び抜けて……
……ご、御免なさい。そういう経験だったのよ。いえ、宗教的体験、というわけではなかったのだけれど……ええ。彼女はもう一度箱を拾うよう言ってくれたのだけど、以前よりかなり重くなってる感じがしたわ。本当に重くなっていたかどうかは分からないのだけれど、もっと……重要になった感じがしたの。私は彼女にそれを引き渡して、狼やチームメイトや上司には何も言わなかったわ。
補遺001.02: 壊れた神の教会から破門された司祭、ドローレス・ランドール神父への1945年6月のインタビュー
[無関係な対話を削除]
ウィリアムズ: それでは、あなたが先に述べた心臓の件ですが、その発見時にはあなたも一緒にいたのですか?
ランドール: いいえ、全く。その時点で私は国外におり、パナマで新たな使命を遂行していました。私は事後にエゼキエルから聞いただけです。
ウィリアムズ: エゼキエルとは?
ランドール: ブマロのエージェントの一人です。教会の指導者となる前から、ロバートは彼らのような者を多数、周囲に侍らせておこうとしていました。彼らは神に周波数を合わせ、その存在を感じ、それと話すことができるのです。エゼキエルはいくらかの価値のあるアーティファクトを発見し、その後にブマロは彼を受け入れました。これらのエージェントは同様に、身体改造の最初の実験台となりました。想像がつくとは思いますが、その多くは死亡しました。
ウィリアムズ: しかしエゼキエルは死ななかったと?
ランドール: はい。彼はブマロと非常に密接な関係にあり、彼がエゼキエルの健康を危険に曝そうとしたかどうかは分かりません。いずれにせよ、エゼキエルは神との対話に身体改造を必要としませんでした。彼はただ……その能力があったのです。
ウィリアムズ: それで、エゼキエルは心臓に対して何をしなければならなかったのですか?
ランドール: あなたはエイブリーから、彼らがアーティファクトの備蓄を持っていたことを聞いていますよね?エージェントの一人がそれらに触れて何かを感じた場合、それらはその残りと一緒にラパスに輸送することになっていました。そのほとんどは無価値でしたが、何か重要性のあるものは毎日のように発見されていました。選別者――あなた方が何と呼ぶかは知りませんが、彼はネパールの近くで発見したエージェントの一人でした。腱や靭帯などの部品は全て揃いましたが、それらは全てただの部品に過ぎませんでした。それらは自力で動作しましたが、一塊になって動くことはありませんでした。
ウィリアムズ: どういう意味ですか?
ランドール: 聖句には、心臓の前に部品が並べられたなら、神は自らを再び組み立てるだろう、と述べられています。成すべきことは心臓に手足を与えることだけであり、それで神は手足を持つことになるのだ、と。しかし心臓は見つかりませんでした。発見したと主張してきたエージェントはいましたが、その全ては残りと同じような、ただの無価値な機械部品でした。
ウィリアムズ: エゼキエルはどこでこれに関与したのですか?
ランドール: エゼキエルはブマロにこう言ったのです。もし心臓が見つからないなら、我々で作ることができるかもしれない、と。その時点では、これは教会の教義に真っ向から反するものでした。指導者層がこれを耳にしたならば彼を破門したでしょう。しかし、夏以降にプロジェクトを続けることは不可能だとすぐに明らかになりました。エゼキエルが去った後に私は補給任務に送られましたが、彼らの備蓄はほぼ使い果たされていました。
ウィリアムズ: 我々の記録では、心臓は彼らが発見したものの一つということになっています。これは真実ではないのですか?
ランドール: 無論、真実ではありません。神が自身の部品を与えた後に踵を返し、最も重要な部品はお前達が無から作り出せ、と言ったなどと会衆に説教することはできないでしょう。さらに、これは無よりもなお悪いものです。彼らが心臓の製作のために何を行い、どのように命を与えたかが私に明かされることはありませんでしたが、証拠から結論を導き出すことはできます。その年には干魃があり、ポリオが以前に類を見ないほどに蔓延しました。数千人が自然死しました。戦争が迫っていたため、異常事態が正式な記録に残されることはありませんでした。おお、神よ。本当のところは誰にも分かりません。
ウィリアムズ: あなたはこれらが関連していると思いますか?
ランドール: 時期があまりにも一致しすぎていると思います。そして、それが何に変化したかについての私の知識と合わせると、答えは明白だと思います。これは神の心臓などではありませんでした、エージェントさん。全く違う何かでした。
[無関係な対話を削除]
補遺001.03: 1942年11月、回収された映像の転写
注: 映像は地元のドキュメンタリー番組のスタッフから回収したものです。
映像は破壊された家屋から始まり、ガレージを中心に散らばる残骸が映し出されている。金属片やゴム製のベルトが車回しのアスファルト上に散らばり、その跡は通りへと続いている。様々な自動車の破片が歩道や車道に散らばっている。跡を辿ると、トラックをその胴体に統合しようとしているSCP-001に行き着く。
SCP-001は最寄りの民家に向けて進み、雨樋を喰らい始める。逃げ惑う地域住民が映し出され、数名はSCP-001が排出するガラス片や捻れた金属片によって負傷する。SCP-001の体の様々な箇所から発せられる光が、倒れている複数の人影に焦点を合わせる。SCP-001の下部構造に沿った一部分が変形して本体から離れる。本体はさらなる資源を求めて通りを下ってゆく。
排出された一部分は変形を続け、人間の脊柱と胸郭に似た直立した繭状の形状となる。繭の複数箇所が崩壊して肋骨様の突起が外側に伸び、残る部分は身長約3メートルのヒト型実体に変形する。その頭部から光が発せられ、近くの民間人に焦点を合わせる。
金属製のヒト型実体は死んでいるように見えるその民間人をつまみ上げ、肋骨の間に位置する小部屋に収める。肋骨は振動し、実体は這って逃げようとしている第二の民間人に向けて進む。実体につまみ上げられたその女性はもがくが、同様に胸郭内に収められる。実体はカメラから顔を背け、第三の民間人に近づく。切断された女性の手のようなものが地面に落ちる。
死体を収集するにつれてヒト型実体の背面が徐々に膨らみ、同時に本体の大きさは縮小してゆく。6体目を取り込んだ時点で膨らみは本体より大きくなり、実体は二足歩行が不可能となる。近くの家屋の屋根で、実体は四肢を体内に引き込み肋骨を伸ばして体を固定する。
実体は20分間にわたってその場所で停止している。球状の外殻にひびが入って内側から引き裂かれ、3体のヒト型実体が出現する。各個体はSCP-217を発症しているようで、捕獲された6名の民間人の特徴を有している。頭皮から鎖を伸ばした1体の女性型実体は、死んでいるように見えるもう1体を揺さぶる。機械の四肢を持った三番目の男性型実体は、自身を調べた後に屋根から飛び降り、腹這いで着地する。実体は負傷した様子を見せないが、苦痛は感じているようである。実体は、通りを下って新たな車両を喰らっているSCP-001を追跡する。
女性型実体は撮影スタッフに気付く。それは手を振り始めるが、すぐに中止する。実体はSCP-001の方を見た後に、裏庭に飛び降りカメラから見えなくなる。
補遺001.04: ロバート・ブマロとの通話の録音
注: 以下は、ある壊れた神の教会のエージェント(氏名不明)とロバート・ブマロとの対話を録音した通話記録です。通話記録は1942年12月のもので、1966年の教会拠点への手入れの際に財団職員により回収されました。
[通話開始]
ブマロ: もしもし?
エージェント: 主の恵みを、父よ。
ブマロ: ディミトリか?
エージェント: 違います。
ブマロ: ああ、そうか。主の恵みを。小さき主の調子はどうだ?
エージェント: 日増しに強くなっています。私達は彼をオフィスの裏手から近くの倉庫へと移す必要がありました。
ブマロ: 食事は与えているか?
エージェント: 御望み通りに。
ブマロ: 宜しい。いつ頃ペニャスコに着く?
エージェント: 1週間以内には。次の列車を待つだけです。
ブマロ: 急ぐ必要があるかもしれない。ラパスでは2週間前に暴動があった。3名の仲間が行方不明となっている。近くでは財団の活動も活発化しているし―― (一瞬口を噤む)
エージェント: もしもし?
ブマロ: (背後の誰かに向けて) 明日、明日だ。
エージェント: もしもし?
ブマロ: ああ。我々は彼らが北へ向かうと想定していたが、代わりに西へやって来たようだ。ちょっとした誤算だな。
エージェント: アジトは大丈夫ですか?100個に迫るほどのアーティファクトがあったはずですが――
ブマロ: (遮って) ちょっとした誤算にすぎない。その在り処を彼らは知らないし、知っていたとしても現時点で彼らがそれを優先することはない。彼らと、残る世界中の目はヨーロッパに向けられている。主が彼らに止められないほどに成長するまで、彼らがこちらに目を向けて我々の成果に気付くことはないだろう。
エージェント: ええと、もう一つお聞きしたいことがあるのですが。
ブマロ: 何だ?
エージェント: 我らの神は、ええと……貪欲です。私達が供給するもので彼を満足させることは――
ブマロ: (再び遮って) 何が問題なのだ?
エージェント: 父よ、我らの……主は自らの入れ物をも食べています。私達は彼を説得することも、そうしないように言い聞かせることも――
ブマロ: くだらない。信心者の心は我らの神と直接語り合うことができる。彼があなたに手を差し伸べた時、その言葉が聞こえないのか?体内で駆動する機械を感じないのか?それとも、眼前に生きて、呼吸する神がいるのにそれ以上の証拠が欲しいのか?
エージェント: 違います!父よ、そうではなく――
ブマロ: 何も聞くつもりはない。何年も、我らは神が修復されることを祈り、求めてきた。そして今、彼は御姿を顕しておられる。我らは神が信心者の心に語りかけることを知っている。あなた方の中に我らの主と十分に対話できる者が誰も居ないというのなら、別の者を派遣するから今すぐ教えてくれ。
エージェント: 父よ、我らの信仰は強固です。傲慢をお許しください。心得違いをしておりました。
ブマロ: ならば、己を省みなさい。あなたの信仰が心配だ。あなたより強い同士の一人は主と語り合い、彼に秘密の必要性を説いている。疑いようもなく、我らの主は理解するだろう。修復された神は、道理をわきまえた神なのだ。
エージェント: 分かりました。主の恵みを。
ブマロ: 主の恵みを。
[通話終了]
補遺001.05: 1943年12月、事態の段階的拡大の報告
以下は、サイト-74の財団司令官であるマーク・ピーターソンに対するインタビューです。司令官は001-神格化イベント以前にはメキシコシティに駐留しており、イベント中には現地の財団職員としてラパスに滞在していました。
コーンウェル管理官: これから記録を開始します。もう一度最初からお願いします。
ピーターソン司令官: 分かりました。我々がメキシコでの教会の活動について最初に報告を受けたのは41年ですが、その時点ではどれもかなり小規模なものでした。我々はちょうど国境の北側での現地作業を終えたところで、フランスへの展開のためにアトランタに資産を移す準備をしていました。我々はドイツ人共の手に渡したくない一連の要注意オブジェクトの回収任務を受けたところで、彼らはそれを達成するために部門全体を移動させようとしていました。指導者達は、我々がアメリカ人と話を合わせる十分な時間がとれるようにルーズベルトが決断を下すとは確信できなかったので、我々は別々に出発する予定でした。全体に混乱が広がっていました。
コーンウェル管理官: なぜラパスに留まったのですか?
ピーターソン司令官: 偶然だったのです。我々の列車の一つが、おそらくラパスに貯蔵していた武器を回収するために太平洋岸へ出るルートを取っていました。本来、この列車は北へ向かうはずでした。それで、リオグランデ川より南にいた指導者のほとんどが突然にラパスに集まることになりました。振り返ってみると、おそらく我々の全体的な使命に関して見る限りこれは幸運なことでした。
コーンウェル管理官: 001-神格化実体について最初に聞いたのはいつですか?
ピーターソン司令官: (笑う) 何と。彼らは現在、あれをそのように呼んでいるのですか?それは我々が「機械」と呼んでいたもののことだと思いますが、地域での教会の活発化の噂について最初に聞いた頃で……1年と少し前のことでしょうか。我々がラパスに行き着いたのが42年の10月ですから……ええ、合ってると思います。何かがおかしいと気付いた最初の具体的な出来事は、列車で逃げてきた……難民?です。彼らをこう呼ぶのはおかしいようにも思えますが、正確なところそういうものだと思います。彼らは10月の終わり頃からラパスに現れ始め、故郷の街全体がどのように粉砕されたかを語っていました。彼らは詳細を述べずに"la máquina, la máquina"と繰り返すばかりで、ええと、「機械」の意味ですね。我々があれをそう呼ぶのはそれが理由なのですよ。ともかく、我々はそれが何を仕出かすことになるか理解していませんでした。
コーンウェル管理官: 実体との最初の相互作用はどのようなものでしたか?
ピーターソン司令官: ええと、こういうことで良いのか分かりませんが、列車が止まった時です。我々は地域当局から、北で事故があったので列車はもう国境に向けて進めないと聞きました。大した問題ではありませんでした。我々は数台の車を調達し、全く別の路線が繋がっている、東方の山裾にある小さな村々に向かうことも可能でしたから。しかし、大きなもの、列車がラパスに取りに行くことになっていたものは動かせなかったので、我々は列車を待つことにしました。デマルコが、一部隊を線路にそって送り出し、どこで線路が塞がっていてそれを除去するために何ができるか見に行く、という妙案を思い付いたのはその時です。彼は自ら隊を率いて出発しました。
コーンウェル管理官: エージェント・デマルコに何が起こったのですか?
ピーターソン司令官: 彼に何が起こったかはよく分かってるでしょう?ビル。
コーンウェル管理官: 記録のためにお願いします。
ピーターソン司令官: 分かりました。3日後になっても音沙汰はなく、我々は待機する必要のない他の指導者達を東へ送り出す準備を進めていました。ですが5日後になって、デマルコの隊の一人がキャンプに現れました。彼は錯乱した様子で、「世界を喰らう者」と、他の隊員がどのように粉砕されてしまったかについて話しました。あんなことをして、そうでしょう?それはまだ最終的な大きさには達しておらず、まだ所構わず喰らい尽くすような存在ではなかったことは知っています。デマルコ……
コーンウェル管理官: 大丈夫ですか?
ピーターソン司令官: ええ。彼はそれを殺そうとしました。彼は多分、我々が後に気付いたのと同じことを知ったでしょう。我々にこれは収容できないということに。世界にそれを入れられるほど大きな穴はありませんし、それに喰われないような材質の箱もないでしょう。しかし、彼にとっても、隊員達にとってもそんなことは問題ではありませんでした。機械がそれを気に留めることはありませんでした。
コーンウェル管理官: 最初にそれを見たのはいつですか?
ピーターソン司令官: 12月です。我々が身を潜めることになると、私は遠征隊の一員として、それがよく見える上空を飛びました。それは既に……つまり、それが国土の片側に何をしたかは見ましたよね。私はあんなに大きなものが動いているところを見たことがありません。山が動いているようなもので、胸にかき込んだあらゆるものが燃やされた煙で空は黒く染まっていました。そして、それでもまだ成長途中だったのです!それは……分かりません。我々は皆XK-イベントを想定した訓練を受けていますが、これはどの訓練よりも遥かに上を行っていました。我々は、我々が死ぬ運命にあり、これが我々を殺すだろうということを理解しました。もはや時間の問題でしかありませんでした。
補遺001.06: 収集された財団の書状
注: 以下はラパスに駐留する財団職員によって書かれた書状からの抜粋で、001-神格化イベントの後に臨時サイトから回収されたものです。氏名は伏せられています。
███████様
これがあなたに届くかどうかは分かりません。列車はもう走っていませんが、我々の司令官はまだ手紙は出せると言っています。私はそれを信じて、あなたがこれをお読み下さることを願います。
ここの空は数週間も暗いままです。北から毎日のように流れてくる煙のせいで、呼吸すら難しくなっています。屋内の配管工事が始まるわけでもないし、私達の仲間以外の奴らは英語も話せません。
それに、私達がなぜこんな所で未だに愚図愚図しているのか分かりません。私達は線路を直しにここに来たとずっと聞かされているのですが、なぜ北に向かわないのですか?北で線路が壊れているのではないのですか?
今日、顔面のほぼ半分ほどをも吹き飛ばされた男が街にやって来ました。まるで死人のようで、誰とも話さずに街の真ん中で倒れ伏しました。彼は病院で錯乱しつつ目を覚まし、あなた方に話したような山のような大きさの機械についての物語を語りました。家から飛び出して走り出し、その中に自ら身を投げた人々の話を。芝刈り機の下に飛び込んだように引き裂かれた人々の話を。そして彼は死にましたが、何が彼を殺したのかは誰も分かりませんでした。
我々の眼前で山脈は粉砕されました。煙の中に立ち上がる姿が見え、その動きはゆっくりと重々しいものでしたが、恐るべき推進力を持っていました。獣のように這うのでもなく、人間のように歩くのでもなく、百万もの歯車の回転によって鉄の百足のように前進していました。本体は煙の中に途方もなく高く伸びていました。胸の中では地獄の炉のような炎が燃え盛っていました。それは北の方から現れ、止まることもうろつくこともなく、全てを喰らいながら通り過ぎて行きました。それは長く脈打つ腕を伸ばし、村を1つ丸ごとその胃袋の中に引きずり込みました。私は人々が家ごと浚われ、他の物と同じように業火の中で死ぬのを見ました。そして、それは吠えていました。歯車の軋りや機械の振動だけでなく、我々の心の中で。私はその声を心の中で聞きました。それは絶叫していました。
Directive: サイト-001、中央司令部
Courtesy of: █████████████
臨時サイトは喪失。ラパスは壊滅。機械的実体は収容された。巨大な地質学的変化が発生。XKは回避された。記憶処理の補助を要請。
補遺001.07: GOC中尉 "レベナント" へのインタビュー
注: 以下はイベントの後に行われた、GOC中尉、コードネーム"レベナント"に対するインタビューです。インタビュー記録とその転写は全て、交渉を経た1992年の情報交換の際に財団エージェントによって収集されたものです。現在のところ、"レベナント" の正体は不明です。
財団エージェントの間で語り継がれる物語がある。何らかの収容室や他のものの護衛任務中、長い夜の間に、白髪交じりの老兵が青二才に語り聞かせる話だ。誰がそれを語り始めたのかは知らないが、まだ語り継がれていることは知っている。もう半世紀も経つが、まだ彼らは正しく理解している。その話にある程度の信憑性を与えることができるだろう。
彼らはこう言う。「知らないのか?GOCは神を殺したんだ」
だが青二才はこう答えるだろう。「そんなの作り話ですよ。神ならどこかのサイトの収容室に収まってる。GOCに殺されてなんかいませんよ」そして、自分が捕まえてどこかに閉じ込めた、自分自身をキリスト教の神だと思っているタイプ・グリーンの話を始めるだろう。そして、老兵は微笑んで頷き、何も言うことはないだろう。彼らは全て知っているからだ。
彼らは1943年、黙示録の只中で起きたことを知っている。財団が何もできず見守る中、資金も、人員も足りず無力だった連合の前身機関、連合国オカルト・イニシアチブが世界を救う所をな。
「銃」、比喩的な意味だが、それはギリシャ沖の小島で発見された。私に残されているのは記憶処理の後に残るある種の曖昧な記憶だけで、もうその外見すら覚えていない。だが、あなた方が思うほど重くなかった、ということははっきりと思い出せる。
なぜ記憶処理を受けたのか?それは、私が分遣隊としてその地域に派遣されていたことも理由だが、部品の1つにも何らかの精神改変作用があったようだ。彼らの言葉を借りれば、何かが漠然と「間違っている」という感覚を覚えている。私はその外見を思い出せないし、それがどのように広大な土地を破壊したのかも覚えていない。畜生、いつ起きたか、は辛うじて思い出せるのだが、それだって以前と以後の地図を見比べて知っているだけだ。だが臓腑の奥底では未だ、それが存在すべきでないものだったことを感じている。我々は怒りと復讐心に燃えた神のような存在の前に立ち、それはただ我々に、自身を殺してくれと懇願するだけだった。
我々は喜んで請け負ったよ。
補遺001.08: 回収された映像記録の転写
注: 以下は回収された映像記録からの転写で、およそ30秒の長さです。映像は劣化により現在では判読不能であり、転写記録は映像の回収後すぐに執筆されたものです。
回収された音声: 警告: 以下の音声記録は大音量です。
00:01: 記録はある街から始まる。多数の建物が倒壊し、炎に呑まれている。巨大な地震活動が発生している。
00:03: カメラが旋回しSCP-001を映す。映像からその大きさは判別し辛いが、実体は画面全体を占めるほどの大きさでゆっくりと前進を続けている。
00:09: SCP-001が大量の土砂を体内にかき込む姿が映る。実体の内部からは時折炎が噴出する。
00:15: 空襲警報のサイレンが鳴り響き、空は稲妻のような光で照らし出される。SCP-001の直上の雲が暫し途切れ、下部に僅かな損傷を受けたSCP-2399が視認できる。財団の迫撃砲の砲火が頭上を過る。
00:20: 迫撃砲から発射された1発がSCP-001に着弾する。損傷は見られない。
00:22: SCP-2399の下面が青く発光を始める。
00:24: SCP-2399から高輝度の光線が射出され、SCP-001に直撃する。SCP-001は激しく反応し、SCP-2399に掴みかかる。
00:26: 爆発が発生。映像中には何も視認できない。
00:30: 近くで人々の悲鳴が上がる。映像終了。
補遺001.09: SCP-001の無力化
1943年7月17日、連合国オカルト・イニシアチブのエージェントがメキシコ、ラパスに駐留する財団の管理者と接触し、001-神格化実体の場所への移動の支援を求めました。財団工作員はAOIのメンバーを回収するために迅速に航空機を派遣しました。到着後、エージェントは保護下にある特殊な異常アーティファクトと、001-神格化実体の進行を遅らせる可能性のある手法について説明しました。
ラパスへの到達から3日後の1943年7月24日、連合国オカルト・イニシアチブは異常アーティファクトを身に着けた1名のエージェントを001-神格化実体の場所へ派遣しました。1943年7月25日の朝、001-神格化実体が太平洋沿岸に接近した時点で別の巨大な機械的構造物4がその頭上に出現しました。現在のところ、実体の起源は明らかとなっていません。
SCP-2399の出現以降のイベントの記録は不完全で、おそらく不正確です。交戦の結果としてSCP-001は消滅しました。理由は今のところ不明ですが、SCP-2399は消失し、後に木星の低軌道上で故障した状態で発見されました。
停止したSCP-001の部品は巨大な分解した機械部品の塊となり、カリフォルニア湾の海底に残されています。停止した巨大構造物からSCP-882を除去すると、残る部分は完全に崩壊して不活性化しました。
001-神格化イベントの後、現在ではバハカリフォルニアとして知られる地域内とその周囲の個人に対して大規模な記憶処理が行われました。この試みはSCP-001から噴出していた黒い濃厚な煙にも助けられ、現在の歴史的記録においてイベントは山火事として処理されています。地域の地図の修正と立ち退いた民間人の移転には多大な労力が費やされました。広域の記憶処理が必要となったために複数の実験的な神経改変薬5が用いられ、これらの薬品のよく理解されていない副作用のために、001-神格化イベントから10年以内に全世界で200万人以上が死亡したと見積もられています。
補遺001.10: 回収された連合国オカルト・イニシアチブの文書
注: 以下の文書はPOI-004D/001(補遺001.12を参照)によって財団職員に齎されました。現在、POI-004D/001がこの文書をどのように入手したのかは不明です。
ダリウス将軍宛
アーティファクト回収報告
著者: ヴァン・ペルト中尉
部隊長: バグラム大佐
報告書枚数: 57ページ
報告書の要約: 1942年12月30日、ギリシャ沖合の小島の警備隊によって異常特性を持つ変異したヒト型実体が目撃された。実体は名前を持たないと主張し、英語では進んで会話しようとしなかった。実体は野球ボールよりも小さな立方体のアーティファクトを所有していた。実体は女性型で、頭皮からは多数の鋼の鎖が伸びていた。
当初、実体はアーティファクト(AR-213と分類)を手放すことを拒まなかったが、直後に敵対的となり言葉を話し始めた。実体は隊員の生命を脅かし、2名の兵士を制圧した後にディクソン軍曹により無力化された。実体はメキシコの西部について言及し、アーティファクトをそこへ運ぶために解放することを要求した。
さらなる調査から、その地域でSCP財団の活動が活発化しているだけでなく、いくらかの小規模な地質学的異常が発生していることが判明した。バグラム大佐から、第二小隊は実体(EN-340と分類)を異常発生地点に移送する命令を受けた。アメリカ行きの船への乗船後、EN-340は明らかな不快感と動揺を示したが、無抵抗となった。
EN-340が帰還したら、終了の前にさらなる精神鑑定を行うことを推奨する。AR-213に関する分析の完了後、アーティファクトは焼却のためにチューリッヒに移送される。
添付報告書のご検討を願います。
連合国オカルト・イニシアチブ平和維持軍第二小隊
ヴァン・ペルト中尉
補遺001.11: エージェント・ロバートソンによる1944年1月の陳述
注: エージェント アーロン・ロバートソンはSCP-001アーティファクトの回収中に現地に滞在していました。ほとんどの上級スタッフが回収作業に割かれていたので、彼がイベント後の陳述を求められました。この報告書は、SCP-001に関する機密文書に追加されるまでサイト-17に所蔵されていました。この報告書の知識を持つ他の人物が存在するか、または、コピーが作成されたことがあるかは不明です。以下は陳述からの抜粋です。
まず、我々は海岸で拾えるものを拾い集めた。歯車、プーリー、ピストン、そのような小さなものを。ほとんどはただのゴミだったが、まだ震えたり、巻いたり、回ったりしていた。まだ生命を宿していたんだ。小さなものは数時間の後に「死んだ」状態になったが、大きな部品は数週間後にも唸っていたと聞いている。首を切り落とされた鶏がまだ動いているように。
重要な部品、つまり我々が実際に教会のアーティファクトだと知っていたものは梱包されてラパス行きの列車に乗せられた。個々の異常アーティファクトを数えたら、驚いたことに百個ほどもあっただろうか。駅の担当者共は、全部保管しておくには新しいサイトが必要だ、なんて冗談を言っていた。
幸いにも、死傷者は低く抑えられた。ほとんどの奴らは機械部品の周りでは口を噤み、それに腕をもぎ取られないように振る舞っていた。ロドリゲスは手を潰され、我々は彼を地元の病院へ搬送しなければならなかった。全体で死者は1名だけだったと思う。湾に潜らせ、心臓を引き揚げるベルトを掛けさせるために雇った地元民だ。直接見たわけではないが、話には聞いている。彼は2つの可動部品に頭を挟み潰された状態で見つかったそうだ。彼は自ら頭をそこに突っ込んだように見えた、とも聞いた。
本当かどうかは分からん。この目で見てはいないのでね。でも、あのタグはこの目で見た。
何かを製造している場所では、どこで作られたのか識別するために工場名を入れた大きな金属板を部品の横にくっ付けるだろう?我々は、それが海への道を喰らう過程で取り込んだ他の部品の中に、そういったものを山程見た。だが、教会のアーティファクトには無かった。そいつらは他の部品と同様に往復運動はしていたが、印は付いていなかった。そいつらの横に立ったなら、平穏のような感覚を覚えるだろう。プロジェクト全体もそのように穏やかな感じで進んでいった。まるで安堵したかのように。
心臓は別だ。我々は最終的に心臓を引き揚げたが、天候のせいで数日間浜辺に置いておかなければならなかった。いくらかの地元民が痒みを訴え始めた。彼らは声を聞いたと言って、それに近づこうとしなかった。いくら金を積んでも無駄だった。北の基地からの支援部隊が着くまで、船への積み込みは待たなければならなかった。
俺は……ああ、分からない。俺はあらゆるものをこの目で見てきたが、俺のミーム抵抗値はかなり高い。俺はこの割り当てに就くためにいくつかのテストに通らなければならなかったが、全て全く問題なかった。だが心臓の近くでは別種の感情を覚えた、ということを否定することはできない。俺は声を聞いたかどうかは分からないが……
そう、タグだ。あれを北へ向かう船に積み込んでここを離れる時、俺は初めてそれを見た。その時は特に何か言ったり考えたりすることはなかったが心の中には引っかかっていて、後で俺は他のファイルを漁り始めた。船が嵐の中で座礁して心臓が失われた時も、俺はずっとあの忌々しい金属タグについて考えていた。そして、俺は気付いたと思う。君、あれは教会のアーティファクトではなかったんだ。
それにはこう書かれていた。「ザ・ファクトリーの資産6」。
補遺001.12: POI-004D/001へのインタビュー
注: 以下は、以前に壊れた神の教会の未知の宗派に属していたことを主張する人物、POI-004D/001に行われた2009年のインタビューの抜粋です。これは、補遺001.01に詳述されるようにPOI-004D/001と接触していた異常事件課の協力の下で行われました。
では、あなた方が知っていると考えていることを私に教えて下さい。
なるほど。
興味深い。
ええと、あなた方は完全に間違っている、というわけではありません。むしろこの時代においては称賛に値します。私が与えた情報の中に、自己投与した記憶処理薬によってあなた方が見逃している、または過大評価している重要な細部が存在すると感じています。
記録を修正してみましょう。
GOCは、彼らが誇らしげに主張するようにヤハウェを殺したわけではありません。彼らが破壊したものは壊れたる神ではありません。確かにそれは神の一部なのですが、1個のカムシャフトを指して車と呼びますか?ああ、ではあなた方はいくつかの部品を一緒に保有しているのですね。おそらくはエンジンの1つを。でもやはり車ではありません。
神はもっと単純なものです。神とは万物です。最大の星から最小の粒子まで。全ては微小な部品であり、それ単体では全く重要なものではありません。それは定められたあらゆることを実行し、相互に噛み合い、軋り合います。全ては宇宙を構成する機械の一部なのです。
ある時点では、機械という見方はおそらく単なる比喩であり、ある観念に過ぎませんでした。でも、あなたもお分かりかとは思いますが、観念とは強力なものです。それは無から物を創り出すことも、既に存在するものを改変することも可能です。そして、神の小さな火花により象徴は現実となります。1つの惑星が持てる生命の数ほどに、あなた方はここで多くの観念を生成しています。
そして、このような質問をしたくなるかもしれません。「なぜそれを壊れたる神と呼ぶのか?」。いくつかの答えがあります。単純に翻訳の問題。信者による物理的再解釈。「壊れた」というのは単なる誤訳で、本当はもっと意味のある言葉ではないのか?神はビッグバンの中で壊れたのか?もしそうならば、なぜ壊れたのか?そして、それが修理されたら何が起こるのか?
最後の質問を除いて、私には答えることができません。そして、最後の質問の答えはもうあなたも知っているはずです。究極的には、神が何であったか、ということは問題ではないのです。あなた方にとって問題なのは、それが現在のままでなければならない、ということです。「壊れたる」状態に。神はそのことを知っています。より強力な部品、従来の宗派が聖なるものと分類するような機械部品であっても、それらは自身が1つになる運命にないことを知っています。無理矢理統合されたとしても、外部の力で動かされているとしても、それらは自身が本当は何であるか知っています。怪物の一部は自分自身を破壊するために動き、矮小な実体を雇ってその仕事をやらせます。GOCが殺したのではありません。彼らはそれ自身の手から銃を取り、功を争って引き金を引いただけです。
問題は、人間は神が知覚するには小さすぎる部品であるということです。それが以前にはどのような存在だったか思い出してください。だからこそ、ブマロのような者が人間を特異点へと押し進める新たな手法を発明するのです。
それは、それがいずれ起こるからです。戦艦の下側を見ましたか?43年の交戦以前に、それは既に傷ついていました。かなり近くで見たならば、徐々に動力炉に迫りゆく傷跡が見えるでしょう。今回、それはいかなる損傷を受けても自身を現実の狭間に滑り込ませて凌ぎましたが、最終的に怪物は勝利するでしょう。破壊者を破壊して貪り喰らい、その力を以って全てを喰い尽くすでしょう。真に全てを。神は1つの全体的存在、特異点に戻り、そして、壊れるでしょう。今回のみ、これにいくらかの外部の力が介入する可能性があります。ザ・ファクトリーの錆。ダエーバイトの王の血。第五教会員、ワンダーテインメント、現実改変者となるのに十分な火花を持った、通りを歩くランダムな人々。彼らはその手で宇宙を作り直し、こうした第二のループを全て閉じるでしょう。
いいえ。それは私が関与するものではありません。最終的に起こる運命なのです。それが既に起きていないと、あなた方が勝者となったと誰が言えるでしょう。多分人類自身は勝者でした。しかし、それは第一のループの継続を先送りにすることに私が反対するという意味ではありません。
はい。それは可能です。私は、あなた方が前回は怪物に損傷を与えられなかったことを知っているし、戦艦は許された時間内に自己修復できないかもしれません。ですが、あなた方はその助けになれないわけではないでしょう?神の再構築を図った人々を真似て、外部の支援を受けることもできますよね?助け合いましょう。不可能なことなどありません。
個々人では、我々は壊れたままです。団結すれば、我々も神になれます。