SCP-4351-JP(着色強調箇所)
特別収容プロトコル: SCP-4351-JPはPantokratōrクラスに指定されており、収容は現実的ではありません。財団の対応は発生する事案の解決や、情報の規制/修正に限られます。
SCP-4351-JPは安静状態が望まれています。安静状態の実現を目的に、SCP-4351-JPの生態調査が行われています。
説明: SCP-4351-JPは行政の取扱上"四国地方"と呼称される日本国の島嶼の地底に存在している生物学的な分類が困難な異常生命体です。
SCP-4351-JPは巨大な体躯を有しており、四国地方はSCP-4351-JPに岩石や土壌が堆積することで形成されています。SCP-4351-JP本体の外見が露出した事例は存在せず、実態は明らかになっていません。SCP-4351-JPの体温は超高温であり、周囲の土壌も高温に加熱されているため、地底探査や掘削による実態調査は難航しています。また、調査の過程でSCP-4351-JPを刺激し、SCP-4351-JPが大規模に反応した場合、四国地方を中心に甚大な被害が生じるため、調査の規模を拡大することは制限されています。判明している情報から、SCP-4351-JPの生態に関する研究は僅かながら進行していますが、前述の特徴の時点でSCP-4351-JPは生物学的な法則や常識から逸脱しており、既存の生物学では解釈不能な生物である可能性が高いと評価されています。
平常時のSCP-4351-JPは不活性状態であり、生物的な活動の一切を行いません。活性化の条件は判明しておらず、同様にSCP-4351-JPを意図的に不活性化させる手段も発見されていません。これまで財団以外の複数団体が、活性化状態のSCP-4351-JPの制止を試みましたが、全て失敗しています。
補遺1: 活性イベント
西日本大災害当時の日本国内の報道
SCP-4351-JPが活性化した実例は2015年12月25日に発生したイベント・西日本大災害1件のみです。
西日本大災害は、死者326,691人、行方不明者8,720人にのぼる被害を齎した災害として民間に認知されるイベントであり、異常実体由来の事象ではあるものの、規模の大きさから財団によるヴェール維持は破綻しています。
2015年12月25日10時1分に四国地方を震源とするマグニチュード9.1の地震が発生しました。震源となった四国地方では築年数が古い日本家屋が多数倒壊した他、住宅火災が山岳部へ延焼し、四国全域で大規模な火災が発生しました。山岳部では土砂崩れや地滑りが多発し、四国地方内に孤立した地域が大量に発生しました。更に最大高さ13 mの津波が高知県沿岸部に到達し、沿岸部は壊滅的被害を受けました。この地震に誘発され日本全国でマグニチュード7以上の地震が発生し、更に南海トラフにおけるプレート境界が全割れを起こし、和歌山県沖でマグニチュード9.0の地震が発生しました。これにより、四国地方以外にも近畿地方、東海地方、中国地方、九州地方で甚大な被害が発生し、日本列島の太平洋沿いを中心に壊滅的被害を齎しました。
震災発生初日の時点で四国地方が約4 km南下しているのが確認されました。鳴門大橋やしまなみ海道が断絶している様子が報道されたことで南下は民間に広く露見しています。四国地方の南下は地殻変動の法則から逸脱したものであるため、民間人の学者らが現象の異常性を指摘しています。
この南下により本州と四国地方を繋ぐ陸路が分断されており、車両等による救援が不可能でした。また、南下に際して発生した津波が山陽地方沿岸部に直撃しており、この津波の高さは10 mに達しました。山陽地方瀬戸内海沿岸は内海地形のため津波の対策が他の地域に比べて乏しく、山陽地方瀬戸内海沿岸部にて日本国が想定する以上の被害が発生しました。
港の損傷や津波で流出した瓦礫の影響で瀬戸内海を船舶で移動し救助活動を実施することも不可能となりました。太平洋側にあたる高知県南部では震災発生時に到達した津波で流出した瓦礫が海上を漂流している他、南下に際して巻き上げられた海底の岩石が漂流しているため、こちらから船舶で救助活動を行うことも不可能でした。航空機による救助活動も計画されましたが、震災により四国各地の滑走路/ヘリポートが破壊されており利用できず、災害3日目時点でも市街地の火災が延焼を続けており、着陸自体が困難でした。総じて四国地方全域で被災者の保護が進まず、被害の拡大に繋がりました。
経過1: 高知県沖周辺/第一次対策会議
災害発生から5日が経過した時点で四国地方は太平洋上を約25 km南下していることが発覚しました。四国地方は南海トラフの大陸斜面に到達し、水深約200 mの海域を更に南下しています。徳島平野や高知平野は完全に沈没し、四国地方の被災者らは山岳部へ避難していました。
民間人の学者らが共同声明にて、四国地方の長距離南下は極めて異常な現象であると警告を発信しています。国際連合は緊急の対策会議を招集し、西日本大災害を世界的に注視が必要な災害だと位置付けて議論を行いました。財団を含めて複数の超常団体は、GOCとJAGPATOを経由することでオブザーバーとして招請されました。
四国地方の被災者の救助方法や、南下軌道上の周辺地域住民の避難方法が議論されました。事態解決に向けた国際的協力の必要性が確認され、自衛隊による四国地方住民救出任務に在日アメリカ軍が参加することが合意されるなど、一定の成果が得られたものの、今後発生が予想される被災難民の受け入れについては具体的な解決策が示されませんでした。
会議は概ね発生した災害に対する対処を検討する内容でしたが、会議中に意見陳述を行った日本生類創研の研究員により、四国南下を制止させることができるという主張が行われ、各国の注目を集めました。意見陳述を行った研究員は小早川 瑠那(こばやかわ るな)を名乗る不審人物であり、「四国地方自体が異常な巨大生物であり、生態を精査し、性質を十分理解した上で対処することで南下を防げる」と主張しています。この時点では小早川の主張は飛躍しており、小早川の意見陳述を傍聴した上で興味を示す国家や科学者は存在しませんでした。
小早川はその後恋昏崎新聞社の取材を受けており、インタビューにて意見陳述の内容を再度主張しています。以下はインタビュー記事の抜粋です。
情報資料 恋昏崎新聞社 #88212
2016/1/2 報告者: エージェント・時任
付記: 西日本大災害に関する恋昏崎新聞社の記事より引用。
<省略>
広末: 四国が巨大な生物だという主張は些か無理があるのではないかと思うのですが。
小早川: 正確には四国じゃなくて、四国を背負ったまま移動してる巨大生物ですねー。
広末: より無理があるように感じます。既存の地質学を真っ向から否定していますね。
小早川: 地質学と言ってもね、そもそも地質学で四国の南下を説明するのは既に不可能ではありませんか? もはや四国に関する事象は地質学の領域を超越していると思うんですが。
広末: それはそうですが、それにしても「じゃあ四国は巨大生物が動かしてます」というのは飛躍しているように感じるという訳です。主張の根拠を伺いたいです。
小早川: はーい。我ら日本生類創研の『超々古生物研究室』は、今から30億年前に大陸サイズの超巨大生物が存在していたと確信しています。結論から言えば、四国地下にこの古代巨大生物の末裔にあたる生物が存在していると考えています。
広末: これまた話のスケールが大きい。
小早川: 先々代の研究室長は、日本生類創研の前身組織である日本生類研究所の時代に、19世紀の冒険家であるロレンツ・エルドリッヂ1氏の遺品を入手しています。それは巨大な鱗でした。1枚で高さ幅共に3 mの巨大な鱗、組成は当時の研究設備では解明できませんでしたが、金属の特徴を有していたと書き残されています。
広末: ロレンツ氏というのはアノマリーハンターの故ロレンツ氏ですかね?
小早川: ええ、そうです。ロレンツ氏は死の際に多くの遺品を超常社会に放出しています。そして先々代の室長が裏市場に流れていた鱗を買い付けたという訳です。
広末: なるほど。
小早川: 鱗の年代調査は難航しましたが、鱗表面に残っていた特徴的な高温の痕跡が、今から30億年前、バールバラ大陸が存在していたとされる時代に地球に衝突した隕石由来の物だと判明しました。
広末: バールバラ大陸は地球最初の大陸のことですね。当時はまだアフリカ大陸東部の極一部と、オーストラリア大陸北西部の極一部だけが海面から露出して大陸を形成していたとされているものですね。
小早川: 流石、お詳しい! その後も調査を行い、鱗の年代は特定できましたが、産地までは特定できませんでした。アフリカかオーストラリアか、それとももっと別の場所なのか、結局分からずしまいだったようです。
広末: なるほどなるほど、話が読めてきました。かつて地球には巨大な鱗を持つ巨大な生物が存在していて、日本生類創研はその痕跡を入手していた…..と、そして四国からもそのような痕跡が発見されているのですね?
小早川: あー、いいえ、そういう訳ではありません。
広末: え?
小早川: 痕跡からそのような巨大生物が居たのは間違いありません。ただ、四国との関連性はこれから見つけ出すところです。
広末: おや? それでは現時点で根拠がないということでは。
小早川: ま、全くないわけではありません。例えば四国の南下速度は一定ではなく、加減速を繰り返しています。これは四国地方が生物に移動させられているが故の速度ムラだと考えられます。また、余震の震源地を観察していると、震源地同士の距離関係には一定の法則があって、巨大生物の歩幅に依存している可能性があります。
広末: すいません。それらの根拠ではやはり、生物だと考えるのはこじつけめいているように感じます。
小早川: もちろん、これから研究を行います。鱗は戦後の混乱で失われてしまいましたが、記録は残っていますし、研究が進めば提示できる根拠も増えるはずです。
広末: 研究のアテはあるのでしょうか? 今の四国は上陸するのも容易ではありませんよ。
小早川: 正直、今の四国へ近づくのは難しいです。日本生類創研上層部は今回の件について他人事です。それどころか、研究室を非採算研究室として予算削減の対象になっています。集中して研究できる環境さえあれば、必ず痕跡を見つけて見せます。
広末: うーん。すいません。やっぱり現時点では根拠に乏しいトンデモ仮説という印象ですね。
<省略>
追加情報: 恋昏崎新聞社は当該文書末にて「日本生類創研が予算を減らしているあたり、日本生類創研も小早川氏の主張を疑っているのでは」と記しており、小早川の主張は信用されていないと評価されています。
インタビュー記事にて小早川が日本生類創研における待遇に不満を持っていることが示されたため、財団による引き抜き工作が実施されました。結果として財団は小早川を臨時職員として雇用することに成功しています。ただし、この時点では小早川の主張は財団にも信用されておらず、小早川による発信を制御する意味合いが多分に含まれます。
財団は四国地方へ臨時施設を建設し、研究拠点として利用する計画を立案しましたが、既に四国地方の沈没が進行しており、施設自体が沈没しても機能を維持できる拠点の建設は時間的に不可能でした。
代替として財団は、九十九機関2が建造していた拠点を研究施設として改造することを決定しました。この施設は九十九機関発足時に後藤象二郎3により建造された本部機能施設であり、九十九機関解散後は財団管理下の未使用施設となっていました。いかなる事態を想定していたかは不明ですが、深海層の水圧に耐える耐圧性を有しており、四国地方南下により施設が沈没した場合も機能を維持します。財団はこの施設を臨時サイト-4K81として整備し、小早川と施設運営スタッフ6名を配置しました。
経過2: 高知県沖周辺
2016年2月1日時点でも四国地方は南下を継続しており、元来存在した地点から約115 km南下していました。南下により四国地方は水深1800 mの海域に到達しており、陸地の99%が沈没しました。
日本国及び在日アメリカ軍による被災者保護は難航しており、一時は陸地消滅による残存被災者全員の水死も予想されましたが、災害発生後8日目にMCF4が救助活動に参加したことで状況が好転しました。MCFは擬リーマン多様体が搭載された異常な船舶を用いて救助を行ったとされており、擬リーマン多様体による拡張空間内に被災者を収容したと考えられます。災害発生後20日目時点で救助可能な被災者全員の救助が完了しています。5
臨時サイト-4K81は小早川が中心となって調査を実行しており、余震観測設備が獲得した情報から、四国地方がカニ(Brachyura)などに代表される多脚生物が四国地方を背負ったまま南下していると主張しました。この主張は、多発している余震の震度が予想より低いことや、余震の震源に法則性が発見されたことを根拠にしており、小早川の仮説を補強する内容です。
小早川の研究姿勢には一定の評価が下せるものの、勤務態度については複数の問題が報告されています。以下はその例です。
- 管理区画に私室を増設。
- 管理区画へのアクセスパスワードを「password」に変更。
- 頻繁な怠惰行為の確認。
小早川の処分は保留されましたが、処分の検討は継続されます。
経過3: 南海トラフ-プレート境界周辺/第二次対策会議
会談するインドネシア共和国のジョコ・ウィドド大統領と米国のジョー・バイデン副大統領
2016年7月12日に四国地方はユーラシアプレートとフィリピン海プレートのプレート境界を越境しました。越境後も四国地方は南下を継続しており、これはフィリピン海プレートの進行方向を逆走しています。この挙動は明確にプレートテクトニクスから逸脱する異常現象です。また、小早川は四国地方の急加速を報告しており、1日に8 kmの速度で南下を開始しています。
これら情報は財団によりJAGPATOに共有され、日本国外交ルートで各国上層部に伝達されました。多くの民間人科学者らはこれまで四国地方の南下は地殻変動による現象であり、四国地方の南下はプレート境界で停止すると予測しており、今回の逆走と加速で各国上層部や科学者らは混乱に陥りました。この混乱が契機となり、2回目の国際会議が招集されました。
緊急会議では、四国地方の南下が停止しなかった場合、インドネシア共和国及びパプワニューギニア独立国が存在するニューギニア島に衝突する可能性を示唆する主張が発表されました。直近5日間の南下ペースを元に計算した結果、緊急会議時点から約2年後にニューギニア島に衝突すると算出され、衝突時にはマグニチュード7~8程度の地震が発生すると予想されました。沿岸部で高さ20~60 mの津波が観測されると算出され、地崩れやラバウル火山の火山活動促進なども予想されており、ニューギニア島及び周辺諸島が受ける被害は甚大なものだと評価されました。衝突までに時間が存在するため、住民の避難は可能ですが、島自体が受ける被害が大きく、島の永久的な形状変化や熱帯雨林の消滅が予想されています。また、衝突するまでの南下過程ではフィリピン共和国やマリアナ諸島を中心に地震や津波の被害が予想され、周辺海域の自然環境の壊滅が確実視されました。
また、四国地方の異常な挙動から、平素であれば信頼されないと評価されるような情報が各国上層部から再評価されました。これにより小早川が第一次対策会議で主張した仮説を有力視する勢力が出現しました。特にニューギニア島への衝突時に主たる罹災国となるインドネシア共和国が過激に反応し、有力な国家に対し四国地方の破壊を目的とした大量破壊兵器の供与を要請しました。この要請は各国により拒否されましたが、依然としてインドネシア共和国は四国地方の破壊を画策しています。ただし、四国地方自体は巻き上げられた沈殿物により目視不能であり、漸深層を南下する四国地方を電子的に捕捉することは困難であるため、インドネシア共和国による破壊工作は不可能であると評価されていました。
補遺2: SCP-4351-JP分類
小早川は四国地方が南下する度に発生する地震の解析とマッピングを精査し、四国地方が10対の脚を持つ分類不能巨大生物に背負われる形で運搬されていると主張しました。
この主張に対抗/反論できる仮説を財団は所持しておらず、財団日本支部理事会は小早川の主張を認める方針で合意しました。財団は四国地方を移動させている仮説上の巨大生物をSCP-4351-JPに分類し、オブジェクトクラスをPantokratōrに設定しました。Pantokratōrクラスは収容対象の収容が現実的ではないほど大規模な存在である場合に付与され、財団の対応は事態解決や情報統制に限られます。
経過4: マリアナ海溝周辺/襲撃
2017年3月27日に四国地方及び臨時サイト-4K81がインドネシア共和国政府により攻撃を受けました。攻撃は熱核爆弾によるもので、熱核爆弾と四国地方の位置情報は中華人民共和国がインドネシア共和国に対し秘密裏に提供したものでした。中華人民共和国は南シナ海問題の譲歩を条件に協力要請を受託したことが判明しており、財団による監視はあったものの、国家規模の隠匿と諜報活動が財団の工作をすり抜けました。
財団SCPSにより核搭載魚雷20発のうち19発が機能停止させられ、不発に終わりましたが、内1発は四国地方周辺で爆発しました。衝撃波により臨時サイト-4K81が破損したほか、SCP-4351-JPの軌道に変化が発生しました。
SCP-4351-JPは核爆弾爆発後に、一時的に加速しながら東方向に移動しました。これによりSCP-4351-JPはマリアナ海溝に侵入しました。小早川はSCP-4351-JPが衝撃波でダメージを受け、防衛反応により急速に移動したと予想しています。従来のSCP-4351-JPの軌道予測ではマリアナ海溝は通過しない予定であり、臨時サイト-4K81の耐久性を超越する水圧が生じる可能性が懸念されました。
また、臨時サイト-4K81の破損は限定的でしたが、浸水が発生し、職員宿舎を含む複数エリアに深刻な被害が発生しました。特に人員への被害が深刻であり、管理室を私室に改造していた小早川を除き、全ての職員が死亡または重傷を負いました。小早川が緊急隔壁システムを起動したため、被害拡大は阻止されましたが、拠点修復を要する状態に陥りました。
インドネシア共和国政府に対しては財団より制裁が下され、インドネシア共和国がSCP-4351-JPへ危害を加えることは今後不可能になりました。
経過5: マリアナ海溝南下
四国地方のマリアナ海溝侵入に伴い、臨時サイト-4K81の圧壊が懸念されましたが、SCP-4351-JPが水深約4,500 mの海域を選択的に維持しており、臨時サイト-4K81は圧壊を免れています。ただし、小早川は四国地方及びSCP-4351-JPが深海層の環境による悪影響を受けていると指摘しています。
小早川研究員所感
正気を疑う核攻撃から数か月、この施設には私しかいなくなってしまいました。
海水に阻まれて電波は届かず、陽の光も届かない暗い海の底に1人でいるというのは、人によっては発狂しそうなものですが、どうやら私には適性があったようで……。毎日掘削機から出てきた土壌を検分し、SCP-4351-JPの生態の痕跡を探すのはなかなか充実しています。
施設内は設備の僅かな稼働音が聞こえてくるだけで酷く静かです。ですが、核爆発以降から外からうなり声のような重低音が地味に観測できるようになりました。音の正体は不明ですが、音は地中から響いており、SCP-4351-JPの唸り声だと私は予想しています。水中は地上より密度が高く、核爆発の衝撃がより強烈に伝わる……。SCP-4351-JPへ重度のダメージが入った可能性が高く、その痛みからくる苦痛で唸り声をあげているのかもしれません。
また、マリアナ海溝に入り込んでしまったのもSCP-4351-JP的にはマイナスかもしれません。四国の山岳部が水圧により砕け散っており、四国の地形が大幅に変化しているのです。SCP-4351-JPの全容が明らかになっていないため、地形の変化がSCP-4351-JPにどのような影響を与えるかは分からないけども、少なくともこの水圧がSCP-4351-JPにも作用しているのは間違いないと思います。これまでひたすら直進していたSCP-4351-JPが斜面部分に張り付き、これ以上水深が深くならないように進んでいるのは、深海層の水圧を嫌ってのものだと評価できます。
SCP-4351-JPが膨大な質量を持っているのですから、圧力自体に対し一定の耐性を有しているとは考えていたのですが、それには限度があるらしいですね。太平洋は漸深層に該当する海域が広く、SCP-4351-JPにとって太平洋を進むこと自体がそれほど良いこととは言えないのかもしれない。だとしたらそこまでして南下するのはなぜなんでしょう?
また、マリアナ海溝斜面を南下中に小早川が不明な文書を回収しています。
文書の内容は当該事案に直接的に関与しませんが、公開されない秘匿事由によりニューギニア島接近時に伴うサイト-4K81の再浮上時に小早川は記憶処理の上、解雇処分されます。
経過6: メラネシア大陸斜面周辺/迂回開始
2018年1月10日に四国地方はメラネシア大陸斜面に到達しました。財団の介入によりニューギニア島及び周辺地域の住民避難は完了していましたが、SCP-4351-JPは突如として東へ進路を変更し、ニューギニア島との衝突を回避しました。
小早川は進路変更に関する見解を示し、SCP-4351-JPの目的地がオーストラリア大陸であると予測しました。以下は小早川の所感です。
小早川研究員所感
遂に発見! 掘削機から得られた地下物質から、巨大な鱗のカケラが見つかりました。これはかつて日本生類研究所が獲得した30億年前の痕跡と似た鱗であり、恐らくは同質のものだと思われます。組成は硫化鉄やマグネシウムと、やはり一般的な生物の常識では測れないものがあります。
「同じものが見つかった」と書くと、SCP-4351-JPは30億年前存在する怪生物と同一の存在だと思うかもしれませんが、私の主張は必ずしもそうではないのです。かつて日本生類研究所が獲得した鱗にはバールバラ大陸時代の隕石の痕跡が存在しました。しかし、今回の鱗にはそれが存在していません。バールバラ大陸時点で地表に露出していたのはアフリカ大陸東部とオーストラリア大陸の北西部のみ、それ以外の場所はSCP-4351-JPが嫌がるような深海だったと考えられています。隕石による高熱の痕跡を受けず、それでいて水深が浅い場所、そのような場所があったとは考えにくい……。つまり、SCP-4351-JPと30億年前の鱗の持ち主は別の個体だという訳です。
では、30億年前の鱗の持ち主はどこへ行ったのか? 私はある程度予想ができています。バールバラ大陸時代、地表に露出していたと思われるオーストラリア大陸…..、そしてSCP-4351-JPは南下をしていた……。そこから導き出される推測とは、「オーストラリア大陸地下にはSCP-4351-JPの別個体が存在しており、SCP-4351-JPはオーストラリア大陸を目指して移動していた」というものです。
ニューギニア島の迂回は、ニューギニア島が目的ではなかったためだと考えられます。あまりに巨大なSCP-4351-JPは地上に出てしまうと浮力を失い、移動に必要なエネルギーが増加してしまう。そのため、ニューギニア島に乗り上げて移動するのは難しいのかもしれません。それならば、今後SCP-4351-JPはある程度東進した後、ソロモン諸島をすり抜けるように南下し、オーストラリア大陸を目指すと予想できます。
しかし、オーストラリアを目指してSCP-4351-JPはどうしようというのでしょうか? SCP-4351-JPとオーストラリア個体にはどのような関連性があるのでしょうか? オーストラリア大陸の大きさを考えると相当な体躯の差があるわけですが、個体間で大きな差が生まれるような理由があるとしたら「蜘蛛のようにオスメスで体躯が異なる種、生殖のために南下」あたりが考えられるでしょうか?
経過7: ソロモン諸島周辺~オーストラリア大陸棚周辺/編纂者交代
2018年7月29日に四国地方はソロモン諸島まで東進した後に再度南下を開始しました。この進路は概ね小早川の予測通りと評価されており、SCP-4351-JPはオーストラリア大陸を目的地としていると思われます。
その後、2018年11月25日に四国地方がオーストラリア大陸斜面に到着し、翌年2019年1月6日に四国地方陸地がオーストラリア大陸棚に到着しました。マリアナ海溝の水圧で四国地方の山岳部が圧壊しているため、水面露出までの期間が予測より遅延しましたが、凡そ試算通りの移動ペースです。周辺地域ではマグニチュード7以上の地震が頻発しており、オーストラリア大陸のプララメゼル火山の火山活動が誘発されています。財団主導で民間人の避難は完了しており、SCP-4351-JPへの対処を行う財団部隊が展開されていましたが、昨年末より発生しているSCP-3519の異常性により、民間の終末信者がオーストラリア大陸へ大挙して押し寄せている他、配置された部隊隊員らに集団自殺が流行しています。現状はSCP-4351-JPへの対応が困難です。また、SCP-4351-JP報告書の編纂を担当している研究員が失踪しており、代替として配置された研究員も失踪や自殺により担当者として定着しません。暫定処置として、当該報告書の編纂済箇所の編集権限をレベル5セキュリティクリアランスでロックした上で、小早川へ編集権が付与されました。以後、当該報告書の編纂は小早川が担当します。
編集テスト
SPCSCP報告書を初めて読んでます。
訳わからん文書を拾ったせいで処分されるらしい。普通に酷くね?
あと最初全然信じられてなかったとかメチャクチャ傷つく……
小早川研究員
経過8: オーストラリア大陸到着
小早川研究員手記
2019年3月4日に四国地方はオーストラリア大陸に到着~。衝突が予想されていましたが、SCP-4351-JPは衝突前に静止、衝突には至りませんでした。私は様子を見る意味も込めて、約3年ぶりに施設から出て探索に赴きました。
SCP-4351-JPが接近した際の地震で、オーストラリア大陸が誇る活火山「プララメゼル火山」が刺激されたようであり、標高10,521 mの世界最高峰の中腹から噴煙を挙げていました。SCP-4351-JP静止後も火山性地震が頻発しており、地震計はマグニチュード7以上の地震を無数に検出しています。これだけの事態が起きているというのに民間人共はオーストラリア大陸に居座り、挙句に四国へ上陸してきやがりました。そして連中は決まって「世界が滅ぶから」とわざわざ自殺していくのです。確かに「世界が滅ぶんじゃないかな」と思うような地震の連続ですが、こいつらが何のつもりなのか分からない……。
この無法者たちの大挙とは反対に、財団職員がまったく見当たらない! というか私を処分するという話はどうなったんだ? 誰も迎えにこない。それどころか、「この自殺志願者共をどうにかしてほしい」という私の連絡にも応答しない。(なぜ?)
2019年3月6日、ひでぇ天気だ。空は噴煙によりどんよりしている。
民間人共は全員自殺しました。そして財団職員とは誰も連絡が付かない。本当にゲンナリ。雄大な自然には私とSCP-4351-JPしか居ないようですね。もしかして自殺志願者共の言う通りに世界が滅んでしまったのか? 滅ぶとしたらこれからな気もするんだけど……。
SCP-4351-JPは相変わらず動かない。その代わりに、いつぞや挙げていたような重低音の唸り声を響かせています。こいつがどうやって音を発しているかも分からないんですが、なんというか物悲し気な声色を感じます。いったいSCP-4351-JPはなんのつもりでここまで来たんでしょう?
天変地異。まさにそう言うしかない。
散策を終え、施設内で休息をとっていたところ、感じたこともない地震に叩き起こされました。地震計が示した数値はマグニチュード11、東日本大震災の1,000倍以上の威力を持つ地震でした。私は寝台から弾き飛ばされ、数分間床に蹴りまわされました。さすがは財団施設と言うべきか施設は耐えていたのですが、私はたまらずに外に飛び出していきました。
時刻は夜。外に出ると、景色が一変していました。地震で崩れるような山はマリアナ海溝で砕けていたから土砂崩れのようなものは無かったのですが、地割れがとにかく凄まじかったです。ですが、それよりもオーストラリア大陸の変容が凄かった。プララメゼル火山が縦に裂け、大陸全体が沈み込み、崩壊を開始していました。その様子を受けてなのでしょうか? SCP-4351-JPの重低音が今まで聞いたことが無い程大きく響いていました。
そしてSCP-4351-JPのモノではない重低音がオーストラリア大陸から聞こえてきました。耳を塞がなければ鼓膜が吹き飛ぶような大音量。そしてプララメゼル火山が崩れ、その中から巨大な触腕が現れました。触腕は高温で赤熱し、その組成を伺い知ることはできません。巨大すぎる触腕は凄まじい長さを有しており、触腕は四国へ向かって伸び始めました。
「まずい」と思いました。攻撃してきたと感じたのです。しかし、実際は違いました。
触腕は四国の地表に優しく触れると、そのまま地表をゆっくりと撫ではじめました。それだけでも凄まじい地震が起きたわけですが、私には破壊行動には見えない。親愛の証としてのエモート、そのように感じました。そして、そこでは2体の重低音がより一層大きな音で響き渡っていました。
そのような時間がどれほど経ったでしょうか、そのうち触腕は徐々に力を失っていき、だらしなく四国に横たわると、徐々に海に零れ落ち始めました。触腕が海に沈むことに呼応するようにオーストラリア大陸が沈んでいく……。地震計はマグニチュード10の警報を挙げるが、SCP-4351-JPの重低音にかき消されて聞くことができなません。
再び私は地面に蹴り上げられ、段差から転げ落ちてしまい、気を失ってしまった。
SCP-4351-JPが再度移動を開始、オーストラリア沈没に際して発生した津波に乗るような形でかつてオーストラリアが存在していた場所に鎮座しています。観測気球を飛ばし、上空から眺めているが凄まじい景色だ!
これから何が起きるか、何も分からない。これからどうなるんだろ?
SCP-4351-JPがオーストラリアの残骸を吸収しているのだろうか? 四国がどんどん大きくなっているようです。砕けてしまった山岳部は戻らず、広大な平地となっていたが、更に面積が広くなっているように見えます。今の私には詳しい計測はできないため、調査には応援が必要です!
ところで、本当に誰も応答しない? 私がこれを書き続けている理由は誰かが見ると思っているからなんですが……。
交信ログ #1
2019/3/11 報告者: 小早川研究員
付記: 飼い主さんのためのログ。誰かが読むだろうと手記をRAISAにアップロードしていたところ遭遇した。
<省略>
SCP-2000-JP
小早川: わー! 犬ー!
SCP-2000-JP: こんにちは!!
小早川: 喋りおる。imaginanimalのお仲間かな?
SCP-2000-JP: イマジナニマル? 僕はSCP-2000-JPだよ!
小早川: はえ~、SCP? あれあれ、本当に財団は無くなったらしいな? SCiPNETに君みたいな名前の子がウロウロしても大丈夫なのかい?
SCP-2000-JP: 大丈夫だよ! 僕は五條さんっていう財団の人に頼まれてSCiPNETの中を探索してるんだ!
小早川: お! じゃあまだ財団はあるのか! その五條って人はどこのサイトの人なの?
SCP-2000-JP: えーっとねえ。どんな番号だったけな。……そうだ! 僕が持ってる情報の中を見ればどこかに書いてあるかも! えっとねえっとね……。あった! 『サイト-縺斐↓』だって!
小早川: ははは、さっぱり分からん。
SCP-2000-JP: うーん、ごめんね。僕は咥えたデータはどうも数字がおかしくなっちゃうんだ。
小早川: 大丈夫だよー。その五條さんがいるサイトには、五條さん以外どれくらい人がいるのかな?
SCP-2000-JP: ううん、今は五條さん1人だけなんだ。
小早川: あらら、やっぱダメじゃないか。天下の財団が寂しいもんだね。
SCP-2000-JP: うん。五條さん1人だからとても寂しそうだった。だから、お姉さんからお手紙届いたらとても喜ぶと思うな!
小早川: へー、なるほど。確かにね! じゃあ可愛い犬の郵便屋さんにお手紙頼んじゃおうかな!
SCP-2000-JP: わー! やったー! あ、でもなぁ。
小早川: んん? なんか気になることがあるの?
SCP-2000-JP: うーん。僕が咥えると数字が壊れちゃうから、お手紙からなるべく数字を減らしてもらわないとなあって。
小早川: へへ、大丈夫よ。お姉さんは前は日本生類創研ってとこで働いてたんだけど、そこではimaginanimalっていうSCP-2000-JP君に似た電子動物の研究もしてたんだ。私の専門ではないけど、君がお手紙を安定して運べるような小道具なら作れるかもしれない! ちょっと待ってね。
SCP-2000-JP: 本当!? 楽しみー。
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おかえり、SCP-2000-JP。
五條さん、ただいま。ねぇねぇ! 臨時サイト-4K81っていう施設で小早川っていう人が生きてたよ!
本当かい? 臨時サイト-4K81って……、思い出した、四国のやつだ。そうか、隔絶された深海に1人でいることで罹患を免れたのか。
すごい犬が好きそうな人だったな! そうだ! 小早川さんからお手紙預かってるよ! 僕が咥えると数字が壊れちゃうから、僕が付けられるポーチをくれたんだ! 中に入ってるよ!
ポーチというか、「新しいフォルダ」って感じだな…….。どれどれ
わくわく!
なーんでパスワード付いてるんだ。見られて困る人なんてもう居ないっての。
あ、分かった。あれでしょ、パスワードは「password」でしょ。うわ、本当にあってた。
ねぇねぇ! 中身はどんな内容なの!
ちょっと待ってね……。2つあるな
1通目は今の四国の様子。SCP-4351-JPに関する小早川さんの手記の電子データだね。
2通目は、アハハ。なんだこれ、辞表だわこれ。
辞表?
財団職員を辞めますっていう手紙だね。
えぇ!? 小早川さん辞めちゃうの!?
えー。いい人そうだったから、五條さんのこと助けてくれるかもって思ったのになあ。
四国は今、オーストラリアの残骸を吸収してドンドン巨大化してるらしいんだ。小早川さんはそれの調査のために旅に出るんだってさ。
「SCP-4351-JPがオーストラリアを目指した理由は『親の死に水を取るためだった』だと思う。オーストラリア個体はSCP-4351-JPを撫でながら死んでしまったのだ。SCP-4351-JPという生物種に親子の関係があるならば、SCP-4351-JPが子供を産むようなことがあるかもしれない」
「そもそも。もうどこかに産み落としているのかも。私はそれを調べたい」だってさ。
うーん。小早川さんにはやりたいことがあるってことなのかなあ?
そうだね。日創研の人だし、そういう部分もあるのかもね。
にゃもにゃもって感じだね。
にゃも……? でも大収穫だぞ! 小早川さんみたいに、連絡できる人がまだまだいるかもしれない!
うん! 確かに!
よし、じゃあSCP-2000-JP、もう1度情報収集を頼むよ!
わかった! いいよ! いってくる!
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手順ラザルス-01遂行-特殊裁定通達
手順ラザルス-016による文明再構築において、前文明と次文明では地理的な状況に差異が発生していると報告されています。具体的には日本地域四国地方とオーストラリア大陸に、地形の変化が確認されています。配置する民族/指導者に調整が必要であり、河川などの地形に加工が必要です。
プログラム遂行チームは不明な情報提供を受けており、この情報提供者の正体は不明です。情報提供にはSCP-4351-JPという未完成報告書が添付されており、この未完成報告書では四国地方とオーストラリア大陸は同種のアノマリーだとされています。未完成報告書-4351-JPにて示されている四国地方は現在確認できている四国地方と形状が異なり、現在のオーストラリア大陸と地理的な特徴が一致しています。報告書の真贋は不明ですが、この2地域が巨大なアノマリーだった場合、2地域がアノマリーである事実は前文明から変化がないため、2地域を手順ラザルス-01における地形修繕プログラムから除外します。


