'ユニコーンの角' (HYTCH/8FNE6/B77KT)

HYTCH/8FNE6/B77KT

HYTCH/8FNE6/B77KT
状態	販売中
需要	高
価格	カプセル1個(50mg、純粋)につき500米ドル/400英ポンド、1塊(500g、不純)につき2500米ドル/2000英ポンド
入手可能性	供給チェーンが確立している
識別名	ユニコーンの角の粉末
説明	商品は粉末加工されたユニコーンの角であり、人間の消費に適した飲用カプセル形式の純粋なものと、工業用殺虫剤としての使用を意図した不純な塊の2種類が利用可能。商品は強力な遡及避妊薬の機能を有しており、性交及び生殖による身体へのあらゆる影響を打ち消す。不純版の商品には数種類の添加物が含まれるため、哺乳類やその他の脊椎動物に効果が及ばなくなっている。
マーシャル・カーター＆ダーク有限責任事業組合

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初期報告書
筆者	ヒューゴ・ボイル	日付	5月3日、1930年
重要度	中	識別名	ユニコーンの角の粉末
プロメテウス研究所が最近行ったラップランド遠征で、これまでは絶滅種だと考えられていた野生ユニコーンの群れが発見されました。遠征隊リーダーのアーウィン・トラスクはこの獣の価値を知っていたので、遠征隊に捕獲を命じ、研究のためにロンドンへ移送させました。我々の遠征資金援助への恩返しとして、プロメテウス研究所は3組の番いと、この動物に関するトラスクの覚え書きの複写を贈呈してくれました。 歴史的に、ユニコーンは数多くのオカルト的・超常的な特質を帯びていると信じられ、儀式や薬品製造での使用を試みる者たちによって絶滅の瀬戸際まで狩り尽されました。最新の試験で、これらの信念の一部は確証されています。最も注目すべきは、ユニコーンの角を擂り潰した粉を摂取すると、性行為の影響が逆転するという点です。具体的に言うと、角の粉末は消費者が過去一度も性交を行わなかったかのように身体現実性を再編成し、肉体を(精神はそのままで)童貞ないし処女の状態に戻します — その序でに、性病を癒し、生きている全ての子孫を殺害します。 プロメテウス研究所から提供された番いを利用して、ユニコーンの角の安定した供給ルートを確立し、避妊薬、治療薬、暗殺用具として販売することを推奨致します。
以下のファイルが開かれている:		HYTCH/8FNE6/B77KT
マーシャル・カーター＆ダーク有限責任事業組合

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在庫情報
HYTCH/8FNE6/B77KT
所有者	総量	コメント
マーシャル・カーター＆ダーク有限責任事業組合	20トン	総量の数値は未加工の角の現在備蓄を表す。
株式会社プロメテウス研究所	2トン	殺虫剤添加物の供給元; 殺虫剤生産の主要請負業者。
ICSUT	~460カプセル	学部の一部構成員が奇跡論の補助に使用。特定の錬金術式における試薬。
世界オカルト連合	~300カプセル	医療目的と想定される。
財団	5カプセル	科学的サンプルとして分析用に保管。
顧客 (個人)	~1300カプセル	避妊や性感染症治療の手段として使用。
顧客 (産業)	5トン	工業用・農業用の殺虫剤として使用。
その他	~500カプセル	多様なニーズを持つ様々な私人。
マーシャル・カーター＆ダーク有限責任事業組合

回収文書

メモ 12
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送信者	ヒューゴ・ボイル	受信者	サミュエル・ウッドワード
顧客の要求に応える必要性は理解していますが、残念ながら、現時点では供給量の大幅な増加は実現不可能です。 ユニコーンの角の供給は生物学によって本質的に限られていることをどうかご理解いただきたい。ユニコーンの妊娠期間は約1年間ですし、仔馬が収穫に相応しい成熟した角を発達させるまで、生後2年間は成長を待つ必要があります(それと、角が生えるのは雄だけなので、商品供給に貢献する仔馬は全体の50%に過ぎない点もお忘れなく)。角は再生しますが、そのプロセスには1年を要します。ユニコーンはその生涯を通して1頭あたり20本から25本程度の角しか提供できないと予想されており、飼育と世話の費用を考慮して、現在は最初の角の収穫後に大部分の仔馬を屠殺し、少数の雄を種馬として生かし続ける方針を取っています。屠殺した仔馬は無論、さほど重要でない追加収入源となる様々な製品に加工しています。 既にお分かりでしょうが、これはつまり飼っている繁殖雌馬の半分と等しい数の角しか生産できないという意味です。角の平均重量は18オンスなので、現在の種畜を考えると、2年ごとに約28ポンドの角が収穫されます。我々は勿論、種畜の増加に取り組んでいますが、ユニコーンの雌が生殖年齢に達するには5年かかり、5歳になったばかりで繁殖させるとしばしば奇形が生まれます。しかも、一部の種雄馬が自分の角を(もしくは雌馬が交配相手の角を)食べて、何の支障もなく育っていた子孫を殺してしまう問題に直面しています。この習性を防ぐ手段が調査で見つかれば、生産率は大幅に向上するはずです。 供給量が安定するまでの間、需要制御のために商品の入手可能性を制限することを提案します。
マーシャル・カーター＆ダーク有限責任事業組合

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メモ 34
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送信者	ミルドレッド・モレル	受信者	ヒューゴ・ボイル
選択的繁殖プログラムからようやく実質的なリターンが得られ始めた。最新の実験グループ(59B)では、仔馬の70%が9ヶ月で、90%が1年で角を最大まで成長させている。妊娠期間は11ヶ月のままなので、角の発達率をこれ以上削減しても生産性の向上はごく僅かだろう。今後の取り組みにおいては、角の平均サイズの増大と、複数の角が生える突然変異の後押しを重視するべきだ。 グループ59Bを介して達成可能な角の生産率の高さを考慮して、繁殖用種雄馬の角成長組織を化学的に焼灼し、仔馬殺しを防止する案を改めて推奨する。種雄馬から角を繰り返し収穫するのは不可能になるが、そのような追加収穫は今後我が社の年間角生産量において重視されなくなり、許容範囲の損失と見做されるだろう。角の化学焼灼は各個体の飼育コストを削減し、種畜の寿命を延ばす可能性が高いと見込まれている(多くの種雄馬は現在使用中の拘束システムを壊そうと試みて負傷している)。
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インシデントレポート 19
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筆者	ヒューゴ・ボイル	日付	10月5日、1963年
蛇の手の提携者と考えられる人物らによって行われた最近の業務妨害の結果、多数のユニコーンが死亡、もしくは負傷しました。 59Bユニコーン群の扱いを種畜へ移行したのに続いて、飼育手順は見直され、繁殖種雄馬の角の化学焼灼、拘束装置への依存の削減、各個体が自由に行動できる空間の拡大が盛り込まれました。これらの変更は種畜の健康状態を改善し、それによって個々の有用性を最大限に引き出す試みとしての措置でした。これらの努力の一環として、ユニコーンを扱う追加の調教師たちと契約を結ぶ必要がありました。私の前任者にして本プロジェクトの元監督者、サミュエル・ウッドワードがこれらの契約を管理していました。 ウッドワードは新任調教師のうち数名が蛇の手のために働き、我が社のユニコーン関連活動を終わらせようとしていた密偵であることに気付きませんでした。10月1日の夜、彼らは厩舎からユニコーンを解放しようと試みて、パニックに陥った動物たちから攻撃されました。数頭のユニコーンは残念ながらその後の再収容試行の最中に死亡し、少なからぬ警備員が致命的ではないにせよ重傷を負いました。幾らか憂慮すべきことに、仲間の死を目撃したユニコーンの多くはさらに攻撃性を高めたらしく、警備員を襲う過程で自らも傷を負うに至りました。 現時点で、私は本プロジェクトに関与する全ての従業員及び請負業者の見直しを実施しており、契約を結んだ調教師への依存を減らすために飼育手順を大幅に修正する予定です。
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外部文書 5
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組織	株式会社プロメテウス研究所	入手日	6月4日、1973年
入手方法	文書はプロジェクト提案の一環として同社と共有された。
文書
DDTの代替となるユニコーン由来殺虫剤の開発のための認可計画 問題 昨年、アメリカ合衆国は一般に使用されている最も効果的な殺虫剤の1つ、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)の使用を禁止しました。この禁止は、今後10年間拡大し続けるものと予想される国際的なDDT規制の波がきっかけです。この結果、DDTと同等の強さと有効性を備えた、しかし生態系と環境にはそれほど危害を及ぼさない新たな工業用殺虫剤のニッチが開かれています。我々はユニコーンの加工角を用いればこの要件を満たす殺虫剤が生産可能であると考えます。 解決策 ユニコーン(Equus castus)の角は、粉末状に加工して摂取すると特異な遡及的避妊薬として機能し、有性生殖のあらゆる肉体的副作用と結果を排除します。存命の子孫を有する生物がこれを摂取すると、その生物の寄与した要素は子孫のゲノムから取り除かれ、多くの動物種において問題の子孫は即死します。この効果は哺乳類、特にヒトにおいて最も深く研究されていますが、初期の実験試行では、外部授精する昆虫などの他種生物にも同様の効果があると示唆されています。 多くの昆虫種は共生的性質を有するため、殺虫剤という観点から見たユニコーンの角は、史上最も効果的なものとなる可能性を秘めています。コロニーの女王が摂取すれば、そのコロニーの大部分ないし全体が死滅します。非共生的昆虫への壊滅的影響は低くなりますが、殆どの昆虫種の生殖率は非常に高いので、依然として哺乳類よりも大きな効果が期待できます。 事業例 この製品は昆虫の大規模な蔓延を速やかに駆除するための工業用殺虫剤として販売されます。これほど強力な殺虫剤に対する個人需要は低いので、個々の消費者による使用は恐らく限られるでしょうが、シロアリが蔓延する住宅での使用というケースも想定できます。殺虫剤として無差別であるが故に、花粉媒介者やその他の有益な昆虫への深刻な脅威を呈するため、農業目的の使用も恐らく制限されます。 資金の使用 このプロジェクトの資金の大半は中和添加物の研究に向けられます(詳細は“既知の問題”を参照)。しかしながら、適切な添加物が一度発見されれば、未加工のユニコーン角を使用可能な殺虫剤に変換する製造プロセスは比較的安価に設計できるはずです。従って、プロジェクトの全体的な研究開発予算は25万米ドル以下に収まると見積もられています。 既知の問題 ユニコーン角を殺虫剤として使用するうえで最大の障害となるのは、避妊効果の無差別性です。もし改変を加えずに展開すれば、流水の中に蓄積された角粉末が広範な生態系の崩壊を引き起こす重大なリスクが生じます。害虫ではない生物種に対する粉末の効果を中和できる添加物の開発が求められており、そのためには避妊効果の裏にある作用メカニズムへの理解を深める必要があるでしょう。
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メモ 47
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送信者	ミルドレッド・モレル	受信者	デイヴィッド・バーロウ
プロ研の提案が興味をそそるのには同意するが、彼らが提案した規模で殺虫剤を生産するには、我が社が角の生産量を1桁以上増やさなければならない。当然、種畜を増やせば実現できないこともないが、それほど大規模な群れを養うために必要な資金と労働力の大幅な増加に対する私の懸念を理解してもらえれば嬉しい。 これこそ、各ユニコーン個体が生産する角の量を増やすために一連の社内遺伝子実験を許可した理由だ。アントニーは、プロ研のTAGプロセスを使えば成獣の制御された突然変異を誘発し、角をさらに成長させられると考えている。上手くいけば、それで事業を拡大することなく生産キャパシティを増やすことができる。
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メモ 51
HYTCH/8FNE6/B77KT
送信者	アントニー・モレル	受信者	ミルドレッド・モレル
TAGプロセスは実験グループ75Fで遂に実を結んだ。角成長組織が骨格の80%を覆う個体が数頭用意できた。もう見た目ではほとんどユニコーンと分からない生き物になってしまったが、生える角の効果は健在だ。それぞれの個体は6ヶ月ごとに40kg近い量の角を生産できるので、繁殖活動を縮小しながらでも生産率を必要な割合まで押し上げられる。 種雄馬の供給維持を止めて、種雌馬の人工授精に切り替えることを勧める。そうすれば全ての雄から角を収穫できる。75Fのユニコーンは自分の身体に角を突き刺そうとする傾向があるので(1頭は自己去勢した。あんな事が可能だとは思わなかった)、出生直後から死亡するまで化学的に誘発した昏睡状態に留めることを推奨する。それによって私たちは干渉を受けずに(再)成長した角を6ヶ月おきに収穫できる。余った仔馬を始末することは今後無くなるから、大規模な雌の繁殖プールを維持する必要も最早無い、大部分の雌は屠殺して角と関係ない副産物に加工しよう。残りの種雌馬は他個体から隔離して肉体的に拘束するべきだ、そうしないと自分やお互いを傷付けようとする。必要に応じて鎮静薬剤を使用すれば、妊娠中の雌の警戒心を維持したまま肉体だけ弛緩させられる。これによって仔馬の流産率が若干上昇すると予想されるが、許容範囲と見做す。 この方法によって、我が社は年間およそ4トンの生産率を維持し、殺虫剤や個人使用の需要を容易かつ十分に満たし、その上コストを著しく削減できると推計している。
マーシャル・カーター＆ダーク有限責任事業組合