闇寿司ケースファイル "仁平事件"
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koban

仁平事件で生み出された偽の慶長小判。

事件概要

仁平事件は2017年8月7日に発生した、千葉県習志野市に位置する闇寿司所有の訓練施設への怪異群の侵入事件を指す。事件当時の怪異群は金属片の姿をとって蚊柱のように動いており、施設内の様々な道具に憑依すると、開口部から一気に吐き出す、体内から押し出すように生み出すなどの方法で大量の金属片や偽物の硬貨1を生み出した。怪異群は闇寿司の人員に対し意図的に危害を加えようとする素振りを見せなかったものの、闇寿司には以下の被害が生じた。

  • 講義や訓練などの中断
  • 一部機材や備品の汚損
  • 調査、金属片と贋金の撤去、セキュリティの見直しなどに要した費用や時間

首謀者である仁平甚兵衛は逃亡中だが、仁平が連れてきた怪異群は闇寿司への全面的な協力を申し出ている。返答については現在SUME-CIで議論が行われている。

事件タイムライン

以下は施設内部や周辺の監視カメラ映像、事件当時施設内にいた人物からの証言を基に作成された、当事件のタイムラインである。

10:15:22: 茶色のボストンバッグを持った仁平甚兵衛が、施設から250mほど離れた交差点の防犯カメラに映る。

10:24:45: 仁平甚兵衛が施設裏口付近に到達し、バッグから栓付きの透明な小瓶を数本取り出す。仁平は瓶の栓を抜くと、十秒ほどその場に留まってから裏口に向けて瓶を転がした。

10:25:01: 2名の警備員が仁平の不審な行動に気付き2、取り押さえに向かう。

10:25:20: 瓶から抜け出した怪異群が1階倉庫の窓の隙間、1階男子トイレの換気口などから施設内に侵入。同時刻、警備員が放ったあんパンが腹部に命中し、仁平は拘束される。

10:26:54: 怪異群の1つが2階廊下の消火器に憑依し、栓が自発的に脱落。消火器は監視カメラの前に移動した後、ホースから大量の金属片や硬貨を放出する。

10:27:16: 別の怪異群が1階第2板場の排気フードに憑依しようとするも、清掃員がいたため板場を後にする。清掃員は怪異群の存在に気付いていない。

10:27:54: 精神酢飯接続により、施設内の全人員が異常事態を認識する。研究スタッフなどの一部人員が施設からの退避を開始する。

10:28:32: 怪異群は分散し、各所の監視カメラ前で金属片や贋金を放出している。1つが施設西側のエレベーターに憑依し、内部が金属片と贋金で埋め尽くされる。仁平を取り押さえていた警備員の1人が救助や避難誘導のため裏口を離れる。

10:29:12: ブレーダーの1人が3階の怪異群の1つに攻撃を試みるも、寿司を構えた時点で放出を停止。その後、床に向けて少量の金属片を放出し、「たすけて」と読める非常に拙い字を筆記した。

10:32:21: ブレーダー以外の全人員の退避が完了。

10:34:16: 精神酢飯接続により「怪異群に交戦の意思はない」という情報が共有される。ブレーダーと警備員は取り残された人員の救助を開始する。

尋問記録

以下は事件翌日に行われた、仁平甚兵衛への尋問の記録である。

対象: 仁平 甚兵衛

担当者: 岩月 憲一

付記: 対象は尋問開始前に、担当者が扱う自白剤漬けマグロの影響を受けている。

<記録開始>

岩月: 名前と職業を。

仁平: 仁平甚兵衛。消滅が危惧される怪異の保護活動をしてる。まだ駆け出しだがな。

岩月: お前があの馬鹿げた騒動の首謀者だな。どこの回し者だ?

仁平: 回し者? とんでもない。あんたらに敵意なんてない。

岩月: ならば何故あのような騒ぎを起こした?

仁平: 勿論、あの怪異たちを守るためさ。そのついでにあんたらにも恩を売ろうと思ってな。俺も含めた全員が得すると思っての行動よ。

岩月: 説明が足りない。何故このような真似を? 我々が闇寿司だと知ったうえでの行動か?

仁平: ああ。遠野に連れて行っても良いかと思ったんだが、今後あっちでやっていけるか不安な怪異に出会ったときのことを考えて、武闘派とか研究メインな組織とコネを作っとこうと思ったんだ。あんたらは聖霊なんてものを扱ってるし、強さのためなら何だってするらしいじゃねえか。だから怪異たちが有益なうちは、決して雑には扱わない。そうだろ?

岩月: 何だってするというのは間違いだが、まあコネを作ろうという意図はわかった。しかしまだ説明が足りない。そもそもあの怪物は一体何だ?

仁平: あいつらは金の精霊の一種だ。去年の秋ごろに島根にあった廃屋で見つけてな。その廃屋の持ち主が、代々贋金づくりを生業にしてた家なんだ。善人のところにしか来ないっていう金霊がそんな家に住み着く理由はないだろうし、俺はあいつらが真の金霊じゃないと思ってる。本人たちはこの考えを否定してるけどな。

岩月: つまり奴らは、贋金から生まれた贋金の精ということか?

仁平: そうだ。そんな怪異でも、会ったからには助ける。初対面の人間だってのに「助けてくれ」って泣きついてきたあたり、相当追い詰められて焦ってたはずだ。全てから忘れられれば消滅するっていうのが怪異のルールだから、俺はあいつらが誰かの記憶に残るためのアイデアを練った。

岩月: それで思いついたのがこの迷惑行為か?

仁平: まあ、そうだな。思いっきり存在をアピールすればいい。このパフォーマンスが気に入られれば生きられるってな。何もないから、逆に何でもできるようになる。人間でもそういうのがいるだろ。

岩月: 恩を売りたいならちゃんとした手順を踏め。飛び込み営業にも程がある。

仁平: 俺だってまともな営業はしたよ。あんたらのとこの下っ端と話して、「これをあんたの上司に」って名刺と怪異の一部だって渡した。これがまあ大成功して、「マスター」って呼ばれてるお偉いさんとの交渉の予定だってあったんだよ。

岩月: ほう、どこでの話だ? 言え。

仁平: 豊洲だよ。怪異だけ奪われるかもと思って用心棒まで雇って約束の日を待ったさ。けど、その前日に豊洲から闇寿司は消えた。そん時は知らなかったが、後で俺と交渉するはずだった「マスター」ってのも死んだって聞いた。

岩月: 交渉相手が死んだから、次にここに目を付けたということか。

仁平: ああ。情報屋曰く、ここがベストだって。

岩月: 成程。しかし、何故今回はまともに交渉しようとしなかったんだ?

仁平: 豊洲の陥落が一大事だってのは俺でもわかる。そんな時に、いちいちどこの馬の骨か知れない奴と交渉する余裕なんてきっとない。だが時間をかけすぎるわけにはいかなかったから、こういう手段に出た。俺にはまだ救わなきゃいけない怪異が無数にいるからな。

岩月: そうか。よし、記録装置を止めろ。こいつは地下にぶち込んどけ。

<記録終了>

仁平は速やかに地下収容房に送られたが、9日の午前11時頃には行方をくらましていた。現在の動向は不明である。

この尋問から、アンヘル・ダグラスが怪異群の存在を認識していたことが判明したものの、闇寿司上層部はその情報を把握していなかった。ダグラスが情報の伝達を止め、怪異群を独占しようとしていた可能性もあるが、当人は既に死亡しておりその真偽は不明である。

文責: 岩月 憲一

関連資料

首都圏特異集合事件から30年 怪異の今
2017年7月23日に恋昏崎新聞社が公開した記事。現代の怪異たちに関連する問題が解説されている。

パラウォッチWiki - Two-Die-Fourによる投稿
"Two-Die-Four"と名乗る人物による怪奇現象の目撃情報。その語り口や語彙、プロフィールなどに仁平との共通点が見られ、現在も新たな投稿が行われている。


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