SCP-3002-JP-EX
アイテム番号: SCP-3002-JP-EX
オブジェクトクラス: Eparch1 Explained
特別収容プロトコル: SCP-3002-JP-EXの管理は日本国政府に移管されています。
説明: SCP-3002-JP-EXはモズ科(Laniidae)に属する全長約25cmの鳥類の一種です。SCP-3002-JP-EXは霊的実体・怪異実体2・怪談実体3などのヒトを殺傷するアノマリーと共生し、ヒトを捕食する生態を有していました。
発見経緯: SCP-3002-JP-EXは日本のインターネット上で拡散されている都市伝説「ヒサルキ」に対して巷説部門により行われた調査によって発見されました。都市伝説で描写される「ヒサルキ」には多様な派生が存在しますが、大別して以下の2種類の巷説が流布しています。
- 初期に流布していた巷説、枝や柵などの鋭利な先端部にウサギやネコなどの動物が突き刺さっている状態で発見され、周囲の幼児が「ヒサルキ」の仕業であると証言する。
- 上記の巷説の流布以降に発生した巷説、「ヒサルキ」はニホンザルなどの生物に憑依して狂暴化させ他の動物を殺害する怪異であり、加えて憑依した動物も内部から捕食するため「ヒサルキ」が去ると動物の皮だけが発見される。
以下は巷説部門による「ヒサルキ」の調査にて確認された映像記録です。
映像記録3002-JP-EX-01
前記: 以下は██県██市立██小学校5年1組教室の監視カメラ映像4からの抜粋です。当該教室は校舎1階に存在します。
[17:02:14] [下校時刻が過ぎており、教室内に生徒は存在しない。教室内は消灯されており薄暗いが、換気のために一部の窓が開けられており校庭から生徒の声や鳥のさえずり声が聞こえている。]
[不明な甲高い声] ひさゆき、ひさゆき
[17:03:45] [不明な甲高い声がおおむね20秒程度の間隔を空けて同様の発声を繰り返している。音声の発生源は窓側と思われるが教室内及び窓の外でカメラに写る範囲には何も存在しない。]
[17:05:04] [近藤 久雪氏、中田 駿氏(2名ともに5年1組の生徒であり、当事案発生時点では校庭で遊んでいたことが後の調査で判明しています。)が教室後部の扉から教室内へ入ってくる。]
近藤 久雪: 誰もいないじゃん。
[不明な甲高い声] ひさゆき
[17:05:15] [窓の外から鳥のさえずり声が一斉に聞こえ、直後に鳥が飛び立ったような音が続く。]
中田 駿: 今、窓の外から
[17:05:20] [中田 駿氏が開いている窓へ駆け寄り、外を覗く。]
中田 駿: いない
近藤 久雪: お前ふざけんなよ
[17:05:31] [近藤 久雪氏が中田 駿氏の背後へ歩み寄り、窓の外を覗く。両氏とも5秒ほど沈黙する。]
中田 駿: これタカシマさん5なんじゃ
[17:05:38] [近藤 久雪氏が絶叫しながら教室から走り去る。遅れて中田 駿氏もそれを追って走り去る。]
後記: 本事案は「誰もいない教室から呼び声が聞こえたが、入ると誰もいない」という低品質の怪談/体験談として近藤 久雪氏、中田 駿氏両名によって拡散されましたが、近藤 久雪氏の名前との類似性から都市伝説「ヒサルキ」と習合する形で話題となり、尾鰭がつく形で周辺地域に流布されました。これによって巷説部門により発見され、初期調査によって本記録の発見へ至りました。近藤 久雪氏、中田 駿氏両名は後の調査により心身ともに異常は存在せず、当体験談自体は怪談としてのクオリティ及び新奇性の低さから早期に飽きられており、1-2週間程度で当事案の話題はしなくなったとの証言が得られています。
上記の映像記録は当初、重要度の低い記録として扱われていましたが、巷説部門による調査の進行とともに蓄積された映像記録において当記録と同様の「誰もいない教室から呼び声が聞こえたが、入ると誰もいない」という怪談としての完成度に著しく欠く怪談または体験談が、日本全国の小中学校に高頻度で発見されました。当該怪談を構成する要素である「誰もいない教室」「呼ばれたがそちらに行くと誰もいなかった」などは恐怖の対象としての発想元として弱く、当該怪談は伝搬性および自然発生率が低いと推定されました。
加えて当該怪談が流布している小中学校およびその近傍において、不審死およびヒトの死を伴う超常現象記録の増加が統計学的に有意な水準で確認され、これらの死亡事例において高頻度で死亡へ至った損傷部位付近の肉片や指などからなる遺体の小片が付近の樹木などに刺さっていたと記録されていました。
巷説部門は当該怪談の不自然な発見頻度およびその周囲の不審死の増加に未発見のアノマリーが関与する可能性を想定し、当該怪談に対する調査を実施しました。調査の結果として、当該怪談の発生時、映像または音声記録に共通してSCP-3002-JP-EXやそのさえずり声が記録されていることが確認され、財団生物学部門による調査の対象となりました。
以下は財団生物学部門により確認されたSCP-3002-JP-EXの生態です。
狩猟: SCP-3002-JP-EXは霊的実体・怪異実体・怪談実体などのヒトを殺傷するアノマリーと共生し、ヒトを捕食またはヒトを食料源として求愛給餌を行います。
一般にモズ科の鳥類は、他の鳥類の鳴き真似を含む複雑なさえずりによって求愛行動を行うことが知られています。SCP-3002-JP-EXは他のモズ科の鳥類に比較して鳴管6の筋肉に高度な発達が見られ、これによってヒトを含む他の生物の声を模倣することが可能です。
SCP-3002-JP-EXのオスはヒトが他の個人を呼ぶ声を学習し、それを模倣することで当該個人を誘引し集団から孤立させます。その後にSCP-3002-JP-EXは特有のさえずりを繰り返すことで共生怪異を誘引します。孤立したヒトが誘引された共生怪異の攻撃を受けて死亡するとSCP-3002-JP-EXは死亡したヒトから肉片を剥ぎ取って捕食し、一部を求愛給餌として利用する他に、一部をはやにえ7として付近の木の枝などに突き刺して保存し食糧の乏しい冬季の保存食として利用します。この狩猟行動はヒトの誘引に成功した上で共生怪異がヒトの殺害に成功する必要があるため、成功率は極めて低いものの成功例においては多数のメス個体との求愛に成功することから、これは部分的な一夫多妻型の配偶システムとして機能していると推測されています。
求愛: SCP-3002-JP-EXのオスは繁殖期の終盤において、ヒトの誘引を用いた求愛を行います。これはSCP-3002-JP-EXのオス個体がヒトを誘引する行動のみを行い、その成否を確認したメス個体が求愛を受け入れるかを決定するという方式で行われます。先述の狩猟行動は成功率が極めて低いことから、当該求愛行動は狩猟行動が成功しなかった個体間で一夫一妻の配偶システムで交配するための行動適応と推測されています。
当該求愛行動はヒトの誘引の成否のみが求愛の成否を決定するため、求愛の成功確率を向上するために誘引対象としては小児が選択される傾向にあります。これは先述の「誰もいない教室から呼び声が聞こえたが、入ると誰もいない」という怪談が多発した原因および都市伝説「ヒサルキ」の初期の発生要因と推測されています。繁殖期終盤のSCP-3002-JP-EXが生息地近傍の小中学校や幼稚園などで求愛行動を実施することにより「誰もいない教室から呼び声が聞こえたが、入ると誰もいない」という体験談が同時多発的に発生します。SCP-3002-JP-EXの生息地近傍では共生怪異による死亡事案が発生しうるため、不審死およびヒトの死を伴う超常現象記録の増加につながったと推測されています。
また、都市伝説「ヒサルキ」の流布最初期の内容は「保育園の柵に虫やトカゲなどの動物が突き刺さっている状態で発見され、被害動物が徐々にモグラ、ネコと大きい動物になったため騒動となり、保育園で飼っていたウサギが殺されたことで事情を聴取された周囲の幼児が「ヒサルキ」の仕業であると証言する。」というものであり、これはSCP-3002-JP-EXがはやにえを行う習性および繁殖期終盤に小児を誘引する習性と一致します。一方でSCP-3002-JP-EXがウサギやネコなどの哺乳類を殺害ないしはやにえにする習性は確認されていないことから、都市伝説「ヒサルキ」の成因がSCP-3002-JP-EXに由来するかは未確定です。
SCP-3002-JP-EXの狩猟行動は主に山中に存在する怪異実体との共生関係によって成立しています。一般にヒトの集落付近に存在する山である里山は薪や山菜などを利用するために付近の住民に利用されますが、獣害や遭難などに代表される非異常の災害の発生率が高いことや、死後の霊魂が山へ宿るといういわゆる「山中他界観」の影響から集落住民からの恐怖を惹起し、集団による無意識下の現実改変や、怪談実体のような恐怖心から発生するアノマリーを生みやすい環境にあります。これらの環境下でヒトの呼び声を真似し、ヒトの孤立化を招いた個体が大量の餌資源を獲得し、当該行動が模倣子として定着したことがSCP-3002-JP-EXの種分化を駆動したと推定されています。一方でSCP-3002-JP-EXと共生する怪異実体はこれらの狩猟行動に伴って発生する不審死または失踪事件によって「山中への恐怖」が増大することによって存在を維持します。
追記1: SCP-3002-JP-EXと共生していた山中に存在する怪異実体は急激に減少しています。この原因は財団等の正常性維持機関による怪異実体の確保が一因として挙げられますが、主だった要因としては昭和30年代以降に家庭用化石燃料の普及が始まったことにより里山の燃料需要が減少し山中へ侵入する機会が失われたこと、その結果として起こった里山の宅地化または過疎化によって「山中への恐怖」が失われ、アノマリーの発生要因が失われたことに由来します。
共生怪異の減少に伴い、SCP-3002-JP-EXがヒトを誘引する行動は性選択上の利益を失うため将来的なNeutralizedへの変更が予想されています。
追記2: 2023年6月2日、SCP-3002-JP-EXの新たな鳴き声パターンが報告されました。
SCP-3002-JP-EXのさえずり
上記音声は非異常の交通事故記録として保管されていた監視カメラ映像から抜粋したものです。当該事故はいわゆる歩きスマホをしている歩行者が、赤信号の横断歩道を渡ろうとして車両と接触し死亡したものであり、当初は非異常の交通事故として処理されていました。一方で当該事故において監視カメラに記録された音声には事故現場に設置されていた異種鳴き交わし方式8の音響装置付信号機からの音声が、歩行者が横断を試みた赤信号の時点でスピーカーと無関係の地点から発していることが記録されていました。事後直後に遺体を野鳥が食べていたというドライバーの証言及び事故状況への疑義から、当該カメラ記録は財団AICによる監査対象となりました。監視カメラ映像の長期間の観察の結果、SCP-3002-JP-EXと外見上類似する鳥類が当該地点に頻繁に滞在していること、前方を注視していない歩行者が存在し時速40km以上の速度で車両が接近した際に、信号と無関係に同様の誘導音が確認されたことから、SCP-3002-JP-EXが誘導音を模倣することで交通事故を誘発している可能性が示唆されました。
既知のSCP-3002-JP-EX生息地の一斉調査により、大部分のSCP-3002-JP-EXはヒトの呼び声を模倣する行動を喪失しており、ヒトの呼び声の模倣を行っている個体群でも繁殖期以外にヒトを誘引する行動を取らないことから、怪異実体との共生が失われていることが示唆されました。一方で都市部近傍に生息しているSCP-3002-JP-EX個体群の一部が、上記事案と同様に音響装置付信号機の誘導音を模倣する行動を獲得していることが確認されました。当該行動はSCP-3002-JP-EXが有していたヒトを殺害し食糧とするための行動が、怪異実体との共生から交通事故の誘発へと変化したことを示唆しています。
交通事故の誘発は異常性に関与しない行動適応であること、怪異実体との共生関係が失われていることを鑑み、SCP-3002-JP-EXのオブジェクトクラスをExplainedへ変更する提案がSCP-3002-JP-EX研究チームより提出され、日本支部理事によって承認されました。現在SCP-3002-JP-EXの管理は日本国政府に移管され、当報告書はアーカイブとして残されています。


