クレジット
タイトル: 【悲☆報】SCP財団、ガチで終わコンになってしまう⁉︎
原題: 【悲☆报】我们SCP真的要完蛋啦!?【悲☆報】SCP財団、ガチで終わコンになってしまう⁉︎
著者: Ninth BB
翻訳責任者: poshirona
作成年: 2024
翻訳年: 2026
初訳時参照リビジョン: 14
元記事: https://scp-wiki-cn.wikidot.com/panopticon
スクルド=フェイタリスの立ち絵と差分はweiboで井上櫻さんに書いていただきました!絵師ページのリンクはこちら。本当にありがとうございます!
注意
①:本記事の時間、場所、人物、出来事、物語、その他の内容はフィクションであり、実在の人物や出来事とは一切関係ありません。読者の方々は真に受けぬようお願いします。類似点があったとしても、それはまったくの偶然です。
②:本記事のストーリーには心理的苦痛や名指し批判を伴う場面が含まれます。もし閲覧中、実生活に影響を及ぼすような感情や生理的反応が生じた場合には、ただちに閲覧を中止し、読み直す前に心理カウンセラー等へご相談ください。
③:当記事は画像が多いため読み込みが遅いことがあります。その場合は再読み込みや魔法を介しての再接続をお試しください。
④:当記事における人物の発言内容は単なるキャラ造形であり、作者の意見を表したものではありません。
⑤:当記事を読む際は必ず上記の内容をよく理解してご自身の判断でお願いします。いずれかの注意を無視した状態で当記事をご覧になり不快感や不都合が生じた場合、当記事及び著者は一切の責任を負いかねます。
匿名Sより愛を込めてㅤㅤ
……
《さながら財団のように》
台本: オリジナル
独創性: ???
ジャンル: 舞台劇 ノベルゲーム
監督: LG 匿名S
あなたはSCP財団空想科学部門の無名の研究員である。
あなたはこれまで、自分たちの世界を、同じプロトコルが付与された二次創作作品として好き放題に蹂躙する人間や事象を数多く目の当たりにしてきた。だが、あなたたち――あるいは正確にはあなたの先輩たちは、いつだって彼らを、彼女らを……いや神たちといった方が近いか?
まあいい、とにかくその魑魅魍魎たちを収容する方法を見つけてきた。
数日前、あなたは先輩からある任務を言い渡された。
いわく、「劇組」のLGがまたしてもやらかしたらしく、焼け落ちた劇場を生み出して残していったらしい。もちろん、その劇場自体にも異常性はあるのだが、それは今回の任務にはあまり関係なく――
廃墟となった劇場には、LGの創作によって生み出された、財団の物語そのものが中に入っているサーバーが存在している。
……当然ながら、財団ではこのような自己言及的な異常は珍しくない。どうやら上位物語層の著者たちはこのテーマで捜索することで、あなたたち登場人物に対しての絶対的な支配権を誇示しているらしい。
だが、その創作者があのLGというのならば、事態は極めて危険なものとなる。
「新人クン、LGというのは悲劇が大好きなの。もし財団物語そのものがLGの力で悲劇へと引きずり込まれちゃったら私たちは全員終わり。心して挑んでね。」
あなたをこの収容任務に割り当てた先輩は、そう言っていた。
雑な場面転換の後、あなたは十分な防具を携え、機動部隊の小隊と共に、(財団によって隠蔽された)こじんまりした劇場へと到着した。防護マスクを着けていてなお、あなたたちは空気の中に漂う木材の焦げた臭いをかすかに嗅ぎ取ることができた。
変形してしまったドアを先頭にいた機動部隊員がを叩き割って、舞台裏から舞台上へ出ると、今回のターゲット――移動式ラックに積み上げられたサーバー群は、舞台の真ん中で、電力を無から供給して緑色のインジケーターを点滅させていた。
あなたは機動部隊員たちに、安全な搬出経路を確保するよう指示した。
その後、あなたは先輩から教わった、空想科学的アノマリーを収容するための奇跡論儀式の構築を始めた。
この儀式は、その対象をあなたと同じ物語層に固定して物語層間の自由な移動を不可能にするものだ。もちろん、3812のような世界規模のバグには通用しないだろうが。
「このサーバー、電気なくても動くのか。これで安くていいかんじのゲームサーバーとか組めないもんかな。」
あなたはそんなふうにぼやいた。
まあ、財団なんて本質的には学閥のような組織なのだから、たとえそのサーバー自体に異常性がなかったとしても、人類の利益になるような代物を簡単に外に出さないだろう。
あなたは炎の代わりとして電子ロウソクを置き、その後このサーバーの報告書を取り出した。
アイテム番号: SCP-CN-001
オブジェクトクラス: Archon Enochian
特別収容プロトコル: 審議中
説明: SCP-CN-001はSCP財団そのものに対する指定です。
SCP-CN-001は要注意団体「劇組」により制作されました。その後SCP-CN-001は時空の論理を超越し、空想科学的な文脈においてSCP財団そのものとなりました。従って、SCP-CN-001の収容は物語におけるSCP財団の消滅を意味します。
あなたは、まるでそこら辺の大学生が出した粗悪で未完成な卒論のような報告書を見つめ、思わず眉をひそめた。
こんなのが001で良いのか?
そう、あなたの認識では、いわゆる001文書、正確に言えば001提言というのはもっと大胆で壮大な物語であり、ある程度の叙事詩的スケールを備えた作品であるべきだった。
こんな未完成品みたいな代物……
だが、なんだかんだこれは先輩から託された報告書。あなたは一度、彼女を信じてみることにした。
あなたは報告書を魔法陣の中心へ放り込んだ。すると、深夜に財団のホームページを開いた時と勝るとも劣らない白色の閃光が廃墟を照らし出した。
ようやく再び目を開けられるようになった時、法陣の中の紙報告書は灰になっており、赤い電子ロウソクが儀式の成功を示していた。
あなたは無線機に向かって外の機動部隊員たちを呼び、この滅茶苦茶重いサーバーの搬出を手伝うよう頼んだが、無線からは誰の応答も返ってこなかった。あなたは一瞬慌てたが、収容時に何も事故が起きない財団なんて財団じゃないよな、ということで冷静さを取り戻した。
あなたは護身用の拳銃を構え、頭に装着したヘッドライトで暗く荒れ果てた劇場を照らすように首を巡らせた。
突然、1人の女性の姿が舞台横に出現した。と同時に劇場全体の照明システムが一瞬で正常稼働へと復帰した。
あなたが口を開くより早く、その女性は柔らかな口調で話しかけてきた。
?????
————————
えっ、1人でここに来たの?
ここは普通の人が来れるところじゃないんだよ。
ㅤㅤ
あなたは卓越した反射神経で、即座に銃口を女性へ向け直した。
その時初めて、あなたは目の前の女性を見た……アルビノのような白髪と赤い瞳を持ち、服装がやや露出多めであることを除けば、彼女はごく普通の人間にしか見えなかった。
あなたは標準手順に従い、相手へ退去を促す。
-
- _
それを聞いた女性は、一瞬呆気にとられたが、すぐに説明を始めた。
?????
————————
ちょっと待って!追い出さないでよ——
私があの人に教えた奇跡論を使ったんでしょ?ちょっと様子を見に来るぐらいいいじゃん。
ㅤㅤ
彼女の様子は仕事中にサボっているところを上司に見つかった時のあなたと瓜二つだったが、そんなことはどうでもよく、あなたの気を引いたのは、彼女が口にした「あの人に教えた奇跡論」という言葉の方だった。
?????
————————
えっと、本当よ!
SCP財団中国支部、空想科学部門のデジレー博士。正式名称は琴葉ことのはまふゆ……職員番号も言った方がいい?
ㅤㅤ
今やあなたの注意は、完全に「彼女が財団職員の職員番号を知っている」という事実へ向けられていた。
理由が何であれ、部外者に自分の職員番号を知られているなど、財団職員としては重大な職務怠慢と呼んで差し支えない。
あなたは爪を隠した鷹を相手にしているような感覚になり、銃を握る手の震えを止められなかった。-
- _
?????
————————
なーんだ、新人だったんだ君……空想科学部門の中心メンバーなら、みんなデジレー博士の名前くらい知ってるもんだと。
そんなに怖がらなくていいよ。私はアイテム番号が振られてるアノマリーではあるけど、誰かを雑に傷つけたりするようなことは絶対にしないから。
ㅤㅤ
?????
————————
それに、財団がヴェールの裏側に隠れてる組織だってことも知ってる。安心して、このことはヴェール外の誰にも言わないから。
ええと私の番号はなんだっけ……2504?そんなに信じられないなら調べてみれば?
ㅤㅤ
あなたは一瞬呆然とした後、即座にアーカイブデータベースで彼女の言う番号を調べた。すると、頼りない財団のサーバーが内部ネットワークを通じて彼女の顔写真と報告書を出力してきた。
あなたはそれと、目の前にいる彼女を見比べた。-
- _
あなたは反射的に機動部隊を呼びながら、同時に外へ逃げ出そうとした。だが、出口まで辿り着いたその時、あなたは突如として、「ここを離れる」という意志と、「増援を呼ぶ」という行動力を失ってしまった。
メタ的視点で物事を観測することのできる財団職員として、あなたは即座に、これが人間の思考へ干渉する異常現象であると察した。
スクルド
————————
……逃げようなんて考えないで。これを作ったのは『劇組』よ。当然、細部に至るまでLGの悪趣味が散りばめられてる。
一般に、LGの舞台に上がった人は、演目を最後まで演じきらないと舞台から降りられない。同じく、私たちも一幕を最後まで演じ終えないと、ここから離れられない。
ㅤㅤ
スクルドはあなたを指差し、そして自分自身を指差した。
あなたは深く理解していた。自分の演劇に対する理解なんて、大学の文化祭でアニメサークルがコスプレをしてアニメを再現する舞台劇くらいのものしかないと。
それ以外に関しては、全くではないにせよほぼ何も知らないと言って差し支えなかった。-
- _
スクルド
————————
それについては心配無用。「演劇」とは言っても、LGっていう人間は新しい演劇のカタチを色々探求するのが大好きだからね……
これが始まった頃、私はちょっと抜け穴を突いて、私たちのこの演目を、演劇の一種ではある別の形へ変えたの――
ㅤㅤ
-
- _
スクルド
————————
いや変わってる。ノベルゲーム風にね。
ㅤㅤ
CN-2504の報告書原文を読んだあなたは、目の前の「スクルド」と呼ばれる少女の能力をだいたい理解していたつもりだった……
けれど、物語そのものをいつのまにか書き換えてしまうこんな現実改変能力にはびっくりしてしまった。あなたは、この少女が財団日に牙を剥いていないことを心から幸運だと思った。万が一敵対していたら、おそらくメアリー・ナカヤマ1ですら、スクルドの前ではベッドでは上側を譲らざるを得ないだろう。
スクルド
————————
ええ?てっきり"ノベルゲーム"のほうをツッコまれると思ってたのに、ベッドの上側下側って何?……令和最新版のSCP最強決定戦ってそんな感じで戦うの?
一応マジレスしておくけど――私はレズビアンではあれど、ビアンバーに何度も出入りするような尻軽女じゃないからね。私は一途なの。どこの馬の骨かも知らない相手と寝たりなんかしないって
どうやら彼女にとって、心を読むのはまるでSCP報告書を1枚めくるくらい簡単なことらしいが、どうやらその能力をツッコミにしか使っていない……あなたには、それが能力の無駄遣いなのかどうか分からなかった。
もっとも、相手にこちらを傷つける意思がない以上、わざわざ刺激する必要もない。
あなたは流れに乗るように彼女の話に合わせることにした。-
- _
スクルド
————————
注目してるどころか、関連フォーラムにこっそり潜り込んだりしてるよ。なんだかんだ、これもある種SCP財団の二次創作/同人創作だから……そもそも、どっちが強いか比べるっていうのは人類社会の根源だし。
まあ二次創作とは言っても、"最強決定戦"なんて所詮は最――……いやこれ以上はやめとこっか。私は同人創作の神格なのに、その口から直接、創作ジャンルに優劣を付けてるみたいで不公平になっちゃうからね。
この「同人創作の神」を自称する存在は、本当に財団界隈の話題を追い続けているらしかった。もしやスクルドがツイ〇ターのアカウントでも作って「パラウォッチwiki空リプbot」みたいな便所の落書き以下のアカウントをフォローしていたとしてもおかしくない。
スクルド
————————
そうだ、これはやっぱ言っておかなきゃなんだけど。もし私がこの最強決定戦に参戦したら、私が強すぎてランキングごとぶっ壊れちゃうんだよね。
だって最強決定戦だって二次創作の一種でしょ?だったら私は、その二次創作がどう"創作"されるか調整する能力があるに決まってるでしょ……?極端な話、自分自身の二次創作小説を一本書きさえすれば、3812だって不可能を可能にする論理で瞬殺できちゃうわけ。
何かの「つよさくらべ」なんてのに本気でムキになっている超越存在2など見たことも聞いたこともなかった。
まさに「生きているうちに見れるとは思わなかった」的なやつだろう。だが、彼女は一つだけ忘れている……
-
- _
スクルド
————————
……うん?
ㅤㅤ
スクルドが、首の包帯のあたりを気まずそうにかいているのが見えた。
スクルド
————————
しまった、最近ずっとあの一生、バンドしてくれる?的な件で忙しくて、あそこにはログインするだけで中身見てなかった……
それって本当?財団の展示ブースはもう無くなっちゃったの?
ㅤㅤ
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あなたは、自分と超越存在がSCPの戦力比較モデルについて話し合うという謎すぎる状況について、もう考えるのを放棄していた。
あなたは適当な場所に腰を下ろすことにし、蒸し暑さで額に滲んだ汗を拭った。
スクルド
————————
あー、まあいいや、このあたりでやめとこっか。
とはいえ、戦力比較を否定するような「財団神拳3」なんかを書くつもりはないのよ。だって私にとっては、二次創作/同人創作なら何でもありだし!
ㅤㅤ
スクルド
————————
それにさ、ステレオタイプだけでパロディを書いちゃったら、それこそ純粋な人格攻撃になっちゃうから……
独りよがりな思い込みを抱えたまま、一部分を悪意を持って切り取って……それって結論ありきじゃない。そうやって、自分がさも有能であるかのように見せかけてるだけなんだよ。
ㅤㅤ
彼女の「財団神拳」への批判を聞いて、あなたはようやく理解した。
なぜCN-2504報告書のディスカッション欄に、同僚たちから「スクルドの性格が悪すぎ」なんて声が集まっていたのか。
――そうつまり、神格になる前の彼女が筋金入りの女オタクだったのが原因だ。こんなダブルスタンダードな女オタクを前にして、あなたは、たとえ超越存在相手であっても一発重めのツッコミを叩き込むべきだと思った。
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スクルド
————————
は?
ㅤㅤ
次の瞬間、あなたのカント計数器はヘンテコな悲鳴を上げて黙り込んでしまった。スクルドのまわりの空間が肉眼でも分かるほど歪んでいる。あなたの全身に鳥肌が立ち、冷や汗が滝のように噴き出した。
そもそもこのレベルの現実改変者を前にして自分が精神を保てている時点で、彼女がまだ本気を出してなかったことは一目瞭然である。どうか怒りで理性を失っていませんように……と祈ることしかできなかった。
そして祈りながらも心の中で、余計なことを口走った先ほどの自分を全力でタコ殴りにしていた。
スクルド
————————
最高じゃん。財団コミュニティで溜め込んできた鬱憤、ちょうどぶつける場所がなくて困ってたのよ。
私とレスバしたいんでしょ?じゃあディスカッション欄で超ボロクソに叩いてあげるよ。君の家族4ごとブッ飛ばすくらいの勢いでね。で、君はというとサイトルールに縛られて、痒くも痛くもない嫌味で反撃することしかできない!
ㅤㅤ
あなたの脳が高速回転する先に、あなたは本能で立ち上がり、100点満点な深々としたお辞儀をした。
そして本心にもない言葉を、目の前の少女をなだめるために口走らせた。-
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スクルドは眉をひそめ、深いため息をついた。
スクルド
————————
……すごく皮肉っぽく聞こえるんだけど。
ㅤㅤ
あなたはポケットの中に手を突っ込み、電源を切り忘れたせいでメーターが振り切れ焼き切れたカント計数器に触れた。計数器はなお余熱を放ちながら、自分がかつて電力で動く精密機器だったのだと必死に主張しているかのようだった。
――ここに来る前に、同僚の言うことを素直に聞いて携帯型の現実錨を多めに持ってくるべきだったのかもしれない。
スクルド
————————
……まあ、いいや。あなたの言うことも間違ってない。心が狭かったのは私の方よ。
それよりさ、君たち財団はなんでこんな所に来たの?こんな焼け落ちた劇場に。そっちのほうが気になる。
まさかあのサーバーを収容しに来たとか?
ㅤㅤ
残念ながら図星である。
そういえば、あなたも基本的な疑問を忘れていた。スクルドはどうしてこんな所に来たのだろうか。
まさか……-
- _
スクルド
————————
それがどうしたの?何か問題でもある?
「二次創作/同人創作」の神格として、関連する概念を集めて自分のノウアスフィアに放り込むことこそが私の存在意義なのよ。
ㅤㅤ
スクルドが自分が収容しようとしていたあのサーバーへゆっくり歩み寄っていく。彼女はサーバーの上に片手を置き、そのまま寄りかかって立った。
まさか『財団』そのものを指し示すあのサーバーですら、収集すべき同人創作の一つなのか。
スクルド
————————
そういえば、さっき君に設定したパラメーターがちょっとおかしかったみたいでさ。別に、君の台詞を毎回クリックしないと読み進められない仕様なんて必要なかったし。
ちょっと調整するね。あとでディスカッションに無駄な要素だったとか書き込まれても困るし。
ㅤㅤ
スクルドはペンを取り出して空中に何かを書き込んだ。
そのペンは何の変哲も無い、オフィスで隣にいる同僚が使っているボールペンと同じようなペンだった。その隙を突いて、あなたは咄嗟に収容対象たるサーバーの前へ飛び込み、電子機器収容用の個人端末を接続した。
だが不幸にも、財団支給端末のクソみたいな(というか財団支給の機材なんて大抵ロクでもない)基礎防御性能では、この異常なサーバーからの侵入を防ぎきれなかったようだ。しばらくすると、君の個人端末の画面はすぐに財団が背景の炎上スレ5に浸食されてしまった。
あなたが状況を理解するより早く、背後にいたスクルドがあなたの個人端末をひったくり、充電ポートへふーっと息を吹きかけると、そのまま画面を何度か操作してから端末を返してきた。
スクルド
————————
ちょっと!なんでいきなり触っちゃうの!?
財団で教わらなかったの?そういうのって、電気工事中に裸手で電線に触るのと同じくらい危ないんだけど。それともPK-クラスシナリオへの対処法まだ習ってないの?
ㅤㅤ
あなたが確認すると、手元へ返ってきた個人端末はサーバーへ接続する前の状態に戻っていた。
スクルドは、まるでストッパーが外れたかのように、延々とぶつぶつ喋り始めた。
スクルド
————————
はぁーもう、ほんと勘弁してよ……なんで財団は界隈に疎い空想科学部門の職員なんかを収容に寄越したわけ?これじゃみんなを困らせるだけ。何も知らないまま、インターネットの抽象にどっぷり浸かる羽目になるんだから。
ㅤㅤ
スクルド
————————
こんなの、未成年に個人情報を特定する技術を教えちゃうようなクソ企業とやってること一緒じゃん……まさか財団ごと落ちぶれたわけじゃないよね?
あとでナインスに電話して、この件ちゃんと締めてもらわないと……
ㅤㅤ
「えっと……どういうことですか。」
スクルド
————————
ああ、君は悪くないよ。全部LGのやつが濁していった跡だから。
LGはナインスを雇ってきて舞台の上でSCP財団を再現しようとしてたんだけど、間違えて「SCP財団界隈」そのものをこの物語層の中に引きずり込んじゃったんだよね。その結果がこのサーバーってわけ。
ㅤㅤ
スクルド
————————
……あー、分かった。まさか財団、こんな危険物の収容に君みたいな新米を寄越したの?
まったくもう、人命軽視なのか危険性を理解してないのか……まあいいや、どうせなら最後まで面倒見てあげる。今日は、アノマリーである私が財団職員の君にきっちり教えてあげる。
ㅤㅤ
その後、あなたはスクルドが舞台裏から五十インチ超のモニターを引っ張ってくるのを見た。それをサーバーにつなぐと、テーパードスピアを通してでなければ閲覧できないページが表示された。
テーパードスピアの使用権限を持たないあなたは、スクルドの言っていた「危険」の意味をすぐ理解した。
スクルド
————————
そうだ、ちょっと聞くけど――テーパードスピアが誰でも使えるものじゃないのは知ってるんだけどさ。たしかSCP-CN、中国支部にはテーパードスピアを較正するためのシステムがあったよね?確かSWN001-1実体専用の……
これってどういう仕組みなのか、気にならない?
ㅤㅤ
「……アイテム番号はありますか。」
あなたは興味深そうに尋ねた。
スクルドは慣れた手つきで、手元のサーバーを使ってするページを開いた。
ここまでくるとあなたにも理解できる。このサーバーはSWN001-1実体そのものに匹敵する能力を持っている――。
3109というオブジェクトの報告書を開けたというのが何よりの証拠だ。「見た感じ、これはテーパード――いや、Voteシステムをベースにした……ビッグデータの計算?何を計算してるんだ?」
あなたは空想科学部門の人間として、より上位物語層寄りの言い方へ切り替えることにした。あなたにはこの「鈍鏡システム」が何のために存在しているのか理解できなかった。
いや、そもそも下位物語層にいる自分には到底理解できないのだろうか。いや、3109は財団が開発したものだからそんなことはないか?
スクルド
————————
混乱してるみたいだね。でもこのガラクタ、ビッグデータなんてたいそうな物使ってないんだ。使ってるのはものすごく単純な、公式だよ。
で、その用途なんだけど……格好よく言えば、「テーパードスピア較正プログラム」ってとこかな?
ㅤㅤ
スクルド
————————
良く言えば、財団内部でいわゆる「異分子」を排除するためのものよ。
悪く言えば……ちっちゃい集団の中で異分子を排除しようとする人たちに、見せかけの正当性を与えるだけのものね。
ㅤㅤ
「どういう……ことです?もっとゆっくり説明いただけませんか。」
スクルド
————————
あー、そこから説明しなきゃか。
あたりまえだけど、作品っていうのには必ず作者がいるでしょ?でも財団っていうのは作者どうしの関係が若干複雑なんだよね。
ㅤㅤ
スクルドは、いわゆる「プロジェクト・テーパードスピア」、評価モジュールを表示した。
スクルド
————————
SCP財団って、最初から作者が一人だけじゃなかったでしょ。だからどんな作品ならサイトに残していいかを決めるためにいわゆるテーパードスピアが生まれたの。
それで、この評価モジュールとシステムが生まれた。読者が気に入ればプラス、気に入らなければマイナスを押す。そして総スコアが一定以下まで落ちると削除通知されて、その後何もなければ削除されるって仕組み。
ㅤㅤ
「つまり、それがSCP-3309の動作原理ってことですね。でも、財団はいったいどうやって特定の作品、いやオブジェクトを削除して――あ!」
スクルド
————————
さすが空想科学部門の人、理解が早いね。
その通り。文章を直接改ざんするのができなくなって以降、君たち財団はオブジェクトを削除するためにもっと隠れた方法を使うようになったの。それこそ低評価爆撃。
もちろん、自分が正しいと信じて疑わない空想科学部門の人たちは、上位物語層にあるコミュニティの議論なんて把握できなかった。だから連中の行動は、すぐに上位物語層側のサイト管理者たちに止められたの」
ㅤㅤ
スクルド
————————
でも、さっきも言ったでしょ。上位物語層の作者たちだって一枚岩ってわけじゃない。複垢による票操作っていう洗礼で、みんな疑心暗鬼になっていった。
ある人は、この手法をマネして自分のファンに高評価を押させるようになった、またある人は、それを口実にして他人を攻撃するようになった……この「鈍鏡システム」というのは上位物語層で"複垢"7とやらを摘発するために作られたものなの。
ㅤㅤ
スクルド
————————
ふっ。そもそもこのシステム自体、何やってんのか訳わかんないガラクタだけどね。
私は本当にこんなので複垢が分かるのか疑ってたから、わざわざコードの分かる友達を何人か呼んで、公開されてたソースコードを解析してもらったの。そしたらね、ボツになってコメントアウトされてたコードがあった。どんなコードだったかっていうとね、ブラウザのコンソール上に、複垢可能性アリと判定されたユーザーを表にして出力するものだったんだよ。8
このシステム、自分では較正だなんて言ってるけど、実際にやってるのは魔女狩りよ。他人を攻撃したくてたまらない人以外、こんなの使おうなんて思わないでしょ。
ㅤㅤ
怒りを話し終えると、スクルドはまるで呆れたかのように、くすくす笑いながら首を横に振った。
「それで……私にこんなのを教えて、一体何が言いたいんですか」
スクルドが怒りに駆られてこんなに語ったのに、あなたにはまだスクルドがどうしてこんなに怒っているのか、その根幹が理解できていなかった。
もっと言うならば、スクルドが上位物語層の汚らわしい部分をわざわざ見せてきた理由も。
スクルド
————————
どう言えばいいかな……別に大したことじゃないよ。だって、上位物語層で起きているようなこ の 手 の事件9なんて、他の同人界隈に比べたら平和で友好的な方だからね。
ただ、私はね。上位物語層の存在を知りながら、なおも進んで自滅に走る財団作品がさ。こんな危険な「ポストインターネット時代の残滓」をちゃんと管理できるとは思えないんだ。だって、君たちが扱いを間違えたアノマリーなんて少なくないでしょ?
ㅤㅤ
あなたはしばらく黙り込んでいた。
しかしちょっと考えてみると、こんな上位物語層の汚さが、自分自身や……同僚、そして上司と、一体何の関係があるというのか。
あなたたちは財団であり、決して作者じゃない。「とはいえ……私は、これを収容するのが財団の使命だと思います。私たちはこのカオスな物語に生まれた存在です。なら、作者たちが私たちにどんな結末を用意していたとしても、私たちはただ自分たちの使命に向かって進むだけです」
スクルド
————————
君たちはどうしても、モダニティに操られたその使命とやらに忠実でいたいの……?
緋色の王の件で反省しなかったわけ?
私の言うことを聞きなよ。こんな悪意のゴミ箱なんて、いっそ私に任せたほうがいい。私はもうツイッ〇ーにいる晒しBotをかなり吸収してきたし、今さらそういうのが一つ増えたところで何もないから。
ㅤㅤ
財団としての責務が突き動かしたのか、それとも、スクルドの非難が荒唐無稽に思えたのか。
あなたは、ここまで来てもなお彼女に反論したかった。
汗でじっとりと湿った手で、あなたは再び拳銃を持ち上げ、彼女へ向ける。-
- _
スクルド
————————
そうだね……君も、そう思うんだ。
まあそういう結論になるとは一応考えはしたけど……
ㅤㅤ
目の前の少女はそう言い終えると、ただ重い表情のまま、古びた舞台の上にあった椅子を一脚引き寄せた。
沈黙――それだけがあなたが彼女に向けた裏切りへの返答だった。
まあ裏切りとは言っても、あなたたちは最初からずっち仲間じゃないのだが。少女は、まるで自分の好きだった作品が打ち切り同然の結末を迎えたかように、小さくため息をついた。
スクルド
————————
たとえ財団というコミュニティが、インターネット上の界隈ならどこにでもあるような、吐き気のする持病を抱えていたとしても……財団は、私の好きな創作をたくさん生み出してくれた。そして私も、財団のために、自分の好きな創作をたくさん生み出してきた。
ㅤㅤ
スクルド
————————
ただ、どうしても理解できない、理解したいとも思えないことが一つあるの……私が他の物語の『Tale』を持ってきたとき、どうしてあなたたちはそれらを異物として扱い、排除したの?まるで人体の免疫がアレルギーを起こすようだった。
創作は、本来自由であるべきものじゃないの?どうしてわざわざ界隈なんてものを作って、異なる人たちを排除しようとするの?
ㅤㅤ
あなたは黙りこんでしまった。そしてようやく思い出したのだ。空想科学関連異常の収容規定において、何よりも優先される第一条の規則を。
「対象の発言内容には一切取り合うな」
あなたが黙り込んだのを見た少女は、そっと片手を上げ、財団界隈のカオスなデータで埋め尽くされたあの自己膨張型サーバーを空中に浮かべて遠くから引き寄せてきた。
スクルド
————————
……まあいいよ、答えは沈黙ってやつだね。
財団の正統性……純粋性……好きなように呼べばいいけど。それこそが、あなたたちのコミュニティが縋っている、一種のイデオロギーのような共通認識なんだよ。
スクルド
————————
そして、財団の評価システムというのは、その種の共通認識を数値化した現れなんだよ――。悪意ある票操作であれ、派閥による組織票であれ、全部そういう論理の上で生まれている行為でしょ。つまりね、財団はもうとっくに、ただの173の二次創作プラットフォームなんかじゃない。
それは一つのコミュニティであり、一つの社会であり。インターネットのどこにでも見られるようでいて、それでいて唯一無二の……もしかすると唯一無二の、サブカル界隈なんだよ。
少女は立ち上がり、まだ緑色のランプが点滅しているサーバーを軽く叩いた。
あなたは彼女を見つめ、何か言いかけて言葉を飲み込んだ。
スクルド
————————
私、スクルド=フェイタリスは、『二次創作』『同人創作』という概念の神として、財団の物語の中に存在している。それ自体が、財団そのものが巨大な二次創作に過ぎないことの証明。私が救うことができなかったのは、CCライセンスに適合しない173のあの写真だけ。
スクルド=フェイタリス
————————
それに、財団そのものを救うだって?私の収容と引き換えに?冗談はよしたほうがいいね。主従関係をきちんと理解してほしい。
SCP財団こそ、私同人を必要としてるんだよ。
そう言い終えた時。少女の姿は次第に薄れていき、神性に満ちた赤い瞳だけを残して、舞台上から消え去ってしまった。
そして、『SCP財団』であるサーバーだけが、あなたの前に残された。
もちろん、あなたはこれをそのまま収容することもできる。そうすれば、これは自己言及型001提言の一つとして、財団の収容サイトの中へ静かに収容される。そしてしばらく話題になった後は、他のオブジェクトと同じく埃を被っていく。そして時折「こんなオブジェクトあったな」と語られるだけの存在へと成り果てる。だが、あなたは……なぜか、このサーバーを運び去る勇気が無くなっていた。
そうだ。あなたの先輩である財団職員、ナインス博士も。いつも財団のものを盗んで舞台装置にしている劇組のリーダーLGも。そして今消えたあの神格の少女も。全員、財団の欠点を指摘していた。
財団にいる無数の職員全員も、実のところ皆、財団がもっと良くなることを望み、財団を変えようと頑張っていた。
……だが財団は、それでも財団だった。
財団は、確かにあらゆるものを収容する。それが例え自分自身であっても。だが。ただ一つだけ、収容できないものがある――
常態だ。常態?
ああ、常態。
そうか、これこそが常態か。
——そう悟ったあなたは、静かにそう嘆息した。古い有名アカウントが削除され、忘れ去られる。そして称賛と袋叩きという泥沼から、新たなアカウントが生まれる。
コメント欄でのレスバを雑に結論づけ、レスバそのものを忘れ去り、自分だけが真理に気付いたような顔で他者を見下し、そしてまた次の戦場へ向かう。
他人の言葉を借りて、低質なのにオリジナリティだけは立派な創作理論を作り上げる。その理論を使って新しい作品をもっともらしく批評する。そして一か月も経たないうちに、そんなニセの理論を捨て去って、新しい「理論」にハグをする。こうした、核心となる論理だけは変わらず繰り返されてゆく現実と物語。それこそが、財団の常態だった。
……
こうして劇場は、再び静寂を取り戻した。
と思いきや、また自称「同人の神」な少女が現れ、静寂が破られてしまう。
スクルド
————————
いやぁ――私ったら本当に忘れんぼうだなぁ、また忘れ物しちゃった。
ㅤㅤ
スクルド
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え?まだいたの。
もう、さっきのは勢い任せに言ったらことだから。忘れてよね。
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スクルド
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財団というコミュニティがどうだろうと、それと作品に何の関係があるのさ?コミュニティなんて無視して、作品を愛してあげればいいんだよ。——いい作品なら高評価して褒める、だめな作品なら右上の閉じるボタンを押してちょっと文句を言ってみる。普通の人ならそれでハイ終わりでしょ!
コミュニティなんかを気にしすぎるとね、ソシャゲばっかやってる"ゲーマー"みたいに、思考が妄想に偏って溺れちゃうよ?
そう言い残すと、スクルドは財団という概念の集合体たるサーバーを抱え上げ、一緒に舞台から姿を消した。
おそらく、彼女が再び戻ってくることはないのだろう。
あなたは、どこか吹っ切れたようにクスッと笑った。彼女の言う通りだ。
「財団」というもの自体がどうであるかを気にしすぎる必要はない——
自分のやらなきゃいけないことをやり、自分の書きたいものを書く。自分の長所を認めて欠点を受け入れ、そして次はもっと良いものを書く。他者批判みたいな傲慢さを少し減らし、他人から批判されたときの傲慢さも少し減らす。
そんなシンプルなことこそが、真理なのだから。収容対象が消え去ってしまった今、あなたにはこんなボロボロの舞台に居座る理由は無かった。
あなたは、異常性を持つこの舞台から立ち去ることにしたのだった。
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あなたは一瞬、呆然とし、反射的に振り返る。――この舞台には異常性があったはずだ。
「新人クン、LGというのは悲劇が大好きなの。もし財団物語そのものがLGの力で悲劇へと引きずり込まれちゃったら私たちは全員終わり。心して挑んでね。」
その瞬間。
あなたはまるで突然悟りを開いたかのように、先ほど自らが納得していた内容の正体に気付いてしまった。そう、これらは口にするのは簡単で実際にやるのは難しい、ただの綺麗事だった。
なぜなら、人間というのはみんな違うから。
財団にやって来る人の中には、そもそも最初から「創作」のために来たわけではない者もいる。もし仮にそうだったとしても、時間が経つにつれて、初心を忘れてしまう人もいる。初心を保つことが簡単だと言うのなら、インターネットではどうして争いが絶えないというのか!
誰も、気にしない。
誰も、あなたの本心など気にしない。
皆、インターネットで快楽を探しているだけだ――
誰が、本気で気にするというのだろう。……
異常性によって悟ってしまったあなたは、その場で膝をついた。
愉快犯たちの絶望は、本来なら善へ向かうはずだった誓いを、実存主義めいた説教へと変えてしまった。
それこそが、この舞台の異常効果だった——
ここで語られるものは、どんなものであれ、最後には悲劇となり幕を下ろす。
では、SCP財団は?


