アイテム番号: SCP-3970-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3970-JPの周囲1km圏内は機動部隊み-17("巨蝙蝠")によって監視され、一般人の進入は禁止されています。また、同時に同機動部隊によって定期的にSCP-3970-JP-1の観察調査が実施され、その時点で異常が確認された場合、対応措置が実施されます。
SCP-3970-JP内部空間の一部
説明: SCP-3970-JPはN37°57'47.3 E140°43'55.0(日本、宮城県角田市斗蔵山)に位置する潜在次元入出口です。SCP-3970-JPは推定、東端から西端まで8mの範囲に存在しており、それらの周囲1km圏内はレッドゾーンに指定され、一般人の進入禁止区域に設定されています。
SCP-3970-JPから進入可能な空間内部は座標地点と同様に森林の様相を示しています。しかしながら空間内で確認可能な既知の動植物は、主に南西諸島や南アメリカ等で見られる、熱帯雨林帯と同一の特徴を示しており、外部との環境の相違が確認されています。オブジェクト内部には異常な、もしくは未発見の動植物が生息していますが、現時点でSCP-3970-JP周辺において、オブジェクト内から移動したと推測される生物の生活痕、並びに死骸などは確認されておらず、同時に生態系の変化などについても確認はされていません。
森林の全長については現在まで不明であり、第三次探索調査段階においては入出位置から北北東~北東方向におよそ30kmまでの進行がなされましたが、その上限は明らかになっていません。
発見経緯: SCP-3970-JPの起源は大正時代に遡ると推定されています。1922年9月26日、農業従事者として勤務していた大富拓郎氏が、斗蔵山で失踪しました。そのおおよそ2週間後に拓郎氏の家族から捜索願が出され、拓郎氏の捜索が開始される運びとなりました。その最中、捜索に携わっていたエージェント・緑川が当時拓郎氏が居住していた民家内より、以下の日誌を発見しました。その内容に沿うような形で財団による捜索が実施され、その結果としてSCP-3970-JPが発見されました。以下はその日誌の抜粋となります。
大正十一年九月十日
思ひかけなく早起きをしてしまつた。
一面に降りたる雨に憂ひを覚えつつ、わたしは仕事を放り、あの不可思議の森へと足を踏み入れていた。
なんでも、見たことも触つたこともない昆虫ばかり、そこには棲んでゐた。鮮やかに、赤、黄色、パアプルの色をした蜘蛛や蝶がそこらぢゆうで羽音を響かせていた。普段、蚕にしか触れることの許されなかつた、わたしにとつてはまさに、ぱらいそのやうな場所であつた。
ただ時折、ぼんやりと、ここは現の場所ではないのではないかと思ふことがあった。ここは神の地であり、人が立ち入ることは許されざる場所なのではなゐかと。しかし、もう立ち入るのはやめようと思えども、明日になれば、足がそちらを向いてしまう。私はこんなにも意志の弱い人間であつたのだろうか。
大正十一年九月十五日
今日も私はあの森へと向かつて動いてしまつていた。葉の隙間を縫ふ、ぞうつとするほどの大きさをした鳥のやうな黒い影に足が竦もうとも、何とも思へぬ耳を劈くやうな羽音に驚かされようとも、次の時には、その形を探して私の足は森の奥へ・・・と進んでいつてしまつた。
黒い影の正体は両の手を覆ひ尽くしてしまふほどの蛾であった。耳を劈くやうな羽音を響かせていたのは、三本の角を持つた、奇特な形をした甲虫であつた。それらに触れる度、何とも言えぬ高揚感に体が打ち震えるようで、もう一歩、もう一歩、ざく、ざく、ざく、と。随分と遠くまで来てしまつたと思つて見れば、辺りはすつかり夕暮れで、家に帰るころには朝日が昇つてくるのが見えるほどであつた。もつと長くあの場所に留まつていたいとそう思ふばかりである。
大正十一年九月廿日
しつかりとあの森に暫く留まる準備をして出かけようと思ひ、この日誌をしたためている。
あちらでは新たなものを持ち込み、そこでの虫たちの様子を書き記してゆくつもりである。
少なくともこの荷物で一週間ほどは持つはずだ。だからこの後、私が帰つてきていなければ、どうか表紙裏に書いた森の中まで探しに来てほしい。
当時に実施された第一次探索調査において、SCP-3970-JP内部空間では、2025年現在の基底現実にて未発見であると推測される生物の存在が複数確認されました。しかしながら大富拓郎氏の所在については依然として不明なままでした。以下はその第一次探索調査において発見された生物をまとめたリストを一部現代語訳し抜粋したものとなります。原文に関しては追加資料3970-JPを確認してください。
- Eublaberus属に属すると推測される未記載種のゴキブリ。体長約80mm。主に落ち葉の下や木のウロに隠れて生息している。他のEublaberus属と同様に肉食性の強い雑食性であり、主に腐肉を好む。外敵と接触する等、身の危険を感じた際に移動速度が著しく上昇し、高速移動によって逃走する生態を持つ。ソニックブームの発生も確認できることから移動速度は音速を超えていると思われる。移動時に発生するソニックブームにより部隊員数名の脚部が負傷、夜間に負傷した脚部に食害を受ける等の被害が多発した。
- Plesiophthalmus属に属すると推測される未記載種のゴミムシダマシ。体長約60mm。樹上棲であり、主に木の幹や植物の茎にしがみついて樹液を餌としている。強酸性の体液を持ち、身の危険を感じた際に周囲に噴霧し、外敵の粘膜に強い刺激を与えることによって身を守る生態を持つ。強酸性の体液を持つため、外骨格の強度も非常に高い。体液の生成プロセス、外骨格の組成等の情報は不明。体液が粘膜に接触した部隊員には失明、呼吸器不全、皮膚疾患、感染症等の症状の発生が確認された。
- Scorpiops属に属すると推測される未記載種のサソリ。頭胸部先端から尾節先端までの体長約200mm。主に水辺付近に生息。10分ほどの時間であれば潜水も可能。尾節が著しく発達しており、先端は鱗のような模様と金属光沢を持つ。この発達した尾節の先端を水中に垂らすことで擬似餌として用いて魚類を釣り、捕食する。尾節先端に食いついた魚は3秒程度で動きが麻痺しているため、脊椎動物に対して強力な神経毒を持つと思われる。
- Zoosphaerium属に属すると推測される未記載種のタマヤスデ。体長約90mm。地中棲。採餌の際に樹皮を伝って樹上へ登り、樹皮やそれに生育している地衣類等を餌としている。身の危険を感じると体を丸める事で木から落ちて外敵から逃れるが、体を丸めた際に不明な原理で重量を著しく増加させ、落下後に地面にめり込む事でそのまま地中へ逃走するという生態を持つ。探索時に樹上からの本種の落下により部隊員数名が死傷した。
- Morpho属に属すると推測される未記載種のチョウ。開翅長260mm。幼虫や蛹は発見されておらず、詳細な生活環は不明。翅の表側は玉虫色の構造色を持ち、裏側は褐色の眼状紋が存在する。鱗粉が非常に舞いやすく、飛翔時に玉虫色の鱗粉が周囲に舞う。鱗粉を吸引した状態で本種の眼状紋を視認すると、パラノイア等の精神異常を引き起こす。本種によって引き起こされた精神異常により部隊員数名が行動不能になった。
- Bombyx属に属すると推測されている未記載種のガ。体長40mm。幼虫や蛹は発見されておらず、詳細な生活環は不明。カイコ(Bombyx mori)に酷似した外見を持つが、本種は口部や飛翔能力等の生存に必要な身体機能を備えている。また、身の危険を感じると全身の繊毛を肥大化させ、大きな綿毛のような容姿に変化する。
その後、1948年3月6日、SCP-3970-JP内部空間の全容把握を目的とし、改めて複数の機動部隊による大規模なSCP-3970-JP内部空間の第二次探索調査が実施されることとなりました。以下はその中でも、著しい調査結果を挙げた機動部隊み-7(”大蝙蝠”)によって撮影された映像記録を一部現代語訳した書き起こしとなります。
日付: 1948/03/06
探索部隊: 機動部隊み-7(”大蝙蝠”)
対象: SCP-3970-JP内部空間
部隊長: エイブル
部隊員: ベイカー/チャーリー/ドッグ
[ログ開始]
エイブル: 試験無線、試験無線。ハロウ、こちらエイブル、探索開始箇所に到着した。ベイカー、チャーリー、ドッグ、応答を。
[ベイカー、チャーリー、ドッグが順にエイブルの無線に応答する。SCP-3970-JP空間内においてはエイブル、ベイカー、チャーリーの3人が実働部隊、バックアップ、並びに待機部隊としてドッグが割り当てられている]
エイブル: これから探索を開始する。我々は開始箇所より北東の方向への直進を担当している。その他の方角に関しては他の部隊が探索を行うため、ルートを外れる、もしくははぐれることのないように慎重に進むように。
[ベイカー、チャーリーが肯首の意思を示す。それを確認すれば、エイブルが指定された方角の森林へと足を踏み入れる。森林内は南アメリカの熱帯雨林帯と同様の特徴を示す動植物が確認されており、人為的な痕跡などは映像から確認できない。探索して1時間49分32秒後、ベイカーが木々のうち1本へ注意を向ける。]
ベイカー: エイブル、明確に巨大な何かがいる。
エイブル: 冷静に。空間内には複数の動植物が存在している。それが敵対的かどうかを見極めるように。
[臨戦態勢を取りながらベイカーのみが注目していた木々に近づく。間髪入れず木々が揺れ、身長186cmのベイカーの半分ほどの全長のネズミと推測される生物が他の木々へと飛び移りながらベイカー達から離れていく様子が映像に記録されている。]
チャーリー: 驚いた。虫だけじゃなくて動物まで巨大なのか、この森は。
ベイカー: 巨大な昆虫を餌にしている以上、生物も巨大になるといった仮説が考えられる。ただそれを考察し、実験し、確かめるのは研究班の役目だ。私たちは私たちの役目を遂行しよう。
[再びルートを沿う形で3人は適宜休憩などを取りながら内部空間の進行を開始する。先ほど出現した大型のネズミらしき生物が進行中に度々発見される他、当時記録されていなかった未発見の種と推測される昆虫類などに対し、3人によってサンプル回収が実施されていく。探索開始から7時間39分21秒経過時点でチャーリーが手元のカウンターを確認する。]
チャーリー: ネズミがやけに多くないか?
エイブル: 個体数が多いだけという可能性はあるが、確認をしてみよう。
[エイブルが別部隊へと確認の無線を行う。数分の会話の後、無線を終えたエイブルが2人に話しかける]
エイブル: ネズミは複数見つかってはいるものの、私たちほど多く確認した部隊はない様子であった。近くに巣がある可能性が高い。
チャーリー: それかこの方向が森の鬼門だったりな。ほら見ろ、あの樹なんかアーチを描いて俺たちを迎えているみたいだ。見るからに人為的に捻じ曲げられているけどよ。
エイブル: でかしたチャーリー。警戒を解くことなく辺りを散策しよう。
[部隊全員がアーチを描くように曲げられた細木へと近づく。付近には複数の散らばった絹製の着物片、並びに経年劣化の痕跡が見られる骨複数が発見される。部隊によりそれらは回収されていく]
ベイカー: エイブル。
[ベイカーが地面の一部を指差す。該当箇所は土の色が周囲と違い、平坦ではなくやや隆起している]
エイブル: 掘り返す。異常が確認された場合は速やかに退避の上、別部隊に情報共有すること。
[エイブルが該当箇所を器具を使い掘り返し始める。作業を開始して24秒後、地中から風化が進んだ1冊の綴紙帳が発見される。発見時点では劣化が激しく、その場で内容を理解することは難しいとエイブルは判断し、重要書類として回収を行った。]
エイブル: 重要資料を確保したため、一旦基地へと帰還する。
[以後、基地への帰還まで特筆すべき事象はないため割愛]
[ログ終了]
補遺1: この探索により得られた骨の一部をDNA鑑定した結果、大富拓郎氏のものであることが判明いたしました。また、探索途中に発見された綴紙帳の一部は復元が実施され、それらの読み取りが可能となりました。内容と発見場所から推測するに当綴紙帳は大富拓郎氏の日誌であると推測されています。以下はその綴紙帳の内容の書き起こしとなります。
大正十一年九月二十二日
二日経つてわかつた事がある。
此処はやはり現の世ではないらしい。あのような大きな廿日鼠を私は見たことがない。仕事場の蚕を食ひ荒らした鼠の首領も、あそこまで大きくはなかつた。一体、どれだけの蚕を、虫を食めばあのような姿になるのだらうか。あの、ぎらぎらとした黒曜のやうな大きな瞳に睨まれるだけで、蚕棚の蛹を全て食い散らされたあの日を思ひ出して、背中に寒気が走る。よくもまあ、職業病といふやつだろうか。
大正十一年九月二十四日
悪寒が止まらない。どうやら何かの病を負つてしまつたのかもしれない。
この現のものではない病を家族に持ち帰るわけにはいかない。ここで快復するまで待つ他ない。幸い、体は少し怠いが動くことはできる。先ほど水辺も見た上、食料もまだ残つているし、見たことはないが果実の類も少しは見られる。しばらくは動かずにここで過ごそうと思ふ。
大正十一年九月二十七日
症状は日に日に悪化の意図を辿つている。朝は血尿が出た。
しかしながら吉兆もあつた。空守様が姿を現わしたのだ。伝承の通り、その体は空を割くほど大きく、自分の姿が米粒のごとくちつぽけに見えるほどであつた。すぐにその姿は見えなくなつてしまつたが。何か、幸運なことなどがこれから起きるといいのだが。
上記の内容を受け、当時の財団により「空守様」に該当する伝承の調査が実施されました。しかし該当する伝承が流布している地域は極めて少なく、調査時点においてもその資料は希少でした。以下はその中でも「空守様」の成立に関わる重要な資料として蒐集院との合併の際に引き継がれたものとなります。
かつて空という女ありけり。その御顔美しく、八百万の神が求愛せん。ただ、その御身こそ人のものなれば、神とあやなしと、その悉くを否み、静かなる里にて、蚕の繭を紡ぎて暮らしんず。
その村、百という男あり。男、空を恋慕い、足繁くその元へと通い、共に繭を紡いで暮らせん。いつしか百と空、目合えばその村一番の番となりける。
然るに、八百万の神そのことを心得ず。殊更、鼠神これを瞋恚1とし、山里のあらゆる蚕を神使に食わせん。里の者、これを煩い空をいと大層苛み、それゆえ空、身心いたく病気付く。病、癒ることなく時過ぎゆき、さてまた空を虫食む。日に異にその御身、蚕の如く白く細やぎ、美相憎さげなるは忍び難し。されども百、ゆめゆめ去らず、里の者彼を苛まんと空を介抱せん。ただし、天命、限りありけり。終にその身罷る時、空、一言を遺しし。
曰く、神掛けて生を隔ち、また、蚕の繭をしるし、吾が君に廻り合はんと。
百、然して遺言へ信を成し、蚕を鼠より護り、もて傅く。これを見て毘沙門天、いたく哀れがり、男を神使として迎へ取る。忽ち、丈立ち四里を越え、その御身人の能く及ぶ所に非ずの巨躯とならん。それより御先となりて、蚕養いたる里を守りにけり。その名を「空守」と言う。
また、調査と同時並行にて各機動部隊を編成し直した上でSCP-3970-JP内部空間の第三次探索調査が実施されました。第三次調査での探索と進行は、大富拓郎氏の骨、並びに日誌の発見された北東方向に限定され、可能な限りの進行がなされました。以下は合同調査隊内での機動部隊み-7(”大蝙蝠”)によって撮影された映像記録を一部現代語訳した書き起こしとなります。
日付: 1948/05/15(探索開始日)
探索部隊: 合同調査隊-7
対象: SCP-3970-JP内部空間
部隊長: エイブル
部隊員: ベイカー/チャーリー/ドッグ/イージー(ドッグ・イージーは大蝙蝠とは別の部隊からの割当)
[ログ開始]
[探索開始から約48時間の間、適宜休憩などを取りつつ合同調査隊-7は北北東方向に進行を続行する。その間にも未発見、並びに異常種と推測される動植物は発見されるものの、日誌内に描写されていたような存在の姿を認識することはできていない。そして探索開始から48時間29分33秒経過した時点で、合同調査隊は高さ推定30mほどの黒い硬質の物体で構成された壁面に接触する。]
エイブル: 壁か。非常に硬質の物体で形成されている様子であり、破壊は非現実的であると判断する。
[エイブルの無線に他の調査隊からも連絡が入る。同様に他の調査隊も壁面に接触したとの報告がなされ、それ以上の北東方向の進行が不可能であることが告げられる。]
ベイカー: 小型の九九式破甲爆雷ならあるがどうだ?
チャーリー: 俺らまで吹き飛ぶな。冗談はよしてくれ。想像するだけで寒気がする。
ドッグ: 硬質ではありますが [壁面を叩く] 材質としては軽量な印象を受けます。継続的に衝撃を与えることで破壊できる可能性はありますね。
イージー: となると超硬合金のドリルでも持ってきた方が良さそうだな。とはいえ一時的にでもオブジェクトに手を加えるのは各部門が黙っちゃいないだろうが───あ?
[イージーが突如壁面を凝視する]
エイブル: イージー?
イージー: その壁、今動かなかったか?
エイブル: 総員退避! 壁面から離れ臨戦態勢!
[エイブルが無線に対して呼びかけを行う。合同調査隊が戦闘、並びに退避体勢を整えるのと同時、壁面がゆっくりと調査隊の正面から見て右向きに平行移動を始める。壁面は複数の同様の硬質の複数の物体が繋がるような形式で構成されている様子であり、その移動速度が徐々に増加していく。]
エイブル: 何が───これは───雲?
[合同調査隊の足元一帯に影が落ちる。カメラが上部を向く。調査隊の中空に先ほど地面を移動していたものと同様の壁面と思わしき物体が浮遊しており、同時に絶え間なく様々な方向に移動している様子を捉える。壁面と思わしき物体にはその1つごとに半透明の黄色の鋭利な突起が複数本付随しており、それらは数10mほどの大きさであることが映像より推定される。]
ベイカー: おお───神よ。
[ベイカーとチャーリーが発砲を開始する。銃弾は全て物体に跳弾するような形で散乱し、効果は確認されない。エイブルはベイカー、ドッグがチャーリーを引っ張るような形で退避行動を試みるものの、数m先の地点においても同様の硬質の物体が浮遊している様子を映像記録は映し出している。]
ドッグ: おいおい嘘だ、
[約1.4秒のみ映像は硬質の物体が調査部隊の右方向から迫る様子を映し出す。その後、複数の破砕音と同時にイージーが保有していた映像機材からのシグナルがロストする]
[ログ終了]
補遺2: 上記の映像記録は合同調査隊-7のイージーが記録の保存されていた映像媒体を持ち帰ったことにより復元されたものです。イージー以外の合同調査隊は現在時点で全て消息不明であり、実質的にロストしたと見なされています。以下はイージーの回復後に行われたインタビュー記録の書き起こしとなります。
回答者: 合同調査隊-7 イージー
質問者: 森本研究員
<記録開始, 1948/07/30>
[前略]
森本研究員: あの映像記録以後、空間内では何が起きていたのでしょうか。
イージー: 俺は [思案] 運悪く、生き残った。だからそれが何なのかを見てしまった。あれはあまりにも巨大な [嘆息] ムカデだった。なんて事はない。あいつはネズミのような俺たちを振り払うために、その体躯を振るったに過ぎなかったんだ。ただそれだけで、嵐が通った後のように、何も残ることはなかった。森本研究員: それは [思案] にわかには想像し難いですね。それほどまでに巨大な生物がいるとは。
イージー: 俺も全長を見たわけじゃない。けれども、ゆうに数キロはありそうだった。だからこそなす術もなかった。打ち上げられた後、俺は水辺に落ちたからこそ生き残れたけれども、ああ、エイブルは上半身だけが飛んでいたし、ドッグが落ちた場所は明確に水辺じゃあなかった。俺しか生きていないと確信できるだけの光景だった。
森本研究員: 帰ってきていただけたことをまずは喜びましょう。そして、それ以上に伝えたいことがあるとのことで本日はこのような機会を設けたのですが、それは一体なんでしょうか?
イージー: 航空機をあの空間内に送り込むことは可能かどうか試してもらってもいいか。俺の見間違えじゃなければいいんだが。
森本研究員: それは非常に難しい相談ではありますね。航空機の小型化にはまだ至っておらず、あれを該当座標まで送り込むことは非常にコストなどがかかります。善処はいたしますが、なぜそのような提案を?
イージー: 俺が打ち上げられた時、一瞬、あの大ムカデの体と体の隙間が見えたんだ。そこが明確に色が違っていたか、その光景を今も鮮明に覚えていて。
森本研究員: 色が違う?
イージー: ああ、黒いあの体躯と黄色い脚が蠢いている中に、少しの間だけ、白いものが見えたんだよ。だから、もしかしてだけれども [思案]
イージー: 卵、なんじゃないかって。
<記録終了>
補遺3: 1949/07/24、インタビュー記録を受け、SCP-3970-JP内部に当時最軽量サイズの航空機の持ち込みが行われ、言及されていた実体に対しての追加調査が実施されました。結果としてSCP-3970-JP内部空間において、該当の存在が確認されたため、暫定的にSCP-3970-JP-1に指定される運びとなりました。SCP-3970-JP-1からは遠方からの調査のみではあるものの、一貫して凡そ219センチアキヴァの放射が認められており、何らかの神性存在であることが推測されています。
また、インタビュー内で言及されていた卵の存在については、イージーの認識の相違があり、存在そのものは確認されましたが、それがカイコ(Bombyx mori)が生成する繭に類似した全長30mほどと推定される物体であることが追加調査により判明しています。それを取り囲むようにしてSCP-3970-JP-1は存在していますが、基本的にその地点からの移動は確認されていません。
その後、1958/09/04においてX線を用いた器具によって遠隔での繭の内部調査が実施されましたが、その中身は空洞であり、異常は発見されていないことが判明しています。直近の報告書の更新日時である2025/04/22時点でSCP-3970-JP-1、並びに繭の変化は確認されていません。


