桃色の陽だまり
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常に宴会で賑わう酩酊街も路地裏に入ると静かになる。喧騒と明かりがたまに漏れてくるくらいで、あるのは雪の音と住人がいるかもわからない建物だけ。時折こうやって雪を浴びながら散歩するのが好きだった。

溶けた雪が丸い身体を伝っていって、まるで涙のようだなと思った。それと同時にポロポロと涙をこぼす子供の顔が浮かんだ。私は膝に乗せられていて落ちてくる涙を受け止めていた。

あやか。

そうだ、私はあやかのお気に入りのクッションだった。赤ちゃんの頃に出会ってからずっと一緒だった子。小さな手。温もり。一緒に読んだ絵本。私を呼ぶ声。様々な記憶が一斉に湧き出てきて心を満たしていく。

私の名前は桃。ピンク色だから桃。

そこまで思い出した私は、街の光に向かって全速力で走り出した。

家に飛び込むとちょうど隣人がいた。帰り道がわかったことを伝えると、その人は「思い出せたんだね」と微笑んで私を撫でた。それから挨拶もそこそこに急いで準備をした。隣人が書いてくれた手紙ものせた。

あやかの顔を思い浮かべた。あの頃と少し姿が変わってしまったけれど気付いてもらえるだろうか。


薄く積もった雪が見えた。室外にいてさっきまでなかった遊具が見えているから、無事に移動できたようだ。

ベンチで大人の女性が横になって眠っていた。頬が赤くてどうやら酔っているらしい。寝顔には幼い頃の面影がほんのり滲んでいて、すぐに目当ての人物だとわかった。

酩酊街にも酔っ払って地面で寝てしまう人はいて、そういう人たちを本格的に雪に埋まる前に起こすのが私の仕事の1つだった。どうやらその経験を生かすときが来たようだ。

まずはじめにベンチから垂れている手をくすぐってみる。効果はいまいちだ。反応は返ってきたものの、起きるには至らない。次にジャンプして身体に飛び乗ってみた。私は軽いので、飛び乗ろうが全力で体当たりしようがダメージはほぼ出ないのを知っている。

眼がうっすら開いた。それがまた閉じる前に連続でぽふぽふと飛び跳ねをお見舞いする。彼女が勢いよく身体を起こして、「桃?」とぼんやりした声で私の名前を呼んだ。覚えてくれていたのが嬉しくてくるくると走り回った。

私を抱き上げたあやかは「あったかいねえ」と笑顔で呟いた。抱っこされたまま夜道を歩く。街灯の光の向こうに星が透けて見えていた。彼女は上機嫌に知らない歌を口ずさんでいて、空に白い息が吸い込まれていくのが綺麗だった。

家についてあやかがベッドに沈んだのを見届けてから、部屋を見て回った。昔の家と比べると随分小さくて探検はすぐに終わった。どうやら1人で暮らしているようだ。

預かった手紙をどこに置こうかなと考えて、肝心の手紙が見当たらないことに気が付いた。どこかで落としてきてしまったらしい。せっかく書いてくれたのに申し訳なくなって、心の中で謝罪した。

翌朝、あやかは頭を押さえながら起きた。駆け寄ると驚いて小さく悲鳴を上げていた。小さな声で「夢じゃなかったんだ」と呟くのが聞こえた。

あやかは私を見てなにか考えているようだったが、とりあえず身体に泥が付いていたので洗われることになった。シャワーでぬるま湯をかけても中に染み込まないのをとても不思議がられた。言われてみれば昔はそうじゃなかったような気がする。


それからあやかとの生活が始まった。

朝はあやかを起こすところから始まる。寝起きが悪い上に、時々寝ながら目覚まし時計を止めようとするので油断できない。

あやかはスーツを来て仕事に行く。どんな仕事なのかは知らない。私にとって職場といえば酩酊街の飲み屋くらいのものだったので、パンプスの踵をコツコツ鳴らしながらお酒を配って回るあやかしか想像できなかった。何かが間違っているような気がする。

留守番中は大抵温もりの残る毛布にくるまって過ごしている。一日中空を眺めていることもある。酩酊街では夜しかなかったから、刻々と表情の変わる空が新鮮だった。運がいいと直射日光が差し込んでくるので忘れずに日光浴をする。そうするとあやかがお日様の匂いがすると喜んでくれる。

あやかが帰ってくると足音でわかるので玄関まで迎えに行く。足元にまとわりつくと、「こら、踏んじゃうでしょ」と言われるけれどその声は全く怒っていない。でも撫でるのは手を洗うまでお預け。

あやかがお酒の缶を開けたらテレビの時間だ。あやかの膝に乗って一緒に見る。どうやら私が酩酊街に行っている間にテレビは片手で持てるくらいに小さくなっていたらしい。あまりに変わりすぎて最初はそれがなんなのかわからなかったくらいだ。

テレビを見たあとはいっぱい撫でてくれる時間になる。ワシャワシャとこね回されることもあれば、ゆっくりと撫でられるときもある。今日は後者のようだ。膝の上でゆっくりさすられると力が抜けて身体が平べったくなっていく。それを見てあやかは笑う。

寝るときは私が先にベッドに入る。あやかは足が冷たいので、そのあたりを重点的に温めておくのがポイントだ。私が来てから寝付きが良くなったと言っていた。役に立てるのがとても嬉しい。


最近のあやかは様子が変だ。例の小さなテレビを覗き込んで難しい顔をしていることが多くなった。

いつも通りあやかを起こしたら「もう朝は起こさなくて大丈夫だよ。仕事を辞めたから」という返事が帰ってきた。少し前までは生活できないから仕事は辞められないとこぼしていたのに。

モヤモヤした気持ちを抱えて過ごして数日経った。ある日あやかは私を膝に乗せて真面目な顔でこう言った。

「大事な話だからよく聞いてね」

私は身体を軽く揺らして話を聞いていることを示した。

「8月なのに寒いよね。桃は夏を覚えてるかな? 本当は雪なんて絶対に降らないんだよ。これからもっと寒くなるって。もうすぐここも住めなくなるから避難しないといけないの。でも……言いにくいんだけど人間以外は置いてかなきゃ駄目だって」

その説明はショックだった。なにか大変なことが起きているのは察していたけれど、そんなことになっているなんて。

あやかは私と一緒にここに残ることも考えたらしい。でもそんなことをしたらあやかは生きられない。私はそれがなによりも嫌だった。私は置いていかれてもいいから、あやかだけは生きていてほしい。

「最近知ったんだけど、財団っていう不思議なものを集めて研究している組織があるんだって。桃を入れてくれる施設があるならそこしかないと思う」

そこまで言ってから、あやかは真っ直ぐな強い意思を込めた瞳で私を見た。

「だから一緒に財団に行ってみよう」

少しでも一緒にいられる可能性があるなら。わかったよの意を込めてぽふりと1回跳ねた。


最寄りの財団施設には歩いて向かうことになった。電車はもう使えなくなっているし、あやかは車を持っていない。左右には雪の壁ができていて、空もあやかが吐く息も全てが真っ白だった。視界の中で色が付いているのは着込んでモコモコになったあやかだけ。

雪かきがされていることからまだ人が残っていることがうかがえた。けれど、今は周囲になんの気配もしなくて驚くほど静かだった。

あやかと再会した日よりも気温は下がっていた。だから頻繁に休憩して、その度にあやかの冷え切った手を温めなくてはならなかった。

やっと目的地に着いて、出てきた職員とあやかは話した。挨拶が終わって無事に私の説明に入ったので、あやかの腕の中から飛び出して私も挨拶した。それを見た職員は急いでどこかに連絡していた。話し合いの末、私はあやかとは別々に下に降りることになった。

「桃、いい子にしててね」

そう言って小さく手を振るあやかの顔は何故か寂しそうだった。


地下にあるこの施設に来て白衣の人たちに囲まれて色々検査されたと思ったら、今度は箱に入れられて一人ぼっちにされてしまった。

だんだん周囲がぼんやりとしか見えなくなって、ついに真っ暗になった。身体が上手く動かない。生地が突っ張って無理に動いたら裂けてしまいそうな感じがする。身を切るような冷たさが中にまで染み込んできて、氷の中に沈んでいくみたいだった。


あやかが私を離さなくなったのは果たして偶然だったのだろうか。

あやかは家族から些細なことでよく怒られていて、その度に肩を震わせて耐えていた。本当は声を上げて泣きたかっただろうに、あやかは拳を爪が喰い込むほど強く握りしめて必死に我慢していた。そうしないともっと怒鳴られるから。

私はその場にいつもいない。以前説教する場に私を持っていったら、相手の機嫌を酷く損ねてしまったからだ。あやかの部屋で家族が言葉をぶつけているのを聞いているしかできなかった。

自分の部屋に入って私を抱きしめてから、あやかはやっと静かに涙を流した。押し込めた思いが溶けた涙の熱さはよく覚えている。あやかはなにも悪くないのに、どうしてこんなに辛い思いをしなければならないのか私にはわからなかった。

そんなこんなであやかが7歳になった頃には私の身体はもうボロボロになっていた。薄くなった布地からところどころ中身が透けていて、いつ大きな穴があいてもおかしくなかった。その上洗っても落ちないシミが付いていて、中身が偏って形も歪。

自分が歳をとったこと、お別れのときが近いことを理解した。

それでも、こんな形の別れは望んでいなかった。

彼女の父親は機嫌が悪いときに目についたものを片っ端から捨てていく癖があった。その日はそれがたまたま私だったというだけ。それと、もう小学生である娘がいつまでも汚いクッションを持ち歩いているのが嫌だったのかもしれない。

あやかの泣き叫ぶ声を聞きながら袋に詰められて、それで終わりだった。

ああ、もし私が動けたら側に行って慰められるのに。意識が途切れる前にそう思った。

気が付くと雪に半分埋まった状態だった。なんとかそこから出ると、遠くに街の明かりが見えた。行くべきなのはあの方向なのだと直感的に理解した。でも、私が行きたいのはどこか違う場所だった。焦りに突き動かされて、果てのない暗い雪道をぐるぐるとさまよい続ける。どこに行きたいのか、何故焦っているのか、そんなことはとっくにわからなくなっていた。


飛び出そうとしたら身体が動かなかった。

探さないと。行かないといけないのに。

めちゃくちゃに暴れていると声をかけられた。あやかより少し年下に見える白衣の女性だった。

「落ち着いて」

身体のすみの方を軽く撫でてくれる。暴れるのをやめてもプルプルと震えるのは止められなかった。

「今あなたが動かないように固定してる。穴があいてるし、その状態で動くと更に酷くなるかもしれないから」

そう言われてはじめて、ベルトで身体がしっかりと固定されていることに気が付いた。それと確かに身体の一部がスースーする。感覚から推測するとそれなりに大きな穴のようだ。

「ここがどこだかわかる?」

少しずつ現状を思い出してきた。あやかの家族に捨てられたのはずっと昔の出来事だったこと。大人になったあやかとの再会からこの施設に来るまで。心が完全に落ち着いて、震えも止まった。

「あとで縫うから大人しくしててね」

わかったよ、と心の中で返したが伝わっただろうか。

アイテム番号: SCP-X514-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-X514-JPは最低でも週に2回人間との接触を行ってください。円滑なコミュニケーションのために「桃」と呼称することは認められています。

説明: SCP-X514-JPは直径30cmの円形クッションです。素材は生地・中綿共にポリエステル製であり、カラーは桃色です。SCP-X514-JPには知能があり日本語を理解することができます。また、跳躍や転がる等の手段を用いて自律移動を行います。実験の結果から、SCP-X514-JPが感覚を持つことは判明していますが、痛みには反応を示しませんでした。

通常SCP-X514-JPは表面温度を不明な原理で36℃前後に保っています。他にも限定的な耐久性、撥水性を示します。しかし、5日以上人間との物理的接触が行われなかった場合、耐久性の顕著な低下、温度低下等の変化が起こります。接触を行うことでこれらの変化は元に戻ります。また、負った損傷も時間経過で回復します。

発見経緯: SCP-X514-JPは以下の手紙のみを残して行方不明となっていました。

お元気ですか? こちらは最近寒さが少し和らいできました。
この子が帰り道を思い出したようなので送ります。
陽だまりのように温かくて優しい子です。とても寂しがり屋なのでたくさん構ってあげてくださいね。

酩酊街より、愛を込めて

内容から要注意団体である酩酊街との関連が疑われました。しかし、当時財団は進行中のK-クラスシナリオの対処のため、当オブジェクトの捜索は行われませんでした。

出現後のSCP-X514-JPは、民間人である日野亜也香氏によって所持されていました。同氏が財団に届け出たため確保に至りました。

__インタビュー記録

対象: 日野亜也香氏

インタビュアー: 舞弓まいゆみ博士

付記: SCP-X514-JP収容直後に行われたインタビュー

<録音開始>

舞弓博士: それではオブジェクトを発見した時期と状況を教えてください。

日野氏: 去年の12月です。雪の残る寒い日でした。 恥ずかしい話ですが、お酒を飲みすぎて██公園のベンチで寝ていました。それをあの子が起こしてくれたんです。

舞弓博士: それからどうしましたか。

日野氏: そのまま家に持って帰りました。それからここに来るまで一緒に暮らしていたんです。

舞弓博士: 家に連れ帰ったのは何故ですか。

日野氏: もちろん酔っていたからというのもありますが、1番の理由は子供の頃に持っていたクッションに似ていたからです。とても大事なものだったはずなのに、実際に見るまで何故か存在を忘れていたことに気付いて混乱しました。記憶ではもっとボロボロでしたし、もちろん動いたりなんてしなかったので。それで試しに桃、と呼びかけたら反応したんです。ああ、桃というのは昔クッションに付けていた名前です。そう呼ばれてあの子は反応していましたし、こころなしか喜んでいたように見えました。それで私も「桃が帰ってきたんだ」と思って。

舞弓博士: 子供の頃に持っていたクッションとオブジェクトが同一の存在である。そうあなたは考えているのですね。

日野氏: はい。酔いが覚めてからは似ているだけの別人の可能性ももちろん考えました。でも一緒に過ごせば過ごすほどあの子が桃としか思えなくなって……理由は上手く説明できないのですが。

舞弓博士: 小さなことでも構いません。続けてください。

日野氏: 小さい頃は桃を友人として扱っていました。辛いときに側にいてくれるとても大切な存在だったんです。実際の生き物と同じように意思があると思っていました。今の桃の行動はあの頃考えていたのと同じなんです。例えば、昔は桃をよく膝の上に乗せていたんですが、今のあの子は自分から膝に乗ってくるんです。ここが定位置だって言うみたいに。

舞弓博士: なるほど。ところで、幼い頃に所持していたクッションが、いつなくなったのかは覚えていますか。

日野氏: それがどうしても思い出せないんです。いつの間にかなくなっていました。さっきもお伝えしたとおり再会するまで存在ごと忘れていたくらいですから、記憶が曖昧で……強いて言うなら小学生のときには既になかったような気がします。なくなった理由もわかりません。捨てたのか失くしたのか、実家のどこかにしまったままか、そのどれかだとは思うのですが。

舞弓博士: この件は他の誰かに話したりはしましたか。

日野氏: いいえ。誰にも相談できませんでした。ただ、拾ったばかりの頃は正直悩みました。動くクッションなんて聞いたことなかったので。でも現に目の前にいるので受け入れるしかありませんでした。あと私が住んでいたアパートはペット禁止だったんですが、この場合はどうなるんだろうとか。[笑い]幸い桃がいて困ったことありませんでしたし。留守番中も大人しくしてくれていました。

日野氏: こんなことになって避難しなければならないと聞いたときも、真っ先に考えたのは桃のことでした。桃は家族なので置いて行きたくなかったんです。でも普通の避難所には連れていけないでしょう?

舞弓博士: ええ。

日野氏: 財団のことを知って桃を連れて行くならここしかないと思ったんです。

舞弓博士: 良い判断だと思いますよ。

日野氏: あの。

舞弓博士: はい、なんでしょう。

日野氏: 桃にはもう会えないのでしょうか?

舞弓博士: 今のところはなんとも言えません。

日野氏: やはりそうですか。その覚悟はしています。どうかあの子をよろしくお願いします。

<録音終了>


私の身体は縫うまでもなく治った。穴のあいた部分に新しい布地ができて塞がってしまったからだ。裁縫道具を持って戻って来た白衣の女性(聞いたところによると助手らしい)はそれを見て驚いていた。今では痕も見えなくなって完全に元通りである。

そんなとき、収容室に誰かが入ってきた。あやかだった。嬉しくて助走をつけて飛びついた。あやかは私をしっかりと受け止めて言った。

「桃、久しぶりだね」


それからは施設内を決められた場所なら歩き回れるようになった。

あやかは今は食糧生産の仕事をしている。必要なものは自分たちで作れるから、しばらくは生活に困らないんだと言っていた。仕事にはついて行けないけれど、常に誰かしら構ってくれるから寂しくない。最初は警戒していた白衣の人たちも、今では会うと笑顔で撫でてくれる。中には休憩時間にわざわざ探しにくる人もいるくらいだ。

でも、時々私を違う名前で呼んだり、笑ってくれない人もいる。

「小雪?」

声をかけてきた人物がこちらを見ていたので立ち止まると、数秒たってからその人の表情がだんだん曇っていく。それからすぐに背を向けて足早に立ち去ってしまった。一瞬しか見えなかったが明らかに涙ぐんでいた。追いかけようとしたら別の人に止められてしまった。

「今はそっとしておいてあげて」

そう言われて抱き上げられてしまった。あの人は何故泣いているのだろう。私がなにかしてしまったのだろうか。聞きたいことは山ほどあるけれど、今は従った方がよさそうだった。

着いた先はキッズルームで、代わりにここにいる子供たちと遊ぶように頼まれた。子供たちとは追いかけっことダンスをして遊んだ。特に即興の歌に合わせてのダンスは刺激的だった。リズムに合わせて飛んだり跳ねたり、決めポーズも忘れずに。

ダンス中になんとなく宙返りをしたら、皆にせがまれてそのあと何度もやることになった。一日の終わりにまた遊ぶ約束をして別れた。


ここで暮らし始めた頃は施設の職員と避難民が明確に別れていたように思う。でも、その境界はいつの間にかなくなっていた。あやかもそうだけれど、ほとんどの人がここで働いているからだ。残ったのは住民という括りだけだった。

ある日、食堂に入るとなんだか雰囲気が浮ついていた。どうやら外にいる生存者と連絡が取れたらしい。その人たちを迎えに行く準備をしているとのことだ。今の家がもっと賑やかになるのを想像して嬉しくなった。

それから何日も経たない内に重装備の集団を皆で見送ることになった。住民たちは滅多にない大きなイベントなので本当は盛大に送り出したかったようだけれど、結局簡素な式になった。少しでも早く迎えに行かなくてはならないからだ。集団のリーダーが集まった人々の前で挨拶をして、場が湧いた。ここしばらく感じることのなかった熱気が溢れていた。普段パーティーなどを好まないあやかでさえ楽しそうだった。

式が終わって隊員たちが出発した。去り際に隊員の1人が私をぽんぽんと撫でて行った。私はその後ろ姿を見つめて、どうか彼らが無事に帰って来ますようにと願った。

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