サイト-8181食堂、昼食後の清掃も終わり閑散とした時分。
冷房の効いたその一角を、奇妙な連中が占拠していた。
「秋の辞令、来たか?」「来た……」「恒例ですしね」「ンドクセーよな、ったく」
丸テーブルを囲む4人の男女。
登山家・研究者・潜水士・戦闘員……各々の服装は全く異なるが、肌が露出しないという点で共通している。
「木膨きぶくれはまた新潟か」「おう!雪中行軍で新人いびりだ、ハハハ!」
N-3Bを羽織り、ボアキャップの下からカストロ髭を伸ばした軍人風の男が腹を揺する。
「来生きすぎ、お前は?」「今度は男鹿……潮風がすごい……つらい」
白衣に三角巾、マスクを着けた女はボソボソと呟くとテーブルに突っ伏す。
「私は岩手です。しかし10月はなにかと混みますからね、大変だ」
そして、質問を待たずに答えるのはオレンジ色の潜水服。
彼らはしばらく愚痴や世間話に興じていたが、見知らぬ声に割り込まれて口を閉じた。
「おーい、アッちゃん、アッちゃーん!うぃーす!」
日焼けした男が食堂の入口に立ち、にこやかにこちらへ手を振っている。
三人が首を傾げる中、潜水服は立ち上がり男へ駆け寄る。
「あれウッシー!久しぶりだあ!もんだども、今度ここか?」
「んだ、下見さな。もう毎年だすけ、すっかし慣れちったよ」
「まーた冬もそんな格好して、腹さ壊したりすんなでゃ?」
「なんも!そったらこと人前で言うなあ、じゃな!」
日焼け男は満足げに廊下へ去り、残された潜水服が申し訳なさげに頭をさする。
「同郷の友人です。彼もよく今頃に出向するんですよ。今度はここみたいで」
「珍しいな、普通のカッコなのに」
男が着ていたのは上下揃いのタンクトップと短パンのみ。
暑い中ランニングでもしていたのだろう、特におかしい点はない。
「案外、俺達の交代要員だったりしてな!そういや厚木あつぎ、あいつの名前は?」
「臼城うすぎです!いい奴ですよ、今度紹介します……」
暑さは未だ厳しいが、秋の訪れはもうすぐだ。