闇寿司開発記No.483 "夜間の襲撃に対抗する握り"
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序説

ヤミ・アプレンティス1である因尾ヨウが記す。

「闇寿司の世界は常在戦場」と言ったのは誰であったかは知らないが、最近はまさにそれを実感している。闇寿司に加入して半年の新入りである私であっても隙あらば命を狙おうとする奴らが後を絶たない。実力に自身のある上位の御方々ならまだしも、中位勢は若手潰しを積極的に狙う輩が多い。ホントに多い。同士討ちばっかりでこの組織は成り立つのか。幸いにも私は逃げ足には自身があったので現在まで難を逃れているが、常に油断ならない日々を過ごしている。

特に懸念となっているのは夜間の襲撃だ。寿司だからか討ちを仕掛けてくるのだが、まったく見えない場所から不意打ちでへいらっしゃいされると避けるのはかなり困難である。初撃をしのいでも結局相手の場所が暗くてわからないのは変わらないため、防戦か逃亡しかなくなる。

こんな日々では満足な睡眠もとれやしない。このような闇討ちに対して、返り討ちにするような手段を手に入れることが本開発記の目的である。



闇寿司開発記No.483-1 "ホタルイカの握り - ナイトカスタム"

作成手順

ネタに用いるのはホタルイカ (Watasenia scintillans)2 だ。ただし普通のホタルイカではなく発光体をイジクったものを使う。その光は握った後も辺りを照らし、周囲1 mは青白い光に包まれた空間になるだろう。

明るさ

破壊力

PSI

持久力

機動力

操作性

重量

防御力

{$label9}

{$label10}

"ホタルイカの握り - ナイトカスタム"の予想パラメータは上記の通り。基本性能は普通のホタルイカの握りとは変わらないが、光量の大幅な増加と副次的なPSI3の向上が見込まれる。相手を照らし出すのが目的なので、単体での強さは今後の課題にはなるだろう。ひとまずこれで実践をしてみる。

実射テスト

テストにおいては私の師であるスシ・マスターのムズリ殿に協力いただき、夜間での攻撃をしかけてもらった。マスターは射出した後の箸を指揮棒のように操り、複数のスシを同時に操作することができる。夜に呼び出すことになったにも関わらず快く受けてくれたマスターに感謝だ。とりあえず想定していた発光は確認できたが、マスターの評価はどうであったか。以下にマスターからのテスト結果を記載する。

マスターのおことば
 

遠くからでも場所が丸分かりで、いい的になっていた。
 
 


 

や り な お し 

反省点

失敗した。イクラやタピオカなどの遠距離狙撃が可能なスシからすれば、暗闇でエレクトリカルパレードのようにピカピカ光っているのなんて標的の方から場所を教えてくれているようなものだった。他の弱点として、光の範囲外から高速でタックルを試みる敵スシにも不利を取った。ホタルイカは機動力はそこそこであるものの軽量級で防御は低い。よって超高速の相手のタックルは避けがたく、一発喰らえば重傷を負う。

スシを光らせて索敵を行う戦法はどうやら闇討ちには不適だということが分かった。この反省を生かして、今後は暗闇でも相手に見つからないようなスシを作成することとする。




闇寿司開発記No.483-2 "漆黒作り軍艦"

作成手順

次に作成したのは黒作り軍艦4だ。先ほどのホタルイカと違い、軍艦巻きの海苔により防御力が高いことも特徴である。今回作成した黒作りは着色にイカ墨だけでなくカーボンブラックも添加した。これにより寿司全体の黒色度が上がり、夜間での視認性を大きく下げることができる。これで相手からの攻撃を受けにくくなったはずだ。

真っ黒なスシとしてはイカスミスパゲッティも考えたが、麺の不安定性からまだニュービーである私には使用が難しく今後の課題とした。

明るさ

破壊力

PSI

持久力

機動力

操作性

重量

防御力

{$label9}

{$label10}

"漆黒作り軍艦"の予想性能は上記に記した。バランスのいいパラメータに仕上がっている。まあ着色剤を加えた程度なので元の黒造りとパラメータ的な差異はほぼ無いだろう。

実射テスト

今回もマスター・ムズリ殿に試験頂いた。実際に夜に回してみると漆黒造り軍艦の真っ黒さは格別だった。以下にマスターからのテスト結果を記載する。

マスターのおことば
 

見失って操縦不能になっていた
 
 


 

や り な お し 


でも見えなくて攻撃はやりにくかった   見所あるよ!

反省点

また失敗した。今度は黒すぎた結果、相手にだけではなく私からもスシが見えなくなってしまった。何かどこかで回ってるっぽい、今当たった、そんなことくらいしか感じ取れず気づいたらノックアウトされていたらしい。朝になって見つけた暗黒造り軍艦は冷え冷えであった。

明るくしてもダメ、暗くしてもダメ。なかなかに手詰まり感が出てきた。こういうときは自分一人で悩んでいても仕方がない。闇寿司の先輩方にご意見を伺うことにした。「闇討ちに対してどのように立ち向かうか?」という質問書を幾人かに送信し、頂いた回答を以下に示す。

回答者: 首領 闇
回答: スシによる襲撃なら、私は寿司の声を聴き防御しているが他の者には実行不可能だろう。射出音あるいは空気を裂く音が聞こえたら瞬時に防御用のスシを構えられるよう修練するのがよい。

回答者:闇寿司四包丁5 肉包丁のストーン
回答: 闇夜で姿は見えぬとも、こちらを目掛け打ち倒さんとするならば必ず殺気が放たれる。それに合わせ迎撃を行えばよい。相手はこちらが気づいていると知らずに優位にあると油断しているため反撃で打ち倒すのはたやすい。

回答者: 闇寿司四包丁 十字包丁のブラッド
回答: 何かこうコウモリの音波?みたいなやつで感じる。ソナーだっけ?というか昼の方が太陽出てて怖い。

回答者: 闇寿司忍者 百地芭麗栖
回答: まずは気配を消すのが早い。すでに捕捉されているのであれば隠れ蓑の術や煙幕を用い相手から姿を晦まし逃走する。無闇に戦う必要はない。

回答者: 闇寿司九州支部 一郷小辰
回答: 私の体はがんじょうなのでどんなスシの直撃を受けても一発なら耐えます。あとはがむしゃらに相手を攻撃します。

……うん。何も参考にならない。人外しかいねーのか。

何かヤバイ特殊能力とか第六感でも開かなければ闇討ちに対抗できないのだろうか?なお、上には書かなかったが、ここ最近その強さで名を広めている佐藤という先輩がキメれば見えないものも見えるようになるらしいガリを勧めてきた。私は嫌な予感がしたのでとりあえず回答を一度保留にして帰宅した。後日佐藤らは"始末"されたと聞いた。誘いに乗らないで正解であった。しかしあの段違いの強さを見せていた佐藤先輩があっさりやられるとは、闇寿司おそるべし……。

他にいいアイデアも思いつかなかったため、一旦開発を諦めふて寝することにした。ちょうど『ゴールデンカムイ』6が全話無料公開をしていたので一気読みを始めた。職業柄、数々のジビエ料理などをスシにできないかと思案するのはご愛敬だ。その中で私は個性豊かな囚人の内、とある一人に目を付けた。配下の手下を従え最初は敵対していたものの仲間になったキャラクター。彼と闇の中で戦闘するシーンの緊迫感には息を飲まされた。彼の戦闘方法を応用すれば夜の暗闇の中でも戦えるスシが作れるはずだ。




闇寿司開発記No.483-3 "夜会巻き"

作成手順
私が導き出した結論は巻き寿司だ。側面は海苔で真っ暗だが断面部は白いため、暗闇での視認性を抑えつつも見失うこともないだろう。暗中でも接近戦に持ち込めば、巻き寿司特有のリーチの長さと棍棒のような攻撃性能で相手を打ち倒す本体性能も発揮される。

使うネタは長い髪の毛だ。黒く太めの髪が良いので日本人の髪の毛が良いだろう。髪の毛は細巻きの端から5~10 cmほど出るくらいの長さのを使用する。巻いた時に巻き寿司から髪があふれ垂れ下がるくらいが良い。これを高速回転させると遠心力で髪の毛が浮かび上がり、巻き寿司本体の周囲に髪のバリアができる。この髪自体の攻撃力は無いに等しいものの、相手に絡みついて妨害する性能は極めて高い。飛び道具を絡めとって無効化することも可能。

まさに夜会パーティーの主役となるであろうスシだ。

明るさ

破壊力

PSI

持久力

機動力

操作性

重量

防御力

{$label9}

{$label10}

"夜会巻き"の予想パラメータは上記の通りだ。もともと海苔による守備は強いが、髪という繊維を内部に入れることによって"つなぎ"として防御力がさらに向上する。巻き本体の機動力は低いが髪の毛による索敵能力はそれを補ってくれるはずだ。
なお上記に示したのは細巻きのパラメータだ。太巻きにするのに必要な量の髪の毛はなかなか手に入りにくいため細巻きで妥協しているが、太巻きが作れる量の髪があればそれををなびかせるだけで鞭のような強大な破壊力を生むだろう。

実射テスト

テストでは想像通り髪を展開させて回すことができた。漆黒造りのように見失うこともなかった。操作性の低さを危惧していたが、思ったよりうまく動かせた。私と相性が良いのかもしれない。マスターからのテスト結果を楽しみにして、受け取ったのが以下だ。

マスターのおことば
 

純粋に気持ち悪い。
スシを悪い意味で冒涜している。
襲撃どころか近寄りたくない。


 

破  門 

反省点

ムズリ殿に師弟関係を解消されてしまった。完全な回答を見つけたというのに何が不満なのか。勝つために何でもやるのが闇寿司ではなかったのか。ともかくムズリ殿には破門されたが、闇寿司には破門されていないのがまだ救いだ。今後このスシを使用すれば夜間の襲撃は怖くない。一歩、闇寿司としての道を進めたと言えよう。

参考資料

『ゴールデンカムイ』
"夜会巻き"はこれに出てくる海賊房太郎というキャラの髪技を参考に思いついた。都丹庵士という盲目の囚人は夜間でも正確な射撃を行うことから参考になるかと思ったが、舌を鳴らした音の反響を拾うという人外なことをしていたのでやはり参考にならなかった。

闇寿司ファイルNo.900 "ハッカクキリンの握り"
闇寿司四包丁のスニーク氏が不意打ちを食らっているがものの見事に撃退している7。しかし構成員を競い合わせることで実力の向上を狙うとあるが、両者大怪我していて本当に闇寿司という組織は大丈夫なのか?

闇寿司ファイルNo.110 "銃"
え?銃で狙われることもあるの?闇寿司こっわ……。

文責: 因尾ヨウ
















後日談
私は今闇寿司での活動を休止し、床屋でアルバイトしている。夜会巻きを作るには当然髪の毛が必要なのだが既に自分は坊主になっており、知り合いに髪をねだっても気味悪がられる。他の繊維も試したが、やはり人毛が性能として合う。というわけで合法に髪の毛が手に入る手段として床屋に潜入したわけだ。もちろん免許は持っていないので受付業務などしか行えないが、床屋の大将に信頼されれば髪をかすめ取ることもできるようになるだろう。

正直なところ、現在の生活は満足している。大将はすこし厳しめだが勤務時間はしっかり守ってくれているため夜もぐっすり眠れる。なにより夜襲に悩まされることもない。闇寿司にいた時より圧倒的に生活環境は良い。闇寿司にいて命を脅かされるより、大将の元で働き続けていたほうがいいのではないかという考えが頭をよぎる。転職……すべきなのだろうか?
















さらに後日談
俺はやはり闇寿司にいるのが合う。勝つためなら何でもやっていいのが闇寿司だ。床屋のバイトはやめた。髪を拝借しようとしたのがバレ、仕方なくスシに使うためだと説明したがこの上なく罵倒された。なぜあそこまで気味悪がられるのかサッパリ訳が分からない。大将の癇癪を止めるため仕方なく寿司包丁を大将の腹に突き立てて床屋を後にした。内臓は避けたので後遺症は残らないだろう。

床屋での髪の調達は諦め、別の手段をとることにした。簡単なことだ。長い髪なんてそこらへんにいくらでも生えている。勝つためなら手段は選ばない。髪を斬って斬って集める。ザンギリ頭ができる度、夜会巻きが太くなりその強さは増していく。もはや夜襲だろうが何だろうが怖くない。闇寿司の連中は進歩を恐れるムズリのように軟弱者ばっかりだ。今なら四包丁だって倒せる気がする。なんたって俺の夜会巻きは無敵だ。

そうだ、今度闇寿司にいたあの小さい少女を襲おう。子供の栗色の髪を使うのもなかなかオツなものだ。

















不滅なる寿司の選別・利用・維持および活性化のための委員会Sortation, Utilization, Maintaining and Energizing Committee of the Invincibles (SUME-CI)による注釈



以上のファイルは故因尾ヨウ氏 (27) 自室のPCから回収されました。因尾ヨウ氏は8月12日23:30頃路上にて、闇寿司四包丁のベル氏 (11) に対し「髪の毛ちょうだい。」と声をかけ手にした刃物で襲い掛かりました。襲撃されたベル氏に怪我はなく、因尾ヨウ氏はベル氏の妖包丁が頸動脈に刺さったことで重傷を負い、まもなく病院で死亡が確認されました。ベル氏の行動は正当防衛として処分等の措置は一切行われません。当文書は上記事件の参考資料としてアーカイブされます。


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