はじめてのSCPへの道: パート1 - まえがき そしてアイデアについて
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パート1:
まえがき
そしてアイデアについて
パート2:
物語と独創性について
パート3:
下書きと批評について

まえがき

統計の実に90%が即興でつくられるように、引用の70%もまた誤った文脈で使用される。

— アリストテレス

このガイドの目的

SCPコミュニティの様々な場所で活発に活動するメンバーとしての私には、新人著者が自分のアイデアや下書き、構成に関する批評を求めてくることがあります。私は幾度も同じアドバイスをしてきましたが、私の伝えたいことが正しく理解されていないように感じることが多々あります。このガイドは、新人著者、そして「あなたのSCPは道具である」ことや「あなたのアイデアが既に使われていたとしてもそんなに気にしなくても良い」ことをどう説明したものか困っている批評者に向けて書かれました。

このガイドでは、SCP Wikiで活動する向上心のある著者に向けて、私が自分自身のSCPを執筆するときに取るアプローチと、今まで新人著者にアドバイスしてきたことを説明しています。もちろん、これはSCPを執筆するための唯一の方法ではなく、また執筆することに関するすべてというわけでもありません。これは私の執筆手法にすぎませんが、私にとっては上手くいっている方法なので、皆に共有したいと思います。

このガイドの使い方

もともとこのガイドは長いものでしたが、その長さを解消するために3つのパートに分割しました。これらすべてを一度に読むことは意図していません。もちろん自由に読んで頂いて構いませんが、このガイドは、新人著者が最初のSCPを書き上げていくに従って読まれることを意図しています。


アイデアの選び方: 深さ VS 複雑さ

大抵、大きなアイデアはシンプルなものだ。

— デイヴィッド・オグルヴィ

あなたのアイデアが良いものであるかを判断するのは難しいことです。友人にお気に入りの映画のあらすじを説明しようとして、実につまらなそうな説明になってしまったことはありますか?

新人著者がアイデアを記事にするとき、これと同じことが起こるのだと思います。彼らはアイデアを思いつき、しばらく考え込み、自分のアイデアが貧弱なものであると結論づけ、たくさんの要素を付け足していきます。こうして出来上がったアイデアは、紙面の上では格好の良いものですが、あまりにも現実的とは言い難いものになっているでしょう。

エクササイズとして、今週/月/年で最も評価の高い記事を読んでみて、ごく少ない言葉で説明してみてください。信じられないほど簡単なことです。例を示すと、

といった具合です。

私の経験上、最も面白いアイデアは、他人に簡単に説明でき、かつ幅広い可能性を秘めているものです。"単純さ VS 可能性の数"というこの考え方は、ゲーム理論においては"深さ VS 複雑さ"1という言葉で知られています。

重要なことは、「読者の理解力」「読者の没入」「読者の忍耐力」と向き合って執筆をすることです。これらからもたらされる悪影響を最小限に抑えることが、著者としてのあなたの仕事です。

過度に複雑な構成は、退屈や混乱をもたらします。これは、アイテムにあまりにも多くの異常性を盛ったり、異常性について考えすぎたりすることで起こりがちです。

面白く、拡張性のあるアイデアとは深いものです。深さは極めて理解しやすく、ほとんどの人にとって自然なものになります。深度の低いアイデアは単純かつ退屈なものですが、深度の深いアイデアは有意義かつ興味深いものになります。

深さは興味や愛着といった感情から生じ、複雑さは精神的な疲労感から生じるのです。

タイプ1: 低い複雑さ・浅い深度 (退屈)

ミカンのような味がするリンゴ

このアイデアはシンプルですぐに理解できるので、複雑さはほとんどありません。また、アイデアを興味深い形で拡張していくことも難しいため、それほど深くもありません。このようなアイデアを思いついた人が居ても、非常に早い段階で捨て去られるでしょう。

タイプ2: 高い複雑さ・浅い深度 (混乱させ、かつ退屈)

4次元リンゴ (ミカンのような味がする)

この記事は、大抵の読者にとって直感的に理解できるものではないため、前の例よりも遥かに複雑です。複雑さが増しても、基礎となる概念がこれ以上面白くはならないことを意識することが大切です。これは、"物語に必要な細部の描写"というよりも、"細部を描写するために付け加えられた詳細"2です。

オブジェクトが4次元であることに目的があれば、より受け入れられやすくなるでしょう。

タイプ3: 高い複雑さ・深い深度 (面白いが、不自然)

摂取すると他の世界にアクセスできる4次元リンゴ (ミカンのような味がする)

「別の世界へのポータル」はもはや決まり文句となっていますが、そうなるだけの理由があります。別の世界というのは本質的に、信じられないほど深く、世界を探検したり、謎を解き明かしたりするなど、様々な物語の可能性を秘めています。しかし、不必要な複雑さはアイデアを袋小路に追い込みます。この記事を改善するためのはじめのステップのひとつは、「オレンジの味」と「4次元」という2つの要素を削除することです。記事のフレーバー3と関係ない部分は盛り込むべきではなく、それらは読者を精神的に疲弊させるだけです。

「記事に盛り込まないということは、減算するということだ。」誰かは忘れてしまいましたが、ある一人の著者の言葉です。

これらの記事は、寄せられる批判をくぐり抜けて(そして十分な理由があって)メインサイトに投稿されることがあります。しかし、それらの多くは「良いアイデアだが消化不良」な、評価の振るわない記事である傾向があります。

タイプ4: 低い複雑さ, 深い深度 (面白い)

摂取した者を別の世界に転送するリンゴ

このアイデアはまだ完璧なものではありませんが、良いSCP記事になる可能性があります。直感的に理解でき、かつ物語の材料となるものを秘めているからです。

PART1のまとめ

  • すべてのアイデアが平等に面白いわけではありません。退屈なものもあれば、面白いものもあります。面白いものだけを残し、残りは捨ててください。

  • 貧弱なアイデアを、色々なものを付け足すことでゴミ箱から拾い出そうとはしないでください。面白さは複雑さによってではなく、深さによって増していくのです。

  • シンプルさを保ってください。あなたのアイデアのうち、必要でない部分は取り去ってください。


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