パート1:
まえがき そしてアイデアについてパート2:
物語と独創性についてパート3:
下書きと批評について
アイデアに肉付けをする: 道具としてのSCP
人間は道具を使う動物である。道具なしでは無であり、道具があるとすべてである。
— トーマス・カーライル
人間ほど面白いものは他にありません。人と人とのつながりや、人をある行動へと駆り立てるもの、そして愛と喪失の物語。このような物語は世代を超えて語り継がれます。この法則と、古代から伝わり、現在も語られる物語のほとんどが、もっぱら人に焦点を当てているものであることは偶然の一致ではありません。あなたの書くアノマリーは、人々の交流へと繋がるきっかけであるべきであり、より大きな物語を導く道具であるべきなのです。要約すると、
あなたのオブジェクトが何をするのかではなく、それが何を意味するのかを示してください。
著者たちはこれまでに、同じような問題に対する様々な表現に様々な名前をつけてきました: 単なるマジックアイテム、モンスター図鑑、お前を殺すもの、などです。読者はそのようなものには精神的、感情的に引きこまれないので、そのようなものは面白くなくなります。さて、この問題はどのように解決できるでしょうか?アノマリーにストーリーを付け足すのです。
自分のアノマリーを作り上げる最中に思いついた潜在的な疑問に答えていくことで、アノマリーをより深く掘り下げることができ、読者を物語に引き込むようなものを作ることができます。ここに、自分に問いかけてみるべきいくつかの質問を挙げます:
何故それは存在するのか
ほとんどのものはただ存在するだけではありません。誰かが何かを作る理由は果てしなくあり、そしてそれは往々にして物語の立派な出発点となります。何か問題を解決するために作られたが、結局裏目に出てしまったのか?誰かを傷つけるために作られたのか?何故アノマリーが存在するのか、という問いに答えることで、物語はより強固なものとなります。またその答えが、物語の良い結びにもなります。
どのようにしてそれを使うのか
もし存在する理由がなかったとしても、人はその何かを自分の利益のために使うための方法を(仮にそれが最適な利用方法でなかったとしても)探し出すコツを知っています。アノマリーは私利私欲のためにも、あるいは無私無欲にも使えますし、良いことにも悪いことにも使えます。もし何かが存在するとして、それは何へとつながる扉を開くのでしょう?
それは何をするのか
これはアノマリーだけがすることではなく、そのアノマリーが引き起こすことも含めてです。そのアノマリーは、周囲に対しどんな影響を及ぼすのでしょう?そのアノマリーに自我があるのなら、おそらくそれには自分の願望があり、肉体的満足を求めるでしょうし、話し合いたい人もいるでしょう。誰がそのアノマリーを管理しているのでしょうか、そして彼らは優しいでしょうか、残酷でしょうか?そのアノマリーの人格について少し理解しておけば、より自分のアノマリーに多くのことを付け加えることができます。
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このような質問は、内容がないという問題に対する非常に良い解決策となります。「なぜ存在するのか」というバックストーリーを付け足すことで、モンスター図鑑は胸が痛むような裏切りの物語へと変化します。「どのようにしてそれを使うのか」という物語を付け足すことで、ただのマジックアイテムは別れてしまった家族が再会する良質な物語になります。「それが何をするのか」という脇筋を、「お前を殺すもの」に付け足すことで、そのアノマリーは典型的なワクワクさせるキャラクターへと練り上げられていきます。
この節のまとめ
- 異常性は登場人物のキャラを立てたり、問題解決の糸口となる道具です。その異常性を生かせるところを探してみましょう。
- あなたのアノマリーが周囲にどんな影響を及ぼすかを考えてみてください。どんなにありきたりな人でも、周りの人に影響を(良い意味でも、悪い意味でも!)毎日与えています。結局のところ、一番面白いのは人と人のつながりなのです。
テーマをよく調べる: 飛び立つ前の最終確認
有能な人とそうでない人の違いは、自分の考えを実際に実行するか否かだ。1
— スー・グラフトン
もしあなたのアノマリーが、既に作られたものに似ていたり、他のSCP、Tale、GoIフォーマットと同じような前提をもとにして作られていても問題はありません。
私は、駆け出しの著者たちが、いろいろなチャットで「良いアイデアは使い果たされてしまった」だとか「オリジナルのものなんて思いつけない」と嘆くのを何十回も見てきました。しかし、彼らは絶えず素晴らしいアイデアを思いついています。彼らはただ、それを利用しないだけなのです。なぜなら、彼らは自分のアノマリーのユニークさを気にしすぎているからです。次の表について考えてみましょう。
アイテム番号 | Rate | 作成日 |
SCP-093 | +1880 | 2008年7月26日 |
SCP-2317 | +1388 | 2014年2月8日 |
SCP-2935 | +924 | 2016年7月18日 |
これら全てのSCPオブジェクトの中心となるストーリーは同じものです:人々が別世界へと行き、そこで奇妙なものを見つけるというものです。
djkaktusがSCP-2935を書いていた時、彼は異世界への入口について書いていることに気づいていましたし、コンセプトが似通っている評価の高いSCPの7位と15位と戦わなければならないであろうことにも気付いていました。彼がそのことに気づいた時、彼はニヤリと笑って、それ以上ためらうことなく、とにかく記事を書いたのに違いありません。なぜでしょうか?それは、オリジナルな方針を立てられるのなら、コンセプトが似通っていても問題ないからです。もう一度言いましょう。
オリジナルな方針を立てられるのなら、コンセプトが似通っていても問題ありません。
私は人々がチャットで「このコンセプトは以前に行われたことがありますか?」と聞いて、大量のリンクを送りつけられ、結果的にサイトにものを書くことがどれだけ難しいかについて文句を言っているのを本当によく見かけます。もし自分の頭の中に物語が出来上がっているなら(そしてここまでのガイドに従っているなら、そうであるべきです)よくDoctor Cimmerianが言っているのを見かける、次の執筆の助言について考えてみてください。
あなたのSCPのアイデアについて(異常性だけではなく、ストーリーも含めて全て)、句読点のみを使って一文で説明してみてください。
これはとても素晴らしいアドバイスです。前のガイドで、アノマリーを数語で説明するエクササイズをしたのを覚えていますか?これはアドバイスの次の論理的なステップです:アノマリー全体を一文で定義しましょう。もしこれができないなら、あなたのアイデアは複雑になりすぎています。もしこれができるのなら、おめでとうございます。あなたは素晴らしいアイデアを手にしているかもしれません。
もしあなたの作品の一文要約が、他のサイト上の作品のものと一致しなければ、ラッキーです。先ほど、SCP-093、SCP-2317、そしてSCP-2935は同じようなコンセプトをもとにして作られていると言いました。しかし、そのコンセプトを実行することが大事なのです。これらの記事の文章の要約をすると、次のようになります。
SCP-093 — 鏡のアノマリーが、奇妙な世界の探索をベースにしたスリラーへとつながる。
SCP-2317 — 世界が終わるんだから、いっそ普段通りに過ごした方がマシだ。
SCP-2935 — あらゆるものが死んでいる、そうあるべきでは無いものですら。
これは、もちろん、記事に対する非常に還元主義的な考え方ですが、これは私の主張を証明してくれると思います。同じところから違うものが生まれる可能性はあるので、表面的に同じようなものでも、それぞれの記事が良いものとなりうるのです。
この章のまとめ
- 自分のアイデアが他のものと似ているからと言ってそのアイデアを捨てないでください。その代わりに、何かユニークな方向に持っていきましょう。
- 記事全体を一文にまとめてみましょう。もしできないのなら、アイデアの選び方: 深さ VS 複雑さに戻ることを検討しましょう。