指名手配: マンタレイ海賊団!

評価: +48+x
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WANTED

マンタレイ海賊団!

概要!

ONLY ALIVE

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ナワバリ: オレゴン州の沖合

主要な構成員:
ヒューゴ(ワイアット・トリトン号)
ニコラス(サムエレ号)
カルロス(ガイウス号)

種族: オニイトマキエイ(Mobula birostris)に類似する未知の種族

特別対策チーム責任者: ノーマン・イグレシアス

監督者側の責任者: タイタス・エルナンデス

食事: プランクトン、小魚や貝など何でも食べる!あとはウマい酒が好き!

海賊団の特徴!

マンタレイ海賊団は、高い知能を持つ3体のオニイトマキエイ(のような見た目の生物)で構成される恐るべき集団だ!ここ最近、被害が拡大し続けている。

彼らには複数の能力が確認されている。まず、3体の体内には周囲の時空と隔離された不思議な空間が広がっていて、そこに自分より大きなモノを収納する事が出来る。

それに加えて、彼らは『帆船』に変身する事が出来るんだ!この帆船は強力で、ヒューゴと呼ばれているリーダー個体は、50門ほどの大砲を備えた巨大なガレオン船「ワイアット・トリトン号」に変身する事が出来る。海上に突如出現した帆船に襲われ、なすすべなく沈められる漁船や客船が跡を絶たない。


そんな武力と狡猾な知性を兼ね備えた彼らだけど、必要以上の物品を奪ったり、ケガさせたりを好まない傾向にある事が分かっている。

犬に似たキャンキャン声で鳴きながらテレパシーで事前に降伏を促したり(言葉の意味だけが流れ込んでくるんだ!)、遭難しても暫くは生きられるほどの食料は残したり。溺れた人達を救出してくれたという報告もある。だから、きっと根は良い奴らなんだと思うんだよね!

大冒険の始まり!

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よく晴れた日の出航だった……。

海賊のように暴れまわるマンタレイたちが、オレゴン州沖合で目撃された!実際に観光客が襲われる事件も確認されている。加えて原因は不明だけれど、彼らが現れた付近の海域は生態系が少しおかしくなってしまうみたいなんだ。(絶滅危惧種の貝が大量発生したりする)

海賊たちを捕まえるのは監督者たちに任せるとしても、破壊されつつある生態系は明らかに放っておけない。私たちは現状を調査するため、特別対策チームを発足した!リーダーは潜水士として経験が豊富なノーマン。海底や海洋生物の調査・採取、水中撮影のスペシャリストだ。他にも数人のメンバーを連れ、対策チームの船は出発した。

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霧深い海。視界不良で危険だ。

だけど出航してわずか1時間後。海は、突然発生した原因不明の深い霧に覆われた。時間が経つにつれて霧は深くなり、このままでは船位喪失や乗揚の危険があると判断したノーマンは、すぐに引き返す判断を下した。

しかし、何時間進んでも港から陸が見えない。それどころか、頼りになるはずのコンパスはグルグルと回転して狂ってしまった!特殊な磁場でも発生しているのか、時計の針までもグルグル回り出す始末だった。……つまり、あっという間にノーマンたちは遭難してしまったんだ。

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皆の限界が近づいてきた頃、チームは謎の帆船を発見した。

チームが遭難して2週間、元々まともに食料を積んでいなかった対策チームメンバーの限界は近づいていた。救難信号は発信していたけれど、救助が来る気配は無い。依然霧は深く、進むべき方向も何も分からなかった。

革のカバンを切って食べようかという極限状態に陥った頃、ノーマンは少し向こうに昔の海賊が乗っているような帆船を発見した。今まで船なんか無かったはずの場所に、その船は突然現れた。

しばらく見ていると、船は幽霊船のように一瞬で消えた。と同時に、何かが泳いで近づいてくる!

マンタだ!

誰かが気づいてそう叫ぶ頃には、そのマンタは船に変身し、出現した際の衝撃と波によって対策チームの船はあっという間にひっくり返されてしまった!

これが、私たちとマンタレイ海賊団の衝撃的な出会いだったんだ。

-

ヒューゴたちと交わした約束!

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ノーマンたちが流れ着いた無人島。ここで、マンタレイ海賊団のヒューゴ・ニコラス・カルロスと出会ったんだ。


ノーマン: ここは……?

ヒューゴ: 目覚めたか。

(目が覚めると、どこかの砂浜に寝かされていて、海の方向からマンタに話しかけられていた。)

ノーマン: み…みんなは……。

ニコラス: お前の仲間と船は全員無事ですよ。今の所は…ですが。

ノーマン: 君たちが助けてくれたのか…?

カルロス: おっと、勘違いするんじゃねぇぜ?そもそもお前らを襲ったのも俺達だ。

ヒューゴ: お前、名前は?そして何者だ?簡潔に答えな。

ノーマン: …ノーマン。ノーマン・イグレシアスだ。僕はウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズという動物を保護する組織のメンバーだ。君たちが現れてから、海がおかしくなりつつある。それを調査するために海に出た。

ヒューゴ: ほぉう……。ではウィルソンズのノーマン、ストレートに行こうか。俺たちがしたいのは取引だ。まぁ、交渉が決裂した時は、お前の仲間がどうなるかは知らないがな。

ノーマン: …実質、拒否権は無いという事か。

ヒューゴ: ふん、肝が据わってるな。…そういえば名乗っていなかったな。俺たちは不死身の「マンタレイ海賊団」だ。俺はヒューゴ。そっちはニコラス、そっちに居るのがカルロスだ。…俺らがやってもらいたいのは海底の調査だ。荷物を見て、お前らがダイバーなのは分かっている。

ノーマン: ……分かった、やるよ。元々それも目的の一つだ。だけど、何故君たちは海底を調べたい?目的位は聞きたいね。

ヒューゴ: 宝さ。俺たちは何年も、この霧に包まれた海域のどこかに沈んでいるという宝を探している。だが、見つからない…。手詰まった所にお前らが現れた。というワケだ。しかも、今まで殆どの人間たちが見つけられず、入る事も出来なかったこの海域に突然な。

ノーマン: ……ただ遭難している内に迷い込んだだけ、だけどね。

ヒューゴ: ハハハ!ツイてるな、ノーマン。なおさら気に入った。では仲間を開放する…と言いたい所だが、もう一つ大切な条件も吞んでもらう。

(瞬間、びゅっとニコラスが器用に尻尾で短剣を掴み、ノーマンに突きつける。)

ニコラス: ”仲間の掟”を守ってもらいます。

ノーマン: 掟…?

カルロス: そう難しい話じゃねぇ。「宝を見つけるまで俺たちは仲間だ」ってコトだ。仲間同士なら、絶対の掟がある。

ニコラス: 仲間同士で隠し事はしない。仲間は絶対に裏切らない。仲間のピンチは必ず助ける。この3つです。

ノーマン: 分かった。約束する。

カルロス: ずいぶん、簡単に約束するなぁ!おぉ?本当に分かってんのか?この場を逃れたくて、適当ぶっこいてんじゃねぇだろうなぁ!

ノーマン: 嘘じゃない!僕は嘘や筋が通らない事は嫌いだ。”隠し事をしない”だったね。なら言うけど、僕は君たちを信用していない。僕の仲間には、実は君らが良い奴だっていう奴も居るけど、僕はそうは思わない。どんな理由があろうと、君らは海賊だ。見過ごすわけにはいかない。その「宝」とやらを見つけ次第、すぐに君たちをとっ捕まえるつもりだよ。

カルロス: んだとぉ?

ヒューゴ: はっ、バカ正直だな!ノーマン。……カルロス、引っ込め。ここはテメェの負けだ。

カルロス: ……ちっ。これから覚悟しとけよ。俺はお前を見張ってるからな!

ニコラス: 決まりですね。ノーマンの仲間たちを解放します。

(ニコラスは口の部分から霧のようなものを出し、そこからワープしてきたかのように船とチームの皆が出てきた!)

ノーマン: みんな!良かった!

ニコラス: ノーマン、貴方の船員にも掟は徹底させてください。…私は掟に関しては、カルロスのように甘くはありません。怪しい行動をすれば、タダでは済まさない。……私も貴方がたを信用していない。そもそも、仲間にするのは未だに反対です。船長の気まぐれに感謝するんですね。

ヒューゴ: ニコラス!……悪いな。気性の荒い奴らばかりでよ。

ノーマン: ……痺れるね。

タイタスの出航!

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タイタスが出航する時の海の様子。この日は、"こちら側の海"では雲一つない快晴だった。

ノーマンとの連絡が途絶えた当日、夕方には監督者たちが率いる調査船が出航した。詳しい経緯は知らないけど、3日後の出航予定を急遽早めたのだという。出航の名目は、やはりマンタレイ海賊団の捕獲なんだろうけど、恐らくそれだけじゃないと誰もが思った。調査船のリーダーがタイタスだったからね。

タイタスといえば、とにかく現場に顔を出すタイプで特にノーマンとは仲が良い。二人とも根っからの仕事人間で、芯が強くて不正やごまかしを嫌う所も一緒でウマが合うみたいだ。ノーマンは、動物に対して良い意味で甘すぎない”締めれる”タイプだから、意見が一致する事も多い。

だから、きっとノーマンの事を案じての出航なのは、皆分かっていた。

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マンタレイ海賊団は繰り返し、監督者たちを遠巻きに観察するような行動を取っていた。彼らの痕跡を調査すると、「ヒューム」という値に異常があったらしい。そこで、監督者たちの船はそれを計測する事で羅針盤代わりにし、異常が発生している海域に向かうらしい。

専門的すぎて理解は出来なかったけど、とにかく特殊な錨を使うと言っていた。(監督者たちの技術には、いつも驚かされる!)これならきっと、海賊団を捉える事が出来るはずだ!

また、自動船舶識別装置を応用して特別な識別符号を常に発信しているらしいから、ノーマンたちからも監督者たちの救援が来たと即座に分かるはず。

ちなみに、ノーマンの失踪に対して、タイタスはこんなことを言っていた。


タイタス: ノーマンは確率異常を疑うくらい、ツイてるからな。大方、今回もいきなり何かをぶち当てたんだと思う。簡単に死ぬタマじゃないのは分かってるが、少し心配だな。

宝探しの日々!

タイタスが皆を捜索している間、ノーマンたちはマンタレイ海賊団たちと共に調査を続けていた。(驚く事に、1ヶ月半もの期間を調査に費やしていたらしい)

ノーマンの記録によれば本当に不思議な海だったらしく、晴れている安全圏を抜ければすぐに霧が発生し、それが深ければ深いほど不思議な事が起こるらしい。重力が逆転したり、海底と水面が合体して空まで水中になったり、光源を使用できない暗闇だったり。なかなか宝には辿り着けなかったようだ。

しかも、出会いが最悪だったから、更に調査は進まなかった。そんな中、事件は起きたんだ。

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カルロス: 船長、俺は確かにアイツを見た!ようやく見つけた!今、海を出れば追いつけるかもしれない!リベンジだ!

ヒューゴ: ……最初の作戦に変更は無い。ここで最良のタイミングを待つ。

ニコラス: 船長に逆らう気ですか、カルロス。作戦は最初に説明したはずですよ。

カルロス: でも、でもよ!こんなチャンスをみすみす逃すのかよ!……クソ、俺は一人でも行くぜ!

ニコラス: 待ちなさい!……この馬鹿が!

(悪天候の中、一人で飛び出していくカルロス。)

ノーマン: ……何があったんだい。カルロスは何を見たんだ?

ヒューゴ: ノーマンか。どこから聞いていた?

ノーマン: 最初から。作戦がどうとか言っていたようだけど。

ヒューゴ: そうか。……え~、まぁ、作戦と言うほどの物でもない。無茶をせず、安全な晴れた日に出航すべきってだけだ。それよりカルロスだな。アイツは黒雲と共に現れる何かを見つけた。それが何なのかは分からないが、俺たちは、それに一度出会っている。宝とは別の因縁だ。

ニコラス: 船長、どこまで話すつもりですか!?

ヒューゴ: ニコラス落ち着け、ここは任せろ。ノーマン、お前は俺たちがどうして色んな能力や知性を持っているか知りたがっていたよな。教えてやる。……詳しい事は俺らにも分からないが、前世の記憶がある事が関係していると思っている。

ノーマン: 前世?

ヒューゴ: ああ。3つの船を操りキューバ沖で海賊をしていた人間の男。男は永遠の命をもたらすという宝を求めて海に出た。だが、この霧の海に到達した後、…何年も脱出も出来ず…。死ぬ直前、マンタが空から雨のように降る異常気象のせいで船も沈みかけていた。だが奇跡が起きた。

ノーマン: 何があったんだい?

ヒューゴ: 濃い霧の中、意識が薄れていく瞬間、俺はマンタに上から衝突されて船と共に死んだ。だが次の瞬間、俺の視界はマンタになっていて、沈んでいく俺の死体と船を見送ったんだ。さらに、同じく最後の生き残りだったニコラスやカルロスもマンタになっていた。

ノーマン: ずいぶんと、不思議な話だね。

ヒューゴ: 俺もそう思う。……だが話は終わらない。その時見たんだ。黒い霧を纏う、巨大な生物を。そいつは俺たちの死体や船を丸ごと飲み込み、去っていった。以来、宝と並行して俺たちはその何かを追っている。…カルロスとしては、そっちが本命かもしれないな。人間だった頃の思い出も全てそいつに飲み込まれたようなものだからな。

ノーマン: ……ありがとう、それを聞けて良かった。……ニコラス、僕の船を出してくれ。僕はカルロスを追い掛ける。


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ニコラス: 本気ですか?本当に、嵐の日の「霧の海」は危険なのですよ。それを踏まえて出された船長命令をカルロスは無視した。そんな規律破りをした奴のために、何故、ほとんど関係ない貴方が、そこまでしようと言うのですか。

ノーマン: 僕は…君たちを誤解していたのかもしれないって思ったんだ。私利私欲で宝を求める卑しい奴らだと。でも、ヒューゴの話を聞いて、そうじゃないのかもって思ったんだ。僕は自分の気持ちを誤魔化したくはない。僕はカルロスと話をもう一度したいんだ。だから、追いかける。

ニコラス: しかし…

ノーマン: それに僕たちは”仲間”のはずだ。仲間同士、隠し事はしない。絶対に裏切らない。そして…”仲間のピンチは必ず助ける”だろ?

ニコラス: ………!

ヒューゴ: ハッハッハッ!カルロスに引き続いて、お前もやられたなニコラス。もう一緒についていってやれ。本当は兄貴分として、一番お前がカルロスを追い掛けたかったはずだ。

ニコラス: 船長…。

ノーマン: ヒューゴは来てくれないのかい?

ヒューゴ: 万が一のためにな。…それに、こういう時、船長は仲間を信じてドッシリと構えてるもんだ。…頼んだぜ、ノーマン。

ノーマン: ……!あぁ、任された!

37

(突入時の「霧の海」の様子。一瞬で色々な事が起こっている)

ノーマン: 本当に凄まじい所だね!カルロスは無事だろうか。

ニコラス: ……間違いなく、死んではいないでしょう。それは断言できます。ただ、脱出不可能な何かにハマっている可能性はありますね。氷漬けになったり、無重力状態になって帰れなくなったり…。

ノーマン: とにかく慎重に進むしかないね。


ニコラスとノーマンは、どんどん「霧の海」を進んでいった。カルロスがどこに向かっていったのかは分からないから、まさに手探り状態だった。

おまけに危険がいっぱいだったけれど、ニコラスたちが使う霧のおかげで、空からの飛来物を逸らしたり、実体を持った蜃気楼を突破する事なんかも出来た。(ニコラス曰く、霧を扱えるのは、長年この海で暮らしてきたからだという)

そして遂にノーマンたちは、無音の雷が落ちる地点で傷だらけになったカルロスを見つけたんだ。

カルロス: くそ~。くそ~。

ニコラス: 見つけましたよ、カルロス。無茶するからです、まったく…。何があったんですか?

カルロス: 兄貴…。雷の直撃を喰らって気絶してた。奴には…近づく事すら出来なかった。空間がループしているみたいに泳いでも泳いでも、遠ざかるばかりだった。ホラ、あそこだ。

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(一瞬だけ見えた黒い「何か」はゆっくりと沈んで消えていった。)

カルロス: くそ、くそ。きっと奴が宝を守っているんだ。ちくしょぉ…!

ノーマン: カルロス、本当に生きててよかった。…こっちを向いてくれ。

カルロス: ノーマン、お前も来ていたのか。……痛ェ!何しやがる!

(ノーマンは、カルロスを全力で殴った!)

ニコラス: 何を…!?

ノーマン: 僕はWWSの一員として、相手が知性を持っていようが、海賊だろうが、自分より強かろうが、動物には本気でぶつかる事にしているんだ。違うだろカルロス、最初に何か言う事があるだろ!

(カルロスは何かを言いかけた後、自分自身をぶん殴った)

カルロス: そうだな。……俺が悪かった。ノーマン、ニコラスの兄貴。無茶してすまねぇ。本当に反省してる。もう無茶はしない。

ノーマン: もう一つだけ…。聞きたい事がある。君たちは、何のために宝を探しているんだい?…僕にも決めつけがあった。良かったら、聞かせてほしい。

カルロス: 海賊は…自由なんだ。やりたいから、やる。だからこそ、悔いなく終わりたい。……この霧の海の宝は、俺が人間だった頃から見つけるのが夢だったんだ。だから、見つけれずに終わったら悔いが残る。俺は、それが嫌なんだ。兄貴はどうだ…?

ニコラス: 私も…同じですかね。死よりも後悔して終わる方が怖い。船長も似たような事を言うでしょう。

ノーマン: そうか。……僕は……

無事、カルロスは戻ってきた!(いつの間にか傷はすっかり治っていた)そして、この事がきっかけでマンタレイ海賊団とノーマンたちとの関係は大きく変わっていった。

この日以降、ノーマンは彼らと積極的に対話をするようになった。更にヒューゴだけでなく、カルロスとニコラスもノーマンを認め始めていったんだ。

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宴の日の写真。

さらに調査をしていくうち、ノーマンたちとマンタレイ海賊団の間には、いつの間にか絆が生まれていた。(流石はノーマンだ!)皆は彼らと腹を割って話し合い、本当に色んな話をした。今まで、こんな動物たちをお世話してきたとか…監督者たちの事とか…。ヒューゴ達も、不殺を貫く理由とか…貿易会社の幹部だったニコラスの過去とか…。時には、宴を開いて酒を酌み交わした事もあったらしい。ここには語り切れない濃密な時間を彼らは過ごしたんだ。

ただ彼らには、まだまだ不思議な点がある。気になるなら、整理されたノーマンの調査記録を見てほしい。ただし、長くなってしまうから時間がある時で構わないよ!

-







タイタス達との衝突!

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「霧の海」に到着したタイタスが撮影した写真。

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「霧の海」で良く見つかる貝。僕たちもこの貝を指標としている。

ノーマンたちが宴をしていた頃、タイタス達はたった3日間で、既に「霧の海」に到達していた。(時空が乱れているという事だ)それだけじゃない。僅かな時間で、生態系調査によりマンタレイ海賊団の存在を確認。更に濃い霧の中でも異常現象を抑え、安全に航海が出来るほど状況を整えていたらしい。

ここからは、監督者たちの記録も交えながら、総合的に経緯を追っていきたいと思う。


タイタス: この霧だ、これが現実性強度を局所的に低くしている。文字通り、何が起こってもおかしくない数値だな。既に応援は呼んでいるか?

部下: 完了しています。計算によれば、こちら側の時間で8時間~11時間程で到着するかと。追加のスクラントン現実錨も輸送中です。……しかし、この規模の軍用艦船を呼ぶ必要があったのでしょうか。本部でも対象Mの捕獲に、ここまでの戦力を投入するべきなのか疑問視する声も出ているようです。

タイタス: 現場の担当は俺だ。責任は俺が取る。……何か、予想以上の事が起きる気がするんだ。   アルファ班、ベータ班、そちらの手筈はどうだ?

部下:    こちらアルファ。定置網の設置、完了しました。どうぞ。   こちらベータ。こちらも設置完了。これより帰還します。

タイタス: 了解、速やかに帰還せよ。受信機の方はどうだ。何か拾ってないか?

部下: いえ、今の所は何も。

タイタス: ……そうか。引き続き、発信機は停止するな。応援部隊との合流にも必要だ。

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ノーマン: 今日は随分と夜になるのが早いな…。

ニコラス: ノーマン、まだ起きていましたか。…船長を見ていませんか?

ノーマン: ヒューゴを?いや、見ていないな。1時間くらい前に一緒にご飯を食べた時には一緒に居たはずだけど。

ニコラス: そうですか。……ノーマン、気付いていますか?

ノーマン: ……うん。海が騒がしい気がする…。何かが起きている。

ニコラス: ええ。もしかしたら船長は異変にイチ早く気付き、対処に向かったのかもしれません。……ノーマン、貴方の船を置いていきます。私は船長を探します。

ノーマン: 単独行動は危険だ。僕もついていく。

ニコラス: いや、ノーマンはそこで酔いつぶれて寝ている馬鹿を頼みます。こんなんでも、戦いになれば頼れる奴です。貴方に使い所の見極めを頼みたい。

カルロス: ぷぅー……ぷぅー……

ノーマン: ……分かった。無茶はしないでくれよ。

ニコラス: ええ。では行ってきます。

(しばらく時間が経った…)

ノーマン: ヒューゴとニコラスは大丈夫だろうか…。

ピーッ!ピーッ!

カルロス: ふが?………………ぐーっ…

ノーマン: 僕らの船からか!何を受信した?……不味いぞ。この信号は…。

カルロス: にゃはは……かーっ…

ノーマン: 起きろーッ!カルロス!寝てる場合じゃないぞ!


31

別の日に撮影された、水を吸い込んで渦潮を作り出すニコラスの様子

その頃、ノーマンの心配は現実のものになっていた。タイタスとニコラスが遭遇してしまったんだ!当然、捕獲しようとするタイタスに、ニコラスは強く抵抗したようだ。

特徴を紹介した時にも触れたけど、マンタレイ海賊団一人ひとりの強さは相当なものだ。武装した帆船がマンタの機動力で移動し、潜水と浮上を繰り返してあらゆる方向から砲撃を繰り出してくるのと同じだからね。気をつけないと、海底から船に変身して突き上げられて、あっという間に転覆させられるだろう。オマケに霧を使って水を大量に吸い込む事で渦潮を作ったりする事も出来る。

だが、それでもニコラスは徐々に追い詰められてしまった。戦闘をしつつ、タイタスによって定置網の最奥部(箱網という)に誘導されていたんだ。監督者たちの網は砲撃程度では破れない特別製だ。完全に囲まれてしまえば、脱出する事は難しい。

決め手はタイタスが事前に海中に散布していた特殊な薬品だった。(私たちなら絶対に実行しない恐ろしい手段だ。)一時的に、ニコラスはバランス感覚を失い呼吸が殆どできなくなった。事前に策をめぐらしていたタイタスの勝利だった。

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辺りはすっかり夜になった。


タイタス: 手こずらせてくれたな。だが、もう終わりだ。

ニコラス: ぐ…。クソっ……。

タイタス: 潜水を繰り返したのがアダとなったな。砲撃だけで攻められれば、俺たちに勝ち目は無かった。……帰還準備をしろ!今はコイツを何時間も捕えて置ける設備が無い。応援を待てば、確実に逃げられる。

ニコラス: 監督者…。ノーマンに話だけは聞いていましたが…ここまでとは…。

タイタス: 待て。お前、今ノーマンと言ったな。……俺たちの話をしたという事は、まさかノーマン・イグレシアスの事か?

ニコラス: ええ!ウィルソンズのノーマン!彼の事はよく知っていますよ。

タイタス: ……お前ら、ノーマンに何をした?

ニコラス: 勘違いしないで頂きたい。彼と私たちは「仲間」です。

タイタス: 「仲間」だと?

ニコラス: ええ。仲間同士、隠し事はしない。絶対に裏切らない。そして… 仲間のピンチは必ず助ける!私は仲間を信じています。


部下: タイタス班長!海底から何かが!

(瞬間、帆船になったカルロスとノーマンの船が海底から突然出現した!衝撃で監督者の船がグラグラと転覆しそうになる。)

カルロス: 助けに来たぜ、兄貴ィーッ!

ノーマン: …タイタス!…まさか君とはね。

タイタス: …ノーマン!俺が起動した発信機を辿って来たのか…!

ノーマン: カルロス!作戦に変更は無い。ニコラスの救出を頼む。

タイタス: アルファ、ベータ。やらせてやれ。今ここで抵抗すれば、死人が出る。

ノーマン: ……感謝するよ。タイタス。

(タイタスはノーマンに小型拳銃の銃口を向けた!)

カルロス: おい、ノーマン!

ノーマン: カルロス!打ち合わせ通り、手を出さないでくれ。何があってもだ!

タイタス: ……ノーマン。俺はお前の友人だが…、同時に財団のエージェントでもある。答えろ!お前は本当にコイツらの「仲間」なのか?

ノーマン: 仲間だ。脅されていたり、洗脳されたりしたわけじゃない。僕なりに本気で彼らとぶつかり合い、そして共に過ごして心を通わせた。僕は彼らの「宝」を探し当てるという夢を叶えてやりたくなった。

(タイタスは無言で引き金に緩く力を込める)

ノーマン: タイタス、君は撃てない。僕らの組織同士の関係もある。君がついさっき下した冷静な判断も、僕を殺せば無意味になる。それに、友人として君の事はよく知っている。君が何を考えているのか、僕には分かる。

タイタス: 何を……。

(ノーマンはゆっくりとタイタスに迫っていく。圧倒され、タイタスはじりじりと後ろに下がっていく。)

ノーマン: 君は僕がわざとチラつかせた、何らかの”策”を警戒している。だから、それを見極めるために銃を抜いた。上手くいけば僕を利用してニコラスたちを制御できるかもしれない。それに君は応援を既に呼んでいる筈だ。膠着状態になって多少の時間が稼げれば、それでも良かった。

タイタス: く…

ノーマン: そして、一番は何かが起ころうとしている、この危険な海から僕を遠ざけたかったんだ。タイタスの心優しさは、僕が一番知っている。…… だからこそ、ゴメン!

(甲板の端に追い詰めたタイタスに体当たりしたノーマン!衝撃で誤射された銃弾を脚に受けながらも怯まず、ノーマンはタイタスを押し倒して、そのまま一緒に海に落下していく!)

ノーマン: 今だヒューゴ!

ノーマンの作戦通り、着水する瞬間ギリギリのタイミングで船になったヒューゴが現れて2人を救出したんだ!

そこからは、まさにあっという間の出来事だった。リーダーを失った監督者たちの一瞬の混乱をついて一気に制圧。タイタスを人質にして、監督者たちの船を丸ごと奪ったらしい。(報告を聞いている中で、一番ヒヤヒヤした場面だったよ!)

-

最期の戦いへ!

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合流したノーマンたちが逃げ込んだ海の様子。あり得ないレベルの蜃気楼も「霧の海」では珍しくない。


カルロス: 弾は脚をかすめただけみたいだな。肉は大きめに抉れているが、大動脈なんかの急所は外れている。……だが、出血が多い。安静が必要だ。

ノーマン: ありがとう、カルロス。もう大丈夫。ヒューゴも助かったよ。直前で合流出来て良かった。

ヒューゴ: ノーマン、随分と無茶をしたな!正直焦ったぜ!

ノーマン: いや、むしろこれ位で済んで良かったよ。幸運だった。相手がタイタス以外だったら、こうはならなかった。

タイタス: 本気で撃つつもりは無かった…。悪かった、ノーマン。

ノーマン: 君の判断は間違ってないよ、タイタス。

ニコラス: 作戦の詳細はさっき聞きましたが……本当に信用できるんですか?この男…。実力があるのは認めますが。

ノーマン: うん。タイタスは抜け目が無い頼れる男だ。こんな形にはなっちゃったけど、一緒に来てくれて嬉しいよ。これで宝を探せる。

タイタス: ……そういう事か。何をしようとしてるかと思えば…。ノーマンお前、初めから俺たちのスクラントン現実錨を奪うのが目的だったのか。

カルロス: ノーマンとの作戦会議の時点で気になってんだが、その、錨が何だってんだ?

ノーマン: 僕も詳しい仕組みは分からないんだけど、タイタスたちは不思議な事ばかり起きるこの海を進むために、安全な状態の海を錨で固定して安定させる事が出来るんだ。1ヶ月くらい、この海を調査して「宝」を見つけるために監督者たちの技術が必要だと分かったから、何とか用意したかった。

タイタス: なら、初めから協力を求めてくれれば良かったじゃないか!なぜ、こんな無理やり…。

ノーマン: 僕はヒューゴたちと共に、「宝」を見つけたかったんだ。「霧の海」を脱出して協力を求めようかとも思ったけど、時間の流れの誤差がリスキーだったし、何より絶対ヒューゴたちの同伴を許可してくれないだろうと思って出来なかった。

タイタス: まぁ、確かに許可は…降りないな。というか、ノーマンたちの調査も許可できない。財団側だけで調査する事になっただろうな。

ノーマン: それじゃ意味が無かった。まさに、どうしようもなかったんだけど、そんな時、タイタス達が来てくれたんだ。ニコラスと先に衝突してしまったのは焦ったけど、何隻もの船で来ていなかったのは幸いだった。

タイタス: ……まったく、やっぱり異常だな。お前のツキの良さは。1隻で来たのは、俺がたまたま出航を早めたからだ。本当は、何隻もの調査船が一斉に出航するはずだったんだぞ。

ノーマン: 本当かい?危なかったなぁ…。

ヒューゴ: ガハハ!やっぱり、お前はツイてるんだなノーマン。お前を見てピンときた俺の目に狂いは無かったみたいだ。

ノーマン: タイタス、本当に少しだけで良いんだ!宝探しに協力してくれないか?

タイタス: ……お前なぁ。実質、拒否権が無いってことじゃないか。……こうなりゃ、乗り掛かった船か。分かった、やってやるよ。元々それも目的の一つだ。

ニコラス: ふふっ。ノーマン、少し海賊らしくなりましたね。

カルロス: 何か、お前と出会った時のことを思い出すなぁ…。

ヒューゴ: 変わったな、ノーマン。こんな作戦を思いつく奴だとは思ってなかったぜ!

ノーマン: アハハ、そうかなぁ…?

タイタス: 本当に仲が良さそうだな。……これがウィルソンズのやり方、か…。


タイタスの協力を得たノーマンたちは、本格的に宝の捜索を始めた!強まる蜃気楼に惑わされながらも、ノーマンの勘の良さと、タイタスの確かな状況把握能力によって急速に到達点に向かっていた。

何より大きかったのは、監督者たちの錨だったらしい。今までは歪んだ海を闇雲に進んでいただけだったけど、今は明確な基準を元に有力な可能性を一つ一つ潰す事が出来る。監督者たちの応援が到着するまで、多く見積もっても半日ほど。時間は無かったけれど、皆、見つかると信じて全力で捜索を行った。最後の方には、ヒューゴたちの体内に入って深い海を進んだ。

そして、遂に霧の発生源がありそうな深海に到達したんだ。





………そこにあったのは、貝だった。

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後の調査で分かった事だけど、今回見つかった巨大なハマグリは、蜃気楼を作り出す「しん」と呼ばれる伝説の霊獣に性質が酷似している。

正確には超巨大なハマグリ(Meretrix lusoria)という貝だ。日本や中国大陸沿岸に生息している絶滅危惧種の貝で、オレゴン州には居ないはず。タイタスやノーマンたちも、この貝を生態系調査の指標にしていた。


カルロス: これが奴の正体?この変てこりんな貝が…?

ニコラス: ……船長。

ヒューゴ: あぁ、色々と想定外はあったが、作戦通りだ…。手筈は良いな、お前ら。

ノーマン: 大きい貝だなぁ。霧の影響で近づけなかったという事は、これが この貝の生存戦略なんだろうか…。

タイタス: 海賊だけでも手一杯だってのに……冗談キツイぜ。……さて、これからどうするんだ?

ノーマン: とりあえず、近くで調査してみるしかないだろうね。

タイタス: そうだな…。それしかないな。

ヒューゴ: お前ら、油断するなよ。胸騒ぎがする。まだ、何かが起こりそうだ。

ニコラス: ええ、まだ海が騒がしい。

カルロス: そうかなぁ…?いつもの海じゃねーか…?

(何かが落ちて、バシャァっと巨大な水柱が立つ)

カルロス: うぉぉ―ッ!?何だ、何だ?あの水しぶきは!

タイタス: おいおい…。どうなってんだコリャ…。

ヒューゴ: マジかよ、クソッタレがぁ!お前ら、早く逃げるぞ!

マンタだ!

見上げると、空には無数のマンタが居た。

マンタは大きいものでは横幅8m、体重3tに達する。それだけの質量が空から落ちてくるんだ。例え、海の中に居ようと、直撃すれば大変な事になる。急いで逃げ出そうとした!

が、次の瞬間だ。バクっと巨大な口が突然現れ、ヒューゴたちを鋭い牙で齧ろうとしてきた!面舵いっぱい、大きく右に避けて何とか回避した。

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黒い霧と共に、海からは2体の龍が現れた!伝説では、「蛟竜こうりゅう」と呼ばれ「蜃」と同じ能力を持っている存在らしい。

ハマグリの貝殻の隙間、出水管と入水管の部分がぐにゅうっと伸びて先端が龍のようになっている。龍は落ちてくるマンタを次々と捕まえて、バクバクと食べ始めた!


カルロス: なんだアイツはぁーー?やっべぇー!

ノーマン: 確かに、マンタは天敵が居なくて数も多いから、食料にはちょうど良いかもしれないね…。マンタ自体は日本近海にも生息しているし。どこからか巻き上げているのかな…。でも、貝がマンタを…?

タイタス: 分析してる場合じゃねぇ。予想以上の大物だ。

ニコラス: 船長、どうしますか。……これは、予想外ですよね。

ヒューゴ: ……決まってんだろ、あのドラゴンをぶっ倒す。ここまで来て、逃げるわけにはいかねぇ。

カルロス: やっぱり、奴が宝を守るボスなんだな!やってやろうぜ!

タイタス: それはダメだ。あの龍は俺たちが対処する。お前らは引っ込んでいろ。

カルロス: んだとぉ!

ノーマン: タイタス…。

タイタス: 俺はお前らに協力を求める事は出来ねぇ。かといって、お前らを捕まえておく余裕も無い。……そういう事だ。もうすぐ応援で呼んだ艦隊が到着するはずだ。俺は、そっちに合流する。……いいか?大人しくしてろよ!ノーマン、ここは頼む。

ニコラス: ……なるほど、分かりました。

ヒューゴ: お前ら、これ以上野暮な事は言うなよ。じゃ、…俺たちゃ不死身の海賊団!

ワイアット・トリトン号!発進だぁ!



サムエレ号!発進!



ガイウス号も発進だぁ!いくぜぇ!



タイタス: こらぁーっ!せめて、俺が遠く離れてからやれーっ!

ノーマン: ごめん、タイタスー!必ず生きて戻るよ!

そこからは、壮絶な戦いだったと記録にある。監督者たちの艦隊とマンタレイ海賊団、実質的な連合艦隊を組み、大暴れする龍の鎮圧作業を行ったんだ。こちらの戦闘準備が終わった頃、丁度マンタも止んだようだったしね。

しかし、巨体で素早く動く龍には苦戦を強いられたんだ。何より、いくら砲弾を喰らわせても、効いている様子は無い。最初に違和感に気づいたのはタイタスだった。


ヒューゴ: ダメだ、とにかく動きを止めなきゃ話になんねぇ!

ノーマン: 動きが早すぎる。…っ!まずい、回り込まれる!

ヒューゴ: ニコラス!霧を使って、タイタスたちの船の回避と防御を頼む!カルロスは、そのままとにかく攻撃しろ!アイツの動きを少しでも制限するんだ!俺も回り込んで加勢する!

ニコラス: アイアイ、船長!ここは譲りません!

カルロス: おらぁぁ!くたばれぇぇぇ!

タイタス:    こちら、タイタス!ノーマン、応答願う!

ノーマン: こちら、ノーマン!どうぞ!

タイタス: 俺の船は戦闘をせずに、安全圏から龍を観察してたんだが、おかしいぞ。遠くの位置から見ると、龍自体がブレて見える。

ノーマン: …どういう事!?

タイタス: 分からん。だが、もしかしたら、あの巨大な龍も蜃気楼なのかもしれないって事だ!……危険だが、これから潜って、龍の根元を調べてみるつもりだ。

ノーマン: じゃあ、僕も行くよ!

タイタス: ダメだ。お前は怪我人だ。それに、お前には俺の船を通して、海中の俺に上の状況を連絡してほしいんだ。……お前じゃなくても良いが、俺はお前に頼みたい。一番小回りが利いて機動力もある船は、お前が乗ってるマンタ共だろうしな。

ノーマン: …でも!

タイタス: 行かせてくれ。何だかんだ…お前を撃っちまった責任を……ウィルソンズのやり方を信じられなかった俺に、責任を取らせてくれ。頼む。

ヒューゴ: 行かせてやれ!ノーマン。今度は、お前がタイタスを信じてやる番だ!

ノーマン: ヒューゴ!……分かった。頼んだよ、タイタス!

タイタス: ああ!任せな!


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潜った直後のタイタスの様子。


タイタス: では、これより潜行を開始する。俺からは、イエス・ノーか位しか連絡できない。

ノーマン: 了解。……僕も腹をくくった。結局は、僕らがいつもしている海底の生物調査だ。サクっと終わらせよう。

タイタス: だな。……行くぞ!

タイタスも、熟練のダイバーだ。今までどんな現場だろうと、完璧に仕事をこなして生還してきている。しかも、ノーマンとのペアなら、タイタスは最も力を発揮できる。

2人は見事な連携で、遂に龍の正体に僅かな時間で辿り着いたんだ!


タイタス: ぷはぁ!分かったぜ、ノーマン!あの龍の正体が!

ノーマン: タイタス!やっぱり、僕らは最強だね!……それで、何があったんだい?

タイタス: やはりハマグリだ。…だが、本体はかなり小さい。あの見せかけのデカい貝は確かに実体だが、そこから細く、ゼラチン質の粘液が海底の中に繋がっていた。……その先は小さなハマグリに繋がっていたんだ。あれが、恐らく本体。

ノーマン: やっぱりか…。やっと分かったよ。あの龍は、ハマグリが移動する時に出す紐状の粘液と同じ役割を持っているんだ。潮の流れや波を受けて浮き上がって移動する生態は、一部の貝類に見られる。

タイタス: 俺も、そう思う。水管根元分の粘液線から出していたから、ほぼ確実だ。

ヒューゴ: おーい!難しい話は、勘弁してくれ!こっちは結構ギリギリだ!簡潔に、どうすりゃいい!?

タイタス&ノーマン: 掃除だ。掃除だね!

ヒューゴ: はぁ!!??

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お掃除の時間だ!

生態が分かれば、単純な力押し以外にも策がある。

あの龍の正体は、やはりハマグリ。なら移動のためのゼラチン質を出したのは、周辺の環境が悪化したからだ。霧による異常な環境は、あの貝自体が防御のために作り出しているから問題は無い。だけれど、マンタが降るのは恐らく別の要因によるものだ。(と思う。生物が降るなんて、環境異常と比べて少し異質だったからね。)

ハマグリもマンタと同じくプランクトンを食べる。急激なマンタの増加によって環境が悪化すれば、当然移動する。なら、マンタを全部回収して、環境を戻せば、移動をやめるかもしれない。確証は無いけれど、試す価値はある。それに、ヒューゴ達なら体内の霧を使ってマンタを回収して、別の海からプランクトンが豊富な海水を一度に大量に輸送できるはず。

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作戦はすぐに実行された!

ヒューゴ達が抜けると、正直戦況は厳しい。だけど、タイタス達は「元々海賊の力なんて借りてないぜ!」と送り出してくれた。

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すごい吸い込みだ!

ヒューゴ達が吸い込みを始めると、まるで海に「お風呂の栓」が出来たようだった!同時に、カルロスとニコラスが少し離れた海域から同じように水を吸い込み、この海に吐き出していく。

「お掃除大作戦」を始めると、効果は直ぐに現れた!水の入れ替えをしていくと、龍は徐々に小さく大人しくなっていった。次第に、戦闘をしていた艦も「お掃除大作戦」に加わわれるまでになっていった。

そして、遂に龍が普通の入水管と出水管に戻ってきた頃、事は起きた。

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星屑のような真珠。

海に沈んでいた巨大な貝がバカァッと爆音で割れ、中から大量の真珠が飛び出して来たんだ!その様子は、まさに満点の星空を見ているようで美しかったよ!

真珠は貝殻を作る軟体動物なら、どんな生態を持っていようと生成する可能性がある。生体鉱物(バイオミネラル)と言って、貝の体内に異物が入った時に作られる。もし、あの龍が食べたものが今まで蓄積されていたのだとしたら?かつてのヒューゴ達が人間だった頃の物だったりも飲み込んでいるはず。

そして今回のマンタたちで、中身がいっぱいになったのだとしたら?

とにかく全て純粋な天然物の真珠なのだとしたら、その価値は計り知れない。まさにお宝だ。


タイタス: ノーマン。お前、やっぱりツイてるな。……しばらく家に帰れないな…。こりゃ…。

ノーマン: 凄い…!ヒューゴも早く…。……ヒューゴ?……ニコラスー!カルロス?

ヒューゴ: ああ、ここに居るぜ…。なんだか、凄く眠くてよ。さっきから船になれないんだ。

ニコラス: 私もです…!……ちょっと、カルロスも…!

カルロス: …ああ!俺も。俺も。

ヒューゴ: 長い事追いかけてた宝を見つけて、気が緩んだのかもしれない。悪い、少し寝ていいか…?

ノーマン: いいのかい?……約束通り、僕は君たちを捕まえるつもりだよ?

ヒューゴ: お前なら…それも良いかもな……。俺たちは、無敵の不死身の海賊、マンタレイ海賊団だ!たとえ捕まっても、サクっと逃げ出して見せるぜ。……じゃあな、ノーマン。……楽しかった……ぜ…。

終わりに!

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夜明け。霧も晴れ、太陽が眩しかった。

全てが終わり、ノーマン達はようやく帰還した。色々な事が起こったけど、まずは解決に尽力してくれた皆に感謝を伝えたい。本当にお疲れ様!そしてありがとう!

異常領域の調査、保護した「蜃」の飼育方法の検討も。なんと、今までに見つけたハマグリたちも全部蜃だったらしい。今の所、監督者たちが引き取る事になりそうだ。加えて、狂ってしまった生態系の回復プロジェクトの立案。細かい所では、空から降ってきたマンタや真珠の回収。ノーマンを含む怪我人や、破損した船の修理だったり。やらなければならない事は山積みだけど、監督者たちと協力して、何とか進めている所だ!(正直、何日も徹夜している。)

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ヒューゴも元気そうだ!だけど、一緒に酒を飲んで語り合う事は、もう出来ない。

ヒューゴたちは宝に出会えて心残りが無くなり、魂が消えてしまったのか。普通のマンタになっていた。以前のように、酒を欲しがったり、武勇伝を語ろうとする事も無い。

やっぱり少し寂しいけれど、彼らとの冒険を僕たちはいつまでも覚えている。彼らと結んだ、かけがえのない絆はいつまでも不滅だ!











追記 :

とんでもない事が分かった!

33

”彼ら”の体は、ヒドラと呼ばれるクラゲに似た特性を持っているようだ。

というのもあの時、空から落ちてきたマンタを監督者たちが分析してみたところ、それぞれの個体が全て同一のDNAを持つ異常な個体であることが分かったんだ。(正確には、3種類のDNAパターンが記録されている。)

”ヒューゴ”とされている個体と同一のDNAを持つ個体 149匹
”ニコラス”とされている個体と同一のDNAを持つ個体 163匹
”カルロス”とされている個体と同一のDNAを持つ個体 99匹

彼らは出芽という無性生殖をする生態があったんだ。自分のクローンをある程度成長した状態で生み出せる。回収されたマンタたちは、全てヒューゴ達が事前に用意していたものだと思う。

更に決定的なダメ押しになるけど、監督者たちが管理している真珠の輸送船が、“3匹のマンタ”によって襲撃されたらしい。

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監督者たちの監視カメラを破壊するニコラス。恐らく、私たちに向けての「生存報告」だ。

今思えば、違和感はあった。流してしまったけど、カルロスが「ケガを直す必要が無い」と不思議な事を言っていた。実際、ケガがすぐに治っていたし。

……そういえば、ヒューゴは”永遠の命をもたらす宝”を求めて海に出たとは言っていたけど、今探しているのが”それ”だとは一回も言っていなかった。もしかしたら、”それ”は既に手に入れていて、完璧に制御できていたのかもしれない。

彼らは精神的な存在で、肉体となる自身のクローンまで自在に生み出せる。堂々と名乗っていた通り、本当に「不死身の海賊」だったんだ。

完全にやられた。やっぱり彼らはどこまでも狡賢い海賊だ。こういう作戦を考えられるのは、ヒューゴで間違いない。慌てている僕たちを、今頃どこかで豪快に笑い飛ばしている事だろう。

今思えば、気づく事は出来たはずだ。彼らは監督者たちを繰り返し観察していた。あの、特殊な錨の事を既に調べていて、巨大な「蜃」に近づくのに利用するために、私たちにまず近づいたのかもしれない。

というか、彼らは「蜃」をバクバク食べていた!だから霧を扱えたんだろうし(最初にノーマンを霧に引き込んだのも彼らかも?)、「蜃」が真珠を作るのも知っていたんじゃないだろうか?

「蜃」が暴れだしたのも、彼らがマンタのクローンを降らせたからかもしれない。監督者たちの話によれば、「蜃」は本来おとなしい性格みたいだ。彼らはマッチポンプで私たちを「蜃」にけしかけた。(都合よくマンタの雨が止んでいたのに、何で気づけなかったんだろう)

そして利用するだけ利用して目当てのお宝を手に入れたら、魂を別のマンタに入れ替えて、さっさとトンズラこいたんだろう。

勿論、本当の所は分からない。だけど引き続き、彼らはお尋ね者だ。彼らを信じたのは間違いだった。絶対に捕まえる必要がある。だから僕らも、こうして新たな手配書を用意したんだ。もちろん【DEAD OR ALIVE(殺してでも捕まえろ!)】ではなく、【ONLY ALIVE(生け捕りのみ)】だけどね!

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ノーマン達は今日も彼らを追って、海に出る。

覚悟しろ、マンタレイ海賊団!私たちは、絶対に君たちを捕まえるのを諦めない。必ず再会して文句を言ってやるんだ!

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