20年目の夏、スペイン

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国外

スペイン国会上院 夏鳥思想禁止法案可決

公開日 2035年7月2日20:10

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スペイン上院の置かれているパレシオ・デル・セナド(6月29日、OBメディア撮影)

スペイン上院は2日、超常テロリズム阻止統合対策特別法(夏鳥思想禁止法)を264議席中258名の賛成により可決した。これにより夏鳥思想禁止法が成立した。施行は9月1日。

同法は既存の公安法を大幅に拡大したもの。スペイン国籍を持つAFCや国内に居住する伝承部族への差別行為の禁止、政府の認定を受けた国内パラテクノロジー企業への攻撃やスパイ行為の禁止、夏鳥思想を掲げた集会やデモの禁止を盛り込んでいる。違反者は最大で無期限の懲役が課せられる。

法案を共同提出した連立与党の国民統合党(PPU)と社会労働党(PSOE)は同法の目的を社会不安の除去としているが、国外からの非難の声は強い。同法の成立を巡っては、夏鳥系の回帰主義思想を狙い撃ちした条文が思想弾圧にあたるとの指摘が欧州議会でなされた。また、エスパノルヒュマノ評議会(EHC)のアンヘレス・セバジョス・ルエバノ代表らは「動物特徴保持者(AFC)優遇に傾く悪法。スペインから人間を追い出すつもりか」と批判した。

一方、スペイン国民カワウソ化事件(トンガラシ事件)以後に誕生した第2世代以降のエスパノルヌートリアに代表されるスペイン国民の多くは今回の法案を支持している。同法提出を主導したPPU党首のセラフィナ・サマニエゴ・ミラネス首相は「国内でのテロを防止するために必要なこと。議員らの見識に敬意を払う」と法案を擁護した。

同法成立の背景にはスペイン国民の夏鳥系への根強い不信がある。2015年8月13日に発生したトンガラシ事件以降、経済的混乱に伴う社会不安から夏鳥系過激派テロ組織によるAFCや伝承部族への攻撃が多発。ヘイトスピーチや暴力行為、超常企業への襲撃が過激化し、2018年のマドリード暴動に繋がったとされる。その後も2026年のイエローストーン蜂起に伴う同時撹乱テロ、2030年のカナリア諸島事変、2031年のプロメテウス・バルセロナ爆破事件と国有強化服製造工場襲撃事件等、スペイン国民に衝撃を与えた事件の多くに夏鳥系過激派が関与したことから、スペインでは夏鳥系を危険思想として見る向きが強い。

しかし同時に、同法が施行されれば新たな対立を招く可能性がある。夏鳥系穏健派は国内少数派であるエスパノルヒュマノの権利擁護を掲げており、同法の成立は国内のコミュニティに大きな動揺を与えている。人類市民フォーラム(FAH)のアーノルド・ストラトス外部理事は法案成立直後の会見で「性急な行動は黄金時代の到来を妨げる」とし、国内の各組織に対して慎重な行動と融和姿勢の継続を呼びかけた。

エスパノルヌートリアとエスパノルヒュマノ、両種族の溝は深く、スペイン国内は予断を許さない情勢が続く。同法成立を受けて国連人権理事会は3日夜にも声明を……[続きを読む]








そっちの様子はどう?

みんな怯えてる

こっちも似たような感じ

変だよね、さっきまでニュースを見て喜んでたのに

今はあなたたちを怖がってる

きっと夜が明けたからだ

俺たちは昼間しか目が見えないから

外に出たら毛皮にされるぞって言われるの

怖がってるのに傷つけて、数で押さえつけて、分かり合おうとしない

こんなのおかしいよ

昔は皆同じヒトだったって神父様が言ってた

何が正しいのか、俺にはわからない

私も……









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◆第4次アンダルシア地方人道支援(2030~2034)

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アンダルシア地方

危機概要: アンダルシアならびに隣接3自治州はスペインにおける最貧困地域とされ、2015年のトンガラシ事件1以後、インフラ整備および政治機構の最適化が最も遅れている地域である。エスパノルヒュマノ2の社会的地位の後退と地域コミュニティの分断によって、アンダルシア自治州はポルトガルとの国境を抱える4自治州中で最も人道危機に近い状態にある。中央政府の介入は少数民族保護に十分ではなく、継続した支援が必要であると判断された。

支援概要: 経済的混乱および人種問題に基づく政情不安が続くスペイン南部アンダルシア自治州、ならびに隣接3州に対する経済援助および地域コミュニティの存続を目的とした人道支援。財団、世界オカルト連合、境界線イニシアチブによる協力のほか、アンタレス協会をはじめとする地元組織からの協賛が得られた。各国NGOの支援は限定的だった。

適用資産: MCFイベリア支部が保有する各種資産。現地コミュニティの欧州諸国および各正常性維持機関に対する深刻な不信のため、物資供給はイベリア半島および地中海諸国で生産された物資を優先する必要がある。提供される支援の性質上、寄贈品の使用は可能な限り縮小しなければならない。

……繰り返しとなりますが、スペイン南部における人種対立はこれまでとは異なる様相を呈しつつあります。地域コミュニティの若年層の世代交代が始まったことで、ある種の良識的緊張をもって推移していた対立構造が崩れ始めているのです。

皆様もご存知の通り、スペインの国情はたいへん特徴的です。エスパノルヌートリア……トンガラシ事件において生じた新たな人種ですが、彼らが人口の大半を占めるこの国は、この20年間で急速に、えー、民族主義的な様相を強め、国際社会から半ば孤立しています。

トンガラシ事件当時、財団とEUが立案したイベリア半島封鎖計画は結局実施されませんでした — しかしながら、今なお多くのスペイン人が正常性維持機関や欧州諸国の政府機関、NGOへの不信感を抱いています。第4次支援の現場で、チームは幾度となく無知と誤解からなる不信の目を向けられてきました。もちろん、我々のほとんど全員が毛皮を持たないこともまた、その一因であったでしょう。

この場で私が皆様に訴えたいのは、プロジェクトを第4次で終わらせてはいけないということです。第1次支援から都合12年間に及ぶ行動によって、我々は決して小さくない規模で、良識と信頼による交流の輪を広げてきました。教会を中心とした既存のネットワークはまだ機能しており、住民間でもコミュニティを超えた交流は継続しています。しかしながら、現地の状況は昨夜のニュースが示している通りです。依然として彼らは危機にあり、MCFは求められています。

2016年憲法のもたらした誇り高き融和と平等の精神は、今もスペインに息づいています。スペインの人々が差別主義者でも反人類主義者でもないことは明らかです。しかしながら、彼らは裏切りの痛みを恐れています。偏見と恐怖の蔓延がどれほど多くの悲しみの連鎖を生むのか、我々は世界中で見続けてきましたし、もしすぐにでもプロジェクトに次回分の予算が付与されなければ、我々はまたもや失敗の痛みを味わうことになるでしょう。

お手元の資料の37ページをご確認ください。現地の不安の声を受け、実行期日が前倒しされました。早ければ8月下旬にも開始可能な第5次支援計画の素案と、必要な資金ならびに各種資材がリスト化されています。

ご協力をお願いしたく思います。我々は皆様方に決して多くを求めません — しかしあの場所には、間違いなく、我々の手で救える未来があるのです。

── マリア・ヌオス
マナによる慈善財団ミッション部局 イベリア半島連絡室








毛皮なしの連中が家の外をうろついてるときの対処法 (sptoclap.net)

2日前にmrmalmosetにより投稿されました
549 コメント 共有 保存 隠す ゴールドを贈る 報告 クロスポスト

全コメント

[-] Patritcritj 2918ポイント 2日前*

サマニエゴ法案のおかげでしばらくいい気分で眠れたってのに何なんだ? 大人しく自分の地区に閉じこもってりゃいいのにマジでムカついてる あの平べったい顔をミミズ腫れだらけにしてやりたい クソすぎる

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[-] funnyhoney 225ポイント 2日前

さぞやすばらしい毛皮をもってるだろう君
だがどうしようもない差別主義者なんだな 残念でならない

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[-] amandalubbbbb 1011ポイント 1日前*

マジな話するとここにはレイシストかコミュニストしかいない
巣にお帰り :P

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[-] Patritcritj 2017ポイント 1日前*

俺の婆さんは財団の連中が中国でサメの相手をしてたせいでクソ翁に喰われた
信用なんてしない スムーススキンはみんなクソ野郎だ

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[-] CoolestSyndicalism 959ポイント 17時間前*

EUが金儲けしか考えてないってのは同意 でもマナは? アンタレスは? シャンマイは? 日本人やギリシャ人はどうなる? いつまで哀れな狩猟動物のふりを続けるんだ?
20年も経ってまだ悲劇の主人公ぶってる連中に俺はかなりキレてる

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[-] andbadliednot 88ポイント 13時間前

夏鳥を擁護するわけじゃないけどこの前コイガレザキのデマ記事を叩いてたのはよかった
それで結局このツリーは何が言いたいわけ

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[-] amandalubbbbb 472ポイント 1時間前*

スムーススキンもベルベットも
暇で画面ポチポチしかやることがねえクソってことだろ

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川辺の散歩者たち

最も新しき池の掻き手

観察と物語

この地における人類の多くが池の掻き手に変化を遂げたことは誠に慶ばしく、同時にかれらの困惑と怒りを想起するに、それは余りある苦痛であったろう。わたしはかれらが池の美しさと水の心地よさを理解することを心より望み、手の助けを借り、文を記す12

かれらは人類である。人類は2足で歩き、陸地に棲み、繊維を纏い、多くの陸地に棲むものと少しの池に棲むものを食す3。しかしかれらは今や4足で歩き、陸地と池とを行き来する。かれらは生まれ持った身体を水面に晒す。かれらは時として稚魚をも食すが、ここでは敢えて語るまい45

最も新しき池の掻き手たち、かれらは大いなる陸の神の長き鬚によって、滝を上るがごとく突如として変化したのである。おのれの意思によらぬ試練をなんとするべきか? 意に沿わずしてかれらの池の堰は外れ、心地よい濁りから激流の精白へと押し流されたのだ。同じ水面に属するものとして、わたしはかれらの苦難と痛みを思うたび、黒く染まった鰓蓋が張り裂けそうになる6

腕持たぬ鯉の身であるが、わたしは手の一員として、かれらの痛みに寄り添わずにはいられない。人類とかれらの間の悲しき諍いを、われわれは泥底に伏してただ見ているのだろうか? 血の匂いに惹かれた巨きな歯のある口がかれらが互いに尾を打ち合う先に待ち構えているのを、知らせずに濾過物を食むのだろうか? かれらはわたしの群れではないが、それでは人類はひとつの群れではないというのか7

幾多の争いがあり、わたしは灰色の岩と鋼でできた巨きな箱の上の、透明な壁に囲われた池の中で、それらを見てきた8。わたしの契約者910たちには人類があり、また掻き手もあった。かれらは善きものである1112。わたしに食物を与え、笑顔を向け、ときに熱い腕で触れる。かれらは笑顔であるべきである。善き営みを守るべきである。

池の掻き手は池と陸の間に立つがゆえ、人類とも鯉とも触れ合う。彼らは共にわたしと群れの契約者であるがゆえ、共に立ち、言葉を交わし合い、善きものとして群れに食物を与えるべきである。

足と腕を持ち、陸地に立つ手たちにわたしは問う。

手は善きものを守らないのだろうか?1314















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人々は静かで、一見すると落ち着いているように見えた。どこか余所余所しく、気まずげな空気が漂っていた。40人ばかりがロッジの外で待っていた。夕暮れの赤い光に照らされて、彼らの瞳は輝いていた。

同胞のひとり、テレーサが扉を開け、彼らを招き入れた。香を焚き、車座になり、気の昂りを鎮めた。エリエスが話を聞いてまわり、私は記録係を務めた。

彼らは怯えていた。地区にヒュマノは55人。人口1400人の街で、たったそれだけだ。彼らは排他的で、まとまって暮らしている。隣人たちは貴方がたを知らないだけなのだと説明したが、否定された。どこにいても視線を感じるというのだ。小さく黒い、焦点の読めない瞳が彼らを監視していると信じていた。

私たちのロッジにいるのはヒュマノだけではないが、ヌートリアは少ない。彼らの集会場は閉鎖され、カッコウの翼を冠した庇護者は港を出ていった。彼らは行き場を失くしたのだ。不和と争乱を消し去るための律法が、彼らの安息の地を奪い去った。

グランドマスターは彼らの暫しの逗留を許し、地区長との会合に出向いた。協会はこの地で信頼されている。永遠ではないにせよ、束の間の平穏を供することができるだろう。

私は獣の肌を持つ。この地で生まれ、20年前に呪いを受けた。それでもなお、神秘の煙は私に微笑みかけ、同胞との友愛の絆は私を偏見から遠ざけてくれた。しかし、街に住まう多くのものは新たな時代に傷つき、涙を分かち合うことがなかった。

人々の心に分断が根を張り、迷妄の霧が視界を閉ざしている。来たるべき黄金時代、理想世界に至るための大いなる障害だ。私たちはひとたび膝を折り、大いなる精神に祈り、また立ち上がる。精神の再生は、この地より成されなければならない。

バレンシア同胞団 第2階級徒弟
ラテラン・グァイド








……

多くの声がのもとに寄せられている。アマリアは怒るかもしれないが、好奇心に負け、いくつかの手紙を読んだ。

言葉の限りを尽くして政府と軍を批判し、差別主義者と蔑むものもあれば、私やセラフィナを熱烈に信奉し、国家の救世主と持ち上げるものもあった。私にとっては、どちらもまた同じことだ。彼らは何も分かっていない。

これを復讐だというものがいて、それだけは少し気になった。私は復讐をしているのか? ヒトを嫌っているわけではない。復興に手を貸さず、ただ海の向こうから罵声を浴びせるばかりの評議会は目障りだが、故郷を失う恐怖は理解できるものだ。テロは憎むべきだが、国内のほとんどの夏鳥はその羽根を閉じ、新しいこの国の形に馴染めない人々のために巣を作っている。私には決してできなかったことだ。

夏鳥は決して、絶対の悪ではないのだろう。彼らにも自由がある。彼らには彼らの理があるのだと私は知っている。ただ、彼らは既に、その足元を汚しすぎた。

回帰の翼を掲げた先に何があっただろう? マドリードで、バルセロナで、彼らは何をしたのか。私は現場を見た。瓦礫の山の中で藻掻く、まだ毛並みの揃わない薄茶色の背中、ヒトとカワウソで何ら変わりなく流れる赤い血を見たのだ。イエローストーンの騒乱など、私が何を言うことでもない。だが、なぜ財団とインサージェンシーの確執のために、この国で血が流れるのだ?

私たちはすれ違いすぎた。多くの人が努力しているが、大勢を覆すには至っていない。国民の大多数はもはや欧州諸国を、財団や連合を、他種族を信用しないだろう。私は軍人であり、国のために動く。私はもう戻れない。幼き日、懐古するべきヒトであった頃の記憶も今や朧げでしかない。アマリアならば憶えているだろうか?

流れを変えることはできなくなってしまった。今はもう、最良の形で前に進むしかない。その先に決別の未来があるとは思いたくないが、もし人々がそれを望むなら、私はそのために成すべきことを成す。数多くの命が神のはらわたに呑み込まれた、あの3ヶ月は二度と繰り返してはならないのだから。

アマリア、愛する妹よ、私はいつでも君を想っている。遠く離れたとしても、兄妹の絆が喪われることはない。君は自らの道を歩み、自らの幸福を追いかけるべきだ。今度帰ってきたときには、昔のように川遊びをしよう。婿殿にもあの場所を気に入って貰えると信じている。

7月10日、トレホン・デ・アルドス空軍基地
基地食堂屋上、鯉の庭にて記す

私の祖国、君の第一の祖国と、全ての同胞たちの未来のために

この記録が私以外の者に紐解かれるならば、それが幸福な理由であるように。




脚注
1. 2015年8月13日にバルセロナに出現した神格実体によって引き起こされた、3ヶ月に及ぶ一連の神格災害イベントの総称です。当時スペイン本土に居住していたほぼ全ての住民が肉体をAFCに置換され、140万人以上が犠牲になったとされています。
2. 学術的に非特質性ヒト種族と呼称されるHomo Sapiensの現地における法的/文化的呼称です。トンガラシ事件における形質変異を経験していないスペイン国民への総称として広く用いられています。
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