闇寿司ファイルNo.820 "魚形埴輪"
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画像は千葉県山武郡芝山町白桝祭祀遺跡出土魚形埴輪

概論

まず最初に、埴輪とは古代スシの一形態である。

一般的には弥生時代後期に出現した特殊器台・特殊壺を起源とし、古墳時代前期には円筒埴輪や朝顔形埴輪、中期以降は動物や家、武具などを表現した形象埴輪、人物埴輪が増加するという。

…だがそれはヴェールの表側のカバーストーリーであり、その真なる起源は、喪葬・儀礼に邪なモノが入らない為、被葬者をソレらから保護する為の祭祀用の捧げ物、霊的装置としてのスシブレードの表現である。多くの古墳の墳丘部や造出、祭祀遺跡等の遺構でも数多く検出しているのは、死後もスシブレードという武力によって地域社会の頂点に立ち、河川の水運や漁労といった古代の産業の擁立者としての威信材としてなのである。
某教授曰く、古墳時代の馬の放牧、鉄生産、スシブレードの運用とそれによる武装は当時の日本の最新技術であり、王権の維持に欠かせない物なのだ、と。

軽く大別すると、家形埴輪 、大刀や盾、船、甲冑、男子形と女子形の人物埴輪、鶏・水鳥の鳥形1、馬形、その他の犬や猪や鹿、魚、ムササビ(!)2に分けられる。人形埴輪の真の役割は、スシの擬人化、もしくはスシに宿る神霊を描写した物であろう。

このように埴輪と一声で言っても、そのスシ学、歴史学的背景や多様性には目を見張るものがあり、私個人の学術的関心、尚且つ遺物としての特性に着目して握ったのがこの"魚形埴輪"3である。

スシブレード運用




攻撃力

防御力

機動力

持久力

重量

操作性

学術的価値

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まず基本的な事を述べるが埴輪とはスシであると同時に土師器、すなわち土器の一種である。その重量は生粘土で最大350kgにもなる場合がある。勿論焼成までには4、5kg、最大でも20kgに収まるがそれでもその圧倒的重量、堅牢さは目を見張るものだ。

私の魚形埴輪の材料は古墳時代後期に東日本最大の埴輪生産遺跡であった生出塚埴輪窯跡の粘土採掘坑遺構付近の粘土を採取、具材とした。4また表面加工には古墳時代後期の技術、粘土紐の巻き上げやハケ調整、タタキ調整5に至るまで実際の遺物を基に忠実に再現、現代まで残り、日本の酸性の土壌でも形を保つその防御力を復元した。通常のスシでは傷をつけることすらままならないであろう。

しかし重要なのは「魚形」に代表されるようにネタが乗っかっているという点である。先程も述べたように埴輪の型式、器形は多種多様であるが、器台の上部に食材、特に魚(出土例ではボラや鮭が推測されているが私が常に携帯しているのは鮭をネタに復元をしたものだ。)が乗っかっているという構造はまさにスシと同質、というよりそのものであり、日本列島になれ鮨が渡来する前から存在していたスシの原型と考察できることから選択した。呪術的意味合いでは相手のスシを邪な害悪をもたらす魔物、穢れと見做す一種の類感呪法を利用し、物理的重量、宗教的観点による回転力の増加、相手のスシへの状態異常を可能とする。

しかしながら何点か見過ごせない問題点も見つかっている。その重量によって回転力を高めているがその為スシの操作にタイムラグが発生してしまい、移動速度自体も他のスシに比べ大幅に低下してしまう。加えて自身の重量と埴輪の「被葬者や祭祀場を守護する」役割によって本来の遠隔地にも搬出されるという土器そのものの移動性能が機能せず、自分からの先制攻撃が殆どできないのだ。ちなみに人物埴輪や馬形埴輪で調理していたら発生していたであろう、各部位の結合部を攻撃された際の分解、破損のリスクは粘土による隙間の補填、魚部と器台を直接繋げる調理方法で最大限回避するように試みた。だが持ち運ぶには通常のスシと同様には改良できず、スーツケースを改良した専用のプロテクトツールケースを肌身離さず装備することになってしまう。6

結論としては、基本的な運用方法は呪術的要素で防御し、相手がノンストップ体当たりしてきたらそれを受け止めて反撃する、カウンタータイプのスシである。その為長期戦になりやすいが、相手のスシの持久力を削ぐ面ではそれもメリットの一つであろう。

他の活用法

このスシは料理であると同じく埴輪、特に出土例の少ない魚形埴輪の復元模型である。スシとしての使い方の他に賞味期限以内なら博物館の展示ブースで展示して学生、地域住民への生涯学習の機会を提供することに役立つこと間違い無いだろう。他にも研究目的も兼ね、土偶や弥生時代のミニチュア土器、人物埴輪や形象埴輪をスシに用い、それらを前方後円墳や円墳に配置する復元作業もしている。 

埴輪や土偶といった遺物に対して関心があるのであったら、闇寿司に所属しているかの有無を問わずご一報して頂けると嬉しい。

エピソード

これは先日、先月からの東京の明治大学の業務である展示会の準備と資料整理作業を行なっていた際に"回らない寿司協会"の刺客と交戦した際の記録である。この時は普通に大学の博物館の発掘調査報告書の報告や展示物の点検を兼ねた準備で大慌てで、想定以上に接近を許し、苦戦を強いられてしまった。

私: ふぅ、後は新たに購入した奈文研7の報告書の確認をやったら最後な感じですね。

???: おい女、貴様一人か?

私: え?あのすみません、本日の図書館の閉館時間は10分後に終わってしまって、博物館も1時間前に閉まってしまいました。また後日来館して下さ──

???: 世間知らずの大学人のフリはやめたらどうだ、"襷ゴテトロウェルの土師"?

博物館図書館の閉館間際に突如入室した、粗雑そうな男は、私の裏──真の名前を口に出した。

私: …成る程。"協会"の反知性主義者ですか。私達闇寿司に対して打つ手がない、いやスシを持つ時の指の出し方すら忘れたからこんな闇打ちをするしかないのでしょう?

寿司協会の男: 妄言だな。この日本の伝統、固有の精神的支柱たる寿司を侮辱する侵略者、闇寿司め。貴様は俺がこの場で押し潰す。

私: …スシに対する考えが凝り固まって堆積層みたいになってるならまだしも、そもそもの解釈が歪んでいますね。

私: 日本に、いえこの世界に固有精神とやらなんて存在しません。スシに限らず新しい考え、モノが移動しない場所に文化は生まれない。逆に貴方達のような人達がいる限りこれからのスシの未来は開けません。闇寿司が世界征服しているのではなく、協会がスシの文化への誤った解釈を吹聴しているの──

まだ私が話しているのにも関わらず、協会の男は自身のスシ──長方形の鮎の押し寿司を取り出し、それは私の居たデスクと受付を破壊しながら資料室を飛び出し、出入り口のエスカレーターを瓦礫で埋没させた。主な脱出経路を潰され、身構える私に、手元に自身のスシを戻した男が口を開く。

寿司協会の男: これで退路を絶った。貴様は足元にある寿司を騙る粗雑な土塊を構えるしかない。

あたし: あー、もしかして埴輪や土偶のことをギリシャ・ローマの彫刻と比較して、粗悪とかレベルが低いとか曰う人種ですね?後貴方の使う押し寿司だって元は東南アジア全域に見られる保存食が起源、というよりも貴方の理論で言ってしまえば、「江戸前寿司」を使うのが回らない寿司協会なのに貴方自身は関西の押し寿司を使っているじゃないですか?

寿司協会の男: 早口でベラベラと捲し立てるな、キモオタが。その慇懃無礼な態度ごと平らにしてくれる。

私: ええ、来なさい。その固定観念から貴方の寿司魂を発掘してあげます。

両者: 3、2、1、へいらっしゃい!

私は手に抱えてた魚形埴輪を、男は長い押し寿司を展開したが、この時点では私は自分の勝利を疑っていなかった。明らかに私の魚形埴輪の方が押し寿司よりも重量、大きさの面でアドバンテージがあり、動かずとも持久戦で勝てる。そのはずでしたが、

私: …スシが分裂した?!

寿司協会の男: そう、押し寿司は一気に食するものにあらず、切り分けて食べる物。俺の鮎押し寿司、"SRaIPiMスレイ・ピム"は個にして群、群にして個。じわじわと嬲り殺しにしてくれる!

忌々しくも興味深いことに男のスシは分裂、相手が一本だったのが3切れ、3切れだったのが6個と増えて私の魚形埴輪を取り囲んでいる。その、一方で個々の速度と回転力は衰えたように見えず、むしろ増加していくのが目に見えた。

私: どういうこと?分裂したのに勢いが削がれていない?

寿司協会の男: ふん、自分の方が図体が大きいから有利、とでも考えていたのか?

寿司協会の男: 俺の押し寿司はシャリと身の限度まで押しを施している。押し型は黒檀で作り、押しの作業には押し寿司に特化した職人5人の全体重を掛け、ダマスカス鋼の包丁で切れ目を入れてある。今の"SRaIPiMスレイ・ピム"は如何なる寿司よりも重いのだ!

私: くっ…。なら魚形埴輪、方相氏防御フォームを維持しつつ距離を離しなさい!部屋の入り口に向かい、有利な場所で闘うのです!

この際私は彼のスシ群から距離を置き、持久戦、もしくは物量による殲滅戦を行おうとした。機動性に難がある魚形埴輪もその祭祀的・呪術的攻撃によってそのニッチを補っている。しかし、

私: …動けない、寧ろ引っ張られている?

私の魚形埴輪だけではなく、図書館のあらゆる資料、私までもが押し寿司に引っ張られ、一つの塊になろうとしていたのだ。すんでのところで私は魚形埴輪にしがみついて助かったものの、自分達以外の本棚、報告書、デスクや椅子が一点に収束していた。

寿司協会の男: "SRaIPiMスレイ・ピム"が他の寿司よりも比重・密度が濃いだけの寿司と見誤っていたのが貴様の敗因だ。ブラックホールまでとはいかないまでも、鮎の身の限界まで加圧した寿司は重力を歪め、引力を生み出す。

寿司協会の男: そしてこの散らばった寿司を一つに戻す、つまり重力、引力が元の状態に戻るのだ。これが意味することは一つだ。

寿司協会の男: …貴様の寿司もどきの模型はこの部屋の中の全てと壁に挟まれて押し寿司になると良い。

突如加圧から解き放たれた混合物は魚形埴輪の防御力でも防ぐことは出来ず、私ごと外の展示室手前まで吹き飛ばされた。

魚形埴輪のおかげで主要な臓器は衝撃から守ることはできたものの、腕や脚にはペンや椅子の一部が刺さり、左手の小指と薬指が本来そうならないであろう角度に曲がっていた。加えて魚形埴輪は器台が破損してしまい、全体にヒビが入った状態に陥ってしまった。

そして、遠目に男が立ち上がり、彼のスシがじわじわと迫ってくるのを見て、私は何とか魚形埴輪を抱えながら横の展示室に這い出し、展示室の一番奥の隅で縮こまった。

寿司協会の男: ほう、あれを耐え切ったか。まあ良い。袋小路に自分から陥ったな。

寿司協会の男: この一撃で完全に終わりだ。闇寿司にかける慈悲、特に貴様のような手合いにかける物は何一つない。

私: [大きな笑い声]

寿司協会の男: 気でも狂ったか?無理もないがな──

私: いやごめんなさい。そう意味じゃないんです、こんなにも都合よくことが運ぶなんて思ってなくて。

寿司協会の男: 何?

私: あのですね、今みたいに貴方のような人が私を狙っているのも、魚形埴輪対策をしているのも想定済みで、どうすれば対処できるかを先月から試していたのです。けれども私と魚形埴輪を図書館から展示室まで吹き飛ばしてくれたり、すんなり展示ケースにカバーが掛かっていることに注意せず展示室の中に入って来てくれるとは考えてなくて。

私: 何よりも、貴方のスシネタが鮎、「川魚」なんてこんな幸運なことがあるとは思わなくて。わざわざ展示室で準備した甲斐があったなぁ、って、つい。

寿司協会の男: 貴様、何を言──

私: ところで、どこかから何か回転しているような音が聞こえますよね?

私: 実は用意してたスシは魚形埴輪だけでは無いんです。

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