闇寿司ファイルNo.986 "宅配ピザ"
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概論

"宅配ピザ"は、電話もしくはネットによる注文であったか本格的なピザをご自宅へデリバリーするサービスのことだ。一部の例外を除いてスシブレードはスシブレーダーが打ち出してバトルフィールドにインするので寿司のスピードはどうしても持ち主の筋力に依存してしまう。一部の例外はあるが1。だがしかし、この寿司はスシブレーダー自身ではなくピザ屋のバイト君が運転するバイクの「疾さ」を漁師力学的物理学的にそのままピザに乗せて発射する。人の体ではなく排気ガスを上げて爆走する駆動機体から繰り出されるその寿司はトップクラスのスピードを誇る。

ここまで読んで「バイト君ごときがそんなスタントマンみたいな芸当できるわけない」と疑問に思うお茶の間の皆さんもいるかもしれないがチャンネルはそのままにして欲しい。往々にして優れた闇のスシブレーダーには優れた頭脳が搭載されている。バイトにスタントマンの真似事をさせるのではなく、スタントマンを宅配ピザのバイトとして潜入させてしまえばいいのだ。前提として無理ならその前提を破壊してしまえばいい。これこそがソクラテス式コペルニクス型コロンブスのピッツァというやつである。

宅配ピザの利点はスピードだけでない。そもそも自分が寿司を携帯する必要もない。そのため相手は目の前の人間がスシブレーダーではないと油断するため、ピザが届き次第ほぼ確実にノーモーション奇襲成功からの路地裏ルール無用残虐ファイトに持ち込める。

当然問題もある。冷凍ピザと比べて割高な値段、そこにプロのスタントマンに払う報酬と口止め料を考慮すると金がドチャクソにかかるのだ。なので手当たり次第に目に付いたやつをピザソース色に染め上げるという運用は夢のまた夢で、実際には暗殺用やここぞの時に使うものになっている。

スシブレード運用

操作性

スピード

破壊力

持久力

機動力

重量

保温性

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(レーダーチャートはマルゲリータを使用した場合)

基本的にスピード以外はすべてピザの握りと同様である。1枚丸ごとの大きさで盤面を支配してもいい、1切れずつ小分けにしてピザミサイルとして相手を迎撃してもいい。もちろんピザの握りの種類もオーソドックスなマルゲリータ、海神の力を携えたシーフードミックス、ピザの握りの弱点である軽さを克服したテラミート、サムライSHINOBIパゥアーによって相手を圧倒するテリヤキマヨなどピザ自体の種類もより取り見取り2なのでここは以前に私が書いた闇寿司ファイル"ピザの握り"を参照してほしい。







ちなみにスタントマンが運転する宅配バイクのパラメーターはこちら。

スピード スタミナ パワー 根性 賢さ
S 1159 A 838 D+ 391 D 306 B+ 705

コース適正   芝C  ダートE  公道A

距離適正   短距離A  マイルA  中距離B  長距離B

タイヤ適正   逃げA  先行A  差しE  追込D

極論言ってしまえばピザ屋のバイクに防弾加工や特殊合金といった破壊耐性を求めてはいけないので後続のバイク群に呑まれたときに時にどう抜け出すかがポイントである。また一般的な公道で走ることを想定しているので他のバイクよりもパワフルとは到底言いづらく、ダート適正も絶望的である。しかし逆にその弱点に目をつむれば動物には出せないスピード、ガソリンが尽きない限り動くスタミナ、プロのスタントマンとして培ってきたスキルとそれをどこで発動すればよいかという長年の勘(賢さ)はトップクラスのステータスである。また当然であるがタイヤが脚である車が芝で走行するとタイヤが草に絡めとられてしまうので走らないほうがいい。じゃあなんでこんな項目あるんだよ。

エピソード

闇寿司ファイルNo.986 "宅配ピザ"実践記録。当ファイル製作者である"ANN=ノゥiMo・シナモンパウダーマッシマシ"が記録。

2020年を発端に、世界は未曾有の感染症危機に襲われた。それにより人々は外に出て密集する事を拒み、その結果として我々現代日本人の生活様式は大きく変わった。だがそんな簡単に体に染みついたライフスタイルを変えられる事もなく、またその期間も「自粛疲れ」という言葉が生み出されるほど長く続いた、というか今も続いてる。現にスシの暗黒卿や闇寿司四包丁は今も会合は100%SkypeやZoomで行っているという。

ヴェールの内側にいる人々も感染症の影響を多かれ少なかれ受けており、この機会にかこつけて感染症防止のための新しい商品を売り出そうとする日本生類創研東弊重工もいれば、恋昏崎新聞社は今回の騒動を財団の「正常社会への迷惑を顧みない冷血非道な特別収容プロトコルの一環」だといったよくわからんネタをでっちあげている。エルマ外教はお客様の自宅に簡易ポータルを用意して半日程度の異世界跳躍をする旅行パックをこのユニバース向けに発売しており、これが非常に好調であるとの噂である。Ttt社も同じような別世界への旅行ツアーを行っているがあっちは案内する神の気まぐれがしばしば発生するため予定通りにツアーが進まなくなり、日帰り旅行が半年かけて神々の黄昏をめぐる一大スペクタクルになることもあるらしい。最も、旅先でのトラブルが好きだというサプライズウェルカムな一部の層には大変受けているらしいが。

だがこの私ANN=ノゥiMo・シナモンパウダーマッシマシはそれ以前から家にいることが大部分というアットホームかつ省エネ的生活を心がけており全く苦にはならなかった。腹が空いたら出前を取ればいい。それ以外のものが欲しければAmazonを使えばいいし、コンビニ程度の外出なら何も躊躇なく行ける。退屈なら配信サービスやソーシャルゲームがある。私は大学生なので自分の店を持っていないのが幸いして、従業員のみんながどうしているかなどという必要以上の人間関係を迫られることはない3。むしろやっとこさ世界が私に追いついたかと思うほどに快適だった。

だが、あくまで外出の機会が減っただけでずっと引きこもるわけにもいかない。その日は所用でどうしても大学の研究室に行かなければならなかった。校舎に入った時、私は複数の人の視線に囲まれていると瞬時に感じ取った。おそらくだが相手は私が闇のスシブレーダーであることを知っている。

どこから情報が漏れた?大学の関係者か?まあいい。エルマ外教から勝手に拝借した超高性能物体保存カバンを改造した保冷用バッグに忍ばせた冷凍ピザを7枚、溢れ出る冷気と共に取り出す。

…放て。

熱エネルギーというのは物質を構成する原子や分子の熱運動、即ち「動き」によって発生するものだ。このことから「早いスシ=皿の回転面やシャリの温度が高い」という図式が出来上がる。対して冷凍ピザは凍っているためスピードは非常に遅く、ただ回しているだけでは図体ばかりのノロマである。そこで私が目を付けたのがエルマ聖印奇跡論だ。これにより冷凍ピザ1切れを小型ミサイルへと置換。追撃型と迎撃型の2つを使いこなし相手を追い詰める。先ほども言ったようにスピードが欠点となるのだが、ミサイルは燃料によって動くので冷凍ピザ程度1秒足らずで解凍出来る。

爆発音と男たちの悲鳴が鳴り響く。幸か不幸か建物内には人がいなかったためすぐには気づかれなさそうだが、これほどの爆発音は外にも響く。警察を呼ばれるのも時間の問題だろう。身を隠していた男の一人が柱の陰から寿司を発射するモーションを取る。

男: 3、2、1、へいら…
私: 甘い!
男: !?ぐわあああ!!

速度は早いが制御が利かない迎撃型を最初に展開してある程度の目くらましにする。残弾はもうないと油断しきった相手の背後から潜ませておいた追撃型を操作しお見舞いしてやる。追撃型は操作可能な分威力や速度が今一つだが、まあ尋問するには殺さないほうが色々都合が良いだろう。

男: う…うあ…
私: 起きろ。このゴミムシが。
男: がぁっ…
私: 何故私がスシブレーダーだと分かった?何故私を襲った?
男: ス…ス…
私:
男: スシガミに栄光あれ!!!
私: !?クソがっ!

途端に男の体は弾け、衣服のみを残したその空間には酢飯や赤身やタコ、サーモンの切身が散乱した。とっさのことで防御態勢を取れず、米粒やネタであったものが勢い良く私の体に直撃した。

私: い…痛え…何なんだ、人間の、体が、粗悪な寿司に…?
倒れた他の男たち: スシガミに栄光あれ!!!スシガミに栄光あれ!!!スシガミに栄光あれ!!!
私: マジか…!?

かつて生き物だった「それ」が、大量の粗悪な寿司となって私に襲い掛かる。シャリの粘っこさとタコの吸盤で足を掬われ、他のネタが私の体を切り裂き、強い衝撃と共にぶつかる。

最初から…特攻が目的だったのか…!!

怒涛の衝撃で足があらぬ方向に曲がったのが自分でも分かる。なすすべなく地面に伏せる。幸いにして改造カバンに忍ばせた予備のガラケーは無事だ。取り出し、スタントマンがアルバイトをしているピザ屋に電話する。

スタントマン: はい、もしもしこちらピザ───
私: 私だ…ANN=ノゥiMoだ…
スタントマン: !ANN=ノゥiMoさん、ついに宅配ピザのお披露目っすね!最初の犠牲者は誰で、どこなんです?俺もう楽しみで楽しみで…!
私: 場所は…華求大学7号館1階…そうだな…念のため…テラミートが2つ…シーフードミックス1つ…サイズは…ぐっ!…全部Mでいい…
スタントマン: ANN=ノゥiMoさん…?なんでそんなに苦しそうなんです?それにそこってANN=ノゥiMoさんの大学じゃないですか!あなたと私がスシブレーダーだってバレますよ!
私: いいから…出来るだけ早く頼む…
スタントマン: ちょ───

私:
私: ぐばっ…!

電話を切って、たまらず通話中我慢していた喉からこみ上げるものを吐き出す。

私: …血
私: …ははは…

私を倒そうとした刺客たちが全員特攻上等だったということは、そうさせようとした親玉がいるはずだ。どうせ死ぬならそいつを道連れにしてやる。宅配ピザよ、私の死を手向けにするから華々しく初陣を飾ってくれ。自分の死を脳内で必要以上に美化しているとエレベーターの電子音と同時に、扉が開いた。そこから出てきた人影が、静寂の中わざとらしい靴音を響かせて私に近づいてくる。

こいつが…私の正体を見破って…殺そうとした刺客共の親玉…

???: 華求大学2年生、人文学部は浅井ゼミ所属、本名「庵野 胡桃いおりの くるみ」、しかしてその本性は闇のスシブレーダー、"ANN=ノゥiMo・シナモンパウダーマッシマシ"。お久しぶりです…ってほどでもありませんか。リモート授業もあったし。今日はわざわざ呼び出してすいませんでしたね。
私: こちらこそ、お久しぶりですねぇ…浅井…先生。随分と熱烈な再開…嬉しいですよ…

浅井 翔也先生。普段から温厚であり生徒から人気の高い先生である。彼が普段とは変わらない笑顔で倒れ伏した私を睥睨する。右手のサイレンサー付き小銃を私の頭部に狙いを定めて、左の小脇にホカホカの、底によくわからん紋様が描かれた寿司桶を抱えながら。

浅井: 爆転ニギリと脳内爆弾キルスイッチの原理を応用した人間寿司爆弾…対象に「スシガミ」への信仰心が求められるのがネックですが、精神酢飯漬けをもってすればなんら問題ない。
私: 先生も…スシ、ブレーダー…だったなんて…
浅井: あなた達と一緒にしないでもらいたい。

浅井は狙いを下に向けて私の左腿に銃弾を打ち込んだ。熱さと錯覚する痛みに声すら出ない。

私: ぎ…
浅井: 気が変わりました。すぐには死なせない。ゆっくりと苦しみながら死ね。
浅井: 私が寿司をただいたずらに傷つける連中と同じ?寿司の尊さ、寿司の可能性に全く気付かずに破壊の材料としか思っていない連中と同じ!?そう言ったな!?ソう言っタナ!!???
私: あっ…!!ぐああ…!

私の左脚の感覚がなくなったかまだあるのかわからなくなった辺りで銃口が頭に戻る。

浅井: …何故、私ガお前にスシヲ使わナいのか分カルか?
私:
浅井: コのスシとハ「神」でアリ、「神託」デアり、「混沌」デあルからだ。人間如きガ触ルるなどと汚らわシい…?
私: (何だ…?急に喋るのを辞めて…)
浅井: …成程、援軍カ。
スタントマン: ANN=ノゥiMoさん!!

浅井が呟くや否や超高速のテラミートが的確に浅井だけを狙って着弾した。倒れ伏している眼前にスタントマンが現れ、私の体を担いで再びバイクに乗る。

私: おっまえ…もうちょっと安静に運べよ、怪我人よこちとら…スケベ野郎がよ…
スタントマン: んなこと言っとる場合ですか!
私: それもそっか…ヘマやらかしたわ…ありがと。
スタントマン: とりあえず相手は最高速度をモロ着弾しました、今頃肉片がピザの具と一緒に散乱してますよ!早く───
私: 手持ちのピザは?
スタントマン: は?…電話通り、ギガミートとシーフードミックス、1つずつ、ですよ?
私: 分かった…

そこまで言ってようやく、スタントマンは「それ」の存在を知覚した。私が目をそらし続けた「それ」を。

私: ダメだ!見るんじゃ───
スタントマン: な、んだあ、あれ。

私は実物を見てないためここからは無事に避難した後に、彼が事件を振り返った際の言葉を引用する。まず砂煙の中で最初に見えたのは、おおよそ3m上にある浅井の頭部だった。ただし、目と口の穴が全て縦に割れていて、鼻が削がれたように滑らかだった状態だった。一般に首と呼ばれるようなものは見当たらず、代わりに下顎から髭のように朝紫色の触手が滑らかな動きで建物内部の柱を絡めとっていた。

縦に割れた口はへその部分まで拡大して体を割いており、タール色素のように黒光りしていた胴体には1対の太い腕と3対の細い腕が腹部と腰から生えていた。下半身は様々な魚の頭がうぞうぞと蠢動しながら固まって浮遊していた。

スタントマンは一目見た瞬間にこのような細かい外見を「理解した」らしい。同時に「それ」がこの地球のものではなく、また対抗策もないことも「理解してしまった」と言っている。

浅井?: 雋エ讒倥i縺溘□縺ァ貂医?縺ィ諤昴≧縺ェ
スタントマン: あ、ああああああああ!
私: うわっ…!

明らかに正気を失くしたスタントマンはエンジン全開で外に逃げようとした。後ろから何かが這いずりながら追いかけてくる音が聞こえる。私は出来るだけ前方を見ながらシーフードミックスとギガミートにエルマ聖印奇跡論の簡易的な印を結ぶ。ミサイルは一斉に後方へ発進し、何かを迎撃した。そうして出口を出た直前、建物の玄関でタイヤが何かに持ち上げられる感覚が私たちを襲う。感じ取ったのも束の間、眼前に大量の触手が現れスタントマンの視界を阻み、私たちはバイクごと持ち上げられた後振り落とされた。

あの化け物に食われる。直感的にそう感じ取り身をかがめてしまった。













私もここまでかと思ったその瞬間、かわいらしい女の子の声が聞こえてきた。いや、あの感覚は心に響いてきたと言うべきか。

女の子の声: くるみさん…あの人を、早水さんのことを、よろしくお願いします。
…私はっ
[涙声で]私はあの人と会えて…幸せでした…!

待て待て待て待て、なんでスタントマンの苗字知ってんだ、明らかに親交が深いしっとりとした会話なんだけどどういう関係?上司が知らない間に何やってんのお前?

スタントマン: ハナコ…?お前何言ってんだ…?ダメだ、辞めろ!

よかった、私だけじゃなくてお前にも聞こえてたよ。いやいや今こいつは正気を失ってるから一緒に幻聴が聞こえて安心しちゃダメなんだよ。

女の子の声: バイクソウル…燃やして…「疾る」ゼッッッッッ!!!












スタントマン: 嘘だろ!!おいやめろ!!俺の愛バ(イク)4が!!!!!!!

うるさいバカの大声で目を覚ました、どうやら気を失っていたらしい。状況をすばやく確認すると何故か触手は私たちではなくバイクのみを取っていったらしい。私は目ん玉をぎらつかせながら走りだそうとする正気を失ったスタントマンが愛バ(イク)の後を追おうとするのを必死で止めた。

スタントマン: あああ離せ!!俺はハナコを助けなきゃいけないんだああ!!!
私: バカ!正気に戻れ!それとお前バイト先の借り物に愛着湧いて名前つけんじゃねえ!
スタントマン: 痛え!…あ、あれ?ANN=ノゥiMoさん?俺たち何でこんなところに…?

やはり正気喪失者には精神鑑定こぶしに限る。そう思っていると触手がみるみるうちに建物内へと収まっていき、そこから悲痛な叫びが聞こえてきた。

浅井: 何故だ…!何故だスシガミ!どうして私との融合を解除してそんなガラクタに興味を示した!早く再融合しろ!魔法陣の描かれた寿司桶ならここにある!
浅井: バイクに跨って「どう?キマッてる?」じゃないんだよ!ていうかそうやって乗るんかい!
浅井: 待て!エンジンをふかすな!どこに行く!や、やめろ!が───

私は浅井の叫びと骨が折れるような音を聴きながら意識を失った。

・・・

・・・

・・・

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・・・

・・・

目を覚ますと私は病室のベッドの上だった5。どうやら不審に思ったスタントマンが前もってこちらに向かう直前に闇寿司に援軍を頼んだため、財団やGOCよりも早く私たちを回収できたらしい。ともすれば敵同士になりうる闇寿司で協力者を調達できるなんて…ひょっとしてコミュ力の塊か…何で私なんかとつるんでるんだ…6

しかし驚いたのはそれだけではない、なんと闇親方が私の病室に直接出向いてきたのだ。何故バスローブ姿で右手にでっけえワイングラス、右手に可愛い子猫ちゃん7を携えてサングラスをかけながら漫画でしか見たことがないような葉巻を咥えているのかは置いておく。寝起きでそんなにツッコミ切れん。問題は何故階級も店も未だない私のところに来たのか、それは浅井の召喚した「スシガミ」という神格実体についてだった。

最初に告げたのは、スタントマンは無事に五体満足で入院していること、そして私の左足は使い物にならないため切断するしかないこと、そしてどうやら闇親方は、この宇宙に寿司を神と崇め現実世界に召喚しようとする組織別次元から不明な方法でやってきたらしいとの噂を前々から掴んでいたらしい。非常に眉唾物の情報だったため公開はしていなかったのだが、今回の私への襲撃で確信に変わったとのことだった。

彼らは寿司の存在を根底から揺るがしかねないため、そして何よりその「スシガミ」が外宇宙由来の「この世界にいてはいけない」存在のため、闇親方始めとした何人かは排除に向かっているらしく、私もその調査に協力してほしいとのことだった。今回の「スシガミ」は何とか迎撃できたものの、他の種類の「スシガミ」も存在しているらしく油断はできないとのこと。

闇親方の手前、そして何より私をコケにした手前、二つ返事で了解した。闇親方はこの報告に喜び、前金だと言って左脚用の義足を用意してくれた。それはドクター・トラヤーの自信作なのできっとすごいぞとシフォンケーキよりもフワッフワな感想を言っていたが、正直言って「あの」変人"御蓮寺 恋治"とつるんでる時点で碌なもんじゃないんだろうなと薄々ながら思っていた。

一通り話を聞いたところで、こちらから浅井とスシガミはどうなったか尋ねると、彼は四肢が切断された───いわゆる「ダルマ」と呼ばれる状態だ───遺体という形で発見されたとのことだった。そして何より、浅井の制御を外れたあの化け物はどこに行ったのか。1番気になる疑問を聞くと闇親方は私に以下の書類を見せてきた。

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U設定: #58|地域設定: 地球|言語設定:日本語

基礎概要

跳躍先名称: バクソー・ムカ星
全ての知的生命が相棒のマシンと共に日々自分だけの「最速」を追い求めています。

所属宇宙: ユニバース6412
限りある資源を巡って世紀末ヨロシクな奪い合いが発生しています。

現地エルマ規模:
知的生命は気性が粗い者がほとんどですが、彼らはみな女神エルマに召し上げられるために日々スピードを磨いています。

エルマより跳躍に関しての注意点: 有り
バクソー・ムカ星では「速さ」「ワルさ」、何より「ヤンキー精神」が絶対です。あなたにこれらが不足していると判断された際、ナメられた上に 不運ハードラックダンスっちまうことになりかねません。





現地紹介

バクソー・ムカ星は、星の表面積の7割を砂が覆っている惑星です。一見生命にとっては過酷な環境のように見えますが、この類まれなるダート環境を目的に、各ユニバースから最速を自負するレーサーが集結しています。

その中でも伝説と崇め奉られている「疾聖」と言われる生命体は、目と口の穴が全て縦に割れていて、鼻が削がれたように滑らかだった状態の顔と立派なリーゼントを持ち、一般に首と呼ばれるようなものは見当たらず、代わりに下顎から髭のように様々な刺青が施された触手が存在する上半身、縦に割れた口はへその部分まで拡大して体を割いており、タール色素のように黒光りしていた胴体には1対の太い腕と3対の細い腕が腹部と腰から着用している学ランを突き破り生えている下腹部、様々なグラサンとハチマキを付けた魚の頭がうぞうぞと蠢動しながら固まって浮遊している下半身を有しており彼の相棒のマシン、ピザを届けるのに最適化されたバイクに乗っています。

彼は自分自身のために最速を目指すだけでなく全てのピザ愛好家達のために、一秒でも早くアツアツのピザを届けるために最速を目指しています。彼が言うには「速さとは女神の住まう楽園へと向かうために、ピザは言語や種族の壁を越えてみんなと一緒に笑うためにある。かつて孤独であった私がそうなのだから。」と証言しています。…

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うん…

より冒涜的なビジュアルになった気がするけどそれでいいのか…?

関連資料

異世界跳躍のすゝめ 〜エルマ信者の選ぶ神秘の異世界10選〜
様々な跳躍先候補が書いてあるエルマ外教のパンフレット。なんか現代アート感があって意外と長時間眺めてられる。

リトパカップ、ピザデリバリーバイクレース生中継配信!
ピザバイクがサーキットを所狭しと爆走するレース配信のアーカイブ動画。字面だけ見るとネタ感があるのだが、まあとりあえず見てみてよ。

新クトゥルフ神話TRPG ルールブック
結構前に日本でも新版が出たらしい。旧版でも別にええやんか!などと高を括っていたらルールが結構変わっているらしく、購入を検討せざるを得ない状況になっている。学生には結構高いんだが仕方ないか…

バイク娘 プリティーレース!
最近サービスを開始したソーシャルゲーム。何でも様々なバイクを美少女に擬人化してレースをするゲームとのこと。いかついバイクから美少女にしてしまったらレースの迫力がなくなるのでは?と未プレイながら思うのだが、圧倒的な3Dグラフィックと熱血王道キャラシナリオがかなり好評らしい。多分、というか間違いなくあいつがバイクに病的なレベルで愛着が湧いているのもこの影響だろう。にしてもあの時の幻聴…まさか本当にバイクの擬人化が存在しているなんて言わないよな…?

文責: ANN=ノゥiMo・シナモンパウダーマッシマシ

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