ズヴェズダ
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ロシアは蚕食され、意志なき骸へと変わりつつある。

敵の名は“財団”。奴らはその手の内にある異常存在を駆使して、世界を、そして結果的に我らの祖国をも己の下に部品として組み込もうとしている。母なるロシアは幾度となく征服者をはねのけてきたが、今回はすでに敗北の一歩手前まで追いつめられている。政府も軍部も、もはや半ば奴らの支配下にあるも同然だ。異常に対するロシアの攻め手であり守り手であった我々の組織は、財団の浸透に対する抵抗の最前線に立ったものの、徐々に切り崩され、今では滅びへの道を辿りつつある。やがては我々の蓄積したものも、少なくとも一部は奴らの手中に落ちることになるだろう。

今後、財団によって変貌させられるであろうロシアの未来の姿は、すでに財団の内に取り込まれた他国の有様を見れば予想はつく。格差と密告と抑圧に満ちた、単一の組織による恐怖政治。しかし、それは本質的な問題ではない。我らの祖国においても、政治屋が似たような政治体制を選択したことは幾度かあった。是非はともかく、我々もある時はその尖兵だったのだ。

そうだ。それとこれはある一点において根本的に違う。これまでの全ては、あくまで母なるロシアを主体として行われてきたのだ。我らは、父祖が切り拓いた凍てつく大地の上に集い、団結し、ロシアという強力なる国家を築き、愛し、育て上げた。偉大なる鷲の翼に抱かれたロシアという枠組みが、確保、収容、保護とやらの名の下に取り払われてしまったならば、父祖からの繋がりは途絶えて消え去り、例え人々が生活を続けようとも、彼らはロシアの民ではなくなる。それはもはや亡国と同じではないか。

故に、我々は、ロシアは復讐する。確かに、我々の力は全盛期に比べれば大いに衰え、もはや財団の支配の手を振り払うことはできまい。しかし、財団がなしているような、我々の組織に対する過小評価──これは我々の偽装工作の成果でもあるのだが──もまた誤りだ。奴らは所詮、このロシアにおいては新参者だ。歩んできた凍土の下に我らが隠した牙のことなど、知るよしもあるまい。奴らに一矢を報いること、侵された世界ごと奴ら財団をロシアと同じ滅びへと放り込むことができる程度の力は、我々の手元に十二分に残されているのだ。

財団は後悔することになるだろう。奴らは最後まで我らの祖国を、我々"P"部局を恐れるべきだったのだ。

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そしてクレムリンは陥落し──、自動化された報復への歯車が回り始めた。

財団もすべてを知るわけではない。

"P"部局が造り上げた数多い産物の1つ、かつて“宇宙旅行の父”が最後に抱いた偉大なる理想は、公に知られぬまま現実のものとなり、今では多くの船に乗って銀河の各所に散らばっていた。財団はそのうちのいくつかを捕捉したが、そのほとんどは知られぬまま系外宇宙に残った。

そして、かに星雲と呼ばれる場所に達したそのうちの1つに、祖国が膝を屈したとの報が光を上回る速さでもたらされた時、"P"部局が用意していた“種”は芽吹いた。それは時空を越えてその効果を波及させ、偉大なる祖国の言葉で復讐への産声を上げた。





























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Я пробуждаюсь
我 ハ 目 覚 メ タ

Не спрятаться
逃 サ ヌ

Только смерть
死 ア ル ノ ミ



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