シリーズ概要
2017年12月17日、東京都を観測史上最大級の現実崩壊事象が襲った──通称“大災”と呼ばれるそれは、東京をありとあらゆる異常な手段で破壊し尽くした。物理法則の逆転、意味論の崩壊、時空間の断裂/拡大/圧縮、多世界融合、人間性の改変、上空から降り注ぐビルの雨。
当時たまたま地下にいた者、あるいは何とか地上部から避難してきた者。彼らはそのまま地下へと閉じ込められ、そこでの生活を余儀なくされた。
時は流れ、生存者たちは各駅に独自のコミュニティを築き上げ、交易や衝突を繰り返していた。未だ地上の地獄絵図は終わる様子を見せず、帰還の目処は立っていない。そのうえ、地下を蠢く存在は人類だけでは無かった。
時空間の歪んだ地下鉄網を“デンシャ”と呼ばれる巨大な怪物が絶叫しながら疾走し、下水道からは爬虫類とも昆虫とも見分けのつかない何かが這い出し、蠢く肉塊の群れがバリケードに押し寄せている。
それでも、人類は灯りをともし、かつての世界を伝え、怪異に対抗し、食物を得て、生を繋いでいく。そして何人かはまだ地上への希望を諦めていない。
──地下東京へようこそ。他では考えられない「奇妙」の話をしよう。
特異環境「地下東京」
地下東京奇譚は、その名の通り大規模な現実崩壊災害に伴い東京地下に発生した異常領域“地下東京”に関する作品集だ。とはいえ、この地下東京に関する設定は、意外にもあまり固まっていない。まあ、基本的な共通見解をいくつか挙げておこう。
Ⅰ. 地上にはそう簡単にはたどり着けない
地下東京は地上部とは隔絶されている。そもそも、本当に基底現実に留まっているかも定かでない。いくつかのポイントを通じて地上にアクセスすること自体は可能だが、大規模な現実嵐が吹き荒れる地上で生き延びることは難しい。もし現実崩壊の現場に鉢合わせてしまえば、君の両手が飴細工に変化したり、突然上空に吹っ飛んでいってしまってもおかしくはないのだ。とはいえ、やりようはあるのかもしれない。
Ⅱ. 地下では現実崩壊が弱まっている
地上部の現実崩壊は、地下ではやや緩和されている。少なくとも、人々が今日の生活を送れる程度には安全を確保してくれる。しかし、あくまでもやや緩和されているだけであって、影響が及んでいないわけではない。時空間は相変わらずメチャクチャになっているし、アノマリーは変わらず大量に蠢いている。中には現実崩壊の影響がダイレクトに届く地域もあるだろう。
Ⅲ. 人々は駅周辺にコミュニティを作って暮らしている
地下東京の人々は、各駅に独自のコミュニティを作り上げ生活している。時空間拡張によって駅間の距離がかつてより離れてしまっていることもあり、駅ごとに独自の文化や信仰、経済圏が構築されることも珍しくない。時空間の流れすら一定とは限らず、場合によっては地上の文化がとうに消え去り、異形の文化体系を築き上げるような場合さえあるかもしれない。
Ⅳ. 人々は生きることを諦めない
突然の大災害によって暗闇の中に放り出された人々は、かつてと全く異なる暮らしを余儀なくされてしまった。とはいえ、人間は逞しい。過酷な環境に適応してしぶとく生き延びた人々は、お互いに助け合ったり蹴落とし合ったりしつつ、明日すら見通せないトンネルの中で命を繋いでいる。彼らは地上のことを忘れてしまったかもしれないが、それでも生きることに貪欲で、生存の希望を決して捨てることはない。
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路線図
地底には東京地下鉄 (東京メトロ) と都営地下鉄の二大地下鉄を中心に、大小様々な路線が縦横無尽に走っている。大災の影響で時空間が歪んでいるため、地形や距離関係は必ずしも地図通りとは行かないが、このマップは多少は役に立つだろう。
東京地下鉄・都営地下鉄の路線図 (一部抜粋・マウスホバーで拡大)。フルサイズはこちら。
駅コミュニティ
■ 東京駅
地下東京で最も文明レベルが高く、地上時代の様々な技術や知識が伝えられている駅。地下世界のバランスを維持し、人類文明を存続させることを目的に、暦の発行、下層駅への栄養食や物資の提供、通信ケーブルの保守、抗争の調停、路線図の更新、異常生物との戦闘など、様々な活動を行っている。大災の発生直後、地下に取り残された財団やGOC、東京メトロの職員らによって設立された。
人類存続のため、各駅から人材を招聘して教育し、元の駅に再派遣するか、あるいは東京駅職員として雇用している。雇用された場合、職員は以下に示す七大局のどこかに配属されて活動することになる。
- 生活局: 地下における人類の生存環境を維持する、東京駅で最も巨大な部署。キューブと飲用水の生産、発送電、酸素の生成、排水ポンプの設置、駅設備の更新、デンシャの養殖・加工など、生活に必要な全ての事物を担当している。
- 運輸局: 路線図の編纂と更新、探索隊の派遣、各種脅威の調査など、駅外活動を行う外征部門。保線軍を指揮下に置き、同盟下にある駅の防衛や敵対生物の間引き、電車賊の掃討などの治安維持任務に当たっている。デンシャのダイヤ推定と策源地たる“巣”の特定を最重要任務としている。
- 逓信局: 同盟駅への布告官の派遣や交渉・通訳、壁新聞の掲示、主要駅毎の暦算、ラジオ放送や短波無線の中継、地上への救難信号の発信などに携わる連絡係。死傷率が非常に高い部署のため所属は完全志願制だが、士気もまた高い。
- 工務局: 線路及びトンネルの補修維持を担う建築部門。復元力によって絶えず変形を続ける駅内で各種プラントや施設を稼働させ、居住環境を維持するなど、見えない部分での駅への貢献は計り知れない。
- 教育局: 新駅員の徴集と訓練、幹部候補生への知識焼き付け、原始化駅への再啓蒙などを行う学校。東京駅を除けば、まともな高等教育システムが生きている場所は地下東京にほとんど存在しない。
- 研究局: 別称は“総研”。各種技能や知識が失伝しないよう文書化・保存を行っているほか、地上生まれの研究者を集め、地下環境の研究や兵器開発も進めている。
- 管理局: 東京駅の統治者であり、これまでに挙げたすべての部署とそうでない部署を率いている。総大駅長の所在を知っているのは彼らだけだ。
財団を母体とした組織ではあるものの、GOC構成員や民間人も数多く参加しているため、規律や秘密の保持に関してはかつてほど厳しくはない。旧財団時代同様に、地下世界で確認されたアノマリーの調査や記録も行っているようだが、資材の不足から収容活動は必要時を除きあまり行われていないようだ。
■ ギンザ同盟
築地、新橋、銀座の三駅連合で、地下で最も裕福な勢力。大災当時、これらの駅に集まった民間人は東京駅による管理を拒絶し、駅に保管されていた膨大な災害用備蓄を背景に独立を宣言した。東京駅に近く、脅威の少ない比較的安全な立地であるため、主に食料と武器の貿易で巨万の富を築き、地下人口の拡大に多大な影響を与えている。
統治者は各駅代表と有力な商人で構成される商業連合会。東京駅とは軍事条約を結び、相互防衛義務を有している。傭兵制度による強大な軍事力を持つものの、人口過密から来る拡大志向や冷凍マグロ鉱脈の採掘権を巡る対立から駅同士の足並みが揃わず、勢力としては常に紛争の火種を抱えている。
新宿のオオウツロ。そこから遥か頭上に見える太陽と青空は、地下で生きる彼らにとって夢幻のごとき存在だ。
■ 新宿駅
西方で最大級の規模を誇る駅であり、複数の周辺駅を傘下に治めている。しかし東京駅などの東方勢力とはあまり接触が無く、詳細は伝わっていない。駅全体を縦貫する巨大な大穴「新宿のオオウツロ」を有し、地下では非常に貴重な青空を目にすることができる。
地上に繋がっているとされる巨大な縦穴。大災の影響で空いたとされるこの大穴の発生に伴い、穴の周囲に駅構内の構造が何十何百と複製されたため、新宿駅はかなりの数の住民を収容することができている。地底で太陽を直接目視可能な場所はここ以外にそう多くない。
オオウツロ上空には巨大な時空結節点が存在しており、東京の時空断層に巻き込まれたありとあらゆるものが落下してくる。新宿駅の住人の一部はカケアミと呼ばれる職についており、オオウツロ内に足場や網を貼り巡らせ、落ちてきた物資を回収して直接生活に利用したり、商人に売り飛ばしたりしている。
人々は太陽光の恩恵を受けられるオオウツロの周囲に集まっている。上層には駅の統治者と商人や技術者、中層〜下層にはカケアミを含む肉体労働者が暮らしている。基本的には下層、かつオオウツロから離れた場所へ行くほど貧しく過酷な暮らしとなり、最下層の住人はもはや人間かどうかさえ怪しいと言われている。
底については最早あるのかないのかも不明だ。いくつかの神話や伝説はオオウツロに終わりがないと語っている。一方で、新宿駅形成初期の説話は明確な“底”があることを示唆している。だが、中層民と下層民の分断が進んだ今となっては、その正確性を直接確認しにいくことは些か難しい。答えはきっと、オオウツロの闇か遥か深層の“人でなし”だけが知っているのだろう。
オオウツロから降り注ぐ物資、そして太陽光を利用した上層の農業システムにより、新宿駅は東方勢力の技術・資源に頼らず繁栄している。かつては丸ノ内線を通じた第一次駅間戦争にて東京駅側と抗争を繰り広げたこともあり、戦後も緊張関係は継続している模様。東京駅からスパイが潜入しているという噂もあるが、真相は定かではない。
■ 赤坂見附駅
丸ノ内線の渋谷駅と東京駅の中間に位置する小規模な駅。永田町駅とホームを挟んで隣接しており、それらの駅コミュニティ同士で小競り合いを続けている。人口はせいぜい30人程度、他の巨大な駅が歯牙にも掛けない弱小駅だったが、「天使」の降臨が全てを変えた。
■ 大手町駅
東京駅の少し北に位置し、多くの路線が交差する交通の要衝。時間流が非常に早く、事変発生から地上時間13年の間に住民の世代交代が5回も発生している。さらにメトロの中では生活環境は上流の部類であるため、結果として強烈な人口爆発が発生している。このため、駅住民は新たな居住区を求めて多数の穴を掘り進めており、この過程で時折奇妙なものを掘り当ててしまうこともある。
駅以外の集団
■ ジムシ
旧都営新宿線の九段下駅周辺を縄張りとする、奇妙な格好をした集団。全身を覆う戦闘服と昆虫めいた多眼暗視ゴーグルを着用し、蒸気式ニードルガンや切削刀などの古めかしい武器を携えている。“テンノウヘイカ”をお救いするためと称して日々デンシャと戦い、“コウキョ”への潜入計画を企てている。その言動から、東京駅は戦後地下に潜伏していた大日本帝国異常事例調査局 (IJAMEA) の残留兵であるジライとの繋がりを疑っているようだ。
■ 白服
地下東京深部にて稀に目撃情報がある、詳細不明の集団。何らかの研究/実験を行っているらしく、一説には下水ワニの発生源ではないかと目されているが、結論は未だ出ていない。東京駅は倒産後地底に逃げ延びた、日本生類創研残党との繋がりを疑っており、かつて指名手配を受けた危険な構成員が地下で野放しになっている可能性を危惧している。
■ 電車賊
放棄された駅やトンネル、デンシャを根城にする移動強盗団。様々な駅から除け者にされた人々が武装して徒党を組んだ集団であり、孤立した駅や物資輸送中の列車に強襲を仕掛け、食料や資財、女子供を強奪していく。
■ アラカワ棄水域
入谷や浅草、北千住など、荒川からの浸水によって水没した駅と路線の総称。排水システムの破損によるとめどない浸水と、それに伴う原生生物群の襲来から東京駅一帯を守るため、かつて東京駅により線路ごと切り離された。隔壁建設を巡る抗争と、閉鎖後の水難で数多くの住人が犠牲となった。上野駅の防水扉は何十周期も開放されていないが、時折向こう側から扉を叩く音や叫び声が聞こえるため、水没した居住区に生存者がいる可能性がある──過去に何度かそれらしき生物が流れ着いたこともあるが、彼らはもはや人の形をしていなかった。
■ サイト-81GB
旧皇居地下350 mに存在していた財団秘匿施設。大災後は外界から半ば隔絶されていたが、いくつかの機器システムの復旧により、東京の嵐の中に現れた新規オブジェクトの収容・管理業務を細々と遂行する力を僅かながら取り戻し、活動していた。
サイト管理者は「乾 圀元」という名の老人男性。サイトには「黒井 愛」なる人物が在席しているが、管理官から丁重に扱われているなど、その素性には謎が多い。地上歴2030年代に彼らは広大な地下東京コミュニティの存在を把握し、驚愕することになる。
■ 東京脱出青年団
地下東京の形成当初、東京駅の一部財団職員らが中心となって、地下鉄網を通り東京外部への脱出を試みたことがある。彼ら“東京脱出青年団”は長旅の末、犠牲を出しつつも何とか東京の端近くまで辿り着いたものの、残念ながら脱出には失敗し、失意とともに帰還した。以後、東京駅周辺を中心に、各地に元青年団のメンバーが散在している。
彼らの伝えた知識・技術は地下環境の各所で活用された一方、彼らの背景を知る者はあまりいない。もしかすると、君が駅の奥地で出会った怪しげな中年は、かつて夢見た青年であったのかもしれない。
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地底生物
地下東京には、地上部で荒れ狂う現実崩壊の余波で発生したり、かつての要注意団体が生み出したことで、様々な怪生物が生息している。これら生物の影響で、地下では異様極まりない生態系が成立しており、住人たちは時に彼らを狩ったり、あるいは逆に狩られたりしながらサバイバル生活を送っている。
あるニクデンシャの個体のスケッチ。車両内部を中心に多量の肉塊が見て取れる。車両全体が肉質の組織で覆われていたり、あるいはもっと形容し難い姿をしている個体も多い。
■ ニクデンシャ
肉に覆われ断末魔のごとき叫びを上げながら、線路を高速で走り回る巨大な半機械半生物。単に“デンシャ”と呼ばれることも多い。一定のダイヤに則って活動しており、定期的に駅に停車する。乗り込むことも可能だが、注意しなければそのまま帰ってこれなくなる──食べられたのか? 取り込まれたのか? 答えはニクデンシャのみぞ知る。
地下東京の頂点捕食者であり、おそらくは線路上/線路脇で出くわした生物を捕食することで生きながらえているものと考えられる。このため、駅間を移動する際はダイヤや“鳴き声”などに細心の注意を払いつつ移動することが求められる──もしそうしなければ、そいつは枕木にこびりついた肉片と消え果てることになるだろう。
強大な脅威である一方、ニクデンシャは地下の貴重なタンパク源となっており、住民は組織を削ぎ落としたり、あるいは直接戦って仕留めたりして、その肉を手に入れ食べている。とはいえ、種類や個体ごとに生態・行動様式・付属器官などに差異があり、場合によっては毒針や触手が付随していることもあるため、狩猟・調理は一筋縄ではいかないことも。
遺伝子的にはヒトに近いらしく、その起源は不穏である。大災発生時に電車とその乗客が現実崩壊によって融合、独自生物化した存在ではないかという仮説が提唱されている。
■ 下水ワニ
主に下水道付近に生息する巨大生物の総称。パニックに陥った住人が暗所でワニと見間違えただけで、おそらくワニそのものではない。とはいえ、そのまま呼名が定着したためこう呼ばれている。実際には爬虫類型、哺乳類型、昆虫型、あるいはそれらが入り混じった形容し難い怪物など、多様な個体が汚水とともにコンクリートの迷路を徘徊している。
ニクデンシャ同様に地下東京で最上位に位置する捕食者であり、個体数こそ少ないものの、強力な個体はニクデンシャすら喰らうとされる。これまで数々の探査隊が屠られており、万が一対峙しなければならない際は、最悪の事態になる可能性も留意しておくべきだろう。
その出自は“白服”と繋がりがあるようだが、詳細は不明。
■ ウラ
地下東京の東方、特に東京駅周辺で発生する肉塊状の何かの集団。その正体は、大災により現実が不安定化したことで、こちらへ侵入してくるようになった裏東京の住人たちである。集団で湧き出しては駅に押し寄せてくるため、小〜中規模の駅では甚大な脅威となり得る。
駅コミュニティの用語
■ モヤシ
大豆を暗所で発芽させた野菜。ビタミン源の少ない地下における最重要食料資源だが、いくつかのプラント駅でしか生産できないため、地下交易における主要な取引物資となっている。多くの駅の中で最も大量のモヤシを安定生産できることが、東京駅の隠然たる影響力の源泉。
■ 下水送り
地下における最上級の刑罰、または試練。旧下水道の本管は迷宮化し、毒素の混じった汚水や毒ガスが滞留する中を異常生物が跋扈しているため、送り込まれた者の多くは生きて帰れない。司法制度が機能していない地下における、実質的な死刑宣告。とはいえ、中には生き延びて電車賊入りする者などもいるようだ。
■ ローチ・バー & ブラウン・キューブ
養殖高栄養ローチを挽き、味をつけて固めたもの。地下東京に広く流通しているが、大多数の都民は原材料について認知していない。この他にも様々な昆虫類や、養殖ネズミなどが食されているようだ。
■ 地上
かつて人類が暮らしていた場所。地上生まれの住人や、一部の地底世代の人間は地上に“帰る”ことを夢見ている。地底では滅多に拝むことのできない太陽と青空は、地上の象徴として語り継がれる。
なお、 地上では大災で生じた様々な異常物資を求めて民間の“探京家”が重武装で探索していたり、財団や政府、企業の調査隊が蠢いていたりするが、それはまた別の話。なお、ごくまれにこうした探索者が地下に“落ちてくる”こともあるようだが……?
■ 大災 / 大崩落
地上では“東京事変”の名前で呼ばれる世界最大規模の現実崩壊災害で、2017年12月17日に突如発生して東京地方を壊滅させたうえ、そのまま26年間同地方で現実嵐を引き起こし続けた。2043年12月27日にようやく終息し、それに伴い地下東京は地上の人々と再会することになる。
■ 第一次駅間戦争
地上歴2031年頃に発生したと目される、東京駅勢力と新宿駅勢力の武力衝突。地底の時間流が早いこともあり、当時の出来事は神話を交えて語られ、何が正しいかはもはや分からない──しかし、人々の遺恨は今なお残ったままだ。
■ 駅構造維持力
駅や線路の構造を維持している謎の力。これにより損傷はゆっくりとだが自然に修復され、水や電気、果てには空気の供給ラインが維持されている。とはいえ、地上からの現実干渉などによって本来とは異なるかたちに変質してしまうことも珍しくない。
一説によれば、地下東京という環境そのものが一種の生命体のような存在になっており、駅構造維持力はその自己修復力にあたるとされるが、真相は定かではない。
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地下東京異説
語り部たちが語る地下東京の証言は、時にズレていることがある。これらは“信頼できない語り手”によるものかもしれない。地下東京の時空間異常が何か悪さをしているのかもしれない。神話や伝説、現実、後世の創作が混同されているのかもしれない。あるいはもっと、根本的にタイムラインが異なるのかもしれないし──実は矛盾無しに背後で全て繋がっているのかもしれない。取捨選択は君に委ねられている。
地下東京における財団
地下における財団の解釈としては、主に以下が存在する。基本的には、東京駅に財団後継組織の拠点がある点は一致している。
- “理性的統治者”の東京駅: この解釈では、東京駅は理性的かつ巨大な統治者として、地下東京 (少なくとも東部) において大きな影響力を有する。ハブに掲載されている解釈はこれに当たる。
- “理性的統治者”とは限らない東京駅: この解釈では、東京駅が巨大な影響力を有する点は変わらないが、理性的側面が減じてしまっている。結果、遺物を私利私欲のために使用する、周辺駅に侵略的行動を採るといった面がより強く現れる。『ヤナ駅録』シリーズにおける解釈はこれに当たる。
- サイト-81GB: この解釈では、東京駅勢力とは別個に財団サイトの生き残りが存在すると考えている。詳しくは「駅と人々」タブのサイト-81GBの項目を参照してほしい。解釈次第では、サイト-81GBの存在はあまり考慮されない場合がある。
地上での地下東京把握
基本的には、2030年代頃から次第に地上でも地下東京の存在が把握され始めると考えられている。ただし、これも解釈次第で時期が前後する。
- 2030年代前半〜2030年代中盤: この解釈では、地下東京の存在は少なくとも2030年代前半〜中盤には地上に把握されると考えられている。『ヤナ駅録』シリーズにおける解釈はこれに当たる。
- 2030年代後半〜2040年代前半: この解釈では、地下東京の存在は2030年代後半から、現実崩壊が終了する2040年代前半にかけて地上に把握されると考えられている。『少年少女地底紀行』シリーズにおける解釈はこれに当たる。
上述するように、これらの解釈をどう扱うかは君次第だ。地下東京については連作というより、ある種のロケーションと考えてもらっても構わないだろう。
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1998年カノンとの関係
地下東京奇譚は、カノン『1998年』内で展開されている。とはいえ、地下東京奇譚は番外編やスピンオフのようなものであって、カノンの本筋には大きく関わらないし、複雑な設定等を色々把握しておく必要もない。事実上の「半独立」状態だとでも思ってもらえればいいだろう。
親元との関わりを以下に書き出しておく。
カノン『1998年』は、1998年のポーランドで起きた邪神との戦闘をきっかけに、財団やアノマリーの存在が明るみに出た世界を描く合作企画だ。ジャンル的にはSFや現代ファンタジーに近い。このため、大災以前の東京には異常を利用した技術 (パラテクノロジー) や亜人種族などがちらほらと存在しており、それらとは地下東京でも偶に出会うことがあるかもしれない。
そんな情勢であるから、財団の存在もかつては広く知られていた。東京駅勢力も地下にあった財団サイトが母体となっているし、地下で元財団職員のキャラクターが登場することもある。とはいえ、ほとんどの駅コミュニティではもはや財団のことはほとんど忘れ去られてしまっているようだ。
カノン『1998年』のシーズン2017『東京事変』では、2017/12/17に東京都一帯で発生した大規模な現実崩壊災害“東京事変”について描かれる。そして、この“東京事変”こそ、人類が地下に下ることになった原因の“大災”そのものである。このため、地下東京奇譚はシーズン2017に所属していることになるが、それほど深く意識しなくても構わない。地上の事情も描く場合は、地下東京以外の記事も参考にするといいだろう。
地下東京奇譚は1998年カノンを知らなくても読める (そして書ける) ように構築されている。地下東京には超技術や複雑な政治情勢はほとんど存在しないし、ジャンル的にも大きく異なる。ただし、1998年カノンの中核テーマである“強い人類”は維持されている。
1998年カノン本編では「苦難を乗り越えて前進する」というかたちでこのテーマが表現されているが、地下東京奇譚ではむしろ「厳しい環境に適応して生き抜く」というかたちでこのテーマを表現している。たとえ大災害を前に全てを失おうとも、人類が滅びることはない。
概ね2030年代〜2040年代にかけて、地下東京は再度地上に把握されていくと考えられている (時期は解釈次第で前後する)。2043年に東京地上部の現実崩壊が止んで以降は、本格的に外部にも知れ渡り、人や物資も交流するようになっていくだろう。
このため、2043年以後の作品では1998年カノン本線との絡みが増えることになる。将来的にはある種の自治都市となるだろうが、司法がロクに届かないこの場所は、闇医療など様々な犯罪の温床となることが予想される。
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執筆ガイド
『マンハッタン・クライシス』などと違って、地下東京奇譚はあまり厳密には設定を縛っていない。これは大本のシーズン2017『東京事変』自体があまり設定を縛っていないためでもあるし、地下東京奇譚の初期作品群が著者ごとに解釈や味付けに大きな差があったためでもある。
このハブの解釈も絶対ではない──地下東京は謎めいた空間であり、必ずしも一つの解釈が正解であるとは限らない。……要するに、割と自由にやって構わないということだ。
とりあえず、まずは適当にハブや記事を読んで、地下東京の雰囲気を掴んでほしい。設定決めで迷っている部分があれば、SCP-JP 公式チャットの#1998年チャンネルか、あるいは独自サーバーである1998年 運営会議場の#地下東京チャンネルで相談してみてくれ。
何か良いアイデアを思いついて、それを共有/ブラッシュアップしたい場合は、上述したチャンネルを訪れてくれ。下書きが出来上がった時も、ここで共有してくれれば、有識者が批評してくれるかもしれない。
また、地下東京シリーズ専用のCSSテーマを
R74氏よりいただいている (このハブで使われているものだ)。このテーマを使用したい場合、記事冒頭に以下のコードを追加してくれ。
[[include :rtas:n-theme:under-tokyo]]
なお、PC表示でサイドバーを折りたたみたい場合は、以下のコンポーネントも併用するといい。
[[include :pseudo-scp-jp:user-component:r74-toggle-sidebar]]
記事を投稿する際は、「1998」と「地下東京奇譚」のタグを付けてくれ。投稿からしばらく経って、評価が安泰と判断できるのであれば、上の「胡乱な文書記録」欄の該当箇所に、以下の書式に則って記事を掲載してほしい。シリーズに所属しているならその欄に、独立した作品であれば「語り部たちの言葉」欄に記事を追記してくれ。
[[div class="article"]]
* [[[ページネーム (URLのwikidot.com/以降)|タイトル]]]
* by [[*user 著者名]]
* 短めの紹介文/引用文
[[/div]]
例:
[[div class="article"]]
* [[[the-station-the-war-the-angel|駅・戦争・天使]]]
* by [[*user carbon13]]
* 少女は全体的に硬質な生物的ではない肌を見せていた。何度叩いてもびくともしなさそうなその強固さは、むしろデンシャのそれと似ている様な気すらした。
[[/div]]
- 駅・戦争・天使
- by
carbon13
- 少女は全体的に硬質な生物的ではない肌を見せていた。何度叩いてもびくともしなさそうなその強固さは、むしろデンシャのそれと似ている様な気すらした。
改行したい時は以下のコードを使ってくれ。
[[div class="article"]]
[[ul]]
[[li]] [[[ページネーム (URLのwikidot.com/以降)|タイトル]]] [[/li]]
[[li]] by [[*user 著者名]] [[/li]]
[[li]] 短めの紹介文/引用文 [[/li]]
[[/ul]]
[[/div]]
その他に何か質問や要望があれば、上のチャンネルで連絡してくれれば対応する。
スペシャルサンクス
「地下東京」の原案者である
Lychee氏、アイコンの製作とCSSテーマのデザインに携わった
SOYA-001氏、CSSテーマを製作された
R74氏、ならびに設定創発・考証に携わった多くの方々に、この場でもって深い感謝を示させていただきます。
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