闇寿司ファイルNo.222 "猫飼いの匂わせ"
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花を愛でる愛猫エドワード。この後噛まれた。

概論

猫飼いの匂わせは、対戦相手の敵意及び集中力を鈍らせるテクニックだ。昨今、猫を飼う人々は急激に増えておりスシブレーダーの間でも空前のキャットブームが起きている。猫飼いにとって他の猫飼いは言わば"同志"であり、可能であれば戦いたくない相手である。対戦相手が猫飼いであれば、自身が猫飼いであることを所作及び外見から匂わせることによって敵意を鈍らせることができるというわけだ。

もちろん、相手が飼っている生物に応じて匂わせる対象は"犬飼い"、"ハムスター飼い"、"ウサギ飼い"等にシフトすれば良いが、昨今の事情を鑑みれば、相手の情報が無い時にはとりあえず猫飼いを匂わせておくのがベターである。集中力を鈍らせる仕組みに関しては次項で触れる。

寿司テクニック運用

攻撃力

防御力

応用性

気軽さ

責任

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猫飼いの匂わせの基本テクニックは、"猫の毛のまぶし"だ。服に猫の毛を付着させることによって、相手に猫飼いであることをまず理解させる。猫飼いアピール自体はそれだけで完結するが、相手の敵意をさらに低減させ、集中力を鈍らせるためには工夫が必要である。私は服をスーツにし、身だしなみを整えることで清潔感のある人間を装うようにしている。猫の毛以外の身だしなみが完璧であるため、対戦相手は「ああ、朝家を出る直前に、猫に身体をスリスリされちゃったのかな」等と勝手に想像を膨らませることとなる。この際、猫の毛はある程度コロコロで減らし、「頑張ってきれいにしようとしたが時間が無くて取り残してしまった感」を出すと効果は増すし、コロコロの毛は増える。相手に無駄な想像をさせることで、猫飼いの匂わせは集中力を削る矛となるのである。応用テクニックとして他に"猫の爪の落とし"、"鰹節(減塩)の忍ばせ"等が存在する。

 
猫飼いの匂わせにあたり、使用するスシは当然猫飼いを彷彿とさせるものでなければならない。最近私がスシとして使用しているのは柄から外した粘着カーペットクリーナー、俗に言うコロコロだ。コロコロは日常的にカーペット等の掃除に使用し、毛が付着したものをそのまま使用する。毛だらけになったコロコロはその溢れ出る生活感によって猫飼いを我が家のリビングへと誘い、愛猫との甘いひと時をも体験させる精神浸食作用を持ったスシなのだ。なおスシブレードとしては弱い。

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相手の情報に応じた上級テクニックは色々だが、私が得意としているのは"猫の尻敷かれの匂わせ"である。猫に引っ掻かれたり、噛まれたりといった外傷を絆創膏によってアピールするテクニックだが、暴力的な猫を飼っていれば自然と成立する。参考までに、我が家で月に消費される絆創膏は100枚を超える。私は幾度となく愛猫に皮膚を貫かれ、その肉を抉られているのだ。

"猫の尻敷かれの匂わせ"のような上級テクニックは、その手間に比例して絶大な効果を生む。これまで私が"猫の尻敷かれの匂わせ"を披露した際には、対戦後50%の確率で対戦相手とLINE友達になっている。上級テクニックは実際に対象の生物達と暮らしていなければリアリティーを出す事ができない難易度の高い技であるため、沢山の生物達と共に暮らすことを強くおすすめする。なお、私は猫、犬、ハムスター、カブトムシ、ピラルク、チャボ、ウコッケイと共に生活している。皆可愛いので、写真を見たい方は遠慮なく連絡して欲しい。

エピソード

私はこの"猫飼いの匂わせ"や"犬飼いの匂わせ"を使い、様々なスシブレーダーと友人になってきたが、相容れない者も存在したためエピソードに記す。

当時、私は友人達から「お前と似た技を使う者がいる」と耳にし、「なるほど、友達になれるかもしれない」と思って人づてに対戦を申し込んだ。お互いの情報が少ない中、当然相手は犬飼いか猫飼いを匂わせてくるだろうと踏んでいた。

ところが、その日現れた人間の様子は明らかにそのどちらでもなかった。奴は白っぽいストッキングのようなものを頭に付け、鬼のような形相で「よろひく」と言った。その時の私の混乱を、皆さんも理解してくれるだろう。「こいつは何を匂わせているんだ、強盗か?」と最初は考えた。しかし、強盗を装ったところで戦略上の優位には立てないことなど自明である。そこで私は、奴の腕を注視した。絆創膏や傷口の有無を探るためだ。

そこで私は戦慄した。奴の腕は大きな痣と注射痕まみれだったのだ。こういった場合、"難病"パターンと、"ヤク中"パターンがある。スシブレード勝負で同情を買えるのは"難病"だが、ではあのストッキングのようなものは何か。頭のおかしなことをして"ヤク中"を匂わせている可能性の方が高いだろうと私は考えたが、確証が足りない。

私: あんた、寿司を出してみろよ。

これで全てがはっきりする。もし"ヤク中"パターンで中南米の植物が出てきたら即刻親方に報告して破門してもらえばいいし、"難病"パターンで点滴を回し始めたら即刻119番して搬送してもらえばいい。私はコロコロを構え、様子を伺う。相手はこっくりと頷き、縦笛のようなものを取り出した。

縦笛。何を匂わせているんだと固唾を飲んでいると、奴はそれを口に当て、吹き始めた。日本では聞かない、珍しいリズムの音色に、私はますます混乱する。"ヤク中"パターンか、と考えた矢先、奴の胸元から何かが飛び出してきた。
 
 
 
 
 

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ヘビだ!


 
ヘビはドーナッツのような円形になり、回転しながら「シャ、シャ、シャ、シャイシャッシャイ(恐らく3、2、1、へいらっしゃいの意)」と声を出し、私に迫ってくる。私は反射的にコロコロを射出したが、ヘビはそれをひょいと躱し、輪の中に捕まえてしまった。コロコロはヘビのボディーに繰り返し衝突していたが、円筒型なので攻撃力に乏しく、全く効いていない。

私は、果たして目の前の男が"ヘビ使いの匂わせ"をどのように行っていたのかを思案した。奴の頭を圧迫しているストッキングのようなものをよく見ると、ウロコのようなものが見て取れた。あれはストッキングではなく、ヘビが脱皮した後の皮ではないか。……どうして被った?ヘビ使いにはそういう文化があるのか。それでは、腕にある痣と注射痕はどうだろう。痣が大きいのは巻き付かれて絞め上げられたものだからだろう。注射痕は血清注射によるものではないだろうか。つまりこのヘビは毒ヘビ……

私は、この勝負の後に起こることに恐れをなした。ヘビはその半径を縮め、コロコロを追い詰めながら私の方をギロリ、と睨んでいる。「次はお前だ」と目で言っているのだ。

突如きたした死の恐怖に、私は自分が何をしているのかも分からないまま、袖口に仕込んでいた猫の爪をフィールドに向かって投げ込んだ。フィールドに届いた爪はコロコロに巻き込まれ、攻撃力の無かったコロコロをまるでスパイクタイヤのように変貌させた。その状態のコロコロと一度接触した途端にヘビはホップして逃れ、回転しながらコロコロから離れる。

ヘビ使い: どうした! とどめを刺せ!

ヘビ: シュー。

ヘビは明らかにコロコロを恐れている。まるで天敵と出会ったかのよう……いや、そうか。猫はそもそもヘビの天敵だ。古代エジプトの人々は猫によって猛毒を持つコブラから守られていたという。今のコロコロは愛猫の毛と爪だらけ。このヘビには、目の前で回転するコロコロは爪を剥き出しにして暴れる天敵に見えているのだ。やがてヘビはその回転を止め、地面に伏せる。

ヘビ使い: このクソヘビ! 何のために血清なんて用意したと思ってやがる! 何のためにこんな皮被ってると思ってやがる!

私: それは本当に何のために被ってるんだ。

ヘビ使い: クソ! 覚えとけよ!

ヘビ使いは頭に被っていた皮をかなり苦労しながら外し、ヘビを置いて逃げ去ってしまった。その場に残ったのは私とヘビとコロコロだけ。私は無抵抗のヘビを捕まえ、すぐに動物病院へと向かった。

結局、ヘビに大きな怪我は無く、現在は私と共に暮らしてくれている。この対戦相手のように共に暮らす友人を置いて逃げ出すような輩には、本ファイルで紹介した"匂わせ"を使う資格はない。なお、愛猫のエドワードが仕切りを破壊し、ヘビをパンチする事件が頻発しているためこのヘビの里親を募集する。とても頭が良く、スシブレードとしても優秀な子だ。皆様からのご連絡をお待ちする。
 
 
関連資料

猫の飼い方・しつけ方(群馬県)
猫を飼う上で前提となる注意点がまとめられている。あなたも猫飼いにならないか?
 
 
ヘビ - Wikipedia
ヘビに関する情報がまとめられている。飼育に関しても触れられているため、里親になるか迷っている諸君にもご一読願いたい。とても可愛い子だ。きっと好きになるだろう。愛猫、エドワードのヘビを見る目が尋常ではない。パンチでは済まなくなる気配があるので早く引き取ってあげてくれ。

文責: 猫飼小鳥


 
 
 
 
追記: 闇親方から連絡が来た。闇寿司に"エドワード三世"を名乗る猫が入門したらしい。使用しているのは緑色のヘビ。ファミリーネームが猫飼でミドルネームが弁慶。どう考えても我が家のエドワードだ。闇親方は"猫の猫被り"に騙され、入門を認めてしまったようだが……そもそもどうやって外に?
 
 
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黙秘権を行使する愛猫エドワード。この後噛まれた。

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