D、そう、何故Dなのか。"Dear"親愛なるなのか、"Disposable"使い捨てなのか、"Discard"廃棄なのか、"Dead End"行き止まりなのか。
いつだったか問いかけられた質問を思い返す。
────反吐が出る。
お前たちに、お前に、意味などあるものか。意味など、くれてやるものか。
D-2930、機動部隊に-9隊長を務める老Dクラスは眼前の扉を潜る。毎度毎度、この扉を通るときは姿勢を糺されるような気分になって、息を大きく吸いこんでしまう。巡礼地で信者でもないのに聖地へ接吻をするように、といえば聞こえはいい。実際は横断歩道に残された花束を誤って蹴飛ばさないよう注意する感情が一番近い。手の届かない場所へ差し出された祈りへの憧憬と哀切。いや、そんな文語的な解釈も烏滸がましい。要するに理由を分かったうえでどことなく居心地が悪い。それだけの話だ。
"匡済部門"と書かれた扉に再度一瞥を飛ばし、D-2930はゆっくりとその先へ進む。
匡済部門、悪を矯め直し善導することを看板に掲げたその場所は"Dクラスの尊厳を守りながら、効率的かつ円滑な運用を行う"ことを目的としている部門である。
ここで改めてDクラスという存在を考え直してもらいたい。多くは死刑囚を特殊な形態で雇用し、恩赦と引き換えに人類の未来のため危険に対峙させる尖兵として扱われる。可能な限り言葉を選んで漂白、脱臭して呼べば、正常を護る最初の盾にして人類の礎。素晴らしいことだ、本当のところは炭鉱のカナリア、モルモット程度にしか扱われないことを除けば。
そのため、匡済部門は倫理委員会と並んで煙たがられることも多い。どうせ死刑になるような悪人なのだから、恩赦を望んで志願するような人間性なのだから、有効に使えばいいものを、そういった声は表立ってはできないが、裏では大きく聞こえてくる。そうだろう、とD-2930も納得している。どうあろうと外からの評価から逃れることはできない。そうなったならそうなるまでだ。
「ようこそ、ニコラス、少し座って待っていてくれ」
D-2930の侵襲、いや、来室に気付いたのか、白衣のスタッフが笑顔を浮かべ担当者を呼びに向かう。番号でなくコードネームを呼ばれるのはここくらいだ。勧められた椅子に座ることもなく、ここに来た時の癖で部屋を隅々まで見渡した。埃1つ見当たらない、室内等は穏やかな暖色で、機材の多くは角の部分を保護されている。主張しすぎない程度に観葉植物が置かれ、自分が死体袋オレンジを着ていなければ病院の待合室にすら思えてくる。全く上手に"作りこまれている"。
居心地の悪さが背骨のあたりでもぞもぞと這い始めたところで、再度番号を呼ばれ、案内された部屋へ向かう。部屋の中も部門全体と同じく平穏と許容を隠そうとしない。ただ、机に置かれた写真立てだけが金属質な光を反射し、針のように鋭い異物感を感じさせた。ここには何回か来たが、これは見たことがない。何が入っているのかと興味を惹かれたが、呼びつけられた相手の要件が先だな、と後ろ手を組み待機の姿勢で発言を待つ。
「ニック、急な呼びつけで申し訳ありません」
「いえ、呼ばれれば子どもの仲裁だろうがレニングラードだろうが飛び込んでいくのが俺たちです」
穏やかな、まさしく人格者という笑みを浮かべD-2930に座るよう勧める童顔の男、匡済部門の世田。に-9に匡済部門から連絡が来る場合、常にこの世田が窓口を務めている。D-2930が座らないことを知りながら毎度椅子を勧めるのは律儀なのか善良なのか。(まあ、間違いなく後者だろう)D-2930が微動だにしない様子に少しだけ残念そうな表情を浮かべ、世田は手元の書類をめくりながら用件を切り出した。
「今回呼ばれた理由を推測されていますか?」
「ええ、新しく部隊に入れたD-8199のことですかね」
「その通り、車力さんのことです」
「カウンセリング等の必要はないと思いますよ。少々臆病なきらいはありますが真面目にやっています」
D-2930が隊長を務める機動部隊に-9、通称"モータルオフィサー"は数ある機動部隊の中でも例外的にDクラスを基本単位として構成されている。特徴としては命令に対する一切の拒否権を持たないことが挙げられ、そのために対高危険度異常存在作戦、対要注意団体作戦、および生還を前提としない作戦などに従事する事が多い。その創設に関しては様々な思惑とエピソードがあるが、今回は一旦脇に置いておこう。
隊長として、D-2930には部隊の人事権が与えられている。今回話題に上がっているD-8199はつい先週、に-9部隊へ雇用リクルートしたDクラス。本名は車力といい、主に強盗殺人を主訴として死刑判決を下された男だ。手先が器用で危険物への知識が豊富なところ、そして何よりその臆病さを買ってD-2930が勧誘した。
「そうですか、それは良かった。ただ、カウンセリングに関しては雇用後の義務であり権利ですので受けてもらいますよ。そういえばニックも先日のカウンセリングを任務で受け損ねていますね」
「藪をつついたか。分かった、8199には調整するように伝えておきましょう。要件はそれだけで?」
「いえ、まだあります。長くなるかもしれませんし、コーヒーでも飲まれますか?」
世田が棚からカップを2つ取り出し、保温ポットからコーヒーを注ぐ。香ばしい匂いがふっと部屋に広がっていく。
「生憎だ、先生」
「そうですか、残念です。コーヒーはコミュニケーションに必須ですよ。ま、恩師の受け売りですが」
「いい先生だったんだろうな」
「はい、素晴らしい方でした。苦学生の私を援助してくれましてね。いつもコーヒー片手に法哲学や社会正義について議論したものです。それが現在の仕事にも繋がっているわけですが」
湯気の立つコーヒーを啜る世田をD-2930は無言で促す。
「……ああ、そうですね、話の続きですが、2つありまして。まず、次の仕事をこちらで検案したところ、少々負担が大きいのでは、と考えています」
「俺たちがどういうチームなのかは知っているだろ?」
「ええ、拒否権のない機動部隊ですね。ですので仕事自体は止めようがありません。ただ、聞いてほしいのはこの仕事、危険物の扱いが求められています」
世田の言わんとすることを察する。要するにD-8199への負担が大きいということを指しているのだろう。だが、そんなことはそもそも織り込み済みだ、できることをできる範囲でするだけ、と表情に浮かんだのだろう。世田がこめかみを搔いて一枚の書類を手渡す。書かれていたのは"解雇措置"の文字。
「車力さんに『解雇』のお話が来ているんですよ」
世田の言葉にD-2930は少しだけ固まり、ゆっくりと強張った笑みを浮かべた。
「早くないかい? アイツは確かここに来たのが」
「約2週間ですね。確かに早いですが前例がないわけではないですよ」
『解雇』とは財団内において、特にDクラスにおいては違う意味を持つ。財団からの『解雇』、それはつまり財団からの離脱を指し、Dクラスにとってはモルモット扱いから外れ、社会に復帰することを指す。もちろん、記憶処理は行われるし、財団に関連する知識を持つことは許されない。以前であれば記憶処理を行ったうえで再度雇用するという暴挙もされていたが(今もされているだろうとD-2930は踏んでいる)、匡済部門の働きかけもあり財団職員への転職を含め様々な道が開かれている。
だが、それにはある程度の期間が必要であり、早くて一ヵ月程度だというのがD-2930の体感だ。それが約半分ほどになっている、驚きもするというものだ。
「理由としては獄中でも反省の弁を述べており贖罪意識が強かったこと、財団加入後、複数の実験で功績を残していることなどがあるようですが」
「……上の意思は分かり辛い、ってことか」
「そうですね。察していただけるとありがたいです。もっとも、私たちにとっては非常に喜ばしいことですが」
世田の微笑みは変わらないが、僅かに戸惑いが映る。そう、そうだろうな、とD-2930は考える。匡済部門は適切な場所に適切なDクラスを送り込むことも目的としている。その理念に則ればDクラスが自身の分野で活躍し、より適切な場所で働くというのは良いことだ。その結果が評価され、『解雇』に至るのも良いことだ。
だが、その良いことは両立しづらい。適性が高く、かつ危険な場所に送り込める人員を減らせば、結局のところそれを繰り返すだけの結果に終わる。現状の維持はできるかもしれないが、前進はない、むしろ人員の面を考えれば後退しているといえるかもしれない。D-2930は同情する。正常を護るための犠牲を少なくしようとした結果が、異常への不足となれば本末転倒だ。匡済部門の正義は矛盾と自己否定を抱えているともいえるだろう。
「ニック、とりあえずこの書類を車力さんに渡しておいてください。確認するまでもないですが」
「本人の意思を尊重しろ、だろ。分かってるよ」
「いやあ、俺はいいですよ」
D-2930が世田の言葉を伝えると、D-8199は茶を啜りながらにべもなく断った。
「そうかい」
「そうじゃなけりゃ、隊長の誘いに乗りませんよ」
それ以上の言葉はなかった。そうだろうな、とD-2930は視線を遠くにやる。機動部隊に-9はその任務の特殊性もさることながら、脱退者が多いことでも有名だ。苛烈な任務しごとによる心身の負担は大きく、加えて財団による強制終了の可能性、働くに得られるものは少なく、失うものはあまりにも多い。それでもここで働く、貧相な防風林になるという意思を捨てないDは、自分に軸を置いていない。信念、矜持、誇り、そういった地獄の渡し賃1obolusにもならないものだけを抱えている。
改めて思い至る。だから、匡済部門は居心地が悪い。Dの円滑利用、に-9はその最も理想的な形の一つであり、優秀な人材をDの名のもとに使い潰す特攻部隊。そしてその神風が功績を挙げているのだ。匡済部門に言わせてみれば、に-9は部門の矛盾を表す部隊になりかねない。D-2930はそれを理解している。少なくとも理解しているつもりではある。
「分かった、そう伝えとく」
だからこそ、匡済部門との関係は円滑なものであるべきだとD-2930は考える。匡済部門の建前、綺麗ごとを全面的に肯定することはできないし、するべきではない。それは財団の否定であり、Dの否定でもある。だが、その建前の裏側にあるものはに-9とそう変わらない。この場所に残るDが抱えているくだらないものは、おそらく匡済部門の理念にも繋がるはずだ。だからこそ、気の合わない同志として互いに尊重できればいい。D-2930はそんなことを考えながらD-8199の丸まった背中へ視線を向ける。
いつだったか、少し酒の入った席だった。重く、沈んだ目でD-8199が尋ねてきたことがあった。
「隊長も、人を殺したんだろ?」
機動部隊に-9では、互いの罪状を尋ねるのはご法度だ。これはD-2930が決めたわけではなく、自然と不文律として広がっていった。罪状でマウンティングを取ったり、傷の舐め合いになるようなバカはそもそも選ばないが、良い影響が出ることも少ないため放置していたその不文律をD-8199は破った。周囲は戒めたり話を変えようとしたが、それを押し留め、一旦2人で席を外す。おそらく、D-8199はおそらく、意図的に不文律を破った。あえてタブーに踏み込むことで、自分の宣誓を明確にするために。
「俺も殺したんだ、酷いやり方で、ホントに、酷いやり方で、あんな苦しませる必要が」
訥々とD-8199は話す。D-2930は何も答えず、ただ紙巻に火を点け、ゆっくりと吸い込んだ。
「反省したよ、後悔したよ、でも、そんなことしたって、何も戻らないんだ」
この場所ではよくある話だ、よくあることだ、だが、決して陳腐にしてはならない。
「何度も手紙を書いては突き返された、就労で得た金を賠償に充てようとして断られた、一切受け入れてはもらえなかった。それはそうなんだ、被害者の家族ってのは加害者からの仕返しを怖がる。かかわりたくもないと考える。俺たちはもう、人じゃなくて犬か何かなんだよ。今はいい顔をしてるかもしれないが、いつ噛み付くかもわからないし、においを覚えて追っかけてくる。そりゃあ、怖いさ」
沈黙だけを返す。そもそも、会話がしたいわけではない。吐き出したいのだから。だが、それが壁や穴であってはいけない。
人間が聞いている必要がある。同じよくある話に陥った人間が聞いている必要があるものなのだ。
「なのに服役したからって罪を減らされる、反省したことになる、それは正しいことなのかい。……いろんなやつがいたけど、そいつらは服役が償いだって考えてた。それだけじゃねえはずだよな」
涙はこぼれていない。むしろ声は乾いている。ただ、淡々と、ひたすらに、真摯に。
「だから、俺はせめて善いことをしなくちゃいけないと思うんだよ。一生指を差されて、恨みを受けて、それでも善いことをしようとすれば」
祈るように。
「ほんの少しだけ、動けるから」
D-8199は、己の正義を語っていた。
2週間後、D-8199はに-9任務内で死亡する。
死体は下半身が押し潰され、悲惨な状態だった。
音声記録で確認される直前の言動は非常に錯乱したものであった。
また、最期の言葉は"まだ何もできていない"であったことが確認されている。
顔に皴を刻んだD-2930が匡済部門の扉を潜る。ニコラス、ニック、と呼びかける声を背に、目的の場所へと静かに向かう。向けられた視線に怯えや不安の色があることを感じ取っていた。ノックをすることなく開けた扉の先にはコーヒーの香り。部屋の中は片付けを、あるいは引っ越しの準備をしているのか、荷物が段ボール箱へ詰められている。以前訪れたときの写真立てには初老の女性が穏やかな笑みを浮かべていた。
D-2930の侵入に気付いたのか、世田が笑みを浮かべ手招きをする。だが、D-2930の脚が敷居をくぐることはしなかった。
努めて低く、努めて冷たく聞こえるよう、D-2930は言葉を放った。
「先生、悪いが」
"悪いが"、そう、悪だ。D-2930が訪れた理由を察したのだろう。世田が微笑んだまま片付けの手を止め、傍らのデスクに寄り掛かった。どこまでも、D-2930の知る世田の姿であり、表情だった。穏やかで、律儀で、善良な童顔の男。それがD-2930の知る世田であり、D-2930が知ることのできた世田だった。ゆっくりと、漏れそうな悲しみを腹の底へと押し込めて、D-2930は暖かな歓迎に寒風を送り込む。
「俺たちは頼まれたら断らない。アンタのことを調べたよ」
D-8199が死亡した任務。匡済部門の検討を経て送られてきたその任務は、明らかに危険物を担当する人員へのリスクが高かった。しかし、それへ対応する人員が少ないという事実、機動部隊に-9が断れないという事情からそれを受け、結果としてD-8199を失った。その後、に-9へ新たに与えられたのは"匡済部門の恣意的な選定に対する調査"。その段階でD-2930は半ばこの場面を想像してしまっていた。
「D-8199の解雇を強く推進したのはアンタだ。そして、今回の仕事を検案し、渡してきたのも、だ」
何故、の理由はすぐに分かった。悪意すら感じる偶然、それさえなければ世田はD-2930は匡済部門の一人として、真摯に働いていたはずだと世田を弁護する。
「D-8199が殺したのは、アンタの恩師だったんだってな」
知人を殺した相手が自分の権限の及ぶ範囲でDとして編入してきた。さらに、そのDは自身を顧みない特攻部隊に所属している。その事実に気付いたときにどのような感情が去来したのかは知る由もない。そもそも他者の過去に由来する感情など考えたところでどうしようもない。他者が分かるのはその原因と結果だけだ。
結果として世田はD-8199が一番嫌がることをやろうとした。……一番苦しめる方法を選んだ。D-8199の願いを踏みにじり、貶めるために。死が近いと分かる仕事の前に解雇の選択肢をちらつかせ、D-8199が尻尾を振って受けるようならあるいは満足できたのかもしれない。やはりD-8199は悪人だった、反省など口ばかりで、自分が助かることを選ぶクズだった。あの悔恨は全て嘘っぱちだった。情けない、あまりにも情けない糞野郎だ。そうなれば、そう考えられればそこで終わっていたのかもしれない。
だが、D-8199は選ばなかった、善きことをしたいと苦しんで、悩んで、祈って、そして無様にまだ終われないと叫んで死んだ。
世田の望みはある意味では叶い、ある意味では叶わなかった。
D-2930の追及に世田は常と変わらない人格者の微笑みを浮かべ、安心すら感じさせるようなテンポで答える。
「既に辞表は提出しています」
「そうか、一身上の都合かい」
「はい、一身上の都合です。あなたには大変お世話になりましたね、ニック」
「ああ、世話になった。そういうわけで送別がわりなんだが」
胸元から薄汚れた封筒を取り出し、D-2930は世田の胸元へ届くよう投げつけた。
「D-8199、車力勇馬からの遺言だ。先に中身は確認させてもらった。俺とアンタへの感謝の言葉、被害者への謝罪と懺悔、ありふれたもんだったよ」
それを握り締めた瞬間、世田の表情が崩れた、……いや、失われた。
同時に、手に抱えていた封筒が音を立てて引き裂かれていく。執拗に、粘着的に、その一片も、その一文字すらも、自らの視界に入れたくないとばかりに、何度も、何度も、何度も引き裂いていく。手からこぼれた紙片は足で踏み躙り、傍らのカップに注がれていたコーヒーを叩きつけるように撒き散らした。最後の一片を手から落とし、泥水に成り果てた足元のゴミをぐちゃりともう一度強く踏み躙り、世田は大きく息を吐く。
「ねえ、D-2930、正義ってのは、なんなんでしょう」
番号で呼ぶその表情はD-2930のよく知る穏やかな微笑みで。それを仮面だとも強がりだとも思わない。今はその表情の世田でありたいのだろう、怒りと、憎しみによって悪を為して、それでも善良な人間であろうとした、その全てが世田であり、その一面を見ているに過ぎない。だからこそ、目を見据えて答える。
「善きことを為すために考え続け、悩み続ける過程だ」
そうであってほしいと、今だけは祈る。神仏などにではなく、財団という巨大な機構に、匡済の名を冠する部門に祈る。
善きことのために、俺たちを生かしてほしい。善きことのために、俺たちを死なせてほしい。
その祈りを、世田はどう受け止めたのか、僅かに引き攣らせたいつもの笑みを取り戻していた。
「そう表現するのであれば、D-8199は"正義の味方"でしたよ」
「アンタにしちゃ、……アンタにしちゃ、えらく皮肉じゃないか」
それだけを答え、D-2930は踵を返す。世田は声をかけることなく、引っ越しの準備に戻る。
身体が写真立てに当たり、音を立てて落ち、割れる。
穏やかな光、暖かな声、調和と安心。かけられる声は不安と心配を込めて。
悪を矯め直し善導せよ、その理念と正義は決して相反するものではないだろう。
だというのに、そのはずなのに、ままならないものだ。
善きことのために、善きことを為すために、それだけのことが、こうにも難しい。
D-2930は聖地を立ち去る巡礼者のように、振り返ることなく匡済部門の扉を後にした。


