クレジット
原作: http://scp-wiki.wikidot.com/wandsmen-orientation
原題: Wandsmen Orientation
原著者: chaucer345, Cole 13
作成年: 2021
タイトル: 堂守連盟のオリエンテーション
翻訳者: guestC
翻訳年: 2021
初訳リビジョン: rev.4
参照リビジョン: rev.6
~オリエンテーション 101: 我々の組織について~ |
皆さんようこそ、席にお座りください。なお、変身の痛みが残っていて講義を途中退出する必要があれば遠慮しないでください。テレポートコマンドでベッドに戻れるよう地図に印をつけてあります。回復に時間をかけることは恥ずべきことではないので、無理はしないでください。
皆さんを堂守連盟に正式にお迎えします。我々は、全ての知識を求める人々に、ニュースと真実を届けることを信念とする組織です。そして我々はあらゆる知識を学ぶ生徒であり、耳を傾けるすべての人々の教師でもあります。
有史以来、我々はずっと多元宇宙における最も優れた情報源であり、昨今の困難な時勢の中でも変わらず、我々は探索した世界の真実の物語を多くの多元宇宙に提供し続けています。我々のような複雑な宇宙にとって、ニュースとは極めて重要な機関です。そのため我々は全ての知識が虚無に失われることのないように、全力で知識を保護し、普及しているのです。
聞きたいことははたくさんがあると思いますが、それは講義が終わるまで待ってください。では初めに―
リーヅィングの第12代堂守、あなたは此処に居なくてもいいのですよ、混乱させるためだけに来たのであれば―
リーヅィングの第12代堂守!あなたのファイルを読みました。無くした地図をまだ見つけてないようですね。話は別の堂守から正確に聞いていたはずですし、変身の進行中に帰還するチャンスもありました。あなたが古い体を捨てて地図の力を欲していたことは明らかです。
いいですか、後悔する気持ちはわかります。信じてください。あなたが進むために時間が必要なら、あるいはカウンセリングを…
…行ってしまいました。
何ですか? いえ、追いかけても助けにならないでしょう。うまくいけば鬱憤を晴らしたのちにこちらの次元へ帰ってくると思います。もし戻らなければ…何かしら行動を起こす必要がありそうですね。
次に進みましょうか…
ええ…少し話がそれてしまいましたが、冒頭の失敗については触れないことが最善でしょう。
皆さんは恐らく自身の体の変化について不安に感じていることでしょう。知っておいてください、多元宇宙のすべての堂守は時折体に違和感と痛みを感じます。
地図を使い続けると体はさらに異形へ、具体的にはあなたが嫌悪感を覚えるような半鳥人の姿へと変化していきます。理由については様々な説がありますが、最初の地図を記し我々に伝授した太古の製図家たちは、恐らく我々の見方を変えたかったのだと思います。あるいは地図の恩恵を与える前に謙虚さを教えたかったのかもしれません…
率直に言うと、我々のジャーナルでは何百万もの異なる見解が執筆されていますが、本当の理由は不明なままです。
いずれにせよ得られるものは新しい姿だけではありません。あなたは以前よりも鋭敏に他者を理解できるようになります。頑丈な体、年齢は過去のものとなり、全員ではありませんが飛行能力を獲得します。
あなたがカナリアサイズに縮んでしまったとしても心配しないでください。あなたの体は、奇妙でねじれた時間の驚異を冒険するための逃避の力を与えられたということです。大きな体の堂守が決して気づかないような現実の隙間をするりと通り抜けることができますし、地図を作成するポテンシャルも秘めているのです。
あるいは、幸運にも私のような姿になるかもしれません。わかります、わかりますとも…こんなに巨大な人と話すのは奇妙なことでしょうが、屈強なロック鳥は必要ならば1000の図書館を持ち上げられます。いくつかの多元宇宙ではその物語を発掘するために強力な力が要求される場合があり、私たちロック鳥はその手助けとなります。
中くらいの大きさになっても、瞬時の言語理解からエコロケーション能力まで興味深い特有の能力を得ます。あなたは自身の体の変化を呪うかもしれませんが、これはまったく、天からの祝福なのです!
…
と、真顔で言っても真理の探究者とは言えないでしょう。
まだ不安が残っているようですね。「美しさ」というのは結局のところ考え方の問題なのです。覚えておいてください、あなたたちが地図を手に取ったのは無限に続く知識のホールに、鏡に映った人物を認識するよりもはるかに大きなものを見たいと思ったからです。
あらかじめ断っておきますが、回復や元の姿に戻る手段は存在しません。ええ、もちろん試みた人はいましたが、ほとんどは帰らぬ人となりました…
あなたの周りには同じ苦しみを負った人がいることを知ってください。そして、人は長い年月を経て適応することができます。
愛を見つけることもできます。私は夫と共に600年以上共に記事を執筆してきましたし、これから何百年もの時間があると考えると、この姿になったことを幸せに感じてなりません!
皆さんは多元宇宙を探求し自分の物語を誰かに伝えたいと思ってここに参加していますね。それについての説明の前に、安全面のルールを確立しておきましょう。新しい体は多くの危険に対して耐性を発揮しますが、仕事上の安全性を脅かす重大な異常の一つが名前の盗難と悪用です。
名前を守る方法は主に二通りです。一つは単純に誰にも教えないか、最も信頼のおける人にしか教えないことです。
私はこの方法をとっていますから、私の名前は放浪者の図書館の第3代堂守です。皆さんは出身地に準拠した肩書と番号を与えらたはずです。この肩書は奇跡論で強力に保護されているので、最も強力な名前泥棒でもあなたの名前を奪うことはできません。
初めの数世紀はこの方法を貫くことを推奨します。
もう一方の方法は、すべての人々に自分の名前を広め、称号をいくつも重ねることで名前の持つ力を強めることです。私の同僚の気まぐれのイッキス、クル=マナスの堂守 ‐ 幽界を歩くもの、天の海を渡るもの、そして次元の深みを探索するものはこの方法を気に入っています。
彼は魔法の逆流を受け流すのに役立つと言いますが、詳細については彼に聞いてください。名前の魔法は強力ですが危険でもあります。
この他にも仕事に活用できる魔法が存在します。変身によって精神が研ぎ澄まされたことにより、あなたは高等現実力学を比較的簡単に習得できます。
また、実用儀式術のバックナンバーライブラリを活用することを強くお勧めします。参加の意思があるすべての堂守向けに魔法の研修も実施しています。
奇跡論とは何か? 魔法のように多岐に及ぶものを要約することは適切ではありませんが、敢えて言うならば、あなたの理解力に基づいて現実に小細工をする方法です。もちろん非常に平易な表現ではありますが…これ以上は入門講義の範囲から逸脱してしまいますね。
しかし、どんなに早く難解な魔法を習得したとしても、思い上がってはいけません。魔法は異世界の記事を執筆する上で極めて便利な道具ですが、それに頼り切ってはいけません。世界には様々な力が存在し、この仕事で生きていくためにはそれらを理解する必要があります。奇跡論はそのうちの一つに過ぎないのです。
当然ですが、扱いに習熟しておくべき装備の中でまず最も重要なものの一つが地図です。
みなさんが持っている地図は既知の多元宇宙が記された地図です。我らが製図家が24時間体制でアップデートを行っていますが、まだまだ探求するべきことがたくさんあります!
もうご存じでしょうが、地図上の地点の名前を口に出すことでそこに転移することができます。あなたがその次元の詳細や人々についてより詳しく知るほどより正確に目的地を”定める”ことができます。ですから宿題をすることが大事なのです!100年ごとに約50人ほどの堂守が必要な準備なしに危険な次元に飛んで亡くなっています。固い岩にぶつかるだけで済んだ運のよい者もいましたが。彼らのようにならないようにしましょう。
地図の安全性に関する問題についてもう一つ、きちんと心の準備ができていない人が地図を長時間眺めていると激しい頭痛やめまいを感じるのですが、皆さんの中には変身の途中で慣れてしまった方もいるでしょうね。
他の備品についてもワークショップやカタログで一通り揃えることができますし、フイの第8代堂守が魔法の道具を制作するための素晴らしいセミナーを開催しています。
一般的に小規模なプロジェクトに必要な物資は福利厚生の一環で簡単に手に入りますが、探索や記事の執筆のために大規模な何かを立てたい場合、編集者たちの承認が求められるでしょう。
編集者とは何者か、ですね。
我々の組織は「協同組合」というのが適当でしょう。つまり我々のリーダーや組織での重要な地位は選挙によって選ばれますし、全員が我々のライブラリの所有権を分割して持っていることを意味します。
これは店から好きなものを何でも持っていったり、本を破壊して知識を独占してもよいという意味ではありませんが、特権を乱用しない限り、比較的容易に宿泊したり、組織の財源から生活必需品を得ることができます。
組織内での主な役職は以下の通りです:
報告者: 堂守の実務の中でもっとも一般的な役職です。報告者は多元宇宙を探訪し、現地の物語を記録します。全ての堂守は少なくともこの役職を経験しています。
行商人: 行商人は堂守連盟の販売員で、我々の新聞や雑誌をすべての智慧ある多元宇宙の住人に(認可されれば無償で)提供します。困難ですが、必要な仕事です。行商人は販売員と教師両方の面を兼ね備えなければならず、そうでなければ我々が継続的に活動するための資金を得ることはできません。
奪還者: 彼らを「軍隊」という言葉で説明するのは不十分です。奪還者は危険な崩壊世界を発見し、過酷な次元を探索するする堂守です。多元宇宙には我々に敵対的な実体や勢力が数多く存在します。彼らはそのような暗闇に身を置き続ける勇敢な者たちなのです。
調停者: 無論、暴力は最終手段とするのが一番です。調停者は確実に「困難」な地域へ、幾何か"丸く収める"ために派遣され、現地の住民の保護を行います。
製図家: この役職は言うなれば… 多元宇宙全体との同調。製図家は我々を取り囲む様々な次元の地図を作成して開拓し、この宇宙と道でつなげることが職務です。この仕事をこなすには膨大な魔法の知識はもちろん、ある種の…多くの人が苦痛を抱くであろう更なる変身をする必要があります。多くの製図家は堂守として少なくとも1000年以上の経験を積んでいます。
カナリアはその小さな例外です。彼らは偵察隊として、奇妙な新次元と時間のねじれが生じた場所へと派遣されます。しかし、そのような航行には非常に小さなものしか運ぶことができず、多元宇宙は小さな鳥にとって危険な場所になることもあります。
編集者: 五百年に一度、編集委員会の選挙が行われます。次回は86年後ですが、すでに皆さんもキャンペーンポエムが配られているのを目にしたでしょう。
編集者は日々の運営を担当し、物語の承認を行ったりリソースの流れを管理したりしています。一日の終わりに彼らは… ここだけの話、彼らは製図家の話を、私たちよりもほんの少し熱心に聞いているのです…
すみません、内部の駆け引きを教室に持ち込むべきではありませんね。少なくとも今は。
一応はっきりさせておきましょう、「大製図家」は存在しません。1000年ほどここにいますが、そのような類でさえ見たことはありません。堂守連盟の起源は誰も知りません。それを解明しようと考古学者たちに加わるのは構いませんが、ただ…これは信用してもらうほかないのですが、私はそこで青春の100年を無駄にしました。我々が遡ることができたのは最も古くてわずか37億年前の記録でした。私の私の古巣にさえも記録が存在しませんでした。司書に尋ねたところ、彼はひどく怯えた様子でした。
全ての謎を解き明かそうとするのは人間の本性ではありますが、私が数十年かけて調査を行った結果得られたのはいくつかの怪談としつこい頭痛だけでした。いいですか、時間を無駄にしないでください。
「ハイトス全体が終わろうとしている!我々は書きなぐった原稿を放り投げて行動を起こさねばならない!」
さあさあ! 皆さん落ち着いて! 混乱しては元も子もありません。私を信じて、我々が何もしていないとでも?
「WL3、君は最新号を読んだか?デミウルゴスが一人で―」
第一ハイトスの第3代堂守、状況はわかっていますとも。正直に言ってオリエンテーションに乱入して説明する必要はないと思いますが。
「スージー、頼むよ…5秒以内に起こらないことはわかってる、でも彼らも知っておくべきだと思うんだ」
確かに…その通りかもしれません。
よく聞きなさい…これは素晴らしいことではありません。多元宇宙にはそれを終わらせようとする組織が少なからず存在します。 本とはそれを読む知性がなければ価値はなく、存在することもできません。
堂守連盟の多くの学者が、ほぼすべての事物は有限の時間に存在すると主張しています。
我々は…大部分が学者です。兵士ではありません。それでも今、多元宇宙を救う必要があることに疑いの余地はありませんし、我々はその一端を担う責任があります。この地を故郷と呼ぶ人々と同盟を結ぶ、人々と神々に戦いに備えるよう警告する、我々自身も戦闘に加わるなどが選択肢として考えられます。
安全無き場所では、学ぶことも、探求することもできないのです。
「ありがとう」
どういたしまして。他に質問はありますか?