連邦記録法に則り、以下に電子コピーを掲載
UIUファイル1948-019: ケースファイル "蝸牛の殻"
概要: 蝸牛との共通点を持つ、人間と類似した生物。人間に接触した際は粘液で対象を包む。成功すると、対象は粘液によってオリジナルの個体と類似した生物に変化するが、他に変則性はない。
変則性相互参照: 非人間、変形、補食性、昆虫
身体的特徴: 当該生物は人間の男性で、常に高粘度の液体を分泌している。顔面からは巨大な触角が突き出ており、蝸牛の眼柄と同様の働きと反応をする。背中は大きな蝸牛の殻と一体化しており、後方に盛りあがっている。この殻を構成する物質のモース硬度は7を記録している。
性別 |
身長 |
体重/体格 |
人種 |
髪 |
目 |
特徴的属性 |
N/A |
5フィート7インチ(170cm) |
143ポンド(65kg)、平均的 |
白人 |
黒 |
黒 |
外見は蝸牛と融合した人間のようで、粘液で覆われている。 |
能力: 人間と接触した際、対象を粘液で包もうとする。この時発生した粘液は中毒物質として作用し、反応時間を遅くする。被覆が完了すると、対象は変態後に解放される。これにより、解放後の対象の外見は当該生物と類似するものになる。
対象は生物から与えられた'施し'に対して心から感謝し、何度も礼を述べる。上記の手順で変化した人間は変則性を持たないが、他者と生物を引き合わせようとする。その為、変化した人間は安楽死させることが賢明であると判断されている。
目的/動機: 自己増殖または繁殖。しかし"オリジナル"と同様の個体は発見されておらず、上記の変則性が唯一の繁殖手段であると考えられている。
活動規範: 生物は(大抵の場合異性のものに似た声で)助けを求めて叫び、人間を僻地へ誘い出そうとすることがある。加えて、既に変化した人間の現金や衣類といった物品を配置することもある。
行動: 従順ではあるが、知覚した人間を追い、変化させようと試みている。
粘液のサンプル: 一度発生源から離れた粘液は無害と思われる。実験ボランティアを志願したUIU捜査官らは誰も中毒や悪影響を示さなかったが、粘液は広範な検査をしたにもかかわらず除去不可能な方法で衣服を汚損した。この点から、現場での活用可能性は保留中である。
殻の破片: ファイル内で既に言及しているように、モース硬度は7を記録している。殻は被影響者の背で再生する特性のため無制限に摘出が可能であり、将来的な活動に活用できる可能性がある。しかし、有用なサンプルとなる大きさの殻の生産に要する人命の損失から、この可能性は否定されている。
解剖された変身者: 安楽死後の解剖により、変身者の殻を支えるコブの内部構造の全てが良性の癌組織で構成されていることが判明した。眼柄も同様の組織で構成されていると見られるが、どのようにして正常に機能しているかは不明。頭蓋骨内で発見された数個の腺は粘液を産生するものと推測されるが、これは変身者の死後に急速に腐敗し、8日後には消失することが知られている。
現状: UIU本部内の独房で拘留中。態度に危険な兆候は見られない。軽度の監視下にある。
犯罪: 人間の肉体と精神の犯罪的変化、窃盗、公然猥褻。
量刑: 無期限拘留
UIU活動記録:
1948/01/19: メリーランド州ボルチモアから、当該生物の活動を受けての最初の通報があった。一部の警察官は2か月にわたって、記憶や身体に奇妙な変化が生じた行方不明者らについて報告している。行方不明者らは各自の愛する人物や法執行機関に対し、放棄されたレストランに行くよう強く求めていた。数名の法執行官の失踪の後、FBIが関与した。
1948/03/22: UIU捜査官がボルチモアに入り、生存者および被影響者にインタビューを行った。被影響者は隔離され、被影響者の状態を知っている人物には事件の口外を防ぐために大金が支払われた。事件についての新聞報道は各社により自主的に撤回されており、ボルチモア外には流出していない。
1948/09/02: 問題のレストランへの強制捜査により、容疑者の確保と全行方不明者の私物の回収に成功した。容疑者と誤認された変身者も数名発見されており、一部は監督捜査官によって即座に安楽死させられた。国務省へ無期限拘留の申請書が提出された。
1949/02/17: UIUでの無期限拘留が承認され、容疑者はUIU本部に移送された。
被害者-011とのインタビュー
フレデリックス捜査官: こんにちは、アルフォードさん。今日はご気分はいかがですか?
被害者: (顔から粘液を拭うのを止める。)ええ、本当に良いです。素晴らしいですよ。
フレデリックス捜査官: 現状についてはどうですか?
被害者: 健康状態と言えないんですか? 私はこれのことを贈り物だと思ってますよ。
フレデリックス捜査官: 何故です?
被害者: こうなる前の私は負け犬でした。長距離列車に乗って誰とも話さない退屈な仕事に行き、帰ったらコップ1杯のミルクを飲んで床につく。毎日出勤と帰宅の繰り返しで、週末はただ寝ているだけでした。この習慣を打ち壊そうと決めてレストランに出かけるまでは。
フレデリックス捜査官: あなたが救助されたレストランですか?
被害者: そう、その通りです。行ってみたらレストランは潰れていました。不運だと思ったのですが、その時、彼女の呼び声が聞こえました。誰か困っているのかもしれないと思って中を覗き見たら、洗礼が始まりました。私は生まれ変わったんです! 私は…確かに変貌しました。でも、生まれ変わることを許されたんです。私はつまらない男じゃない。ユニークになったんだ! 殻を破ったんだ!
フレデリックス捜査官: 殻を破った?
被害者: 私にもまだユーモアのセンスはあるんですよ。私は彼女に力を与えられ、気力を取り戻したんです。いくら感謝してもしきれませんよ。