CrabButterの提言的なあれ
クレジット
タイトル: CrabButterの提言的なあれ: プロジェクト・ジョーズ・メアリー
著者: CrabButter_12
作成年: 2026
https://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:9122253-82-b675
音声記録: 着陸船イーグル
Record 1969/07/24
送信された画像。
«ログ開始»
[中略]
アームストロング: 私は梯子のふもとにいる。着陸船のパッドは表面にわずか1~2センチ沈んでいるだけだ。
アームストロング: 近づいてみると、表面は非常に、非常に細かい粒子でできているように見える。ほとんど粉のようだ。
[10秒程の沈黙。]
アームストロング: よし、今から着陸船を降りる。
[アームストロングが月面に着陸する。]
アームストロング: これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。
管制官: こちらヒューストン、計画は予定通りに進行中。オルドリンは4分後に星条旗を持って着陸しろ。コリンズは船内で待機しろ。
オルドリン: 了解。
管制官: アームストロングは
アームストロング: ……何だ?
[ノイズ音。]
コリンズ: どうした?
アームストロング: 非常にまずいものを見ている……緊急事態が起きた。
管制官: 詳しく報告してくれ。
アームストロング: 旗が既に立っている。我々が立てる予定だった地点にだ。
コリンズ: ……どういうことだ。
オルドリン: 何者かが我々より先に月に到達していたと?
アームストロング: 少なくともソビエトでは無いらしい。国章のようなものの下に文字が書いてある。
管制官: 内容を読解することはできるか?
アームストロング: 3単語で構成されている。二番目が"Punching"、最後が"Center"。最初の単語は……読み方が分からない。固有名詞か造語であるようだ。
アームストロング: S,H,A,R,K……シャーク?
オルドリン: ……Shark殴りセンター?正式名称に"Punching殴る"なんて単語を入れるふざけた組織が存在するとは思えませんが。
管制官: ……ひとまず民間には事前に準備しておいた捏造映像を放送することにする。こんなことが知られれば大問題だ。
アームストロング: ……サメShark。
コリンズ: どうした?機器に不調でも?
アームストロング: いや。……しかし……根拠は自分にも分からない。だが衝動を感じている。
オルドリン: 何ですかそれは?
アームストロング: サメSharkを殴りたい。
コリンズ: ……は?
アームストロング: 我々はあの湿気った鼻をぶん殴ってへし折らなければならない。お前たちもそう思うだろ、コリンズ、オルドリン。
[沈黙。]
オルドリン: 気が動転しているようです。放っておけば治るかと。
コリンズ: ……そうだ。
オルドリン: は?
管制官: おい、そっちで何が起きている?
コリンズ: 我々はサメを殴らなければいけない。
アームストロング: ああ。奴らを粉砕せずして"Armstrong"なんて名前を名乗る訳にはいかない。戻ろうじゃないか、我らの母なる海へ。
オルドリン: ……は?
«ログ終了»
プロジェクト番号: SPC-001
鮫的存在殴打ケイパビリティ: SPC-001の完遂のため、センターは総力を挙げて”サメ”と呼称される存在の正体を特定しなければなりません。
プロジェクト構成: SPC-001は”サメShark”と呼称される存在を特定・発見し、殴打するプロジェクトです。
”サメ”という概念を現在の人類は一切認知しておらず、”サメ”と呼称される存在は、資料-0001-001以外では文献・記録上を含め一切確認されていません。唯一判明している事実は、それは我々が殴打するべき対象であるということだけです。”サメ”という概念を認知した人物が、それに対して不明瞭な憎悪・怒り・殴打欲求を感じることから、”サメ”に対する憎悪は我々のパッションに強固に植え付けられており、それを殴打する事が人類全体が有する使命であると考えられます。
人類は1969年にアポロ計画による有人月面着陸によって発見された”サメ殴りセンター”とされる組織の旗(資料-0001-001)によって”サメ”の存在を認知しました。この旗は未知の金属と繊維によって構成されており、破壊・経年劣化に対して非常に強い耐性が与えられています。”サメ殴りセンター”とされる組織、及び旗を構成する素材を製作する技術の実在は”サメ”の存在と同様に確認されていません。
SPC-001の完遂を目的として、1969年にニール・アームストロング宇宙飛行士を含む複数の人物によって、月面上に旗を設置したと思われる団体の理念と名称を継承し、”サメ”を再発見し殴打することを目的とした組織”サメ殴りセンター”(SPC)が設立されました。当初は数人単位の小規模な組織であったものの、”サメ”の存在が民間にも広がると同時に我々と志を共有する鮫殴打者Shark Puncherが増加したこと、及び積極的な求人活動の成果によって、サメ殴りセンターの規模は100万人以上の構成員を持つ超国家的組織にまで拡大しました。
人類が”サメ”の存在を現在まで認知していなかった原因については不明です。現在センター内では主に四 三つの仮説が存在しており、一部のグループからはこれらの仮説を統合した説も提唱されています。
古代文明説
かつて”サメ”は実在し、同時に極めて高度な技術力を有する古代文明も存在した。資料-0001-001は“サメ”が存在した時代に当時の”サメ殴りセンター”が設置したものである。ある時期にその古代文明は滅び去り、ほぼ同時に”サメ”も何らかの要因でその姿を消した。しかしそれに対する殴打感情は我々の祖先の遺伝子に刻み込まれており、”サメ”という概念を認知したことをトリガーとしてそれは再発現しているとされる。
侵略者説
”サメ”は異次元・外宇宙由来の脅威であり、現在地球上には存在しない。だがその脅威に対抗するために人類は”サメ”を殴打するという感情を抱いている。どのようにして存在しない”サメ”の存在を認知しているかについては、”テレパシーみたいなやつ”や”運命的なあれ”、”パッション”と説明している。資料-0001-001についての説明はなされておらず、またサメの性質についても”エイリアン”、”食人生物”、”サイボーグ”など、支持者の間で一致が見られないが、いずれも最近流行しているサブカルチャーの影響が見られ、他説の支持者からは「とりあえずスケールをデカくしたいだけではないか」と批判されている。
非実在説
”サメ”はそもそも実在しない。月面上で発見された旗にミーム的な効果を齎す異常な特性が組み込まれており、それによって”サメ”という存在に対する憎悪と殴打欲求が引き起こされている。この仮説は”サメ”の実在を否定することで殴打を回避しようと目論む鮫信奉者による妨害活動であると見なされ、センターにより異端認定が行われました。現在賛同者への殴打が実施されています。
陰謀説
かつてサメは実在したが、”サメ”の殴打を回避しようと試みた鮫信奉者の一団の手によって”サメ”の存在は隠蔽され、人類はそれを忘却した。サメ非実在論者のような鮫信奉者は彼らのシンパか末裔であり、殴打されるべきである。また、太古から活動しているという風説があるフリーメイソンやイルミナティといった団体もその後継者である可能性が高い1。
補遺1: 歴史上の”サメ”に関する記録の調査結果
”サメ”について描写された未観測の記録が存在する可能性を考慮し、過去の文献記録に対して調査が行われました。その結果、”サメ”に関する内容を含むと思われる資料が複数発見されました。以下はその実例を抜粋し、年代順に並べたものです。
指定: 資料-0034-001
発見地点: ギリシャ共和国クレタ島
発見日時: 1974/12/04
内容: ”καρχαρίας”という名の人を食する怪物を殴打し村を救った英雄についての伝承が記録された石碑。内容から”καρχαρίας”は古代ギリシャ語で”サメ”を意味する単語であると推測される。この仮定が事実である場合、”サメ”は海洋に生息する生物である可能性が高い。
指定: 資料-0023-001
発見地点: ノルウェー北部
発見日時: 1972/02/18
内容: 大型の魚類を殴打するヴァイキングが描かれた絵画。発見後、物品を閲覧したセンター職員が魚類が描かれた部分を殴打したことで破壊された。破壊した職員は「見た瞬間にサメを殴れと体が訴えかけてきた」と証言しており、絵画に描写されている大型魚類が”サメ”である可能性が高いと見られている。絵画の復元には現在まで成功していない。
指定: 資料-0012-001
発見地点: アメリカ合衆国ミネソタ州
発見日時: 1970/06/12
内容: 1875/04/13に発行された新聞の一面。見出しには”連邦政府、鮫信奉者集団の殲滅を本格化”と記載されており、大まかな内容は「各地に存在する鮫信奉者集団の拠点による政府への妨害活動が深刻化しているため、連邦政府が州兵を動員してその排除に乗り出すことを計画している」というものである。
指定: 資料-0059-001
発見地点: アメリカ合衆国カンザス州
発見日時: 1971/02/08
内容: 「シャークネード」と題された映画のポスター。劣化しておりイラスト部の詳細な内容は不明だが、大型の魚類と思わしき生物が確認できる。説明部には「”サメ”が竜巻と共に襲来する」といった内容が記載されている。通常の生物が竜巻中で活動できるとは考えにくいため、”サメ”は何らかの特異な進化により肺呼吸や飛行能力などを獲得している可能性がある。
指定: 資料-0109-001
発見地点: ベルギー王国リエージュ州
発見日時: 1974/03/14
内容: 日記。山中で劣化などが殆ど見られない状態で発見された。起源については不明。発見日前日の同地点には存在が確認されておらず、発見日の未明に何者かが放棄したと推測されているが、周辺に足跡などの痕跡は一切確認されていない。
これらの資料から、”サメ”はイルカやシャチのような大型の海洋生物であると推測されています。
補遺2: 資料-0109-001
以下は資料-0109-001から一ページ分の内容を抜粋したものです。
2074/03/14
一ヶ月ぶりにサメを殴ってきた。だが、満足できたとは到底言い難い。
今日は休日だったという事もあって、私が殴り場2に来た頃には既に長蛇の列ができていた。私の番が回ってきた頃にはサメ野郎は瀕死になっており、アッパーを一発決めたらそいつは気絶してしまった。殺す所まで行っていたら大量の罰金を支払う羽目になっていただろう。
信じられないことだが、およそ100年前 国家という区分が存在していた時代では、サメ殴りとは自ら海に潜ってサメと戦いを繰り広げる行為を指しており、どちらかが死ぬこともありふれたことだったらしい。それに比べると、今のサメ殴りはずっと陳腐なものだ。人工的に作られた水槽で、こちらが一方的に殴る。生死を賭けた闘争ではなく、ただサメを殴る衝動を発散するための行為に過ぎないものだ。
世界人口はつい最近120億人を突破した。だが、それに比べてサメの個体数は1億匹と圧倒的に少なく、更に密殴打のせいもあり減少の一途をたどっている。SPGs3の達成状況も思わしくないそうだ。サメ殴りセンターに対する反発も強まっているが、彼らを非難するのはお門違いだと思う。もしセンターがサメ殴りを管理していなかったなら、サメはとっくに絶滅しているだろうに。
私が生まれてから今に至るまでの65年で、世界はますます窮屈になっているように思う。南極や砂漠を含むありとあらゆる陸地に人類が住むようになり、ありとあらゆる海がサメの養殖場になったのにも関わらずだ。人類がサメを殴り続けるには、この地球はあまりにも狭すぎるのだろうか?
資料-0109-001の内容全体から以下の情報が得られました。
- 2074年ではサメ殴りセンターが全世界を統治しており、国家という区分は消滅している。
- 技術水準は現代と比べ大きく上昇しており、核融合発電機の開発や太陽系全体の探査などが既に進行している。
- 全人類がサメに対する殴打欲求を抱いている。
- サメを殴るという行為は厳格に管理されており、サメ個体数管理のためサメを殴打する時期や回数に多大な制限が存在する。
SPC-001: 会議ログ-01
«ログ開始»
[中略]
██博士: 以上が、現時点までにSPC-001によって判明した情報です。
アームストロング管理官: 報告ありがとう。君たちはこれについてどう思う。
ストラット主任研究員: ”サメ”が海洋を生息域とする大型魚類であるという事はもはや疑う余地がないでしょう。そして、それをぶん殴るという崇高な意思も太古から存在したことが示されています。
ダンチェッカー博士: そして月の旗を立てた組織、我々ではない方の”サメ殴りセンター”は全世界を統治し、サメ殴りを管理する体制を作り上げた。まるで全体主義国家のようだが、そこまでしなければサメの個体数を維持することは出来なかったのだろう。
アームストロング管理官: だが、問題なのは何故”サメ”が消え、我々もそれを忘却してしまったのかということだ。科学や歴史学だけでこれを説明できるとは思えない。
████研究員: ならオカルトや超常を持ち込んでみては?最近我々に対する協力を表明してきた全米確保収容イニシアチブという組織がその実在を証明するデータを残しています。
ハント上級研究員: 一つ仮説だが……発見された資料は我々の世界に由来するものではないのでは?
アームストロング管理官: ……というと?
ハント上級研究員: 確かに資料の内容は我々の歴史と一致する。だが資料-0109-001……突如として出現したあの日記に描かれた社会は、我々に比べて発展しすぎているし、西暦の情報を信じるならば100年後の未来からやってきたことになる。
ハント上級研究員: これを説明するために私はこう考える。我々の世界には最初から”サメ”は存在していなかった。そして、我々の世界と似通った、しかし”サメ”が存在し、この世界より若干時間が進んでいる並行世界のようなものも存在していた。”サメ”の存在を示す資料はその世界から何らかの要因で送り込まれたのだ。
[ダンチェッカー博士がハント上級研究員を殴打する。]
ダンチェッカー博士: 自らサメ非実在論者を名乗るとはな。愚か者め。
[ダンチェッカー博士がハント上級研究員に馬乗りとなり、ハント上級研究員の頭部を何度も殴打する。]
ストラット主任研究員: 待ってください、ハント上級研究員は何か言いたげに見えますよ。
ダンチェッカー博士: 何だと?
[ダンチェッカー博士は10秒程ハント上級研究員への殴打を続行する。]
ストラット主任研究員: ……殴られている間は喋れないんじゃないですか?
ダンチェッカー博士: なるほど。
[ダンチェッカー博士はハント上級研究員の首を掴んで持ち上げた後、強烈なアッパーを入れる。その後、ダンチェッカー博士は着席する。]
ハント上級研究員: [息を荒げる]この世界には存在せずとも、並行世界には存在しているのだ。その世界に殴り込みに行けばよいだけだ。
ダンチェッカー博士: ……確かに。すまなかった。
ハント上級研究員: 気にするな。我々が殴るべきなのはサメだけだ。我々の間で恨みを残す必要などない。
[ハント上級研究員とダンチェッカー博士が固い握手を交わす。]
アームストロング管理官: 裏付ける証拠は無く、疑問点も多いが、確かに理屈は通っている。
███上級研究員: 一考の余地はあるな。それで
███博士: 会議中失礼します。例の計画について重大な報告がございます。
████研究員: 例の計画?
ハント上級研究員: 月面探査計画のことだろ。月には大気が存在し無い故に風化や劣化も起きにくい。旗以外にも痕跡が残っていればそれは謎を解き明かすための大きなヒントになる……というわけで実施されていたやつだよ。
アームストロング管理官: 予定通りなら今頃月面での調査が行われているはずだが……何か見つかったのか?
███博士: ええ。巨大な人工物……何らかの施設と思わしきものが発見されました。内部の調査は今後実施される予定ですが……劣化により大半が崩壊状態であるため、今回は詳しい調査は不可能であると考えられます。
ハント上級研究員: ……劣化?
███博士: はい。先ほど仰られたように月面では風化や劣化は発生しにくく、起きるとしても非常に長い時間を有します。劣化度合いからの概算によれば……
███博士: その施設は建設から最低でも10万年、長ければ数百万年が経過しています。
«ログ終了»
補遺3: 月面基地で発見された資料
1975/01/23、月の裏面の探索を行っていた調査隊は、極めて巨大な施設と思わしき人工物(以下、Area-001)を発見しました。また、付近からは人間の白骨死体と思わしき物体が発見されています。劣化度合いからの概算と白骨死体に堆積した斜長石などの衝突熔融物に対するアルゴン-アルゴン法年代測定により、Area-001は建造から最低でも10万年、最長の場合140万年が経過していると判明しました。大部分が崩落・劣化していたため内部の探索は危険であると見なされ、Area-001を建造した組織・時期などの詳細な情報は判明しませんでした。以下は回収された資料の中で唯一判読が可能であった資料-0192-001からの抜粋です。
アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブ
概説
ワープ原理の直観的イメージ。
アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブは現在秘匿サイト-09で開発されている超光速航行技術である。当技術はセンターの最優先目標に指定されているプロジェクト、"ジョーズ・メアリー"の不可分の要素であると見なされている。
アインシュタインの提唱した相対性理論によれば、いかなる物体も光速以上の速度で移動することは不可能である。また、質量を持つ物体が光速に近づこうとするほど加速に必要なエネルギーは指数関数的に上昇していき、最終的には無限のエネルギーを必要とすることになる。故に太陽系外惑星などの探索においては移動時間と必要エネルギーが最大の課題とされていた。
空間を接続するポータル・ワームホール技術は既に実用段階に至っているが、これらは設置する工程が必要であり、一度到達した地点間でなければ移動することはできない。加えて移動距離の増加と共に設置に必要なエネルギー・作業量も大幅に増加する。よって超長距離の探索・移動という目的を達成することはできなかった。
1994年、メキシコ人物理学者のミゲル・アルクビエレはこの問題に対する一つの解法を提示した。光という制限速度に囚われているのは物体だけであり、殴打精神や空間そのものといった非物体は制約を受けない 宇宙の膨張速度が光速を上回っているという観測結果がそれを証明している。物体ではなく物体が存在する空間を移動させることで、物理法則に反することなく光速を突破するというのがアルクビエレ・レンツ歪曲ドライブの根幹を成すアイデアである。
原理
まず、かつて”財団”という超常鮫信奉団体を壊滅させた際に獲得されたシャンク/アナスタサコス恒常時間溝マークⅣ(XACTS4)を利用することにより移動させる範囲の空間をバブル状に切断する。その後、前方の空間の収縮・後方の空間の拡張が行われる。これはボートと水によって例えられることが多い 前方の水が吸いだされ、後方から湧き出てくれば、その間に水流が発生する。その上にボートがあるのなら、当然ボートは移動する。恐らくアルクビエレ氏はサメを殴るために鮫殴打者が水をかき分けて泳ぐ すなわち場そのものを利用して進むということから空間そのものを動かすという発想に行き着いたのであろう。
空間の収縮・拡張について、かつては「小規模なビックバン・ビッククランチを引き起こすようなもの」とされており、最低でも全宇宙に存在するエネルギーの10¹⁰倍を要するとされていたが、この問題は人工的なポケット枝宇宙を利用することで解決を見せた。前方・後方にポケット枝宇宙と接続するポータルを生成し、前方では基底宇宙からポケット枝宇宙側への空間の移動、後方ではその逆を行う。空間を生成・削除するのではなく、空間をポケット枝宇宙を介して移動させることで従来の構想よりも圧倒的に少量のエネルギーでの超光速航行が可能となった。
宇宙船周囲のヨーク時間の表面プロット。
問題点
現在のアルクビエレ・レンツ歪曲ドライブではXACTS4を利用しているため、超光速航行中は移動する空間と外界の因果関係を持つことが不可能となる。よって、超光速航行中は移動の制御を自立したシステムに依存することになる。もしシステムにミスが存在していたとしても、乗組員はそれに対応はおろか、認識することすらできないのである。この問題を解決するため外界と内部を接続するポータルを安定して構築・維持する機構が開発中である。
また、空間そのものが移動するという性質上、アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブは物体のような三次元的空間の制限を無視できる可能性がある。つまり、ポケット枝宇宙のような並行世界や非次元といった別次元空間に到達することも可能であると推測される。従来のポータル・ワームホール、特にクラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールで類似する事例が確認されており、解決方法が模索されている。
アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブ及び”ジョーズ・メアリー”と呼称される計画と”サメ”の消失についての関連が調査されています。
補遺4: ”サメ”の特定
1981/05/08、資料-0071-001から回収された”サメの”皮膚の遺伝情報から、”サメ”の生物学的分類の特定に成功しました。”サメ”は軟骨魚綱板鰓亜綱に属する魚類であり、この場合現存する生物の内ではエイが最も近縁する分類群であると思われます。”サメ”の起源は約4億年前の古生代デボン紀にまで遡ることができ、当時から殆ど姿が変化していなかったと推測されます。
復元された”サメ”の全体像。殴打欲求の発露とそれによる資料の破損を防ぐために一部を隠している。
”サメ”の骨格は軟骨であるため化石化しにくく、歯化石や顎化石以外の化石が発見されることは稀です。そのため”サメ”の化石の分類及び研究はあまり進行しておらず、”サメ”の特定の遅延に繋がったとされています。近縁種のデータから”サメ”の姿の復元が行われた結果、それを視認した殆どのセンター職員が殴打欲求を示しました。尚、殴打欲求の発露に伴って暴力性が向上した職員によりセンターの人員・設備に損害が発生したため、現在”サメ”の姿の復元図の完全な公開は禁止されています。
”サメ”の化石の発見は約120万年前から途絶えていますが、それ以前に個体数の減少や環境の変化などの絶滅の予兆は確認されていません。
SPC-001: 会議ログ-01
«ログ開始»
[中略]
アームストロング管理官: 本格的に意味が分からないことになってきたな。
ストラット主任研究員: まず、約100万年前……人類が誕生する以前から既に、超光速航行というSFじみた技術を実現する手前にまで発展した文明が存在し、彼らは”ジョーズ・メアリー”という計画のためにそれを開発していた。そして……サメが突如姿を消したのは120万年前。関連性が無いとは言い切れないように思えます。
████研究員: それだけ発展した文明だというのに、地球上に一切その痕跡が残っていないのは不可解です。強いて言えば資料-0109-001がそうであると言えるかもしれませんが……そもそもあれの出自自体分かっていないんです。Area-001は、地球由来の文明のものではない……地球外文明のものなのでは?
ダンチェッカー博士: 話が飛躍しすぎだ。もっと現実味のある仮説を立ててくれないかね。
████研究員: そもそも月面に既に旗が立っていたという状況から現実味が無いんです。現実味などというものに固執していても……
ハント上級研究員: ひとまず、彼らが何のために”ジョーズ・メアリー計画”とやらを実行していたのかを考えてみないかね。表層の情報だけを追っても理解できないのなら、自分たちが同じ立場になった時にどうするかという観点になった方がいいだろう。
アームストロング管理官: 一旦彼らも”サメ”を殴るためにこの計画を進めていたのだと仮定しよう。
███上級研究員: 別にこれと”サメ”に全く関連が無いという可能性もあるのでは?
アームストロング管理官: なら調べる必要が無くなるだけだ。我々の目的は”サメ”を殴ることであって、古代文明の調査やらなんやらはおまけにすぎないのだからな。
ストラット主任研究員: となると”サメ”の絶滅も計画に関わって来そうですよね。”サメ”が絶滅したから宇宙に進出する必要が出て来た……?
███上級研究員: ”サメ”っぽい地球外生命体を代用にしようとしたのかもしれないな。
ハント上級研究員: 待て……今議論されている仮説では、今まで発見されてきた資料の情報と辻褄が合わないではないか。資料-0192-001によれば、あのシステムは並行世界に到達する可能性もあるというではないか。これは前に私が語った仮説の裏付けになるのではないか?
████博士: サメの存在する世界としない世界みたいなあれか?どちらにせよ百万年前の文明については説明できないし、今それを持ち出されてもただでさえ混線している話がさらにややこしくなるだけだ。
グレース博士: それだ。
ダンチェッカー博士: ……何か分かったのか?
グレース博士: ええ、謎を8割方解決できる説明が思いつきました。ハント上級研究員が語った「”サメ”の存在する世界としない世界の二つが存在する」という仮説はある意味では正しいでしょう。誤っているのは……この二つの世界は厳密には同一のもの、という点です。
ハント上級研究員: 何だと?
グレース博士: アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブでは、空間そのものを移動させる故に三次元に縛られず、並行世界や異空間宇宙に到達する可能性があるとされています。我々の世界が二次元の層のようなものであるとするならば、それらの世界は上方向 実際は四次元方向 に重なって、ミルフィーユのような構造で存在しているのでしょう。
グレース博士: そして……我々の世界は四次元時空であると言われています。三次元の空間に、一次元、直線状の時間を足して四次元です。先ほど説明した並行世界を過去と未来に置き換えれば分かりやすいでしょう。空間と時間とは同じ次元で表せる、本質的には同じものなのですよ。なら、三次元を超え四次元方向に移動できるアルクビエレ・レンツ歪曲ドライブを使えば、時間という次元すら移動できるのではないでしょうか?
███上級研究員: タイムマシンと同じことが出来るという事か!
グレース博士: はい。月で発見された施設は古代文明などではなく、資料-0109-001に記録された文明が未来で歪曲ドライブを開発し、そして過去に時間渡航して作り上げたものなのでしょう。この世界に高度な文明の痕跡が残っていない理由もこれで説明できます。
アームストロング管理官: それで、世界が2つ存在するとはどういうことだ?それと、”サメ”の絶滅はどうやって説明する?
グレース博士: では、もし我々がタイムマシンを手にしたとしたら、最初に何をするでしょうか。
アームストロング管理官: 120万年前の、”サメ”がまだ存在した時代に行って、そいつらを殴るな。
グレース博士: 私でもそうします。そして、実際にその技術を手に入れた彼らも同じような立場で、同じことを考えたのではないでしょうか?現代では”サメ”が不足しているが、過去にはまだ”サメ”がいるし、競争相手となる人類もいない。では過去で”サメ”を殴りすぎるとどうなりますか?
アームストロング管理官: ……”サメ”が絶滅するな。
グレース博士: ええ。サメの絶滅により人類は”サメ”の存在を知ることが無くなり、サメ殴りセンターが過去に時間渡航し”サメ”を絶滅させたという事実自体が生じなくなります。もしかしたら改変前の世界の痕跡が多少は残るかもしれません。それらには我々の世界には存在しない”サメ”という生物についての記録が残されているでしょう。
ストラット主任研究員: つまり、我々が今いる世界とは
グレース博士: 過去へと時間渡航した人類が”サメ”を絶滅させたことで、”サメ”が存在しなくなった世界です。
«ログ終了»
補遺5: 時間遡行によって発生する事象について
Area-001の再調査により、当エリアが過去への時間渡航を行った”サメ殴りセンター”の構成員によって建造されたことを示す資料、及び過去改変が発生した際に生じ得る事象について記された資料が複数発見されました。それらによれば、複数の 人為的に再現するのが非常に困難かつ、完全な解明には成功していない 条件が満たされた物品や空間は過去改変の影響を回避することが可能であるとされる他、”スクラントン現実錨”という名称の装置を利用することで一定範囲内の過去改変の影響を意図的に防ぐことが可能であるとされています。
現在まで発見されている”サメ”の存在を示す資料の大半は前者の要因で生じたものと思われますが、Area-001には”スクラントン現実錨”と思わしき装置が発見されており、Area-001は意図的に過去改変から保護されていたと考えられています。
過去改変後のタイムラインでこれらの痕跡が出現するのは、過去改変前のタイムラインでそれらが発生した時期と一致します。資料-0109-001の起源が不明であった理由については、資料-0109-001が執筆され、過去改変の影響を防ぐ条件を満たしたのが過去改変前のタイムラインにおける2074/03/14であり、そのタイミングで現在のタイムラインにも出現したことが原因であると推測されます。2つのタイムラインの技術水準に大差が存在する原因については不明ですが、「サメを殴るという大義を人類全体で共有していたため、異なる階級・民族間でもその目的の下で団結することができ、不要な衝突・抗争が発生しなかったためである」という仮説が有力視されています。
補遺6: アームストロング管理官の覚書
かつて時間渡航技術を開発した人類が、過去に渡航して”サメ”を殴り絶滅させ、それによって未来が書き換わったことで”サメ”の存在しない世界が生じた……この理論は裏付けもされており、”サメ”の存在とその消失について完璧に説明できるように思える。
だが一つ疑問点があるのだ。彼らは過去の”サメ”を殴ることで生じる”サメ”の絶滅という結果を知らずにそれを実行したのか?時間渡航を研究していれば過去改変による影響についても把握しているだろう。彼らがそれを知ってなお過去の”サメ”を殴りに行くとは思えない……”ジョーズ・メアリー”計画の目的は本当に時間渡航の発明だったのだろうか?
そしてもう一つ気になることがある。資料-0001-001……月面で発見された”サメ殴りセンター”の旗だ。あれはサメ殴りセンターが月面に辿り着くほどの技術力を有していることを誇示するためのものだと考えられていたが、再検査の結果あれも月面の施設と同じ、約100万年前に設置されたことが判明した。そして、わざわざ100万年も形を維持できるような素材で作られている。過去に渡航した人類が、現在まで残るように設置した旗。それが偶然過去改変の影響を逃れたとも、それに何の意味も込められていないとも、少し考えにくいにのだ。
あの旗は古典的な旗と同じ目的……目印として設置されたのではないか?過去に渡航した旧世界の人類が今の我々に遺した何かが、あの旗が立っていた場所に眠っているのではなかろうか?
補遺7: 資料-0201-001
アームストロング管理官の提言により資料-0001-001が設置されていた地点の下部を調査が行われた結果、”スクラントン現実錨”と思わしき装置と文字が彫り込まれたステンレス盤が複数発見されました。以下はその内一つの内容の抜粋です。
このメッセージを読んでいるという事は、君たちはこの旗の意図を汲み取った、サメの存在しない世界の人類なのだろう。旧世界の人間として、我々がどのような過ちをしたのか、そして何をしようとしたのかを記していく。
諸君、我々は失敗した。我々は超光速航行と時間渡航を行うことが可能な技術……アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブを生み出した。サメが不足している世界でそのようなものが発明されてしまえば、人類が過去か未来のサメを殴るという発想に行きつくのは明白であり、高度な情報統制を行いこの技術が漏洩することを防ごうとした。だがサメを殴る欲求に負けたある者がそれの実用化のために外部の人間に情報を流してしまった。それを発端にこの技術は一瞬で世界に拡散し、過去は塗り替えられてしまった。今や”サメ”の存在を証明するのは地球上に残された旧世界の断片的な痕跡と、”ジョーズ・メアリー”計画の達成のために100万年前の月面に建設されたサイト-675、そしてこのメッセージの目印となる旗以外に存在しない。
サイト-675に存在する我々がこの過去改変を阻止しようとする、あるいはこのサイトに残された遺伝情報から生み出したサメを地上に放流すれば、複雑な因果律ループが発生し最悪の場合タイムラインが崩壊すると考えられている。我々に残された道は”ジョーズ・メアリー”計画を完遂し、新世界へサメの存在を繋ぐことだけなのだ。……”プロジェクト・ジョーズ・メアリー”。慢性的なサメ不足を解消し、事実上永続的なサメ殴打を実現するために考案された計画だ。その実現のためには超光速航行と時間渡航という二つの物理法則を超越した技術が必要であったが、アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブがその二つを達成してしまった。
なぜサメが不足しているのか。この地球という星が、人類がサメを殴り続けるにはあまりにも狭すぎるからだ。なら解決策は一つしかない……サメの生息域を拡大するのだ。この空の先に有る宇宙へと。
過去改変の影響を免れた我々が100万年前の地球から超光速航行によってありとあらゆるサメが生息可能な惑星に、遺伝的な強化により凄まじい適応能力・進化能力が与えられたサメとサメが生存可能な生態系の元となる生物を放流する。100万年後にはサメたちはその星の在来種を駆逐し、生態系の頂点として反映し、銀河系で最も個体数が多い種族となっているだろう。そうすれば、この宇宙はサメを殴り放題の楽園となるはずだ。
諸君らの遺伝子にはサメを殴るという大義が刻み込まれている。そしてそれは既に呼び覚まされているだろう。サメを殴りたいのならば、アルクビエレ・レンツ歪曲ドライブを再発明し、そして太陽系を飛び出すのだ。サメ殴りという目標の下で人類が団結したのならば、それはそう遠くない未来に達成できるだろう。
これはやり遂げられねばならない。
— 殴5-8.
索鮫、殴打、粉砕To Seek and Punch Cartilage。

アメリカ合衆国国防総省
全領域異常解決室
未確認空中現象に関する報告書
確認されたUAP
記録日:1984/02/18
12:09、太平洋上の弾道ミサイル早期警戒システムは座標███.█████,███.█████に飛翔体を検出した。しかし当該物体は空中で静止しており、ICBMなどによる攻撃ではないと判断された。
12:15、物体の出現地点地上の███にて、”空中の光球”についての通報が相次いだ。全領域異常解決室はこれを未確認空中現象Unidentified Aerial Phenomenonであると認定。
12:24、高度1254mの地点にUAPの存在が正式に認められる。混乱を避けるため一時的な報道統制が行われることが決定。
13:21、空軍によってUAPの偵察が行われる。報告と写真によれば、UAPの形状は大まかに楕円形であり、直径は30mほどである。表面は金属質の物体で構築されており、底部からは青色の光を放っている。
13:35、偵察機のライトを用いた意思疎通の試みが行われる。偵察機はライトを3度点滅させ、その後10秒間発光を停止するという動作を繰り返す。2分後、UAPの発光が偵察機のライトと同様のパターンに変化する。
14:01、UAPから周期的に欧文モールス符号と一致する形式の電磁波が放出される。以下はその解読結果である。
H E L L O
14:03、UAPから発せられる信号のパターンが変化。全領域異常解決室は
・
・
・
・
・
特別定義/ENNOSIGAIOS: プロジェクトはサメ殴りセンターの最優先達成事項であり、人類の存亡に関わります。
鮫科殴打ケイパビリティ: SPC-002の達成は人類の存亡に関わる問題であるため、可能な限り速やかにELF-002を殴打し撃退する必要があります。その手段をセンターは持ち合わせていませんが、柔軟かつ適切な対応を行うことで対処してください。
1984/02/18に撮影されたELF-002の搭乗する船舶。歪曲ドライブの機能を有していると思われる。
プロジェクト構成: SPC-002はケプラー442b4を起源とする地球外生命体であるELF-002を構成要素に含みます。ELF-002の外見はサメにある程度類似していますが、我々が認知している鮫科存在と異なり高度に発達し直立二足歩行が可能な四肢と陸上での活動能力を保有しています。ELF-002の外見について、センター職員はELF-002について「サメっちゃサメ」「足が生えてるからサメって感じがしない」「殴る気はあまり起きない」と評しています。ELF-002の文明水準は人類を大きく上回っており、既にアルクビエレ・レンツ歪曲ドライブに相当する技術を有しています。
復元された”ジョーズ・メアリー”計画の関連文書からケプラー442bは鮫科存在が放流された系外惑星の一つであったことが判明しており、ELF-002は”ジョーズ・メアリー”計画によって放流された鮫科存在が進化したことで文明を形成可能なほど高度な知能を獲得した生物であると推測されています。
ELF-002は1984/02/17の太平洋上への未確認飛行物体の出現の際に初めて観測されました。出現から約3時間後、英語で構成された一連のメッセージが世界各地の無線ネットワークに送信されました。ELF-002がいかなる方法で人類の言語を理解したのかは現在まで不明です。
初めまして人類。我々は1100光年先の星からやってきた、貴方達の言う”エイリアン”である。私たちは対話・交流を欲しており、敵対することは望んでいない。この星の代表との連絡手段を構築することを希望する。
1984/02/19、アメリカ合衆国、ソビエト連邦両国の代表が、地上に降下したELF-002の個体と物理的に接触し、対話を行いました。ELF-002との対話は終止友好的なムードで進み、ELF-002に敵対する意思が無いことの再確認や、今後の地球上でのELF-002の扱いなどが取り決められました。両国政府はELF-002の情報を世界各国の政府と一般社会に段階的に公開を開始し、現状ELF-002を友好的な種族であると見なすこと、また念のため警戒を継続することを表明しました。
1984/02/20、サメ殴りセンターはELF-002を鮫科存在であると見なすことを発表しました。
補遺1: 殴5-01の声明
今日、我々は正式にELF-002を鮫科存在であると認定した。この決定が下されるまでに様々な意見が飛び交ったが、よく考えて見て欲しい。サメの子はサメに決まっているではないか。奴らが旧世界の人類によってケプラー442bに放流された鮫科存在の子孫であるのなら、見た目があまりサメっぽくないとか関係なくELF-002も鮫科存在とされるべきであろう。
そしてもう一つ主題に上がったのは、「勝てるか?」という問題だ。確かに奴らは我々より遥かに高度な技術を持っている。だが重要なのは勝敗よりも「殴りに行った」という事実である。サメを殴らないという選択肢は存在すらしていない。目の前に殴れるサメがいるのに殴らなかったという時点で我々は敗北しているのだ。逆に言えば、人類が滅びようが地球が植民地化されようが、サメを殴りさえすれば我々は勝利するのだ。
旧世界のサメ殴りセンターが百数万年の時を超えて新世界に遺したこの遺産を、我々は殴らなければならない。滅びが確定しようとも使命を果たすべく足掻いた彼らのように、どれだけ困難な道のりであっても、我々は進み続けなければならないのだ。
奴らに思い知らせてやろう。これがファーストコンタクトではなくファーストラウンドだということを。
殴5-01
補遺2: タイムライン
84/02/20: サメ殴りセンター、アメリカ合衆国政府の制止を無視しELF-002に対して宣戦を布告。同時にELF-002側から派遣されていたELF-002個体2体を殴打。ソビエト連邦政府がセンターの行動の阻止のために武力行使を行なったが、ソビエト連邦国内のセンター職員がクレムリンに殴り込みに向かい、連邦政府を制圧する。
84/02/21: ELF-002側から「争う必要はない」「もう一度対話できないか」「そもそも鮫科存在に対する殴打の使命とは何なのか」という旨のメッセージが送信される。サメ殴りセンターは人類とELF-002が相容れない存在であり、将来的に全ての鮫科存在は人類によって殴打されることを改めて通達。
84/02/22: ワシントンD.C.、ロンドン、パリ、モスクワ、ローマ、東京、北京、他355の都市上空に飛行物体が出現し、超高エネルギーのレーザーを都市に対して発射。全都市が壊滅する。殴5-01~殴5-04、殴5-06、殴5-08~殴5-12との連絡が途絶。84/02/20以降に殴打したELF-002個体数は0。
84/02/23: アメリカ合衆国政府によってICBMによる飛行物体への攻撃が行われるが、詳細不明のエネルギー障壁によって全て阻止される。ヒューストン、エディンバラ、ロストフ、釧路、ブカレスト、他265の都市上空に飛行物体が出現し、超高エネルギーのレーザーを都市に対して発射。全都市が壊滅する。殴5-05、殴5-07、殴5-13との連絡が途絶。
84/02/24: 空から攻撃されたら殴れるわけないだろおい。
84/02/25: 飛行物体から武装したELF-002個体が降下し、破壊された都市の跡地を制圧する。ELF-002個体に対する殴打の試みは全て失敗に終わる。ほぼ全ての国家はその機能を喪失しており、政府組織の活動は見られない。
84/02/26: 地球上の陸地の大半がELF-002に制圧されたと思われる。サイト-35のグレッグ博士とのコンタクトが途絶。他には誰も応答しない。
84/02/27:
84/02/28:


