SCP-6659
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訓戒

評価: +41+x

エピソード III

超越霊智

発生した収容シナリオの研究・対応を補助するため、全ての応用形而上学部門、戦術神学部門、対抗概念部門職員は以下の文書の特別アクセス権が与えられています。関連するセキュリティクリアランスは一時的にレベル5: トップシークレットからレベル4: シークレットに引き下げられました。

また、本ファイルは内容について説明を受けた者に限って受信されるべきです。もし、あなたが本ファイルを誤って受信したと考える場合、あなたの監督官および/またはサイト管理官に連絡し、閲覧を即時に中止してください。

シナリオ対応案および/または追加データ要請は、プロジェクト・デイキディウム共同主任であるサンドラ・ミルトン博士およびジョン・ブレイク博士に提出されます。

アイテム番号: SCP-6659
レベル4
収容クラス:
thaumiel
副次クラス:
deicidium
撹乱クラス:
ekhi
リスククラス:
danger
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SCP-6659-A。

配属サイト 配属部門
機動サイト-184/A、サイト-184 応用形而上学、戦術神学、
対抗概念、解体
船舶統括 計画主任
S・ジョーンズS. Jones船長 サンドラSandrahミルトンMilton博士、
ジョンJohnブレイクBlake博士

補遺6659/I: 神学的文脈


互酬的崇拝の礎

人間対神格の関係性の実践的応用
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崇拝に関して


神々は、我々が信じるからこそ存在し、我々を信じさせるために存在する。我々と神の関係性の性質そのものは互酬的である。我々は超人的能力を持つ存在を創り出し、我々を越えて上昇させ、意味を持たせる。それらの存在は、続いてその影響や存在の範囲や限度を定義するためにこの認識を頼りにする。

このダイナミクスの基本は崇拝という、サイコスフィア(意識圏).ノウアスフィアNöosphereの古典的用語。内に神を具現する認識を表現する行動である。神々は現実のものであるが、それらの存在は人間の思考の領域に由来し、その中に含まれている。それらの形而下世界への可測な顕現は、トーテム的化身の形成に制限されている。.ジョリーモア、『神の顕現: 過去と現在』、1988年。この制限にもかかわらず、そのような概念実体は我々の周囲の形而下世界を変化させる能力を持ち、しばしばさまざまな範囲でそれを行う。例えば奇跡的行為を行い、お告げを通してその存在を顕わし、あるいは選ばれた信奉者に利益を授ける。この直接的な相互作用の範囲や性質は、神格実体が人間や非人間存在から受け取る崇拝によって方向付けられ、それを反映する。神格実体の意思や能力は、それに対する人間の認識、およびサイコスフィア内のその概念地形図に直接的に相互関係する。我々は神々を創り出し、そうする中でそれらにそれら自身のイメージを形作る力と影響、そして我々のそのイメージの認識を提供した。

このパラダイムをもとに考えると、財団のような組織は神格実体によってもたらされる脅威にどのように対応すべきか、という問題が浮かび上がる。今までのところ、標準作戦手続きでは抑制手法が標榜されている。それにより、組織的宗教や崇拝行為が神々を「無干渉な」実体であり、日常の出来事における神の関与は些細なもの — あるいは合意的現実を安定化する画一的な背景存在であると認識するように、ひそかに仕向けられている。この手法は、敵対的神格実体に主流文化や宗教的習慣において顕著な牽引力を得させないという点では概ね成功しているものの、新たに発生しつつある脅威に対しての対処的な手法はしばしば不適当になっている。サイコスフィア内で敵対的神格実体と直接戦闘することは現状不可能であるため、活動的な神の脅威に対する財団の対応は、そのような神のふるまいを定義・支援する形而下世界における崇拝のシステムを除去することが優先されている。

しかし、悪意あるもしくは正常性に脅威をもたらす神格実体の活発な崇拝に関与するカルト構造の同定・無力化は必ずしも好ましい結果のみをもたらすものではなく、その帰結は配属された工作員の高い致死率からヴェールの完全性に対する多数の脅威にまで幅がある。この現在の手法は持続可能でないように思われる。それは、神格実体は、それらの崇拝に関与する文化的集団を含めて、形而下世界に固定されていないためである。それらはサイコスフィアにおける顕現を通して、概念的関係線に沿って移動可能であり、世界中の異なる人々に接触・影響し、それ自身が分派になるか分裂するような新たなカルト構造をもたらすのである。

[…]

ジョン・ブレイク、
戦術神学ジャーナル、Vol.72、
1993年。

補遺6659/II: プロジェクト序説


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プロジェクト・デイキディウム

引きちぎるような旋風の餌食か玩具おもちゃとなって、飄々ひょうひょうとして吹き
飛ばされ、あげくの果ては銘々それぞれの岩に突き刺されるか、
或は鎖に縛られたままあの煮え返る火の海に永劫えいごうに沈められるか

— ジョン・ミルトン、『失楽園』、第二巻: 181-83行、1667年

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サンドラ・ミルトン博士、共同主任、応用形而上学
プロジェクト・デイキディウム紹介ブリーフィングより抜粋。


このプロジェクトの初期案は、より大まかに「財団が他の異常現象を解体するために利用するアノマリー」の作成に焦点を当てていましたが、その真なる意味は明らかでした。それは、私たちは神々と戦闘する手段を要しているということです。財団は — 壮大な意図やアイデアを持ち、正常性のヴェールを越える概念を弄しているにも関わらず — 施設と人員、それに紙の書類からなる昔ながらの組織であり続けています。応用形而上学部門はこの考え方を拒否しません。私たちは自身の限界がどこまでかを知る必要があり、それだけが限界を越える方法であるのです。

SCP-6659は、そうした物質界の境界に挑もうとする試みの最高点に位置しています。ノウアスフィアは私たちの人生のあらゆる側面 — 考えるということが意味することや、想像できること、できないこと — に浸透していますが、それを改変する私たちの能力は好意的に見ても洗練されているとは言えません。ノウアスフィアが非形而下的脅威になったとき、財団は、あらゆる対価を払ってでも人類や結果的な正常性を確保・収容・保護するという目標を達成するために、新たなアプローチを要します。私たちは、暗闇の中当てもなく死にゆきながら、目標の達成を希求しています。私たちは解剖刀メスに、それも光の中で暮らす人々に被害をほとんど与えずに特定の危険を切除できる解剖刀になる必要があったのです。

それがデイキディウムが実行される理由です。多数のミーム構成体が神々として崇拝されている一方、それぞれの構成体は単なるアノマリーとして理解され扱われるものに過ぎません。財団を脅かすものは収容され、それらの影響や危険は軽減され、世界は変わらず回ることでしょう。

このチームにようこそ。私たちはあなた方を歓迎します。

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ジョン・ブレイク博士、共同主任、戦術神学。
プロジェクト・デイキディウム紹介ブリーフィングより抜粋。


私の同僚がこのプロジェクトの重要性を説明した。しかし、私は君たちにそれほど急いではならないと伝えたい。

「崇拝」という考え方は、一般に神格実体であると見なされるものに限定されるものではない。現代社会は、現代の生活におけるほぼ全ての側面をそれ本来の価値や意味以上に上昇させる。例えば、民主主義、家族、資本主義がそうである。このような概念それぞれは、私たちと世界との関係性を定義する。これらの概念は流動的だ。個々人の精神に基づいて変化・変容し、彼らの信念や一部の集合意識に影響を受け、時間をかけて文化的変容とともに新たな形態を発展させるのだ。

このような概念と神格実体の違いは何だろうか? 考えられる相違としては、それらの概念は人間と互酬的に関与するのではなく、むしろ人間に基づき、人間に反応する形で動かない限り不活発であるという点が挙げられる。しかし、近年の発見ではこれは誤った仮説であるということが示唆されている。私たちは、それらの概念が確かに反応するところを発見するようになった。それらは、私たちがいまだに完全には理解していない方法によって私たちに影響を与えているのだ。もしかしたらこれは悪意の問題であるかもしれない。概念実体は、私たちを害して、私たちの世界の理解を変えようと望んでいるのだろうか? しかし、そうだとしても、その違いは曖昧である。新たな政治理論や、自然との関係性や、革新的な技術はこの違いをまたぐ可能性はないだろうか? 私たちは、異常でないと思われるプロセス・影響に反応した世界の変容・変化を見たことがないのだろうか?

私たちが共有する神話で非常に普及している神格化のプロセスは、よく言っても誤って理解されていると言わざるを得ない。私たちは、論理的でないにせよ、神とは本質的に何であるかを知っていると主張するが、神々が私たちの集合意識の中でどのように形成されるかを正確に知ってはいない。我らが財団は、共通の目標に向かって働く人々の秘密の団体であり、確保・収容・保護の考え方を上昇させているが、私たちが標的とする信仰に基づき行動する団体とは異なるように見えないだろう。

このプロジェクトは、イエス、確かに必要だ。しかし、多大に不確実である。これは人間と神との間の新たな関係性であり、それがもし崇拝によって上昇されたものであるなら、その関係性自体が神格化における互酬性の構造に多大に関係する概念なのである。私たちには、偶像の破壊を偶像化するリスクがあり、またそれにより何を踏みしだいて進むことになるのかも知らないのだ。

補遺6659/III: 実行ログ

実行番号: 001
トーテム化オブジェクト: SCP-055、潜在的反ミーム性質が露わになるまでHomo sapiens sapiensと共存していた、ヒト亜種であるHomo sapiens invisibiliの最後の君主の頭蓋骨。そのその反ミーム性の露見は、彼らの非異常な親族による19世紀のジェノサイドの動機となった。
崇拝団体: 非視なる者の門弟たち(Disciples of the Unseen)
結果: ミーム構成体の同定・加速に成功した。続いて構成体は、加速が混沌と逸脱し始めるにつれ同定できなくなった。結果として概念量子は認識から排出された。

注: 実行001の結果は確認できないものの、SCP-055と結びついたミーム構成体に付与された概念的加速により、そのノウアスフィア的関係性の完全な抹消がもたらされたと現在仮説立てられている。結果として、SCP-055、以前記録されていたSCP-055を描写する情報、並びにそれが有していたHomo sapiens invisibiliの虐殺とのあらゆる関係性は、現在ヒト主体が概念化することは不可能となった。

SCP-055は、収容のためサイト-19の標準異常チャンバー055に移送された。利用されたトーテムが実行後も概念的であることを確実にするための、概念的加速の選択的付与を改善する努力が進行中である。

実行番号: 002
トーテム化オブジェクト: 異常な筋肉構造を有する、萎縮しミイラ化した手。
崇拝団体: 天使の径の信奉者(Followers of the Angel's Path)
結果: ミーム構成体の同定・加速に成功した。
注: SCP-6659-Cのデータから、標的のミーム構成体が完全に不安定化したことが示唆されている。本神格実体は成功裡に解体された。
実行番号:003
トーテム化オブジェクト: 2%牛乳1カートン。十字架。
崇拝団体: 救世主の里程に居りたる聖ベルナルドの門弟たち(Disciples of St Bernard in the Path of the Saviour)
結果: ミーム構成体の同定・加速に成功した。
注: 崇拝団体の歴史における広範な文化的足跡のため、財団は現在聖ベルナルドに関する伝説を改変して一般的なキリスト教教義と合成する試みを進行している。この試みには、聖ベルナルドをキリスト教の聖人として列聖することや、中世やルネサンス期の芸術家を様式的に模倣した『ラクタティオ・ベルナルディ』.訳注: クレルヴォーのベルナルドゥスが、授乳する聖母子像から乳を与えられたという奇跡。参考: 英語版Wikipedia「Nursing Madonna#Lactatio Bernardiを描写した絵画を拡散することが含まれている。

[3件の実行を省略]
実行番号: 007
トーテム化オブジェクト: 生贄用ダガー。
崇拝団体: 緋色の王の子ら。
結果: ミーム構成体の同定・加速に成功した。
注: 本崇拝団体内で指導的地位にある高度奇跡術使用者らの存在により、実行後もさまざまな宗派が存続し続けている。しかし、監視から、それら個々人と結びついた異常現象は他の奇跡術システムに基づいており、加速した神格実体と関係性を持たないことが示唆されている。
[175件の実行を省略]
実行番号: 182
トーテム化オブジェクト: シカの頭蓋骨。
崇拝団体: 9番目の緑のロッジ(The 9th Green Lodge)
結果: 未終結 — 実行182はシステム不具合のため手動で中止された。

注: 起動ののち、SCP-6659-A・-Bは標的の神格実体を成功裡に分離・加速したように思われた。しかし、SCP-6659-Cによる関連ミームデータの調査の間、連鎖的エラーにより致命的なシステム不具合がもたらされた。

続いて、SCP-6659-Cを構成する水槽のうち6台が破裂し、.損傷した水槽には、予期された人工能髄液に加えてさまざまな量の塩水が入っていることが発見された。SCP-6659-Aから発生した電力サージによりSCP-6659制御室内で漏電による火災が発生し、SCP-6659-Bを監督していた2名の技師が自然消失した — 1名は機動サイト-184/A付近の海抜およそ5mに再出現したが、もう1名はいまだに行方不明である(推定死亡)。

本イベントは以降インシデントØ-E5と呼称される。結果として、SCP-6659の運営は凍結された。さまざまなシステムの修理やインシデントØ-E5の原因の調査は進行中である。

補遺6659/IV: インシデント後デブリーフィング


音声映像転写 POST-Ø-E5/I

位置: 機動サイト-184/A、デッキB1内の会議室。

出席者:

  • サンドラ・ミルトン博士、
  • ジョン・ブレイク博士、
  • S・ジョーンズ船長、
  • ルパートRupertサウダイSawdye技師、
  • SCP-6659-A・-B・-Cの保守・運営技師。

前文: インシデントØ-E5ののち、SCP-6659の保守・運営に配属されている職員は本イベントについて検討するため招集されました。以下の転写は、SCP-6659-A・-B・-Cの進行中の修理に関する要約が行われたのちから始まります。

«転写開始»

サンドラ・ミルトン博士: ありがとうございます、グレイスさん。[SCP-6659]-Bの修理は進行中だとのことで何よりです。あなた方が必要とする部品については要求を出しました — 明日の物資投下の際届きます。大丈夫でしょう、次は……サウダイ博士、インシデントØ-E5でいくつかデータの不一致を発見した人です。ルパートさん?

ルパート・サウダイ技師: ハロー、いや — 皆さんこんにちは — すみません、思ってたより人が多くて、ええと……

ミルトン博士: 大丈夫です、ルパートさん、準備ができたら進めてください。

サウダイ技師: わかりました、ありがとうございます。大丈夫です、では、はっきりさせておきたいのですが、その不一致はインシデント中に発生したものではありません。タンクが破裂やら何やらして、システム全体が滅茶苦茶になって — すみません、先走りしてしまいました。ここにいる皆さんはご存じでしょうが、[SCP-6659]-Cはノウアスフィア内の前もって加速したミーム構成体を、全て想定通りになるように、つまり分離した構成体の中で潜在的な活動がないようにするためモニターしています。この基底状態のことを「不活状態」と言います。SCP-6659が期待通りに機能していると仮定すると、この状態では以前に構成体を構成していたデータポイントの間の相互作用は起きません。えー、データを調査したところ、以前概念の範疇を超えて加速することに成功した神格実体のデータクラスターで、いくつかの活動が確認されました。これらのスライドは、SCP-6659-Cの6時間にかけての観測結果を表現したものです — すみません、これどうすれば……?

ジョン・ブレイク博士: ポインターの右側だ。

サウダイ技師: よし、できました。では、この色は相互作用の強さを表しています……

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サウダイ技師: ……この期間が過ぎると、活動はまるではなから発生していなかったかのようになくなりました。それが今まで見落としていた理由の1つです。これは大変イレギュラーなことでして、むろん皆さんにも想像がつくかとは —

ミルトン博士: ルパートさん、すいません。前回の実行がうまく動かなかったということを言っているのでしょうか?

サウダイ技師: いいえ、それはまた別の理由です。実行は完全に成功し、私たちは関連するデータを全て2重チェックしました。これはただイレギュラーであるのです。人間の観念が拡大・変化するにつれて新たな概念的関係線が形成されることは全くおかしくありませんが、私たちがSCP-6659を使用した場合、これは発生しえないはずでした。

ブレイク博士: ならこれは自然に起きたのか? ランダムに相互作用が続けて起こっただけか?

サウダイ技師: それは1つの仮説です、ええ — ですが、ううん。

ミルトン博士: 続けてください、ルパートさん。

サウダイ技師: えー、その種の……自然発生は、ノウアスフィアとSCP-6659の理解から考えると、もっともらしくありません。これは接続されたネットワークで、それぞれ互いに反応しますが、データクラスター内の個々のポイントは完全に分離していました。ポイントは以前の関係線に沿っては相互作用をしませんでしたし — 新たな線も形成しませんでした。このようなことには、クラスターのこのような箇所がそれに対して作用することを要しますが、すでに説明したように —

ブレイク博士: 何かノウアスフィアの外側のものがこれを引き起こした、そう言いたいのか?

サウダイ技師: 私からはお答えできません。

ブレイク博士: <テーブル越しに見る> そもそも、そんなことが起こり得るのか?

ミルトン博士: 実のところ、定義上私たちに知るすべはないのです。私たちは、理解の領域の範囲外で動くものを理解できません — 理論的には、抽象的に推論することすらできないのです。私たちが推論できているということが、理解の範囲外のものを考えようとすることさえ無駄であると証明しているのです。

ブレイク博士: 試験はできないか? 新たな関係線をマッピングして、この何だかを分離できないか?

ミルトン博士: そうするためには、私たちの脳より複雑に思考できる新しいブレインコンピューターを設計しなければならないうえに、私たちに何を相手取っているのか理解できないという根本的な性質があるため、得策であるとは言えません。

ブレイク博士: それがあの機械を設計した理由じゃないか — 新たな脅威を標的にしないのなら、なぜあれが必要なんだ? 私たちは神格実体に何ができるかを見てきた。もしこのことが、SCP-6659か何か[SCP-6659]-Bのすることに反応しないのなら、私たちは暗闇の中だ — 何を相手にしているのか分からなければならない。ルパート、この相互作用を引き起こした新たな複合体が何であれ、分離してみることは可能か?

サウダイ技師: 分かりません、チームで話し合わないと、そ、それと —

ミルトン博士: ルパートさん、止めなさい。少なくとも修理を終えるまでは、これには取り掛かりませんから。

ブレイク博士: バカらしい、ただちに行動しなければならないんだぞ。何が起きていようが、私たちはいつでも対応できなければならない、そしてそのためにできる唯一の方法は —

ミルトン博士: 1人死んだんですよ、ジョン。あのですね、あなたのそのオツムだけで物事を考えるのはやめてもらえませんか? これは難解な理論というだけでなく、影響をもたらしているのです。私たちは — 何、もう48時間? 遺体も、痕跡も、何もかもがない — ただ消えてしまいました。彼女の近親者に説明するのに一体どのように書けばいいのでしょうか?

<録音上の沈黙。>

ミルトン博士: <溜息> ともかく、これは私たちの手には負えなくなってしまったのですよ、いずれにしても。先ほどO5からメモが来ました。当面の間試験を中止するとのことです。O5はまた、SCP-6659とインシデントØ-E5に関連する情報を他の財団サイトの専門家と共有することを決めました。なので、皆さんは取り組んでいる事項について報告書を共有する準備をする必要があります。

ブレイク博士: 私たちはこの件から締め出されるのか?

ミルトン博士: 今のところはそうではありません。私たちはまだそうされていないことに喜ぶべきでしょう。ただ一時停止して、この状況にいくらか監視の目 — 何が起きているか解明する目が増えただけです。これに関連して、[SCP-6659]-Cの修理のアドバイスのため、プレース・H・McD博士が機動サイトに来ています。彼はあなたにいくつか質問があると思いますよ、ルパートさん。

[…]

«転写終了»
後文: 以降の会議の間、ブレイク博士は興奮状態で会議室を去るところがカメラに映されました。以降の会議ではSCP-6659の進行中の修理の件が取り上げられました。インシデントØ-E5の原因である可能性があるものに関する懸念に対処するため、技師らがサイト外の専門家とのリエゾンのため選出されました。

補遺6659/V: 進行中の突発的シナリオ

音声映像転写 Ø-E5/B-I
前文: 以下の転写は、ミルトン博士の宿舎の保安フィードより回収されたものです。
«転写開始»

ジョン・ブレイク博士: なあ、少しいいか?

サンドラ・ミルトン博士: ああ、ええ、もちろん。どうぞ、席に座って。

ブレイク博士: ありがとう。ちょっと来て言いたかっただけ — いや、先ほどのことで謝罪したい。あのときは少しばかり怒り心頭だったのは認める — あの知らせに対する自分のリアクションにとらわれて、より大きなプロジェクトと、そこで働いている人たちをおろそかにしていた。

ミルトン博士: 私も、よりうまく対応できたはずだと思っています。あの件で私たちが神経を少しすり減らしたのは、当然のことです。

<録音上の沈黙。>

ブレイク博士: 私は……かつて牧師だったと言ったことがあったか?

ミルトン博士: 私たちが[機密計画削除済]に取り組んでいたころ、あなたの履歴書でそのようなことを読んだことがあった気がします。

ブレイク博士: 奇妙なものだ — 私は、神の御言葉を広めることが私に課せられた使命だと、本当に確信していた — 実のところ、具体的な教義にはそんなに熱心ではなかったんだが、この世には何か真に超越したものがいて、それが私たちを見ていると、まさにそう信じていた。

ブレイク博士: 財団に加入して、それは変わった。面白いことだと思わないか? 神は実在し、そして無謬ではなく、盲点があるという本物の証拠があった — それこそが私の信仰を打ち砕いた。あれらを研究して、理解するほど……あれらは神でないように思えてくる。あれらを指さして、「あれは神だ、それだけだ」と言える。さらに、SCP-6659を使えば本質的に滅ぼすことができる — あるいは、少なくとも休眠させられる。それに不思議なものは何もないし、超越的なものもない。

ミルトン博士: <溜息をつき、書類仕事から顔を上げる> ジョン、それは昔からそんなことでしたよ。たとえ以前は知らなかったとしても、それこそ常日頃から起きているものの原因だったのです。私たちは、そのような存在が私たちとどのように相互作用するのか理解し始めています。それこそが本当の神学だとも言えるのですよ、もしあなたが神学に真剣だというのなら。

ブレイク博士: それは分かっている、そうだ。だがそれでも……もっとあるべきじゃないか? つまりな、今日見たものを考えてみろ! あの反応が起きた原因が分からなかったじゃないか、全く別の何かが原因でもおかしくない! もしかしたら……

ミルトン博士: <眉を上げる> 何です?

ブレイク博士: <ためらい、溜息をつく> 分かるだろう、それで十分だ — 私はもう……うんざりだ。ストレスで疲れた、君の言う通り — 休むのが一番なんだろう。

ミルトン博士: <デスクに戻る> 誤解はしないで欲しいのですが、異動の申請を考えた方が良いかもしれませんよ。あるいはおそらく、長期の有給休暇を取るのか。

ブレイク博士: 不信心者に平穏なし。お休み、ミルトン博士。ああそうだ、今日の転写のコピーを取っても構わないか?

ミルトン博士: <書類の山を手振りで示す> どうぞご自由に。お休みなさい、ジョン。

«転写終了»

音声映像転写 Ø-E5/B-II
前文: 以下の転写は、SCP-6659の主要装置が稼働し、保守されている研究デッキ6から回収され、ブレイク博士の先のログ直後の行動を描写したものです。
«転写開始»

<ブレイク博士がSCP-6659-A制御室に入室するのが映される。彼は眼鏡を外し付近のカウンターに置き、部屋に続く扉を封鎖する。おそらく反対側からのアクセスを制限するために、大きな潜水艦級の隔壁で塞ぎ、続いて付近の金属製の椅子の脚を回転式ロック機構内に配置する。ブレイク博士は、天井に取り付けられた保安カメラの方へ振り向く。>

ブレイク博士: 関係するであろう人のために、私の名前はジョン・ブレイク牧師だ。私は今まで、いやおそらく今まで、プロジェクト・デイキディウムの共同主任を — SCP財団戦術神学部門を代表してやってきた。私は心身ともに健康で、自らの意志のもと行っている。

ブレイク博士: 私の頭をSCP-6659-Aに挿入しスキャンして、インシデントØ-E5の原因である実体をマッピングしようと考えている。人間の脳や姿かたちをマッピングすることで、全体でin tota、人類の概念を具現するが人類による概念化からは逃れている超越性神格が明らかになるのではないかと考えている。これを実行するために、サンドラ・ミルトン博士のSCP-6659実行キーを、彼女は知らないし同意も得ていないが手に入れた。私は勝手にやっている。私のやろうとしていることは、機動サイト-184/Aで私と一緒に配置されている職員の誰からも全く許可されていないし、容認もされていない。

<ブレイク博士は、続いて彼の実行キーとサンドラ・ミルトン博士の実行キー両方をSCP-6659中央コンソールに挿入して実行手続きを開始し、これにより安全プロトコルをオーバーライドする。そののちブレイク博士は適当なトーテムのため用いられるSCP-6659-Aの区画を開き、その前にひざまずき、装置に頭を挿入する。数分間経過し、標準開始手続きが始まる。この実行は保守職員に認知され、緊急警報が発動される。自沈システムが準備され、S・ジョーンズ船長に爆破権限が与えられる。乗組員がブレイク博士を逮捕するため派出される。>

ブレイク博士: ぐあっ! おお、主よ……

<ブレイク博士は、続いて機械が起動している間不明瞭につぶやく。サイト内の機動部隊員は、制御室に通じる強化扉に到着する。扉を強引に解放することが不可能であったため、1名がサルベージ任務および船舶の修理に利用されるレーザートーチを取りに行く。彼らが扉の2つの支持蝶番のうち1つを切断することに成功した際、ブレイク博士の肉体が痙攣し始める。正体不明の透明な液体がSCP-6659-Aの中央区画から滲出し、ブレイク博士の膝の周りに水たまりを作っている。>

ブレイク博士: ……私を見る。動けない……[聞き取れない]思考の腫瘍が私を見て、私を捕まえる。神は私に見せることを望む。それは内側に、それは中に、それは —

<2つ目の蝶番が破壊され、扉が解放される。乗組員は中に突撃し、動かないブレイク博士の肉体を発見する。SCP-6659の緊急シャットダウンが実行され、制御室が確保されたのち自沈システムは停止する。医療職員が到着してブレイク博士の反応のない肉体をサイト内の診療所に運搬し、ブレイク博士の口腔、鼻腔、耳の開口部から大量のサンプルを採取することを含む、事実上検死にあたるであろう調査を実行する。>

«転写終了»
後文: ブレイク博士の身体の医学的検査により、対象の脳のさまざまな葉が広範かつおそらく異常な操作を受け、結果として大脳および小脳の組織に重大な歪曲が発生したことが判明しました。回収された液体サンプルは、脳脊髄液と塩水の混合物であるように思われ、Ø-E5で発見されたものに一致しました。

音声映像転写 Ø-E5/B-III
前文: 以下は先のログにおけるブレイク博士の視聴覚的概念的経験の散文的描写であり、死後の対象の脳の解析および叡智的再構築により生成されたものです。
«転写開始»

待て、何だ? これと接続するはずはない、ただスキャンしただけだ……

……私の体はどこだ?

眼前に一種の無限の空間が広がっているのが見えて、ゴットフリートについてとノウアスフィアを見ることについて聞いていたものをすぐに思い出す。暗闇の背景が広がり、柔らかい光が点在し背景を包む。ある光は四方八方に動き、他の光はそれぞれの光に向かって光り、場所を交換し、形を作り、接続し、線を引く……私が見ている光はそれぞれ私に瞬き、私はすぐにあることを知る。とてつもなく小さいデータの構成要素、適切な概念の基礎的な粒子だ。この世界にはスケールがない — 雲のように、あらゆるものがそうであろう距離よりもはるかに近く見える。

とてつもなくおぼろなささやき声を心の後ろから聞き、そちらに振り向く(?)。ハロー?

そこでは、それは声をからすように弱々しくあえぐ。音のするほうを見るも、空間を照らすものは何もない — 光は距離を保ち、ささやき声のするもとを避ける。

私は暗闇に向かうことを決意する。そこでは、それは繰り返し、毎回息をしてはおぼろな赤い閃光を発し、私の近づくにつれ強くなる。星のアイデアの光点が、私の後ろで荒々しく波打ち、私の思考にパターンを照らし出す。光点は私に行かないよう、代わりにそれらを崇拝するよう言う。そのほうが良いのだと。救世主の呼びかけの間それらは聞こえない。

主よ、私は信仰を続けてきました。これらの偶像よりあなたは偉大であると常に存じています。

暗闇の中心に着くと、赤が私の周りでうねる。上空に大きな金切声を聞き見上げると、目の前に巨大な黒曜石の塔が、漆黒から作られているのが見える。塔はవの意思により揺れ動き脈動し、その無限の不可能な構造が100の手のクモの巣に枝分かれし、それぞれの指は別の100の手に枝分かれする。その手が私の心に届くと、神の信じがたきスケールで私は押さえつけられる。

全ての中心で、濡れた滑る音が空を引き裂き巨大な目が開く。百二十胞体がそれ自体の中へと折りたたまれ、私に聖霊の存在を認識させる。ささやき声は空電に急変し、私がかつて想像したどの神も比ぶべくもないのだと告げる。

神が私を見る。主は私の信仰を存じておられる。それが私の思考に届き私の意義を理解させる。私の手が私に叫ぶ。私の手はなくなり、今や指だけになる。ハミングすると赤が私の視界を覆い、神が私を持ち上げ近づけ、私をその口に入れ、人間の構造を破壊し、私をそのカヴンの天使とする。私の心を捧げ、救済に身をゆだねる他はない。

神は恐ろしい。神は美しい。神は腫瘍である。

他には何もない。

«転写終了»
後文: ブレイク博士の遺体を収容したのち、調査の間ミルトン博士は宿舎内に勾留されました。監督評議会は、プレース・H MD., PhD管理官を調査の間プロジェクト主任として任命しました。

注意

以下の補遺資料は、情報災害および高度な反ミームベクターを構成しています。本メッセージを認識したということは、あなたにはORACLEクラス認識抵抗能力が補完されており、リスクに曝されていないことを意味します。本メッセージを誤って認識していると考えるならば、3回まばたきしてください。
この文章または以降の文章が消えていない場合、即座にこのファイルを閉じあなたのサイトのMaIDリエゾンに連絡してください。







訓戒

客演 DODODEVIL

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