新年の計は元旦にあり

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efgiwahoc 2022/12/31 (土) 23:56:11 #43811766


もうすぐ2023年だし、厄落としも兼ねて去年実家に帰省した時の話をカキコ。
俺の実家は何にもないド田舎で周囲には田んぼと山とやたらでかい家、あとは墓場しかない。墓場っていっても山の中にある共同墓地みたいなところだから実家の窓を開けると見えるのは八割くらいが山だ。
で、実家に帰った時に絶対やらなくちゃいけないのがその日のうちに墓場にお参りすること。どんなに疲れててもめんどくさくてもこれだけは欠かしちゃいけないらしい。
いつもは早めに実家について日が高いうちにお参りしてさっさと夕飯の準備するのが習慣だった。めんどくさいし、夜の山は何が出てくるか分からないからな。
でも去年だけは違った。出発が遅れたのと高速が混んでたんで、実家についた時にはもう日付が変わりかけてたんだ。そのまま風呂入って夕飯食べて、俺たちはすっかりお参りのことを忘れて紅白見てた。
気づいたら、年が明けてた。こたつでほとんど寝てた俺は木を切る音で目が覚めた。
木を切り倒す時の音を聞いたことがあるやつなら分かると思うけど、乾いた音の後に地響きが来るみたいな感じのあの音がやたら家の近くに聞こえた。しかも一回や二回じゃなくて、家の周りの山を全部切り落としそうな勢いで何回も何回も。地震かと思ったけど携帯には何も表示されてない。つけっぱなしのテレビには深夜の寺が映ってるだけでやっぱり地震速報とかそういうのは出てなかった。
そのうち家族が起きてきた。手に、何だかよく分からないものを持ってた。釣り針に取っ手がついてるみたいな感じだった。それが玄関に刺さってたらしい。取っ手は紙でできていて、そこに俺の名前が書いてあった。達筆な筆の文字だった。
それを見た途端に家族が血相変えて、俺は一人で墓場に行った方がいい、針に選ばれてしまったから、みたいなことを言い出した。寝起きで俺の頭がボケてるのか、そうじゃなきゃみんな頭おかしくなったのかと思ったけど、地響きみたいな音はだんだんと大きくなっていくし行かないと家族に殴られそうな勢いだったんで、俺は言う通りに墓場まで向かった。
家の近くの坂道を登った山の真ん中あたりに墓場はあって、結構近い。だんだん街灯が少なくなる山道をバイクで登っていく。外は寒いし音はすごいし帰りたいけど帰ったら家族に殺されそうだ、みたいなことを考えてた気がする。押し付けられたミネラルウォーターの入ったペットボトルの冷たさだけが俺の正気だった。
墓場までついた時初めて、音は聞こえるのに木は一本も倒れてないことに気がついた。何も考えないようにしようと思った。とにかく早く帰りたかったんで、そっからは本当に何も考えてなかった。
ひたすら墓を探す。スマホの懐中電灯のおかげで、家の墓は早く見つかった。墓にミネラルウォーターをぶっかけて雑に手を合わせる。そしたらやたらと冷たい風が吹いた。木が倒れる音をかき消すくらいには強い風だった。
で、ふと目を開けると音は消えていた。あとはひたすら急いで家に帰って寝た。
あの針は家族が神社に持ってったらしい。結局何だったのかは聞けなかった。
今年は結局帰省しなかった。来年も多分しないと思う。

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