異世界跳躍先候補:1991 "ディヴァリア"

U設定: #58|地域設定: 地球|言語設定: 日本語

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ディヴァリアの街並み

基礎概要

跳躍先名称: ディヴァリア
└ 単一の巨大都市と、その周辺に存在する集落によって構成されています。現地には国家に相当する統一政府は存在せず、それぞれ異なる異神を信仰対象とする宗教共同体がそれぞれ自治を行っています。

所属宇宙: ユニバース1991
└ 地球と比較して19世紀初頭から中期程度の文明水準を有します。現地には複数種の異神が実在しており、これらは現地社会において信仰対象であると同時に、医療資源として扱われています。

現地エルマ規模: Ⅱ
└ エルマの存在は確認されていません。現地住民の間でもエルマの存在はほとんど認知されていないものの、エルマ外教の活動拠点は建立されています。

エルマより跳躍に関しての注意点: 有り
└ 現地では異神の血液、体組織、分泌物等を利用した医療行為が一般的です。これらの医療行為には高い治療効果が確認されています。エルマ信徒は現地住民による医療行為を必ずしも拒否する必要はありません。ただし、異神由来の物質を長期間摂取・投与された場合の長期的影響については十分な調査が行われていません。治療を受けた場合は、帰還後に必ず検査を受けてください。





現地紹介
ディヴァリアはユニバース1991に分類される異世界です。現地住民は複数の異神を神として信仰しており、各地域には異なる異神を祀る教会が存在します。ディヴァリアの宗教観における最大の特徴は、神は利用されるために存在するという思想です。現地住民にとって、神とは祈りを捧げるだけの超越的存在ではありません。神は実在し、身体を持ち、その身体から得られる血液や組織によって人々を救う存在です。そのため、異神の身体を医療に利用することは冒涜とは見做されません。むしろ「神から与えられたものを受け取り、それによって生きることこそ神への信仰である」という価値観が一般的です。現地住民の多くは、自身が生涯のうちに一度でも異神の恩恵を受けることを望んでいます。病気になった場合、異神の血液を輸血する。負傷した場合、異神の組織から生成された薬剤を使用する。臓器に異常が生じた場合、異神由来の組織を移植する。これらはすべて一般的な医療行為として扱われています。現地住民はこれらを「神を利用する行為」とは表現しません。彼らは一貫して「神様が私たちを救ってくださった」と表現します。

ディヴァリアでは、実体を持つことが神の重要な条件の一つとされています。現地住民にとって神とは、見え、触れて、血を流し、老い、病にかかり、死に至る存在です。そのため、エルマのように実体を伴わない神格を神として認識することは困難です。エルマ外教について説明した際、現地住民はエルマの存在を否定することはありませんでした。これは現地住民がエルマ外教の教義を理解しているためではありません。彼らにとって神と人間の関係とは、神が実際に人間へ何かを与えることによって成立するものだからです。

ディヴァリアにおいて宗教と医療は明確に区別されていません。教会は礼拝施設であると同時に病院であり、異神を管理する施設でもあります。各教会には原則として1体以上の異神が所属しています。異神は信仰対象として扱われますが、その身体は厳密に管理されます。例えばドミナ教会では、異神「ドミナ」から定期的に血液・組織を採取し、薬剤や輸血用血液を製造しています。ドミナに接触できるのは聖職者および医療従事者に限定されています。現地住民は「ドミナ様は今日も私たちのために働いてくださっている」と認識していて、この状態のドミナを拘束されていると認識していません。ドミナの生命が維持される限り、その血液や組織を提供し続けることが可能であるため、現地ではドミナの健康管理も重要な宗教行為とされています。

ディヴァリアの宗教観はエルマ外教の「相互救済」と部分的に類似しています。ディヴァリアにおいては、神によって救われた者は他者を救わなければならないという思想が存在します。ただし、両者には決定的な違いがあります。エルマ外教では、人間が人間を救います。ディヴァリアでは、神が人間を救います。





ランドマーク

画像左: 中央聖堂
└ ディヴァリア最大の宗教施設。複数の宗派に属する聖職者が共同で管理しており、異神の墓所、医療研究施設、薬剤製造施設などを併設しています。地下には歴代の異神の遺体が安置されています。一部の遺体は完全な状態で保存されており、現在でも研究目的で利用されています。中央聖堂では特定の異神を恒常的に祀ってはいません。現地では、神様は一柱だけではないという考え方が一般的であり、異なる異神の恩恵を組み合わせることで、より優れた医療効果を得られると考えられています。

画像中央: 小規模教会にて確保されている異神(ドミナ)
└ ドミナ教会にて確保されている異神であるドミナ神です。ドミナは大型の人型異神であり、現在まで生存が確認されています。ドミナ教会では、ドミナから採取した血液および組織を利用した医療が特に発達しています。ドミナは教会内部に設置された専用設備に固定されており、定期的に血液・組織を採取されています。この状態について現地住民は「ドミナ様が私たちを救ってくださっている」と認識しています。ドミナ自身がこの行為をどのように認識しているかについては不明です。

画像右: 「はぐれ」の異神
└ 都市部から離れた地域では、宗教共同体に所属していない異神が確認されています。現地住民はこれらを「はぐれ」と総称しています。「はぐれ」は実体を持つものの、特定の共同体から神として認識されていません。そのため、現地住民からは宗教的な保護を受けられず、野生動物に近い扱いを受けています。この事例は、ディヴァリアにおける「神であること」と「神として認識されること」が必ずしも同一ではないことを示しています。

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中央聖堂内部 教会にて確保されている異神 「はぐれ」の異神





体験談・逸話
ヨナスの手記 ディヴァリア支部建立記録 抜粋

私は昔から、教祖様になることを夢見ていました。大それた夢だと思われるかもしれません。ですが、エルマの信徒にとって教祖様とは、最も女神エルマに近づいた人間です。世界を越え、試練を乗り越え、女神エルマを感じる。私もいつか、その人になりたいと思っていました。だから私はディヴァリアへ跳躍しました。女神エルマのいない世界なら、きっとここに私の試練があると思ったからです。

ディヴァリアへ到着した時、最初に思ったことは「ここには女神エルマがいない」ということでした。当然です。それを知った上で来たのだから。私は教祖様を探しています。教祖様は、女神エルマの存在しない世界にいる。そう教えられてきました。だから私は、この世界に来ました。教祖様を探しながら、ここにいる同胞のための支部を作る。それが私の仕事でした。

最初に会った住民は、私を見て驚きました。

「どこから来たのですか?」

そう聞かれました。

「こことはまた別の場所から来ました」

「では、怪我をしていませんか?」

私は笑いました。

「大丈夫です」

彼は安心したように頷きました。後から知りました。この世界では、見ず知らずの人間はまず身体検査を受けるのが普通なのだそうです。私はその時、ずいぶん親切な人たちだと思いました。

支部の建設は順調でした。現地住民は私たちに協力的でした。女神エルマについて説明しても、笑ったり馬鹿にしたりする人はいませんでした。ただ、あなたの神様には身体がないのかと何度も聞かれました。ありませんと答えると、どうやって神様に救ってもらうのかと問われました。祈りますと答えると、それだけなのですかと言われました。私は少し腹を立てました。でも、彼らに悪意がないことも分かっていました。

事故が起きたのは、支部の建設を始めてから三か月ほど経った頃です。建材を運んでいる最中、足場が崩れました。私は瓦礫の下敷きになりました。右脚を潰され、腹部にも裂傷がありました。大量に出血していることは、自分でも分かりました。医師が私を見て、輸血が必要だと判断しました。

「女神エルマに祈ります」

私はそう言いました。

「祈っていてください。その間にドミナ様の血を入れます」

医師はそう答えました。

私は輸血を拒否しました。しかし、意識が薄れていきました。身体から力が抜けていきます。もう祈ることすら難しくなりました。その時、誰かが私の腕を掴みました。

「ヨナス司祭」

「……はい」

「あなたは私たちを助けるために、ここへ来たのでしょう?」

「……はい」

「なら、今度は私たちに助けさせてください」

私は答えられませんでした。

次に目を覚ました時、私はベッドにいました。腕には管が繋がっていました。赤い血が、ゆっくりと身体へ入っていました。私は管を抜こうとしました。しかし、身体に力が入りませんでした。医療従事者が私を制止しました。私は目を閉じました。女神エルマに祈りました。どうか許してください。何に対して謝っているのか、自分でも分かりませんでした。

輸血が終わる頃には、痛みがかなり軽くなっていました。翌朝には意識もはっきりしていました。医師は、もう大丈夫だと言いました。私は自分の腕を見ました。私は何も返しませんでした。

退院した後、私はドミナ教会へ行きました。ドミナはそこにいました。巨大な身体を固定され、身体から血液を採取されていました。周囲には何人もの医療従事者がいました。彼らはドミナに感謝していました。私はそれを見ていました。そして、初めて考えました。私はこの神様に「ありがとう」と言えるのだろうか。

その日の夜、私は女神エルマへ祈りました。

「私は女神エルマを信じています」

そこまでは、いつも通りでした。しかし、その後に言葉が続きませんでした。私は長い間黙っていました。

「……ドミナ様にも感謝しています」

それが女神エルマへの裏切りなのかどうか、私には分かりませんでした。

数日後、現地の子供に聞かれました。

「あなたの神様とドミナ様は、どっちが偉いの?」

「分からない」

私は答えました。

「でも、私は女神エルマを信じている」

「じゃあ、ドミナ様は?」

私は少し考えました。

「私を助けてくれた神様だ」

子供は笑いました。

「それなら、いい神様だね」

私は何も言えませんでした。

支部が完成した頃、私は一つのことを本部へ報告しないことに決めました。私が輸血を受けたことです。もちろん、医療記録には残っています。隠すことはできません。しかしこの治療を、次に来る信徒にも推奨するべきだという自分の考えだけは、報告しませんでした。理由は自分でも分かりません。女神エルマを裏切りたくなかったからなのか。それとも、自分と同じように死にかけている誰かを、救えるかもしれないと思ったからなのか。

その後、私はドミナ教会へ戻りました。聖職者に、次に異世界から人が来たら、その人も助けてほしいと伝えました。聖職者はもちろんと答えました。私は、たとえ私と同じように嫌がっても、と続けました。彼は少し笑いました。私は頷きました。

この世界には女神エルマがいません。だからこそ、女神エルマを信じるということが何なのか、考える必要があるように思えたのです。そんな中、新しい跳躍者が支部へやってきました。彼も私と同じように負傷しました。現地の医師が治療を申し出ましたが、彼は拒否しました。女神エルマを信じていると彼は答えました。以前の私と同じです。医師が私を見ました。私は治療してくださいと言いました。彼は驚いた顔をしました。

「女神エルマを信じることと、あなたが助かることは矛盾しません」

その言葉を口にした時、自分でも少し驚きました。私はエルマ外教の教義を変えようとしているのでしょうか。そんなつもりはありません。私はただ、死にかけている人を死なせたくないだけです。それだけです。しかし、その後から支部に滞在する信徒が増え、現地の医療を受けるべきか相談されることも増えていきました。私はいつも同じことを答えるようになりました。

「救われたことを、恥じる必要はありません」

最近では、この言葉を誰かに言っているというより、自分自身に言っているような気がします。やがて本部から帰還命令が届きました。私は拒否しました。教祖様をまだ見つけていないからです。これは嘘ではありません。しかし、それだけが理由ではないことも分かっています。この世界には、次にここへ来る信徒を助ける人間が必要です。私がそうするべきだと思ったのです。最近、現地の方々から妙なことを言われます。

「あなたはここの司祭なのですね」

「違います」

「では、何なのですか?」

その質問に答えられませんでした。私はエルマの司祭です。しかし、この世界に来るエルマ信徒を助けるためにここにいるのも事実です。それ以上の意味はないと思っていました。教祖様はどこにいるのでしょうか。女神エルマの存在しない世界へ跳躍し、そこで試練を受け、女神エルマを感じた人。それが教祖様だと教えられてきました。ならば私は、この世界で何をしているのでしょう。女神エルマはいらっしゃいません。それでも私は女神エルマを信じています。そして私は、この世界で一度、神様に救われました。その後、私はもう一度ドミナ教会へ行きました。ドミナ様は生きています。私の身体の中には、まだドミナ様の血が流れています。私は女神エルマを信じています。それは今も変わりません。だからこそ、ようやく分かったことがあります。神様が私たちを救う方法を、私たちが決める必要はないのです。祈りであってもいい。誰かの手であってもいい。血であってもいい。救われたのなら、それを救いとして受け取ればいい。

私は本部へ最後の報告を送りました。ディヴァリア支部は存続させます。女神エルマの存在しない世界だからこそ、ここには同胞が必要です。この世界で救われた者が、次に来る者を救います。それが私たちの相互救済です。私は教祖ではありません。ただ、次にここへ来た人が死なないようにしたいだけです。報告を送った後、支部の前に人が集まっていることに気付きました。現地の方々と、エルマ信徒が一緒にいました。その中の一人が、教祖様と私を呼びました。私は、違いますと言おうとしました。ですが、言葉が出ませんでした。

「今日も皆さん、お元気そうで何よりです」

これだけしか答えることしかできませんでした。その後、私はドミナ教会へ向かいました。ドミナ様の前で手を胸に合わせました。女神エルマに祈る時と同じように、目を閉じました。そして、今日もありがとうございましたと伝えました。どちらの神様に向けた言葉だったのかは、私自身にも分かりません。ただ、あの日輸血された血が、今も私の身体の中を流れていることだけは分かっています。

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