お前の死に様を教えてやろう
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by Ethagon

サイト内のパニックルームの一室にて、さながら世界の滅亡時に下級研究員に予期されていた通りの如く、スコット・ウィルキンズは指の爪を口に咥えていた。彼は余震にたじろいだ。

反認識災害ロックダウンがここ30分間設けられているのを知っていたとはいえ、端末を一瞥した。相変わらず、外部からのサイト救援隊が到着したと知らせる通知は何時届いてもおかしくなかった。1

クソッ。

先程よりも強い余震がパニックルーム2を襲った。彼が留まろうとしていた部屋を襲ったが、丁度彼の気が変わった。

ウィルキンズは最後に端末を見ると、ドアを解錠し、次に余震に襲われる前にパニックルームを脱出した。壁面に取っ手を見つけるよりも先にしくじってしまった。次はどこだ?3

さながら下級研究員が行くべき場所を知っているよう求めているかのようだった。何であれCrystalはどうすれば語り掛けてくるというのか?SCP-54764だけが財団データベース上で出力済みのファイル群5の内で表示されるように思えた。揺れを感じた。また余震だ。いいだろう。今の状況6救いの手は無かった。他の選択肢の内、彼はデタラメの方向を選んで逃げ出した。

右。次に左。真っすぐ進んで。また余震だ。それからまた左に。この一帯には馴染みがあった。さて今度はまた右に ― ウィルキンズが丁度足を踏み入れた通路は突如として広くなり、外部の力により完全に壊された。パニックルーム7に戻るべきなのかもしれない。あるいはまた左に曲がるべきなのかもしれない。的外れでもないというなら、より高クリアランスの区域へと導かれているに違いない。そこにはより脱出の手段がありそうだった。

ロックされた出入り口に辿り着いた。オーケイ。まだやりようがある。結局のところ、Crystalはパスワード8を教えてくれれば十分だ。クソッタレ。ウィルキンズは忙しなく出入り口の端から端までを見た。資格について何を覚えていた?端末のボタンを漁った。低クリアランス ― 広範囲の収容違反 ―用コマンドに侵入するか、さもなくば彼の考えでは ― 個人パスワードだった。端末に質問が表示された。

黒き月は吠えているか?9

初めて訊かれた質問だったが、返答はおのずと湧いてきた。余震は一層強くなっていた。ウィルキンズは辛うじて端末につかまっていた。今何をしたのか?問題では無かった。ドアは開いていたのだから。

オーケイ。納得した。新しい箇所へ進み続けるだけだ。次は左に曲がった。次の場合、右に曲がるべきだ。そうすればサイト中心部から抜け出せるだろう。彼は歩みを止めた。目の前には高さ1メートルのカニ10がいた。彼は代わりに左へ進み、それから右に曲がった。長い廊下だった。余震が―

床、壁、天井が崩れ落ちて、彼は廊下から落下し、宙を舞った。11彼の肩に少なくとも2階分の負荷が
かかり、足元には今や瓦礫と化した廊下が広がっていた。12

ウィルキンズは廊下を壊した元凶を見た時、怪我をしていないか確かめようとした。ほんの数メートル先では1匹の巨大蟹が鋏で施設の壁面を殴打していた。13オーケイ。思い付いた最善策は逆方向に這って逃げるというものだ。14クソッ、駄目か。15

頭上を見上げず16に、身体を横にした。17辛うじて呼吸していた18。彼は咽び泣き始め19

パニックルームに留まっていればよかったのだ。20

何故なんだ、Crystal?21

本当にそうだったのか?3年前にデータベース上の秘密情報をどのように削除すれば良かったかという教訓だと?まあいい。死者22にとっては無駄な教訓だ…。そうでもないな。

最後の力を振り絞り、ゆっくりと脱出口へと這い進んだ。幸運にも、先程のテントウムシは相変わらず壁の方に気を取られ過ぎていて、彼に気付けずにいた。わずかばかりの瓦礫に埋もれつつ、彼は出入り口を見つけた。今回もパスワード23 は分からなかった。彼はパスワードを入力した。

トンネルから、新鮮な空気が押し寄せて来た。24

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