クレジット
タイトル: SCP-3959-JP - 海洋保護主義漁業
著者: salt-A
作成年: 2025
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アイテム番号: SCP-3959-JP
オブジェクトクラス: Uncontained
特別収容プロトコル: SCP-3959-JPは一般人のアクセスがほぼ不可能であり、また一般的に異常と認識されていないことから、財団による積極的な収容は行われません。
説明: SCP-3959-JPは、"海"1に出現する、頭部の存在しない凡そ人型の実体です。SCP-3959-JPは常に漁船を模したような船舶に搭乗した状態で確認されます。
SCP-3959-JPはヒトの思考から切り離された記憶を回収しており、ある程度の人数の記憶を回収すると消失します。SCP-3959-JPは年齢の若い記憶を回収の対象としておらず、その理由に関するSCP-3959-JPとの会話の試みが進行中です。詳細は補遺3959-JP/IIIを参照してください。
補遺3959-JP/I: 発見
SCP-3959-JPは認知部門2がプロトコル・インタラクション3に基づき死亡した職員の記憶を回収していた際に発見されました。SCP-3959-JPは発見直後消失しましたが、プロトコル・インタラクションに加盟している職員の記憶が"海"に存在しないことから、SCP-3959-JPがヒトの思考から切り離された記憶を回収していることが確認されました。
補遺3959-JP/II: プロトコル・インタラクション
以下はプロトコル・インタラクションの内容の、"海"に関係する記述の抜粋です。
"海"の取り扱いについて
プロトコル・インタラクション加盟職員は、自身の死亡後に認知部門によって"海"に存在する自身の記憶を回収させることを認める。回収された加盟職員の記憶は████によって想起され、認知部門の職員として転入する形で復活する。
復活した職員は思考エージェント、中枢オペレーターなどの役割に割り当てられる。
"海"とは人類の思考上に存在する、超形而上的な空間を指す。本来人間の記憶と人間の思考は海底にて同一人物のそれとつながっているが、記憶処理などで記憶が失われたり、記憶の所持者が死亡するなどで繋がりが切り離され、海面に浮上あるいは遊泳を開始する。
補遺3959-JP/III: 会話記録
以下は2030/7/15に行われた、思考エージェント.033によるSCP-3959-JPとの会話記録です。
<記録開始>
(Agt.033が"海"の上空に出現し、海面に落下する。付近にはSCP-3959-JPが搭乗している船舶が確認される)
Agt.033: 発見しました、SCP-3959-JPと見て間違いないでしょう。
Op.011: 了解。可能ならSCP-3959-JPへ接近せよ。
(Agt.033はSCP-3959-JPの方向へと泳ぎ出す)
(Agt.033が停船しているSCP-3959-JPの船舶に接近する。SCP-3959-JPはそれに気付いたのか、Agt.033の方向を向くと、首をかしげるようなジェスチャーをする)
SCP-3959-JP: えっ、なんで生きた記憶がこんなところに?
Agt.033: すみません、私を上げてくださることはできますかね?
SCP-3959-JP: いいですけど……。
(SCP-3959-JPが所持していた網を投擲する。Agt.033がそれに捕まると、SCP-3959-JPが網を引き上げる)
Agt.033: ありがとうございます。私は貴方と話がしたく、貴方を捜索していました。
SCP-3959-JP: 話、ですか?一応漁業権はあるんですけど……。
Agt.033: いえ、あなたに聞きたいのは何処で漁をしているかではなく、何を漁しているのかと言うところです。
(SCP-3959-JPがクーラーボックスに入れられた記憶を一つ掴み、持ち上げる。それは灰色のイメージで構成されている)
Agt.033: これは一体?
SCP-3959-JP: 持ち主が死にたての記憶ですね。
Agt.033: 持ち主が死にたて、というのは?
SCP-3959-JP: そうですね、実際にやってみます?
Agt.033: いえ、私は遠慮しておきます。ですが、何をしているのかについては興味があります。
SCP-3959-JP: 私の仕事に興味を持ってもらえるのは嬉しい事です。それでは説明していきますね。
(SCP-3959-JPが未知の粉末を水面にばら撒く)
SCP-3959-JP: ここには1秒に2つほど、持ち主を失った記憶が流れてきます。その中には80年ほど生きたものから、わずか数年ほどで命を落としたものも少なくありません。
(船舶の周囲に、様々な大きさの記憶が水中を移動している。SCP-3959-JPが網を引く。)
SCP-3959-JP: 例えば、これなんかは8歳で持ち主を失った記憶ですね。まだまだ小さいので、リサイクルするには適しません。
(SCP-3959-JPが小さな記憶を投擲する)
Agt.033: そのリサイクルとは?
SCP-3959-JP: この海を保護するためですね。記憶が沢山この海に存在していると、このきれいな海が混濁した記憶に塗れてしまうと考えました。だから、大きく育っている記憶を回収し、新たに生まれた脳に与えるのです。
SCP-3959-JP: 新たに生まれた脳は、悲しいことにその記憶をなかなか思い出せません。ですが何かの拍子に、デジャヴのようなものを感じて思い出すことでしょう。例えば、似たようなことを似たような場所で体験したり。
SCP-3959-JP: 人が最後に死ぬのは忘れられた時だとよく言いますが、私は私以外に人から忘れられるような人を出したくないのです。だから次の誰かに、思い出してもらおうという訳です。
(数秒の沈黙)
SCP-3959-JP: おっと、喋りすぎてしまいましたね。
Agt.033: いえ、貴重な話を聞くことができて光栄です。
SCP-3959-JP: ところで、貴方は一体何者なのです?
Agt.033: 私は……。
(数秒の沈黙)
Agt.033: 私も忘れられたくないと願いました。私は貴方の様な心優しき者に、肉体を与えられた記憶です。
(SCP-3959-JPは笑顔のように見える)
SCP-3959-JP: それにしても、忘れるってのは嫌なものですね。蓋が閉まっていて、その蓋を開くことができないのですから。
(SCP-3959-JPが網を引く)
SCP-3959-JP: いいサイズの記憶が来ましたね。今日はこのくらいにしておきましょうか。
(数秒の沈黙)
SCP-3959-JP: 大切なものを忘れることがないように。
(SCP-3959-JPと船舶が半透明になり、やがて完全に消失する。Agt.033は足場を失い、海面へ落下する。)
Agt.033: あの、救助願えますか?
(どこからともなく上空から白い糸が垂れ下がる。Agt.033がそれを握ると、白い糸は引き上げられる)
<記録終了>


