名前: N/A
変則性相互参照: 眼、知性、念力
身体的特徴: 直径約6フィートの巨大な眼球。未知の方法で自律移動することが可能。有知性体であり、発話形式で音を発することができる。
能力: 飛行を含む自律移動。未知の手段を介した発話が可能。一定範囲内での念動力。常にアラン・ムーアの所在地に関する具体的な知識を保有している。破壊不可能であるか、高い損傷耐性がある。
目的/動機: アラン・ムーアと出会うこと。
活動規範: 可能であれば、如何なる時でもアラン・ムーアの下へ辿り着くための最短ルートを選び、最高時速20マイルで移動する。
行動: 通常はUIU捜査官を含む他者に友好的であるが、積極的に捕獲を避けようとする。常にアラン・ムーア、自分がどれほどムーアと会いたがっているか、ムーアの著作、ムーアの私生活などについて話し続けている。
以下の証拠品は、実体の発見直前に、アラン・ムーアが宿泊していたホテルの一室で発見されたものである。ホテルスタッフが警察に通報した後、UIUによる捜査が行われた。
オカルト図像: 壁に描かれた様々なシンボル。部屋の床に巨大なシンボルを1つ描く空間を確保するため、家具は横に動かされていた。壁のシンボルは全て黒いマーカーペンで、床のシンボルは近所のコンビニエンスストアで購入したマリナラソースで描かれていた。
日記エントリ: 本の1ページ。日記が書き込まれている。
大切な日記帳くんへ、
今日もまた、起きている間ずっとファンに声を掛けられ、嫌がらせを受ける一日だった。酷いもんだ。奴らは俺を作家としか見ていない。サインを欲しがり、俺を褒めそやし、その場を去ったら“偉大なアラン・ムーア”に出会ったと自慢話をする。
文句を言うのは贅沢かもしれないが、もううんざりだ。誰もが俺に会って、触って、自分がどれだけ俺を愛しているかを示したがる。最後に他人と有意義な交流をしたのはいつだったかほとんど覚えていない。
だからと言って、人に愛されるのが嫌いなわけではないと思う。ただ、俺を知りたがるのと同じくらい、俺を実際に気遣ってほしい。俺の本当の姿を見てくれる相手が欲しい。
現状: 未拘留。UIU捜査官は実体の追跡を継続し、またアラン・ムーアに出会うという主目的を達成させないように取り組んでいる。
UIU活動記録:
2001/2/11: 実体はインディアナポリス郊外で、東に向かって移動しているのを発見された。UIU捜査官が実体の拘留を試みるが、効果は無かった。実体は上昇して雲の中に消え、目視確認できなくなった。
2001/2/16: 実体はムーアが居住する町から数マイル離れた地点で目撃された。UIU捜査官が調査に派遣された。リチャーズ捜査官が実体と遭遇し、簡潔な会話を交わした。
リチャーズ: すみません! 合衆国政府の者です、お話があるのですが宜しいですか?
実体: こんにちは! 人に会いに行くところなんだけど、軽くお喋りする時間ならあるよ! どうかしたの?
リチャーズ: ええ、少々。まず最初に、あなたには名前がありますか?
実体: ああ! 無いよ。
リチャーズ: 成程… 何処からいらっしゃいました? 何故ここに居るのですか?
実体: アランが僕を作った! びっくりして逃げちゃったみたいだけど、きっとただの誤解だよ。だってアランは僕を心底必要としてるから。
リチャーズ: 何故、彼はあなたを必要としているのですか?
実体: それはね、僕が一番のファンだからだよ! 彼に会わなきゃ!
リチャーズ: それで、彼に会ってどうなさるおつもりですか?
実体: うーん…
[数秒の沈黙。]
実体: えっとね… 友達になるのさ、勿論! そして一番のファンに! きっと最高だよ。
リチャーズ: 良い考えかどうか分かりませんね。我々と一緒に来ていただけますか、その件についても話し合いましょう。
実体: 遠慮するよ! 急いでるから!
実体は再び捕獲を逃れようと試み、町の郊外でUIU捜査官に拘留されたムーアと出会うまで回避行動を取り続けた。
実体: 見つけた!
ムーア: またお前か? 俺に近寄るな!
実体: えっ、何で? どうしたの?
リチャーズ: 離れなさい!
実体: 訳が分からないよ! どうしてアランに会っちゃダメなの?
ケル捜査官: ムーアさん、我々と一緒に来てください。変則存在には彼らが対処します。
ムーア: [バンに乗り込む。] 頼む、そうしてくれ。
実体: 待ってよ、なんで行っちゃうの?
リチャーズ: その場に止まりなさい、今すぐに!
実体: だけどアランに会わなきゃいけないんだ!
実体はまたしても高高度に上昇して捕獲を逃れようとした。航空支援部隊が出動したが、曇天のために目視確認が遮られ、実体を発見できなかった。より恒久的な解決策が見つかるまでの間、ムーアはUIUの前哨基地に移送された。
2001/2/23: 実体はムーアが一時的に移送されていたUIU前哨基地のすぐ外で目撃された。実体の注意を逸らすためにリチャーズ捜査官が再び派遣され、他職員は別地点へムーアを避難させる準備を整えた。
リチャーズ: もしもし?
実体: こんにちは、また会ったね! アランを見なかった? ここに居るはずなんだけど…
リチャーズ: 残念ですが、今あなたを彼と会わせることはできません。我々の質問に幾つか答えていただくまでは。
実体: ねぇ、どうして?
リチャーズ: あなたは大変な問題になっているからです。こんな風に出歩かれてもらっては困るのですよ。あなたのせいで大混乱が起きていて、我々がそれに対処しなければならないのです。
実体: ああそんな、本当にごめんね。人に迷惑をかけるつもりはなかったんだ、ただ僕はどうしてもアランに会いたくって!
リチャーズ: それこそ私がお訊きしたかった事です。何故そんなにもムーア氏に会いたがるのですか? 何故その目標はあなたにとってそこまで重要なのですか?
実体: 君は僕みたいにアランを理解してないだけだよ。僕には彼の本当の姿が見えるんだ!
実体は飛行し、ムーアを前哨基地外に移動させていた輸送車両に体当たりした。衝突の勢いで車両は破損した。負傷者はおらず、ムーアが最初に車両から退出した。
ムーア: お前! 失せろと言ったはずだ!
実体: でも君にどうしても会いたかったんだ!
ムーア: 止めろ! 止めてくれ! 構わないでくれ! お前にはここに居てほしくない!
実体: どうして?
ムーア: お前を創って以来、ずっと俺に迷惑を掛け通しだからだよ! 俺をつけ回して苦しめやがって。お前を召喚したのは真逆の事をしてもらうためだったのに!
実体: 僕は君の友達になりたかっただけで…
ムーア: 友達はどんな時もずっと一緒に過ごすもんじゃない! 自分がどれだけ相手を愛してるか、尊敬してるかを語り続けたりしない!
実体: だけど、それこそまさに友達がやる事だよ!
ムーア: いいや、ファンがやる事だ。お前には両方になってほしかったが、悪い方の半分だけが身に着いたらしい。
実体: 僕を友達にしたくないだけじゃないの?
ムーア: そりゃ本当はそうなりたかったさ、だけどな-
実体: じゃあ、どうして友達にしてくれないの? 君はチャンスも与えてくれないじゃないか。
ムーア: お前が四六時中苛立たせてくるからだろうが!
実体: ならいいよ! 僕だって君の友達になんかなりたくないや!
実体は上昇して雲の中に消えた。その後間もなく、雨が降り始めた。
2001/3/03: 上記の事件以降、実体は目撃されていない。しかし、ムーアは実体が書いた可能性が高い手紙を受け取り、FBIにそれを提出した。
親愛なるアラン、
君が元気で過ごしていればいいなと思います。前回話した時は怒ってしまってごめんなさい。僕はうざったい奴だし、きっと君を友達にしようと働きかけるのを止めるべきなんでしょう。もうこちらからは構わないつもりだけど、まだ君の友達になりたいです。友達になろうとすると最初は嫌われることもあるかもしれないと分かったけど、それでいいんです。ただ、いつか、あなたが僕に会いたいと思ってくれることを願ってます。僕はあなたが考えているよりも誠実だと約束します。
ありがとう。