連邦記録法に則り、以下に電子コピーを掲載
UIUファイル[1997]-[007]: コードネーム"アンプリファイア"
概要: 魚類同士の交流によって伝染する未知のミーム。影響を受けた魚類に対し、テレパシーで意思伝達を行う能力を与える。
変則性相互参照: 動物、魚、ミーム、テレパシー
身体的特徴: 種、性別、寿命は影響を受けていないドジョウと一致している。Pangio kuhlii(クーリーローチ)はオレンジ色の地に黒の縞模様となり、Misgurnus anguillicaudatus(ドジョウ)は気圧の変化に敏感になるなど。
能力: Acantopsis dialuzona、Leptobotia elongata(チャイニーズ・ロイヤルクラウンローチ)、Misgurnus anguillicaudatus、Pangio kuhlii、Pangio myersi(ジャイアントクーリーローチ)、Pangio oblonga(ブラッククーリーローチ)といったドジョウに対してテレパシーを与える。上記の種はいずれもアクアリウム業界に共通して見られるもので、パンギオ属の3種はしばしば共に飼育されている。どの種のドジョウも異種にミームを伝染させることが可能だが、大抵は同種で群れを成すことを好むため、異種間伝播を起こすことは稀である。
目的/動機: 不明/生存
活動規範: 当該ミームは、一般にアクアリウム、ペットショップ、池沼でドジョウが引き合わされた際にドジョウ同士の交流を通じて拡散する。影響を受けたドジョウは他のドジョウ、好んで同種の個体と交流し、体を激しく揺すったり、触鬚をうねらせたりする。他個体はこの行動を観察、模倣し始める。この交流が終了した後にミームの伝達も完了し、観察していたドジョウはテレパシーを得る。
行動: 当該ミームの影響下にあるドジョウは主に餌や追加の隠れ場所、ドジョウ、水槽のスペースや、餌を争うタンクメイトを減らすことを要求する。しかし、対象は自分たちのアクアリウムの維持管理に関与していない人間を強く警戒しており、主な飼い主には訪問者に注意するよう呼び掛ける。訪問者が許可を得ていると認識されなかった場合、テレパシーによる警報はより大音量かつ広範囲なものとなり、半径2×付近にいるミームの影響を受けたドジョウの総数[m]まで拡大する。
パンギオ属の生物が取り揃えられた水槽: 複数の無関係な犯罪の被疑者の所有物から押収された水槽。14匹のクーリーローチ、3匹のジャワローチ、8匹のジャイアントクーリーローチが入っていた。被疑者は以前75Lの水槽で魚を飼育していたが、ドジョウからの苦情により、水槽は200Lのものにアップグレードされた。
2匹のドジョウの間でミームの伝達が行われている映像: メリーランド州ロックビルに位置するペットショップの監視カメラが、ドジョウの在庫による一連のミームの伝達を完全に記録していた。最も鮮明なサンプルは当課が所有している。
影響を受けたドジョウの死骸: 典型的な不法侵入の際、強盗犯はホースフェイスローチの水槽に遭遇した。ドジョウ群は即座に飼い主に対して警報を出そうと試み、強盗犯が現場から逃走する前に水槽を複数回銃撃する誘因となった。解剖により、影響を受けたドジョウとそうでないドジョウの間には有意差がないことが判明した。
現状: アクアリウムやペットショップにおいて、影響を受けるドジョウが発生し続けている。
犯罪: 動物は罪に問うことが不可能なため該当なし。しかし適用されるとしたら、社会秩序の長期にわたる混乱および治安紊乱行為が該当するだろう。
量刑: 無期限拘留および社会奉仕活動
UIU活動記録:
1997/11/07: 当時の直近にモントゴメリー総合病院の産科病棟に設置された魚飼育用水槽が、通り過ぎる看護師に対してドジョウを「静かな場所」へ移すよう大声で要求し始めたため、看護師らが平静を失った。看護師らは警察に連絡し、産科病棟で自分たちを苦しめている「喋る魚」について伝えた。捜査官が派遣されるまでに、産科病棟ではドジョウの大声が原因の避難が行われていた。水槽は捜査官によって押収され、目撃者らは機密保持契約が結ばれ、完全な監視下に置かれた。
2001/05/27: オレゴン州グレシャムのアパートに、1名の強盗犯が侵入を試みた。住人の水槽のホースフェイスローチが叫び声をあげ始めたことで、強盗犯は水槽を複数回銃撃した後に逃走したが、瀕死のドジョウの叫び声に動揺し、アパートから脱出することはできなかった。現場には警察官が呼ばれたが、間も無くドジョウの死に際の叫び声によって動揺した。強盗犯は逮捕された。連邦捜査官らが派遣され、ドジョウたちの死後にようやく現場入りした。解剖が実施され、これらのドジョウとテレパシー能力を持たないホースフェイスローチの間に相違がないことが明らかとなった。住人はリン・グエンという名前の85歳の高齢女性で、ドジョウをどこで購入したかについて聴取を行った。グエン夫人は老衰による苦痛から質問に答えることができなかったが、訪問看護師のダハル氏は、ドジョウが見知らぬ人物から自分に贈られたものであると説明した。彼は水槽の設置を決めたのはグエン夫人が孤独感に苦しみ始めたためであり、ドジョウの異常な性質には気付いていなかったと釈明した。グエン夫人およびダハル氏は機密保持フォームへの署名後、監視下に置かれた。
2001/05/31: ダハル氏がUIU捜査官に対し、グエン夫人のアパートにドジョウの水槽が再設置されていると通報した。水槽がどのようにして捜査官やダハル氏に気付かれることなく持ち込まれ設置されたかは不明。新しいドジョウも同じミーム的効果の影響を受けることが確認された。グエン夫人は、ドジョウが公序を乱さない限りは飼育を続けることを認められた。
2003/02/14: スリー・ポートランドの新奇なラーメン店が、客からの注文を取るために影響を受けたクーリーローチを雇用していた。支払いを行わず退店しようとした客を捕捉すると、雇用されているドジョウは一斉に叫び始めた。飲食店は公序を乱したことで罰金を科された。
2004/05/04: 長時間の退屈が有害な行動をもたらすため、拘留されたドジョウはUIUオフィスへの電話に出るといった社会奉仕活動で罪を埋め合わせることが認められた。
2009/04/19: メリーランド州ロックビルのペットショップで、従業員がドジョウの奇妙な行動の映像をYouTubeに投稿した後、ミームの影響を受ける店の在庫のドジョウ全てが影響を受けたことが判明した。映像はデジタル・ミレニアム著作権法違反という名目で削除された。ドジョウは押収・拘留され、従業員およびオーナーには尋問と機密保持契約への強制的署名が行われ、完全な監視下に置かれた。小売店の記録の調査後、オーナーは帳簿の改竄および脱税で逮捕された。ドジョウの購入記録は全く回収されなかった。
2014/06/24: 複数の殺人、動物の窃盗、その他様々な犯罪の容疑者を逮捕しようとした際、容疑者であるコードネーム"Tachyglossa"が潜伏していたガレージで、捜査官が栄養失調となったパンギオ属のドジョウの群れを発見した。容疑者は逮捕されていないものの、ドジョウたちは水槽と社会奉仕活動の特権の見返りとしてTachyglossaの情報を積極的に提供している。