対象者: ウォルター・ヴォーン
インタビュアー: ジェベダイア・ベインズワース博士、財団C.I.S(認識災害識別・抑制部門)研究員
前文: 対象は発見直後に一時的に鎮静化され、財団セキュリティ施設に移送された。対象は拘束され、インタビュー室00-31-Bで尋問を受けた。
<記録開始>
ヴォーン: 俺は一体どこにいるんだ?
ベインズワース博士(以下、博士): 落ち着いてください。あなたは今安全な場所にいます。我々のインタビューに協力してくれれば、あなたの助けになるでしょう。
ヴォーン: 助けになるだって?お前らは俺を薬漬けにして、訳の分かんねえ場所に引きずり込んだんじゃねえか!俺にだって権利があるだろうがよ!
博士: いいや、ここでは違います。
ヴォーン: (少しの沈黙。) 俺は…じゃあなんだ?俺を殺すってのか?
博士: 言った通り、ただインタビューをしたいだけです。あなたの頭を撃ち抜くだけなら、わざわざこんな場所に連れてくるのは勿体無いでしょう。私はあなたをこれ以上引き留めたくもありませんし、インタビューが終われば普通の生活に戻してあげられます。あなたが嘘を吐かなければね。
ヴォーン: へえ、そりゃ素晴らしいことじゃねえか。答えなかったらどうなるんだ?
博士: (ため息) あなたは誤解している。この尋問は必要なんじゃなく、あなたに与えられた特権なんです。我々が知りたいことを聞き出すにはもっと効率的な方法があるけれども、それを使うには痛みが伴う。こうしてインタビューしているのも親切心なんです。
ヴォーン: 畜生。分かった、分かったよ。答えたらどうなる?解放してくれるんだよな?
博士: 先程言ったように、それは貴方の答え次第です。
ヴォーン: それは…まあいいよ、いいよ。そうだな、とっととインタビューを始めてくれないか?そうすりゃ帰れるんだ。
博士: 結構。正直に答えさえすれば、あなたは解放されますからね。 (咳払い) では、あなたの名前は?
ヴォーン: 本気で言ってる?もう知ってんじゃねえのか?
博士: 形式的なものです。
ヴォーン: まあ、そうなんだろうけど、お前らはもう俺のことを全部知ってんだろ?名前、誕生日、今日の朝食ー
博士: 質問に答えてください。
ヴォーン: ごめん。ウォルターだ。ウォルター・ヴォーン。引っ掛けのつもりだったんだ。今日の朝は何も食べてねえ。
博士: 年齢は?
ヴォーン: 26。
博士: さて、ヴォーンさん、あなたは複数の破壊行為の罪に問われていますね。
ヴォーン: あ、ああ。
博士: 何件ですか?
ヴォーン: なんてこった、見当もつかん。ええと…そうだな…5件か?
博士: 6件です。
ヴォーン: はあ、やっぱ理解できねえよ。なんで既に答えが分かってる質問をするんだ。
博士: 形式的なものだと言ったでしょう。では次の質問。8月17日の午後5時45分、あなたは何をしていましたか?
ヴォーン: それは…
博士: 木曜日です。
ヴォーン: あー、全然分かんねえな。一応、サブウェイで昼飯を食ったことは覚えてる。
博士: (博士は、ヴォーンが以前起こした破壊行為の画像を提示する。) これに見覚えは?
ヴォーン: いいや、ない。
博士: 嘘を吐かないでください、ヴォーンさん。
ヴォーン: 分かったよ、うんうん、覚えてる。ちょっと前に作ったんだ。口から火を噴き出したり色々、イカしたタコのつもりだった。いい感じだろ。
博士: ふむふむ。(博士はSCP-7797の画像を提示する。) ではこれは?
ヴォーン: ないね。
博士: さっきも言ったけど、嘘を吐かないでください。下手くそなんだから。
ヴォーン: 本気だよ、こんなの一度も見たことねえ!そりゃ目を見たことはあるけど、こんな感じのを見たことはねえよ。
博士: では、あなたはこれを知らないということでいいですね?
ヴォーン: ああ、知らん。
博士: (博士はノートパソコンを取り出し、SCPー7797実例を作成するヴォーンの映像を再生する。) では、これは何ですか?
ヴォーン: これは…俺?
博士: そうです。先週の木曜日のね。
ヴォーン: なんてこった、覚えてねえぞ。
博士: 顔のパターンが一致している。間違いなくこれはあなたです。目薬でもさして見てみますか?
ヴォーン: (ヴォーンは目を擦っている。) いいや、大丈夫。アレルギーかなんかだ。ここに置いてある変な化学物質のせいだろう。
博士: さて、本題に戻りましょう。あなたは否定していますが、これを描いたのは確かにあなただった。なぜこれを描いたのか、説明していただかないと。
ヴォーン: 言っただろ!おれは描いてなんかいねえ!それは誰か他の奴だ!
博士: …ウォルター、私はあなたを助けたいんだ。でもそれは簡単な話じゃない。これは国際安全保障に関わる問題で、あなたにはー
ヴォーン: だから描いてねえっつってんだろ!分かんねえか?!その動画がどっから来たもんかは知らねえが、どうせどっかのバカがフォトショで俺を嵌めようとしたんだ。もしかしたら記憶喪失なのかもしれんが、俺がそんなものを描いた覚えはない。どうせこんなの大した問題じゃねえだろ?ただの落書きなんだから!
博士: …この件について、何もしていないと誓えますか?
ヴォーン: 誓えるとも!
博士: (しばらく間を置いて) オーケイ、分かった。君を信用するよ、ウォルター。けれども、この証拠を無視することは難しい。この人物が君に似ていることは分かってくれるね?
ヴォーン: そうだな、こいつは確かに俺に似てる。さっきも言ったがフォトショか何かかもしれねえ。クソ、目が痛い…
博士: 本当に目薬はいらないか?
ヴォーン: 正直、ちょっと欲しいかもな。
博士: 分かった、では少し待っていてくれ。頼んでくるよ。
ヴォーン: ああ、どうせ俺はどこにもーうわっ!!!
博士: (博士はすぐに振り向く。) 何が起きた?大丈夫か?
ヴォーン: (ヴォーンが椅子の上で痙攣し始める。眼球から血液と思われる液体が漏れ出す。) 畜生、畜生!俺に何をした?!
博士: (常駐の警備員に向けて) 医療班をここに、今すぐ! (博士はヴォーンに向き直る。) ウォルター、大丈夫か?痛いのか?
ヴォーン: (ヴォーンは叫び続ける。) 畜生、目が、目が焼ける… (ヴォーンは激しく咳き込み始める。目からは血が漏れ続けている。) 神よ、何が起きてるんだ… (ヴォーンは前かがみになり、黒色の物質を吐き出す。これは後にヴォーン自身のDNAと一致することが確認された。) おお神よ、お願いだ、俺は…俺は… (ヴォーンは突然痙攣を止め、博士の方を見上げる。彼の強膜と瞳孔は血液で満たされているように見える。)
博士: ヴ…ヴォーンさん?大丈夫ですか?
ヴォーン: … (ヴォーンは黙っている。)
博士: ヴォーンさん!!
ヴォーン: ここは何処だ? (ヴォーンの声と抑揚は、明らかに以前と異なっている。)
博士: な、何だって?
ヴォーン: ここは何処かと聞いている。
博士: 最初に言っただろう。君は安全な施設にいる。今何がー
ヴォーン: 檻はどうでもいい。放せ。
博士: それはできない。お前は誰だ?
ヴォーン: 我を拘束しようとしたのか?ここは何だ?
博士: まずは答えろ、ヴォーンに一体何をしたんだ!
ヴォーン: お前…お前は我の知識を制限している。
博士: 何…?あ、ああそうだ!お前は彼に何をした!
ヴォーン: 誰だって?
博士: ウォルター・ヴォーン、お前が…中にいる…人間だ!
ヴォーン: この器のことか?
博士: 神よ、私は…
ヴォーン: (ヴォーンは周囲を見渡し、博士の上着に描かれた財団のロゴを強く見定める。) お前達がそれか。
博士: (博士はヴォーンから後退りし始める。) …何だって?
ヴォーン: お前達が王の拡大を妨げている。
博士: …王?王だと?お前は誰なんだ?!
ヴォーン: 「現実を砕く者」。「緋き苦痛の王」。
(この言葉を受けて、O5評議会は直ちに警備員に尋問室への警備を命じ、封鎖を開始する。)
博士: 私はそれが誰なのか知らない。
ヴォーン: ならば、お前はお前の上司よりもずっと、取るに足らない存在だということだ。
博士: どうしてお前は私の上司を知っているんだ?お前は一体誰なんだ?
ヴォーン: お前には理解できないだろうし、説明する気もない。お前の意識は限られているのだ、ジェべダイア。我は全てを視る。
博士: (博士は後退りを続ける。ヴォーンは机に座っている。) 何…ど、どうやって私の名前を?
ヴォーン: お前は…自分達が、人々を漠然とした脅威から守る救世主なのだと信じているな。だがそれは間違っている。
博士: ち、違う…我々は人類を守っているんだ…どうしてお前にそんなことが分かる?
ヴォーン: (ヴォーンは甲高い悲鳴を上げ、博士はたじろぐ。音声をスロー再生すると、歪ながら笑い声に似た音であると分かる。) 思い上がるな。
博士: (博士は部屋の反対側の壁に手を伸ばし、ドアを開こうとする。) なんだ…なんで開かないんだ、畜生、畜生… (博士はドアを開こうとする。)
キーパッド端末: 情報災害拡散の可能性があるため、現在この施設は封鎖されています。
博士: ダメだ、ダメだ、ダメだ…畜生!お前は一体何を求めてるんだ!
ヴォーン: 知識だ。
博士: 何だって?何故だ?SCP-7797と何の関係があるんだ?
ヴォーン: 我が眼は可能にする。視ることを。経験することを。学ぶことを。我は去ってから、多くのものを失った。そして今、我は弱い。失ったものを取り戻すため、刻印された者達はよく仕えるだろう…
博士: 刻印だと?刻印された者達とは誰だ?待て…畜生…感染者たちのことか?彼らに何をする気だ?
ヴォーン: 今の所、あれは意味ある変化をもたらすほど多くはないが…すぐに次の用途に供されるだろう。
博士: 用途だと?お前は一体何をするつもりなんだ?!
ヴォーン: (ヴォーンは少し首を傾げる。) 長くなりすぎたな。我を止めることは叶わない。望むなら我を打ち負かしてみるがいい。我の統率は揺るがない。お前達の時代はもう終わる。そして我は視る。(ヴォーンは椅子から立ち上がる。)
博士: (博士はドアを叩く。) 誰かいないか!誰か!閉じ込められてるんだ! (博士はヴォーンに向き直る。)
ヴォーン: (ヴォーンは少しの間の後、繰り返し頭を机に打ち付け始める。)
博士: ああ…なんなんだ、畜生! (博士はヴォーンに駆け寄り、拘束しようとする。) ウォルター!やめろ!
(博士はヴォーンを拘束することができず、ヴォーンは頭を打ち付け続ける。額には大きなへこみができ、顔面からは大量の出血がみられる。警備員がドアの外に到着するが、中に入ることはできない。)
博士: この野郎、自殺しようとしてやがる!ウォルター、やめろ!!!
(博士は拘束を試み続けるが、ほとんど効果がない。ヴォーンの動きは鈍くなっていき、やがて地面に倒れる。机と床には血溜まりができている。)
博士: クソが。
(施設の封鎖は解除され、医療班が博士を護衛するため入室する。)
<[記録終了]>
終了報告: ウォルター・ヴォーンは、自傷による頭部外傷のため死亡した。関係者全員にはクラスA記憶処理剤が施され、その後インシデント記録7797-Aはレベル5セキュリティクリアランスに再分類された。