クレジット
翻訳責任者: Congy
翻訳年: 2026
著作権者: radian628
原題: Biweekly
訳題: Biweekly
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 14
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/biweekly
マリア・ジョーンズはノートパソコンで顔を隠しながら、サイト19の休憩室に入った。彼女はノートパソコンの後ろから顔を覗かせ、フリッツとクレフを見た。二人ともエビのようにパソコンに向かって前かがみになって画面を見つめていた。「あの、ウィリアムズさん?」マリアは床に足を叩きつけながら言った。
「少し待て」フリッツは答えた。彼の目はノートパソコンの画面に釘付けだった。それは2004年製造のThinkPadで、背面には「セーフ・クリーンアップ・プロフェッショナルズ財団」と書かれたステッカーが貼られていた。「この哀れなガキを殺さねば――」
「データベースが消えました」
クレフはモニターから目を離した。「消えたって、何言ってんだ?」彼は吐き捨てた。
フリッツのノートパソコンの安っぽいスピーカーからけたたましい銃声が数発鳴り響いた。マリアは再び顔を覆い隠し、クレフの鋭い視線を遮った。フリッツは拳を突き上げた。「ついに お前の栄光の日々は終わりだ、クレフ」彼は安堵のため息をつきながら言った。
「フリッツ。これは重要なことだ」クレフは答えた。「マリア、消えたってどういう意味だ?」
マリアは深呼吸をして、ノートパソコンを休憩室のカウンターに下ろした。クレフとフリッツに見えるようにノートパソコンを回すと、底面のゴムパッドのきしむ音がサイト19倉庫のコンクリートの床に響き渡り、マリアは身震いした。二人は食べていた死骸から目を逸らされた狼のように画面を見上げた。マリアは咳払いをした。「ええと、まず最初に言っておきますが、これは私のせいではありません。ダミアンが私たちに――」
「君を責めているわけではない。説明してくれ」とクレフが口を挟んだ。
「簡単に言うと、ダミアンからちょっとした不意打ちを食らいました。少なくとも――他の誰もこんなことはできなかったと思います」
財団で働き詰めの研修生、ディーが休憩室に駆け込んできだ。「勤務時間中にゲーム?財団の偉大な創設者がこんなことをするなんて信じられないな」と、かれtheyはフリッツを指差しながら言った。そして、カフェインレスコーヒーが入った発泡スチロールのカップを3つカウンターに置いた。「ところで、ダミアンって誰だ?」
「おい、休憩が終わったのはたったの6分前だぞ!」フリッツはコンピューターから立ち上がり、答えた。「ダミアンはというと、元IT部門の責任者だ」
「それに加えて、彼は本当に最低な奴だ」クレフはこめかみをこすりながら、ゾンビのようによろめきながらコーヒーの方へ歩み寄った。
「IT部門があるだなんて驚いたな。従業員が20人くらいしかいないのにだよ?」ディーが答えた。
クレフはカウンターからコーヒーを1杯ひったくった。「一体何でそんなに時間がかかったんだ?」と彼はディーに尋ねた。
「長い話だ」とディーは答えた。 「どういうわけか、近所のスターバックスでカフェインレスコーヒーが売り切れててね…」
「ちょっと待て」とクレフはディーの顔の前に掌を置いた。「マリア、つまり?」
「さっきも言ったように」マリアは続けた。「ダミアンは、彼がここを去ってから1年後にデータベースを消去するスクリプトをサーバーに仕込んだのです」
クレフは腕を組んだ。「それで、君はその『スクリプト』に――それが何を意味するにせよ――丸1年も気づかなかったということか?」
「静かにしろ、クレフ」とフリッツは答えた。「振り返りと事後分析は非難されるべき行為ではない。少なくとも大学のビジネスの授業ではそう教えられていた。マリア、続けてくれ」
マリアはノートパソコンのキーボードをいじくり始めた。 「えー、とにかく、全部消える前になんとかシャットダウンすることはできました。ディスク復元ソフトを使って大部分を復元しました。でも、一部の記事は完全に消えてしまって――」
「要点を言ってくれ」クレフはゲームの死亡画面に表示された、今や落ちてしまったキルデス比に顔をしかめながら答えた。
マリアは電光石火の速さで検索バーに何かを入力した。画面の中央に、"SCP-173"と"PAGE NOT FOUND"という、不快に点滅する文字が表示された。
「ふーむ。これはまずいぞ」
「皆さん、こんにちは」フリッツがそう言うと、他の人は皆休憩室に散らばっているキャンプ用椅子やビーズクッションに腰を下ろした。「皆さん、ここに来た理由はもうお分かりだろう。さあ、書き直しを始めよう」
「フリッツ、午後4時50分だ。従業員の半分はとっくに帰っちまった」クレフは休憩室にある唯一のオフィスチェアの上で、のんびりと体を回転させながら答えた。 「だから10分で終わらせとけ」とクレフは付け加えた。「残業時間は1秒ごとに計算して請求するぞ」
アイテム番号: SCP-173
安全清掃プロトコル: [後で書く]
説明: [後で書く]
「定型文の方をさっさと済ませてるだけ」とマリアはぶつぶつ言った。「正直、バックアップを取っていなかったことには驚きました」
「バックアップを取るのはあなたの仕事ではないのか?」とフリッツは尋ねた。
「予算がなかったんですよ」マリアは慌てて何かを打ちながら答えた。「えーっと、購入依頼をしようとしたんですけど――」
「予備のハードドライブを購入するには資金は十分すぎるほどにあります」
「失礼ですが、ウィリアムズさん――」
「いっつもあるっちゅうわけじゃない」クレフは部屋の向こう側から返事をした。彼は刻一刻と回転を速め、そのたびにフリッツを睨みつけた。
「あなたが遮る前にジョーンズさんが言おうとしていたのは、バックアップ用のハードドライブの予算を要求しようとしたということです。ウィリアムズさん、あなたは彼女の要求を却下しました」ギアーズがそう言って、書類の束を抱えて部屋に入ってきた。
「ええと、私は、えーっと――」フリッツは歯を食いしばりながら答えた。頭の中で電球が点るように彼は何かをひらめいた。「実は注文したんだ。まだ届いていないだけで」
「その依頼は6ヶ月前のことですよ、ウィリアムズさん」とギアーズは答えた。その顔には、彼のポーカーフェイスを裏切るような微かな笑みが浮かんでいた。フリッツは深く考え込みながら歩き回り始めた。
アイテム番号: SCP-173
安全清掃プロトコル: 箱に閉じ込め、毎週クソを拭き取り、必ず3人で同時に見るようにする、などなど
説明: コンクリートと鉄筋でできた像。クライロンスプレーの痕跡があり、首を絞めようとしたり首を折ろうとするが、奇妙なことに見ている間は動かない (すごい!)
「忘れる前に情報を足しといた」とクレフは猛烈な勢いでタイピングした後に言った。「あと、これはその場しのぎにすぎない」
「データベースを書き換える機会を得た今、オブジェクトを素早く分類する方法があれば非常に便利だろう。収容違反の際に危険なオブジェクトなのか、それともそのまま動かないオブジェクトなのかを見分ける方法だ」とフリッツは答えた。
「それに、めちゃくちゃカッコいいし、よりちゃんとした体裁の組織に見えるだろう」とクレフは言った。
「オブジェクトクラスはいくつか考えている」とフリッツは付け加えた。「そのまま動かないものは『Safe』としよう。このクソ像のような危険なものは――」
アイテム番号: SCP-173
安全清掃プロトコル: 箱に閉じ込め、毎週クソを拭き取り、必ず3人で同時に見るようにする、などなど 一時的な措置としてクソを拭き取る。排水システムを設置したら、代わりにそれを使うこと。
説明: コンクリートと鉄筋でできた像。クライロンスプレーの痕跡があり、首を絞めようとしたり首を折ろうとするが、奇妙なことに見ている間は動かない (すごい!)
「誰が編集したんだ?」クレフは怒鳴り、回転する椅子をゆっくりと止めながら、コンクリートの床で靴をきしませた。
「わからない」ディーはクレフと目を合わせないように呟いた。
「あれはディーの仕業だった」クレフは部屋中に告げた。
「ああ、ディーの仕業だ」フリッツが付け加えた。
「この件については既に話し合いました」とギアーズは言い、書類の山をめくって費用の見積もりが記された一枚をその中から見つけ、それを掲げた。「自動排水システムには莫大な初期費用がかかり、元を取るには50年以上かかります。173を50年間も維持するつもりなのですか?」
「ダミアンなら、これを『技術的負債』と呼ぶだろう」フリッツは両手で頭を抱えながら言った。
「なぜダミアンの考えを気にするんだ?」クレフは答えた。「ダミアンなんてクソくらえだ。」
「鋭い指摘だ」フリッツが言った。「ダミアンなんてクソくらえだ」
「ダミアンなんてクソくらえだ」ディーが頷きながら付け加えた。
「ダミアンなんてクソくらえだ!」隣の部屋からムースのくぐもった叫び声が聞こえた。
「…私もダミアンは特に好きではないです」ギアーズは言った。
アイテム番号: SCP-173
安全清掃プロトコル: 1993年にサイト-19へ収容されました。清掃はbiweekly1に実施してください。清掃中は、常に少なくとも3名の職員はSCP-173を注視し続けてください。
説明: SCP-173はコンクリート、鉄筋、そしてクライロン社製のスプレーが吹き付けられた痕跡でできた像です。生きており、極めて敵対的です。SCP-173は直視されている間は動くことができません。
SCP-173は、排泄物と血液の混合物に似た組成の物質を生成します。
「記事を整理しました」ギアーズは言った。
「ありがとう、チャーリー」フリッツは答え、ページの「更新」ボタンを押した。
「チャーリー、いつも頼りにしてるぜ!」とクレフが付け加えました。「ちょっと待て、『biweekly』ってどういう意味だっけ?」
「『biweekly』なんて言葉は存在しません」とフリッツは言った。
「『隔週』という意味だね」とディーはニヤリと笑って答えた。
安全清掃プロトコル:1993年にサイト-19へ収容されました。清掃はbiweeklyに 隔週で実施してください。清掃中は、常に少なくとも3名の職員はSCP-173を注視し続けてください。
「直した」とディーは言った。「これでよりはっきりしたと思うけど」
クレフは腕を組み、ディーを睨みつけた。「事務員どもは現場の様子をよく分かっていないかもしれないが、この騒動が起こる前、俺は確かに君が週に二度も収容室を掃除していたのを見たことがある」
安全清掃プロトコル:1993年にサイト-19へ収容されました。清掃はbiweeklyに 隔週で 週二回実施してください。清掃中は、常に少なくとも3名の職員はSCP-173を注視し続けてください。
「実は」ディーは何かを慎重に打ちこみながら答えた。「来た目的のほとんどは検査で、清掃ではなかったんだ。」
安全清掃プロトコル:1993年にサイト-19へ収容されました。清掃はbiweeklyに 隔週で 週二回 隔週で実施してください。清掃中は、常に少なくとも3名の職員はSCP-173を注視し続けてください。
クレフはニヤリと笑った。「俺はプロのほら吹きだ、坊や。お前のことは見透かされてるんだ。」
安全清掃プロトコル:1993年にサイト-19へ収容されました。清掃はbiweeklyに 隔週で 週二回 隔週で 週三回実施してください。清掃中は、常に少なくとも3名の職員はSCP-173を注視し続けてください。
「二人とも」マリアは編集合戦をしている二人の間に入って遮った。「これ以上はやめるべきだと思います—」
アイテム番号: SCP-173
安全清掃プロトコル:1993年にサイト-19へ収容されました。清掃はbiweeklyに 隔週で 週二回 隔週で 週三回 週一回実施してください。清掃中は、常に少なくとも3名の職員はSCP-173を注視し続けてください。
説明: SCP-173はコンクリート、鉄筋、そしてクライロン社製のスプレーが吹き付けられた痕跡でできた像です。生きており、極めて敵対的です。SCP-173は直視されている間は動くことができません。
SCP-173は、排泄物と血液の混合物に似た組成の物質を生成します。
「週に一度ということでどうでしょうか!」フリッツが言った。「もし漏れ始めたら、手順をやり直せばいいということです。」
「メモを確認したので、正しい清掃間隔を把握しました」ギアースは言い、持ち込んだ書類の山から別の紙を取り出した。「さて、書き加えておくとしますか――」
…
…
…
…
編集エラー検出: 13日23時59分53秒の間、ページは編集のためにロックされています
マリアはため息をついた。「聞かれる前に言っておきますけど、ダミアンがこの機能を追加したんですよ」
「彼がなぜそれを追加したか私には分かる」ディーは気乗りしない様子でクレフを指さしながら呟いた。皆が批判的な視線を向けた。
「ま―まあ、ダミアンがそれを追加したことには賛成できないけど」ディーはどもりながら言った。「でも――」
「ああいや、分かる。だって、君は自分の持ち分をこなすことより仕事をサボる方を選ぶんだろ」クレフは唸り声を上げ、地面を蹴り飛ばしてオフィスチェアをディーに近づけた。
二人が顔を見合わせて怒鳴り合い始めると、フリッツは休憩室の隅で意気消沈しながら立っているマリアの元に忍び寄った。「マリア。いい考えがある。173のファイルをアーカイブしてくれ」彼は満面の笑みを浮かべながら彼女に囁いた。マリアは頷いた。
「データベースを直しに行ってきます」マリアはそう言って、ぎこちない笑みを浮かべながら部屋をこっそり出て行った。
「だめだ、マリア」クレフは指を振りながら答えた。「ディーが君のデータベースをいじった。この件に関与する権利がある。俺たちがお前を守ってやる」
「すみません、急用で」マリアはそう言うと、廊下へと消えていった。
フリッツはコーヒーマシンへと軽快に歩み寄り、「ビール」と入力した。オレンジがかった黄色の液体がカップに注がれ、フリッツはそれを一秒も経たないうちに飲み干した。彼は発泡スチロールのカップを手で押し潰し、ゴミ箱に叩きつけた。フリッツは軽快な口笛を吹きながら休憩室から飛び出した。「卑怯者め」とクレフが言った。
「一体何を言っているんだ」とディーはクレフに言い放ち、二人は怒鳴り合いを続けた。「俺はクソ像の収容室を掃除するよりはるかに危険なことを日常的にやっている。もし俺が仕事をサボるなら、あのクソ像なんて優先順位で10番目くらいになるだろうな」
「厳密に言えば」ギアーズは急速に大きくなる耳障りな音にをよそに言った。「データベースを壊したのは私です」彼は他の者たちが気に留めない様子をぼんやりと見つめていた。
「この野郎、クレフ、お前っていつもこうなんだな」とディーは言った。「別にお前を陥れようとしているわけじゃない。理論上、俺があのクソ像の掃除をサボったことでお前にどんな影響があるっていうんだ?」ディーはわざと息を呑んだ。「ああ、分かってる!お前が自分の怠け癖を俺に投影してるからだろ!」
「俺が投影してると思ってんのか?お前『MeSpace』2のブログでその言葉覚えたのか?」クレフは口から泡を吹きながら吐き捨て、震える指をディーの顔に突きつけた。「お前は俺のことを何も知らねえんだな。俺はお前の2倍以上も年上なんだぞ、クソッタレ」
「なら、ちゃんと真似しとけ!」ディーは叫んだ。「なんでお前はこんなことも――」
くぐもった、しかし血も凍るような男の叫び声が数部屋先から響き渡ったのはその時だった。
全員が静まり返った。
クレフは椅子から飛び出し、反動で椅子がディーに押し返された。ディーは椅子につまずきながらも、その後を追った。ギアーズもすぐ後ろをついてきた。3人がサイト19の廊下を駆け抜けると、巨大な石が地面に落ちて叩きつけられる特徴的な「ドスン」という音が、サイトのコンクリートでできた基礎全体に響き渡った。
「一体何なんだ、あれは」と、3人が角を曲がる時にディーが呟いた。「まさか…」
「なんてこった」クレフは廊下の真ん中にある開いたドアを指差して答えた。ドアには、金色の油性ペンで「SCP-173」と書かれた、光沢のあるアルミホイルのプラカードがマスキングテープで貼られていた。「逃げちまったぞ」クレフは囁いた。
3人はドア枠の隙間から中を覗き込んだ。「フリッツ!?」中の凄惨な光景を目にして、ディーは息を呑んだ。
部屋の中で、173はフリッツの頭を脇に抱え込み、抑え込んでいた。彼が片手に持っていたスレッジハンマーは、足首まで届くほどのクソの層に落としてしまった。その手は刻一刻と力を失って垂れ下がり、かつてはマスタードの染みしかついていなかった服は、今やクソ像の名に恥じぬクソにまみれてびしょ濡れになっていた。
「ああ、クソッ」ディーは息を呑んだ。「な、一体どうすればいいんだ――」
「俺はここで出鱈目しか言っていないが、ちゃんとした計画はある」クレフは答えた。「あのでかいハンマーを取ってこい」
ディーはためらうことなく部屋に飛び込み、足首まで泥に埋もれながら大きなハンマーのある場所に辿り着いた。かれはハンマーを頭上に掲げた。「いいか、君がこれを振り下ろす瞬間、全員瞬きしてくれ」クレフは続けた。「この野郎にも生存本能があるといいんだがな」
「3」ディーは言った。
「2」
「1」
「瞬け!」
ディーはハンマーを力一杯振り回し、SCP-173の頭頂部とでも言うべき場所を狙い撃ちにした。暗闇が訪れたその一瞬、皆は間違いなくコンクリートの擦れる音と粘性のある液体の波打つ音を聞いた。4人が目を開けると、173は部屋の隅に押しやられており、押し流されたクソの跡はまるで鍋の中の濃厚なソースのように元の位置へと流れ戻っていった。
フリッツはあえぎながら息を切らしており、彼の鼻からは鼻水が垂れ、充血した目からは涙が流れていた。ディーはフリッツの腕を肩に担ぎ、彼を囲いから連れ出すのを手伝った。その間、クレフとギアーズは173を見張っていた。
「マジかよ、フリッツ」フリッツが囲いから出ると、クレフは言った。「あれでお前は死んだかもしれないんだぞ。お前、一体どうしたんだ?」
ディーは地面を見つめ、ため息をついた。「後でこのクソを全部片付けなきゃいけなくなった」とかれは無表情で言った。「ちくしょう、フリッツ」
フリッツは神経質に笑った。「もし君が――ふぅ――気にしないでくれ」フリッツは言った。シャツからクソが滴り落ちている。「シャワーを浴びてくる」
「せいぜい楽しんでくれ」クレフは言った。フリッツがよろよろと、足を引きずりながら立ち去ると、ギアーズがすぐ後ろをついてきた。「心からそう思います」
「え?」フリッツは歩調を速めながら答えた。
「次に会う時は、あまり楽しい思いはしないでしょうから」
ギアーズとフリッツはサイト19のトイレに向かう途中、また角を曲がった。ギアーズは後ろを覗き込み、二人きりであることに気づいた。「ちなみに、あなたは本当にSCP-173を破壊するつもりだったのですか?」ギアーズは尋ねた。
「いや。最初からこれが私の計画だったさ! 私が身代わりとなって、他の皆に互いのことを責め合うのをやめさせ、共に苦闘することを通じて『チームワークが夢を叶える』ってことを学ばせるんだよ!」フリッツはそう言いながら、自身に満ちた足取りで泥にまみれた自分の服を気にかけず歩いた。「でも正直に言うと、あの言い争いは全部君のせいだったんだけどね」
「ただ一つ、小さな矛盾点があるのですが――」ギアーズは携帯をスクロールしながら付け加えた。
「大したことではないな」
「君は173の収容室へ向かう直前に、ジョーンズさんに173の記事をアーカイブさせましたよね」
「別にそのスロットが必要だったわけじゃな——」
「つまり君は、それを処分しようとしていたんですね」
「ここはとんでもなく臭うな」クレフはそう言い、化学洗浄剤の入ったバケツを2つ173の収容室の近くの廊下に持ってきた。
「持ってきてくれてありがとう」とディーは答え、バケツを掴んだ。
「いや、こちらこそさっきは助けてくれてありがとな」とクレフは言った。
「君の計画がなければ、うまくいかなかったよ」二人はフリッツが床にまき散らした、人間のものと思しき排泄物の跡を拭き始めた。フリッツは大学時代の学生クラブのパーティー以来、あんなものを作ったことはなかった。「ところで、さっきのあれはごめんな。収容室の掃除は正しくは週に2回だったんだ。『biweekly』ってどちらの意味にも取れるからね」
「その言葉を考えた奴は死ね」とクレフは答えた。ディーはくすくす笑った。「そうそう、俺は君に自分を投影していたんだと思う。で、俺は基本的に悪魔みたいなもんだから、うーん、俺のほうとしてはあまり良いことじゃなかったな」
「正直言って、今思えばこの出来事はちょっとバカげていたね」とディーはクスクス笑いながら答えた。 「もし隔週で掃除してたら、毎回4倍の量のゴミを片付けなきゃならなくなる。どっちにしても量は同じなんだけど」
「全く同感だ。なんでさっきあんなに怒ってたのかわからなくなっちまった」
「えっと、今朝はカフェイン抜きのコーヒーを買ってしまったかもしれないな、クレフ」とディーは答えた。
「なるほど、それでいろいろ説明がつくな」とクレフは目をこすりながら言った。「それに、フリッツが俺の連続キルを台無しにしたしな」
「おい、フリッツを殺せばいいんじゃないか?」
クレフは首を横に振った。「――いや、それはやめておこう」ディーは笑った。
「それで、もう大丈夫か?」とディーはクレフに握手を求めながら尋ねた。
「お前の手はクソまみれだ」クレフは後ずさりしながら答えた。
…
「でも、大丈夫だ」


