闇寿司ファイルNo.2641 "ビリヤニ寿司"
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ビリヤニ

概論

"ビリヤニ寿司"とは、インドにて独自の発展を遂げた闇寿司の一形態である。

インドでは長く粘着力が低いインディカ米が食されてきたため、形の整形を米粒の粘着力に頼る寿司との相性は致命的と言っていいほど悪く、長らく寿司空白地帯だった。しかし、インドは今や世界最大の人口を誇る国であり、かつグローバル化が顕著である。日本から遠く離れた異国の地で、常識破りの寿司が誕生した。


スシブレード運用

攻撃力

防御力

機動力

持久力

重量

操作性

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米同士の粘着力が低いインディカ米を使用する都合上、いわゆる普通の握りを作ったところで圧倒的低耐久により自壊してしまう。日本ではこのような素材を使う場合海苔を用いて軍艦巻きにすることがあるが、当然インドに海苔を簡単に手に入れる方法はない。

その問題点を解決したのがライスペーパーである。生春巻きなどに使用されるライスペーパーはベトナム名物であり、少なくとも海苔よりはインド料理に合う。作り方も米あるいはでんぷんを水で伸ばし乾燥させてつくるため、気力があればインドの地でも制作可能である。

この寿司は、ビリヤニをライスペーパーで包むことで成立する。オブラートに包まれた粉薬をイメージすると近い。ライスペーパーは海苔よりも伸縮性に富んでいるため、軍艦巻きの弱点であった上部への攻撃も完全にシャットアウトできる。加工も簡単であるため、結び目にあたる部分に装飾を施すことも可能だろう。


エピソード

闇寿司に所属する預言者が葉蘭の葉1を用いたところ、インドのとある地にて闇寿司の才能が開花したとの情報を得、筆者はインドに偵察を行った。

ニューデリーからヤムナー川に沿いおおよそ100km、まだまだ発展途上の趣を残す住宅街の中に、彼はいた。

筆者: こんにちは、ビリヤニが回り出したという噂を聞きつけたんだ。話を聴かせてもらえないだろうか?

男: わざわざ日本から?珍しいこともあったものだ。

男は日本の寿司の存在を知らなかったが、偶然ビリヤニが回転している場面を実現させたという。

男: お祝いのためにビリヤニを作っていたんだが、母の体調があまり優れていなくて、スプーンでビリヤニを食べることが難しそうだったんだ。少しでも食べやすいように、ライスペーパーで包んでみたら、これが結構好評でね。

男: ただ、注意を怠ってトングでつまんだビリヤニをラッシーにぶつけたら急に落ちて周りだしたんだ。わけがわからない。

インドにおいてビリヤニはお祝い食としても食される庶民的な御馳走の一種であり、これは日本における寿司の立ち位置と極めて近い。ラッシーもビリヤニやカレーなどのスパイシーな料理をリフレッシュする飲料という位置づけであるため、日本における湯呑/緑茶と共通点がある。すなわち、「ビリヤニにラッシーをぶつける」という行為はインドにおけるスシブレードの翻訳と言えるのだ。

筆者: 日本においては、寿司……そちらで言うビリヤニくらいメジャーな食べ物を回転してぶつけ合う戦いがあるんだ。

男: 何を言っているんだ?食事を粗末にするなんて!

筆者: 粗末にはしていない!

少々手こずったが、なんとか男に対してスシブレードという概念を教えることに成功した。

男は親族の結婚祝いの機会に作っていたビリヤニの余りが残っているということだったので、ビリヤニ寿司を再現し勝負を行うことになった。手早くライスペーパーでビリヤニを包む様は小籠包を想起させたが、ライスペーパーは生地に比べて薄く脆い。繊細ながら大胆な手つきに好勝負の予感を覚えた。

筆者はカツオの寿司を準備した。当然筆者も闇寿司構成員ではあるが、あまりに実験的な寿司の相手に尖った寿司は似合わない。片や標準的な寿司、片やライスペーパーに包まれたビリヤニ。

筆者: 3、2、1、へいらっしゃい!
男: サン、ニ、イチ、ヘイラッシャイ。

空前の異種格闘技がスタートした。

ビリヤニはゆっくりとフィールドの外周を周っている。軍艦巻きのネタと似たような挙動である。特に接地面とライスペーパーの耐久が心配になる擦れ方だ。

しかしビリヤニのスピードは軍艦巻きのそれよりもかなり速い。ライスペーパーは水分でふやかしてから用いる都合上、寿司全体がみずみずしい。水が乾かない内は耐久面にも気を配る必要はなさそうだ。

だが、決定打がない。こちらが寿司の偵察を兼ねて意図的に攻撃を抑えているのもあるが、全面をライスペーパーで覆ってしまったが故に体当たり以外の攻撃手段が一切存在しない。その体当たりも球面に近い表面ではまともにダメージを与えられておらず、単純な持久力勝負になるのではないか。そう予想したその時だった。

男: おい、なんかビリヤニが光っていないか?どうなってる?

ビリヤニが黄色くなりだしたのだ。おそらくビリヤニに入っていたスパイスがライスペーパーの水分で溶け、表面に現れたのだろう。事態はここから急展開を見せた。

フィールドの気温が上昇し始めたのだ。男も目を丸くしている。

筆者: おい!前回った時はこうはならなかっただろ?!何を入れたんだ!

男: わからな……ああ、お祝い事だから高いサフランを買ってきたんだ!

サフラン、世界一高いスパイスとも称されることもある貴重な香辛料である。その美しい色は太陽にも例えられたことがあるという。数多のサフランの霊力が伝播したというのだろうか?

加熱料理するビリヤニと異なり、鮮魚はあまりに熱に弱い。普段はそんなこと気にしなくていいはずなのだが……。

筆者: ……焦げてる?

もはや火に近い温度になったフィールドにより、カツオの表面には焦げが生まれ、ライスペーパーは乾ききっている。

なんと運のいいことだろう。

筆者: 行け!

刹那、大爆発が起こった。

わずかな一瞬、カツオは表面が加熱された半生状態になり、カツオのたたきに進化を遂げた。結果的に加熱を逆手に取れる数少ない鮮魚だったのだ。

捨て身でとらえた一撃は、太陽を切り伏せた。しかしその傷からは、ビリヤニがこれでもかと噴出する。イクラ軍艦など目でもない、ライスペーパーに閉ざされた圧力が放出された爆発。

男はあっけに取られた後、粉々になった残骸を見つめ唖然としていた。この勝負で起こった損害は全額筆者が負担した。スシブレードの新たな可能性を切り開いた彼には、もっと羽ばたいてもらいたかったからだ。

インドという異国の地から、新たなムーブメントが起こることを切に願っている。

文責: 日照 新

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