クレジット
タイトル: クレフ博士はどうしてカップケーキを憎むのか
著者: ©︎Doctor North, ©︎
pieiswrong
翻訳: SCPopepape
原記事: Why Clef Hates Cupcakes
参照リビジョン: 5
作成年: 2019
Doctor NorthのTwitterアカウント @north_doctor
Northの著者ページ: Intelligence Agency Data Archive-Subject: North
クレフ博士のオフィス - 10階
さっきまではここにあったはずだ。アルト・クレフ博士は彼のオフィスじゅうをひっくり返した。
ない。彼の楽器がなくなっていた。
同じ階の他の人々はそんなことには気づかずにおしゃべりをし、彼らなりの一日を過ごしていた。ダメだ。こんなことではいけない。クレフは机の下のショットガンを引っ掴んで振り、ロックし、弾を装填した。
今日は誰かが撃たれる日になる。
「私のクソッタレウクレレを盗んだのはどこのどいつだ?」
ちくしょう。オフィス全体が静まり返った。ウクレレをなくしたウクレレマンは、怒らせるべき相手ではない。クレフは廊下をずんずんと歩いて行った。彼に出くわしたものは、怒れる顔をしてウィンチェスターM121を持ったライオンに遭遇したネズミのように慌てて逃げていった。
警備室 - 4階
エージェント・リーガルは警備デスクの前に座っていた。彼は今晩どのようにくつろごうかについて考えていた。だが、彼の思考は一旦止まらなければならなくなった。彼は、警備室に向かってくる怒れる足音を聞いた。上司がもう戻ってきたのだろうか?
何てことだ。もっと悪い。彼だ。「おはよう、アルト……ええと、どうかした?」
「どこぞのクソ野郎が私のオフィスに侵入して、私のウクレレを盗みやがった!」
クレフのショットガンの銃身が、リーガルの顔に突きつけられた。リーガルは息を呑んだ。
「リーガル、監視カメラの記録を見せろ。」
「……ううんと……問題があるんだ、アルト。カメラはメンテナンスのために停止してる。」
「冗談だろう、ふざけるな。」
「もし必要なら、うちからフィールド調査員を一人派遣できるよ。」
「リーガル、くそったれナンシー・ドリュー2なんて必要ない。私は私のウクレレを取り戻したいんだ。」
「そのためには、うちで一番のナンシーで間に合わせるしかないと思うよ。」
「いいだろう。」クレフのショットガンはエージェント・リーガルの鼻先から逸らされた。
リーガルは彼の無線機を鳴らした。「エージェント・クイン・ロスコー、警備デスクまで来てください──ええと、今すぐ。」
無線機は小さな音で返答を鳴らした。
「彼は向かってるところだよ、アルト。」
クレフは嘲笑した。「そいつはナンシーの半分にも及ぶかどうかってとこだな。」
間もなくして、もじゃもじゃとした茶色い髪の若いエージェントがデスクまでやってきた。
「エージェント・リーガル、お呼びで──」エージェント・クインはショットガンを振り回している男に気がついた。「……こんにちは、クレフ博士。」
「エージェント・クインだな。」クレフは新顔をじろじろと見た。
エージェント・クインもクレフをじろじろと見た。
「それで、無線で話したエージェント・リーガルは震えていて、クレフ博士は怒りながらショットガンを持ち歩いており、大事な楽器を持っておらず、監視カメラはメンテナンスで停止していて、私は今日ここにいる中でいちばん優秀な鑑識官ですね。何のために私は呼ばれたんでしょうかね?リーガル?」
「悪いね。」
クレフはにやにやと笑った。「ドリュー探偵、君ならできるさ。」
エージェント・クインは眉を顰めた。「私はクインです。」
「私が言ったことはわかるな。」クレフは彼の背中にショットガンを突きつけた。「こいつは無能UIUの方が向いてるんじゃないのか、なあリーガル?」
エージェント・リーガルはくすくすと笑った。
エージェント・クインはため息をついた。「いいえ、博士。私は既に、異常世界でいちばんのジョークのような場所で働いていますので。ついてきてください。」
心霊部門 - 9階
エージェント・クインはクレフ博士を、大きな機械でぎゅうぎゅうの散らかった研究室に案内した。
「なんだって私たちは心霊部門にいるんだ?犯行現場の指紋を取ったりだとか、そういうことをすべきなんじゃないのか?」
「いいえ。この方が早いです。」
エージェント・クインはヘルメットと眼球スキャナーとディスプレイのついた小型の機械を組み立てた。「ここの次席研究員は私に借りがありまして。これを装着してみてください、何か役に立つ情報が手に入ります。」
クレフ博士は珍妙な科学技術の産物に目を向けた。「これは何だ?心霊物探し装置か何かか?」
「厳密には違います。これは、あなたの脳と網膜を読み取って潜在的なサイオニクス領域を増幅させることであなたの見たいと思っている未来の出来事を予測するものです。信憑性はタロット占いと同程度です。機動部隊が作戦前の情報収集に使うこともありますが。クレフ博士、装着していただけますか?」
クレフ博士は腰を下ろし、要求に応じた。ヘルメットは驚くほどぴったりだった。彼はスキャナーの開口部を覗き込んだ。
「動かないでください。」エージェント・クインは機械を起動した。スキャナーの開口部から出た光がクレフ博士の目を照らし、機械の他の部分は振動した。
エージェント・クインはコントロールパネルを少しいじくった。「よし、これでいいでしょう。あなたの解析結果を見てみましょうか。」
クレフ博士は起き上がり、エージェント・クイン共にディスプレイに結果が表示されるのを待った…
ディスプレイがゆっくり点いた。それが表示したのは……クレフ博士のオフィス?ドアの影には人影のようなものが見えた。
エージェント・クインとクレフ博士は困惑したようだった。
「これが私の、未来の有用な写像だって?結局私のクソッタレオフィスじゃないか。そして、そこに誰がいるんだ?」
エージェント・クインはコントロールパネルをいじり続けた。「ええ。これは漠然としていますが、あなたが未来で見るであろう最も有用な筋道にたどり着くように最善を尽くすものです。私が思うに、これはあなたがあなたのオフィスで有用な誰かまたは何かを見つけることを示しているのではないのでしょうか。」
エージェント・クインは機械を外した。「これで十分でしょう。私は犯人が誰かわかったと思います。」
クレフ博士のオフィス前の廊下 - 10階
「つまり、あのクソ野郎はまた私のオフィスにいるって?」
「着いたら、あなたにもわかることでしょう。」
「せめてヒントのひとつくらいくれないか?誰が撃たれることになるのか私は知っておかないと。私はあのサムソンとかいう帽子野郎だと思う、まだ私があいつのソンブレロを盗んだのを根に持ってるからな。シメリアンもあり得る。あの野郎がシニアスタッフを題材に書いたエロ本を私が財団のスポットライトニュースに掲載してからと言うもの、あいつはずっと私を憎んでいるから。あのノースってガキかもしれない、あのちいさな変人はいつだって誰かの弱みを嗅ぎ回ってやがる。ああ……考えてみれば、このサイトの人員の誰でもあり得るな、」
エージェント・クインはクレフ博士のオフィスのドアの前で立ち止まった。「関係ありません、クレフ博士……私はあなたにいてほしい場所に、ついにあなたを連れてきましたから。」
クレフは立ち止まった。彼はショットガンに手を伸ばした。エージェント・クインはドアを開けた。
「サプライズ!」
開いたクレフ博士のドアの向こうには、パーティー仕様の部屋と群衆がいた。多彩な顔ぶれだった。コンドラキ、ストレルニコフ……あれはエージェント・リーガルか?ブライト博士が吹き戻しを吹きながらカップケーキを掲げた。
ブライトはカップケーキをクレフに差し出した。「アルト、財団に来て25年目の記念日だね、おめでとう!」
クレフはブライトの体の中心にショットガンを向け、引き金を引いた。銃からは紙吹雪が飛び出した。
室内は奇妙にも静まり返った。
ブライトは大声で歓声を上げた。
部屋じゅうがその歓声に続いた。
クレフはこめかみに手を当てて擦った。「冗談だろう、ふざけるなよ。」
リーガルはクインの肩を叩いた。「クイン、アルトの気をひいてくれてありがとうな。」
クレフはクインを見つめた。「君はこの状況に何か言うことはないのか?」
クインは笑った。「おめでとうございます、クレフ博士。」
ストレルニコフがクレフの肩を叩いた。「ダー、俺からもウクレレ好きの友人におめでとうと言っておく。」
クレフはそもそもの発端を思い出した。「待てよ、私のウクレレは一体どこなんだ?」
ブライトは、テーブルの上に置いてある長さ2フィートの弦楽器を指差した。「落ち着けよ、クレッフィー坊や。カップケーキはいるかい?」
クレフは鼻で笑った。彼はブライトの手からカップケーキを引ったくり、大きくひと齧りした。
「お前ら全員、大嫌いだ」