概論
"███黒海苔の握り"とは黒い海苔でネタを隠した握りのことだ。スシブレードバトルではネタに何を使うかで取れる戦略はおおよそ決まる。そのためネタを見せた段階で手の内を明かしているようなものだ。一方この███の握り、シャリの上に鎮座する四角い海苔はまさにブラックボックス。握られているネタが何なのか相手に知られずに戦えるのは大きなアドバンテージとなるだろう。詳しい作成方法は別紙にて添付する。
スシブレード運用
黒海苔は複数重ね、直方体となるよう形成するのが望ましい。ネタに黒海苔を張り付けるだけでもかまわないが、形状で分かる恐れがある。
例えば、射出系のスシであれば発射の予備動作を見せることなく射出できるし、そもそも射出することもわからない完全な不意打ちを食らわせることができる。そのため、███の握りを使った相手は必然的に射出系のスシではないかと警戒する必要が出てくる。中身がそうでないにも関わらず、だ。心理戦が強いブレーダーなら上手く使えることだろう。
明確な弱点としては水分に弱い。海苔がふやけてふにゃふにゃになってしまう。短期決着が目的ではないなら、中に入れるのは水っぽいネタや湯気が立つ熱いネタは避けた方が良いだろう。
他に大きな欠点が一つある。
明るさ
破壊力
PSI
持久力
機動力
重量
操作性
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上記は███の中身がハンバーグの"███の握り"だ。ハンバーグの重量はそのままだが、海苔がクッションとなって破壊力は落ちている。
明るさ
破壊力
PSI
持久力
機動力
重量
操作性
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一方、次にあげたチャートはシラウオの"███の握り"だ。シラウオは軽量級のネタだが、海苔のせいで重みが増している。また、射出する際に海苔が邪魔となって発射の威力が落ちる。
2つのネタをチャートの形で見ると似ているのが良くわかる。つまるところ、海苔を纏ったせいで元のネタの個性が消えてしまっているのだ。ぶっちゃけた話、海苔が無い方が強い場合が多い。
加えて、今となってはドクター・トラヤーによって作成された"ジーコ"1やその応用である”虚重うつろのかさね”が存在するためこの███の握りを使う必要性は薄い。中身のスシの性能をそのままに外見のみ偽装できるからだ。私もエピソードの項で話す事件があってからこのスシを握っていない2。
他の活用法
味に関しては海苔の味が強く出てしまうためあまり期待できない。中身が分からない寿司ということでパーティーのネタにはなるかもしれない。
エピソード
███の握りを開発したのは十年以上前。まだ私も若かった頃で、闇寿司の規模も今ほど巨大では無かった。四包丁も確か5人くらいしかいなかった。これから話すのはそんな若いころのよくある失敗談だ。
私は"███の握り"を作り、また一つ強力なスシができたと喜んでいた。そして闇寿司の3人──U氏、E氏、S氏3──にこのスシの握り方を教えた。彼らは年代は異なるものの、寿司に関しては優秀な男たちだった。組織としてはまだ弱く闇の中で息を潜めていたころで、構成員が力をつけるのは至上命令であった。とはいえ、███の握りはその後の研究で上述した欠点が明らかとなりどうしたもんかと悩みあぐねていたのだが。
そんなある日、S氏の様子がおかしかった。ここ数日姿を見せず、久しぶりに顔を合わせたら心ここに在らずといった感じだ。何か体の具合が悪いというわけではなさそうだが、どうにも気にかかった。彼は闇寿司に入る前、女癖が特殊な方向で悪く4揉め事を起こして寿司屋を辞めた経歴を持つ。闇寿司はその程度で追い出すことはしないが、変にそちらに傾倒してしまい闇寿司を辞めるなんてことになってしまうと惜しい。
私はS氏の後をこっそりつけた。S氏は人気のない町外れにある倉庫街に向かって歩いていく。あたりは静寂、波の音が響く月夜であった。S氏は人目を避けるようにして廃倉庫に入っていった。中の様子はS氏がドアを開けた一瞬しか伺えなかったが、E氏とU氏の姿が見えた気がした。こんな人気のない深夜の倉庫で一体彼らは何をやっているのか。倉庫に窓はなく中に何人いるかもわからない。私は倉庫の壁に聞き耳を立てた。
U氏: おうS氏。いりゃあせ‥‥。
S氏: ようお前ら‥‥。例の██の握りは‥‥準備できたか‥‥?
E氏: ええ勿論‥‥。もうビンビンですよ‥‥。
U氏: わっちのも見てくれよ
E氏: おお‥‥。すごく立派なものをお持ちに‥‥。
やはりE氏とU氏がいるのは見間違いではなかったようだ。スシの秘密の特訓なら全く問題はないが、どうも話が怪しい方向に向かっているように聞こえる。どことなく息も粗い。ひょっとして中には女が……?E氏とU氏は性方向でトラブルは起こしてなかったが、猥談は人並みに好んでいたはずだ。S氏に誘われて……ということも十分考えられる。様々想像が働く中、私は聞き耳を続けた。
U氏: そろそろ始めよみゃあ‥‥
S氏: ああ‥‥早く出そうぜ。
E氏: 3‥‥
S氏: 2‥‥
U氏: 1‥‥
3人: へいらっしゃい‥‥っ♡
何だか妙にねちっこいへいらっしゃいが聞こえた後、パンパンと叩くような音が聞こえてくる。スシがぶつかる音にも聞こえるが、これはどちらかと言うと……。
E氏: うっ!U氏激しいですな。███が破けそうだ‥‥!
U氏: E氏こそどえりゃあイカの臭い‥‥
S氏: ふふ、もっと熱くしてやるよ‥‥!そら!
U氏: おお‥‥すごいちんちんだ‥‥
E氏: ちんちん‥‥
これはもう間違いない。奴らは個室に集まって乱れた交流をしている。しかもわざわざ教えた███の握りにかこつけてだ。私は我慢できず倉庫に飛び込んだ。3人は突然現れた私の姿を見て驚愕、呆然とした有り様だった。
E氏: や、闇親方。いったいどうしたんですか。
怯えるE氏を尻目に私は倉庫を見渡した。居るのは3人だけで女はいない。私が入った衝撃で倒れた███の握り3貫を見つけた。ホントに███の握りがあったのは驚きだが、さてはこの中にいかがわしいモノが入ってるのではないか。中身を暴かなければ。私は用意していた███を握り液体を発射、濡れてふやけた3つの海苔をひっぺがした。
……結論を言うと、U氏が用意した███の中身はエリンギ、E氏のはイカの塩辛、S氏のは炙りアワビだった。彼らは下ネタ的なネタを用意してスシブレードをして騒いでたのだった。思春期の中学生……いや小学生レベルの遊びだ。
中身を暴かれて3人はバツの悪そうな顔をしている。
私: コソコソ隠れて何かしてると思ったら‥‥。
S氏: べ、別に悪いことはしてませんよ。なぁ!
U氏とE氏が頷く。
私: こっそり聞いてたらちんちんがどうの言うからてっきりお前らがイチモツを握ってるのかと思ったじゃねえか。
U氏: 名古屋だと「熱い」ことを「ちんちん」っていうんですよ。
私: それぐらい知ってらぁ。
E氏: いやぁ、でもいくらなんでも流石にちんちんを握るのはないですよ。
S氏: ああ。汚いから次に握るスシに衛生的な悪影響出るしな。
U氏: そうだがね。それに‥‥
3人は声を合わせて言った。
3人: いい大人がちんちん握って大喜びなんて変じゃないですか。
私は何も言い返せなかった。変な寿司ネタで遊んでたお前らが言うかとは思ったが内容自体は正しい。私はすごすごとその場を後にした。それからというものの我々は何となく気まずくなって███の握りを使わなくなった。
本来であればこの███の握りは闇寿司ファイルとしてまとめられることなくそのまま闇に葬るはずだった。課題点がいくつもあるためわざわざ共有する必要もないし、昔の失敗をわざわざ掘り出さなければいけなかった。それでもこの握りを残したのには理由がある。
今となっては他の職人も熱心にファイルを作成してくれているが、元々闇寿司ファイルは私が個人的に作成していた研究メモ兼備忘録のようなものであった。誰かの参考になればと思い公開したもので、闇寿司職人の技術向上ひいては闇寿司の発展を目的としている。そして闇寿司には暗黒卿や四包丁を始め、表の奴らが取り逃した優秀な人材が多くいる。であるならば、この"███の握り"という技術も何かの参考になるかもしれない。私が想像しないような使用方法や応用を見出してくれるかもしれないのだ。だから、私の浅慮で隠し続けこのまま闇に葬るのは得策でない。これで闇寿司が発展するなら、若いころの恥くらい安いものだ。
もしこの"███の握り"で成果を残したら教えてほしい。U氏、E氏、S氏に話すつもりだ。闇寿司の成長に乾杯して、あの夜の過ちごと笑い飛ばせるだろう。
関連資料
闇寿司ファイルNo.177-D "メタンフェガリン"
時には隠したまま闇に葬ったままの方が良いものもある。これとか
闇寿司ファイルNo.1020 "スキャンダルの握り潰し"
隠すならこういう手もある。SUME-CI所属員が得意としている。
闇寿司ファイルNo.████ "【検閲済】の【編集済】"
いくらなんでも隠し過ぎだ。
文責: 闇
From: 二城景
To: 闇
Subject: ███の握りファイルNo.1714、興味深く拝見させていただきました。今やその溢れんばかりのカリスマで闇寿司をまとめあげていらっしゃいますが、若いころは中々苦労されていたことが窺えますね。親方の闇寿司に対する想いも熱く伝わってきました。
話に出ていたお三方、U氏、E氏、S氏がどなたなのか、今も活躍されているかは気になるところですが……教えていただくのは無理でしょうね。ちなみに3人の███の握りを破るのに使った親方の███の握りの中身は何だったのでしょうか?
From: 二城景
To: 闇
Subject: Re:███の握り闇親方?