空望遠暗

화상 저작권 정보

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茫洋一千一百八十四年巧月の十七日

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・天氣:不明、海象:凪

・摩伽羅1:混乱、停滞

・針路:不明、航走距離:不明

・現位置:不明

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航海日誌を書くのは久方ぶりだ。しかし、これを航海と呼んでいいものだろうか。清海鎮、つまり新羅国助音島の旧清海鎮を離れて、今年ですでに1184年になるが、これまでこのようなものを見たという記録は存在しない。もちろん私も見たことは無い。我らはこれまで長くに渡り別世界を旅してきたが、ここはそのどれにも当てはまらず、そしてこれまでにないほど不気味だ。

順を追って説明するべきだろう。一日の始まりは、至って普通なものだった。夜間の見張りをしていた部下に起こされ、異常なしの報告を受ける。仲間と朝食をとり(今日も魚だった。嫌いなわけでは決してないが、たまには他のものも食べたいものである。)談笑する。その中で、一人が興味深いことを話したのだ。なんでも、数日前に日本島の周辺を航行していた時、海中にポータルのものと思わしきものを見たそうだ。最近はどうにも代わり映えのしない日々であったので、かつてを懐かしむ意味も込めてそこへ向かうことにした。記憶を頼りにポータルを探し、日本島のから南東に百海里の辺りで見つけた黒々とした穴に飛び込んだ。その先に何があるかは分かっていなかったが、その先にあるであろう冒険は確かにあの時目に映っていたのだ。しかしいざ穴を抜けてみると、それは全く正しくなどなかった。深くから浮上し、待ち受けているものと対峙するため開けたその目に真に映ったものは、ただ仄暗く、やけにぬるい巨大なプールであった。遥か先には白い壁が反り立つのが見え、その大きさから目の前にあるものだと錯覚をするようだった。天には小さな白色光が並び、空間全体を無機質に照らしている。摩伽羅の巨体はその中程にただぽかんと浮かんで動かず、静かな水面に小さく波を伝えていた。水面は暗く、しかし霧などは無く彼方まで澄み渡った景色はどこを見てもさして変わることはない。あちこちに貼られたタイルは一つ一つが人よりも大きく、その狭間には黒々とした目地が規則正しく連なっていた。それはどうにも不気味で、壮大かつ矮小で、とても現実のものだとは思えなかった。

摩伽羅は混乱しているようであり、こちらの指示もあまり伝わらないほどであったが、根気強く説得すると動いてくれた。以前遊牧の世界へ旅した時もこのようなことがあったのを思い出したが、考えてみればあれはあり得ないような場所にゲル2があったことへの驚きであったので少し違った。ただ垂直に伸びるだけの岸へは遠く、辿り着いたとて何か起こるとはとても思えなかった。それでも他に何かすべきこともなく、他の世界への道も見つからないからそうするしか無かったのだ。

泳ぎ続けて数時間は経った頃だろうか。岸は今度こそ眼前に近づき、打ち寄せる波の砕ける様も、タイルの細かな起伏でさえはっきりと見えるのであった。そのうち我々はその青白く生気の無い壁に辿り着き、それを下から見上げることになった。当然だが、やはり辿り着いても何も無く、壁はただ左右に広がっているのみであった。頭では理解していたが、それは実際に起こった時に落胆しないということを意味しているのではない。しばらくそうして項垂れていると、壁にぽっかりと開いていた出水穴から低い唸るような音が聞こえてきた。その先に何か白いものが見えたと思った矢先、とてつもない量の水が我々のすぐそばに流れ落ちてきた。摩伽羅はその波に飲まれながらも死にもがいていたが勝てるはずもなく、壁に向かって流されていった。摩伽羅の脇が壁に当たり、衝撃が伝わるかと思ったその時、摩伽羅の全身が壁を、それだけでなく水までもすり抜けるようにしてどこまでも落ちて行くような感覚が伝わってきた。いくらもがいても逆らえぬような重力に引かれ落ちる感覚に目をつむった。その後どうなったのかは分からないが、気づいた時には三韓國の助音島から南向きにおよそ一百里の位置にいた。戻れた理由も、あの場所が何だったのかも謎のままである。その後は日が沈むまで何をする気にもなれず、ただ海を気ままに漂って過ごしたのだった。水平線は微かに浮かぶ霧でぼやけ、太陽はそれを揺るがしながら静かに、静かに沈んでいった。まっすぐ空に伸びて夜闇に溶ける残光があの天井の白色光のように思えて、そっと俯いたのだった。

博物誌

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・名字 空望遠暗

・類別 遺跡

・重要度 下

・現況 放置。再び行こうとも思わない。

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空望遠暗はある種の異界のような空間である。広さは不明であり、到底測れるとも思えない。見えた範囲において世界はおおよそ巨大な室内プールのようであり、天井の蛍光灯が薄く広い光を放っている。しかし全体として暗くひっそりとした雰囲気が漂い、一切の動きが無い静かな空間である。風は吹かず、常に静寂に包まれた水面は鏡のように凪いでいて、物が触れるとその波はどこまでも伝わっていく。壁には人よりも大きなタイルが敷き詰められ、無機質な青白い光を反射している。窓は無く外の様子は見えない。(外があるのかは分からないが。)

日本島から南東に百海里の辺りに存在する世界の穴から到達可能であるが、正確な位置の記録を行っていないため再度の到達は困難である。空望遠暗からの帰還の路は見つかっていない。今回は壁に向かっていわば「外れ落ちる」ような形で帰還したが、その偶然が再び起こるとは思わない方がいいだろう。

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