白米単体よりは美味しい。
概論
"煮干しの握り"は、カタクチイワシなどの小魚を乾燥させた煮干しをネタとして握った寿司である。小魚は基本的に軍艦として使用することが多いが、"煮干しの握り"では海苔を使わない。これにより、安価での作成、コストの削減、機動力の強化、手頃な値段で作ることができる、など複数のメリットが生じている。
ネタに使う煮干しは基本的に業務用スーパーで購入する。基本的に1貫につき2〜3の煮干しをシャリに突き刺し、加えて山葵や醤油などによりカスタマイズする。これにより、1貫の原価が二桁を切るコストパフォーマンスの高い寿司が出来上がる。
スシブレード運用
攻撃力
防御力
機動力
持久力
重量
コスパ
攻撃力・防御力共に非常に低い。これは煮干しが非常に軽く小さいことが原因である。具体的にはネタの重さが実質的に0である、弱みの握りなどの概念系の握りとほぼ同等と考えて良い。しかしその軽さゆえに機動力に長けており、概念系と違い操作も容易い。
しかしこのスシブレード最大の長所はコストパフォーマンスである。ラーメンを1杯作る値段でこの"煮干しの握り"およそ100貫は作れる。このスシブレードを使えば、我々はもう新しいスシブレードを開発するためにバイトを掛け持ちしなくとも良いし、株でワンチャンを狙わなくとも良いし、闇寿司四包丁の給料を上げる会を発足しなくとも良い。加えて、このスシブレードにはステータス以上の強さがある。後述するが、この"煮干しの握り"は、闇寿司内部による模擬戦の勝率9割越えの脅威のスシブレードなのだ。
エピソード
私がこのスシブレードを思いついたのは給料日の3日前、自室で倒れていた時だ。財布に4円とラーメン店の替え玉無料クーポンしかなかった私は、なんとか冷蔵庫の中のものだけでその3日間をやり過ごした。そう、これが私と煮干しの出会いである。
私はこれまでは主にラーメンの研究を行ってきたが、自宅でラーメンを作るのにはかなり材料費がかかる。そのせいで貯蓄も底をついたし、キッチンも脂っぽくなった。そんな理由もあり、煮干しで給料日まで乗り切った私は、ラーメンの研究を断念することにした。
しかし、たとえ資金難だとしても寿司の研究は続けなければ、闇寿司四包丁としての地位が危うい。そこで目をつけたのが煮干しだ。ラーメンの出汁を作るために買い込んだものが大量に余っていたこともあり、私は今月を煮干し強化月間とした。これにより、私は給料の大部分を貯蓄に回すことができ、同時にラーメンの食べ過ぎで太った体のダイエットも出来るという目論見だ。
こうして"煮干しの握り"の開発を実用段階まで進めた私は、普段のように闇寿司構成員相手に模擬戦を重ねる段階に移行した。以下はその時の音声書き起こしだ。
隠し包丁のスニーク: では、さっさと始めましょうか。
出刃包丁のウィーク: ええ、いいですよ。模擬戦とはいえ手は抜きませんので、お体に気をつけて。
スニーク: ほざけ。シビカララーメンのテストは私が勝っただろう。そして今回も同じだ。
ウィーク: ホホホ、まああなたの研究量は私も、闇親方も認めるところです。それで今回は一体どんな寿司なんです?
スニーク: ああ……こいつだ!
私は勢いよく"煮干しの握り"を取り出した。"煮干しの握り"に意表を突かれたのか、ウィークは明らかに困惑している。
ウィーク: えっと……?
スニーク: これが私の新たな研究対象、"煮干しの握り"だ!
ウィーク: え、ええ。見ればわかります。しかしアナタ、煮干しとは……ラーメンはどうしたんです?
スニーク: 資金難で一時的に打ち切った。しばらくはコストパフォーマンスを重視しようと思っている。
ウィーク: 資金難。1
スニーク: そうだ。煮干し以外選択肢がなかったからこそ、私はこれを思いついた。
ウィーク: アナタ、最近煮干し以外何か食べました?
スニーク: 当然だ。もやしも食べているぞ。
ウィークは暫く無言でこちらを見ていた。若干憐憫のようなものが混ざっていた気がするが気のせいだろう。
ウィーク: アー、模擬戦はワタシの負けでいいですから、とりあえずこれで何か食べてください。栄養失調で四包丁の席が空きますよ。
スニーク: ふざけるな!貴様の施しなど誰が受けるか!
こうして私はウィークに不戦勝し、彼の右手に握られていた一万円を奪ってその金で久々のカップラーメンを食べた。その後も模擬戦を繰り返したが、"煮干しの握り"は脅威の不戦勝率90%を叩き出した。コスパが良い上に強い、これはもはや最強の寿司と言って良い。今後私の主力になることだろう。
関連資料
闇寿司ファイルNo.205"塩握り"
"煮干しの握り"よりもさらにコストパフォーマンスを突き詰めた一品。
闇寿司ファイルNo.206"ハリボテニギリー"
"塩握り"よりもさらにコストパフォーマンスを突き詰めた一品。塩握りの中を空洞にすることでさらに安く。
闇寿司ファイルNo.207"米粒"
"ハリボテニギリー"よりもさらにコストパフォーマンスを突き詰めた一品。繊細な箸のコントロールの末、ついに米粒2つだけで回すことに成功した。
文責: スニーク