オアへ湖の怪物

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「これ、めっちゃ汚いな」ディーはシャベルを右手に持ちながらそう呟いた。

「つべこべ言わずに、さっさと掃除したらどうさ」と、かれtheyの上司でもあり親友でもあるムースは答えた。

清掃員たちの目の前には、セーフ・クリーンアップ・プロフェッショナルズにとって最大の仕事が横たわっていた—巨大で、腐りかけている、湖のほとりに打ち上げられていた恐らくはクジラか何かの動物の死骸だ。ここ数年、ピエール市ではますます多くの汚物が溜まってきており、SCP財団は市と有利な契約を結び、その清掃作業を請け負うことになったのだ。

尤も、清掃員たちはこの状況を喜んではいなかった。死骸の腐りかけている肉体はこの世の終わりのような悪臭を放ち、むき出しになった骨は厄介な角度で飛び出していた。ディーは嫌悪に満ちた眼差しでそれを見つめ、それが確かに空虚な眼をこちらに見つめ返しているのを感じた。それは魅力的に、だけれども病的に見えた。

「ここで何が起こってるんだ?なんで海の怪物が湖にいるんだ?」

「まあ、それが何であれ、一時間で片付けたい。ディー、ギアーズ、シャベルで掘るのを始めてくれ。」

「ふーん」ディーは愚痴をこぼした。「こいつは全く忌まわしい。」かれはシャベルを取り出し、ギアーズの方を向いた。何かが背後で唸るのが聞こえたのだ。

「ムース、これはお前の腹が鳴っているのか?昼食は抜かすなと言ったのに!」

ムースは後ろにいなかった。かれは巨大な化物の亡骸のために、15フィートの大きさの特注のビニール袋を取りにトラックで行ってしまったのだ。ディーの後ろにいたのはただ一つ、ハエのたかった巨大動物の死骸だった。ディーはさらに近寄って見て、それが動いたことに気づいた。いや、それは動いてなどいない。それはただの動物の死骸なのだ、とディーは思った。本当に、それは動いたのだろうか?

「ギアーズ、あれを見たか?」

「何を言っているんですか?」ギアーズは返事した。彼はぼんやりと湖を眺めており、死骸から目を逸らしていた。

「…気にしないでください。ここから出れるように、これを片付けてほしいのです。」

「そうだ。メモを取らなくてはな。」

安全清掃プロトコル: オブジェクトは可及的速やかに片づけられなくてはなりません。
説明: オブジェクトは巨大で爬虫類のような、起源不明の生物です。

「それは死んでる。死んでるって書いておいて」ムースはそう言い、ギアーズの肩越しに覗き込みながらかなり大きいビニール袋を持って帰ってきた。

「それが死んでるって確証はあるのか?」ディーは不安げに死骸を見ながらそう訊ねた。鰭のような手足は砂の上にだらしなく広がっており、腐りかけの肉の塊が頭蓋骨を覆っていた。そして、口からは血が泥の上にポタポタと滴り落ちていた。ディーはハエの群がる内臓から発せられた悪臭を口で感じ取った。

「その情報を含めなかったのには理由があります。私は財団で三年間勤務しているので、期待と現実は必ずとも一致しないことを知っています。特に、清掃作業ともなると」ギアーズは言った。

「いや、大丈夫」ムースは返事した。その手には使い捨ての手袋がはまっている。「薄気味悪いけどただの動物の死骸だからね。じゃあ、シャベル作業から始めようか」

そうして、三人はシャベルで動物の肉を掬い、それを袋に放り込むという作業に取り掛かった。ディーはどうやって2000ポンドもする遺骸をサイト19まで運搬できるだろうかと考えた。腐った肉の山は不快な臭いをあたりにばら撒いていたが、八月の蒸し暑さがそれに輪をかけて悪化させていた。ディーは手袋越しに遺骸の脂肪組織のぬめぬめを感じ取った。それを踏んでみると、悍ましいぴちゃぴちゃという音が発せられた。ムースもまた、この清掃作業をことごとく嫌悪していたのだが、三人がスコップで骨と腱を袋に詰め込む間は上司として平静を保たなければならなかった。一番冷静だったのはギアーズだ。彼は三人のうちで最も長くセーフ・クリーンアップ・プロフェッショナルズに在籍しており、結果としてその手のことには慣れていた。それでも彼はこの仕事に対して不安を抱いていたが、そのことが彼の仕事に対する姿勢に水を差すようなことはなかった。

それから一時間が過ぎた。残暑の中で三人が汗水たらして働き続けるのに比例して、ビニール袋は腐りかけの肉体組織で満たされていった。ディーが特段に粘り気のある腱と骨の塊を掘っていたその時、生物の口から咆哮が聞こえてきた。

「え、ムース?ギアーズ?聞こえる?」

ムースは顔を上げた。「ん?」

「こいつが唸るのが聞こえなかった?まるで—」

「まだ生きているように?」

「ああ、そう。」

ムースはどうでもいいと言わんばかりに呆れ顔をした。「気にするな。空気が出ただけ、多分。掃除を続けて。あと少しの辛抱だ。」

袋に詰め込む必要のある死骸の最後の部分は巨大な怪物リヴァイアサンの頭部だった。それはぬかるんだ地面に横たわっていて、腱と折れた骨で残りの身体部位と繋がっていた。ディーは生き物の口から発せられた悪臭を嗅ぎ、数時間早く昼食を食べてしまったことを後悔した。それでも、ムースが普通であると確信していた悪臭と低い唸り声を無視して、ディーは最後の残骸をビニール袋に詰め込み、ギアーズが袋の口を縛った。

「よし、よくやったな」ムースが言った。「自分のことをねぎらっておくれ。できれば手袋を脱いだ後で。市に電話して終わったって伝えておく。」

ムースが地元当局に電話しようとした、その時だった。袋が震えだした。

「何だって?」ディーが大声を出した。

「どうやら、私たちの検体には命が残っているみたいですね」ギアーズが返した。

「うわ、クソッ、離れろ!」ディーがゆっくりと袋から後ずさりした。袋は激しく引き攣っていて、まるであの生き物の死骸が脱獄しようともがいているかのようにブルブルガタガタと震えていた。三人の清掃員はそのグロテスクな光景から逃れるように後ずさりした。ビニール袋の縫い目は裂け、骨ばった爪はポリエステルを引き裂いて夏の空の下で身もだえしていた。斃れた怪物は大きく腐りかけの肺に息を吸い込み、ディーをぞっとさせるぐらいの恐ろしい叫び声をあげた。それでも、彼らは自分たちの努力の結晶が肉と体組織のブリトーとなって自らを解きほぐしていくのを、恐怖に慄きながら見つめる外なかった。ゆっくりと、斃れた巨大な怪物が立ち上がっていった。泥に塗れた大地が震え、かつて死んだはずのその眼には悪意に満ちた眼光が宿っていた。

暫しの間、清掃員と怪物は静寂の中対峙していた。ディーは胸の中で心臓が高鳴るのを感じた。今、かれの目の前にあるのは生きて息づく死骸だった。爬虫類のような化け物の虚ろな目は黄色に輝き、朽ちかけた肉体が骨ばった頭にモップのように垂れ下がっていた。怪物の骨ばった骨格全体は擦り切れた組織のよって辛うじてそのつながりを維持しており、体組織、肉体、骨の全てが混ざり合い、15フィートもの大きさの忌むべき集合体へと変貌を遂げていた。

怪物は低いうなり声をあげ、一つ低い音を立てて呟いた。

「忌まわしい。」

化け物はまず、ディーに向かって襲い掛かった。それは唸り声をあげながら顎をカチンカチンと鳴らし、かれの腹に切り傷を負わさんとするところだった。ディーはよろめきながら後ずさりし、シャベルを振り回して防御しようとした。化け物はゆっくりとかれに近づいた。ムースはシャベルを振り回したが全く命中せず、また怪物はカチンカチンと音を立てた。怪物はディーに迫り、絶望を感じさせるほどの雄たけびをあげ、口から垂れた唾は泥まみれの草に滴り落ち、触れた草を溶かしていた。化け物が哀れな生贄に噛みつかんと後ろ立ちになった矢先、腕をまくり上げて臨戦態勢になったギアーズによってその顎は閉ざされた。

「マジか、ありがとう!ギアーズ!」

「話はせずに、離れてください。」

怪物はのたうち回り、爪を振り回してギアーズに襲い掛かった。彼は怪物を解放したことによって、汚らわしい一撃を間一髪で免れた。顎から鼻を突くような臭いを放つ唾液を滴らせながら、怪物は次にゆっくりとムースの方へ近づいていった。かれは真正面から鼻にシャベルを直撃させ、怪物は一瞬方向感覚を失った。怪物はシャベルの柄を噛みしめ、木の持ち手部分を真っ二つに折った。

「何をしてるんだ?逃げろ!」ディーは叫び、ムースのことを引きずりながら立ち上がった。怪物がギアーズのシャベルを飲み込んでいる間、三人は慌てて湖畔から退却した。ディーが怪物を一目見ようと後ろを向いた途端、怪物は痩せ衰えた肉体の山を残して、素早く皮を捨て去った。怪物は口を開け、大きなげっぷをした。

怪物は唸りをあげ、三人の清掃員に向かって予想だにしない速さで突進してきた。ディー、ムース、ギアーズの三人は最大限の速度で、今度は道路に向かって全力疾走した。アドレナリンが静脈を駆け巡り、地面を叩く鱗の爪のリズミカルな音が次第に大きくなって近づいてくる中で、誰も振り返ろうとはしなかった。

「左だ!」三人が車の列を潜り抜けて道路脇に近づくと、ディーが叫んだ。

怪物は対向車のエンジン音よりも騒がしい轟音を立てながら彼らに向かって踏みつけ、道路を渡ってこちらに迫ってきた。複数台の車が三人を追いかける怪物を避けようと急ハンドルを切っている一方で、多くの車が道路を踏みしめる巨大なトカゲの写真を撮ろうと路肩に停まっていた。道路脇を駆け上がってきた清掃員たちは、怪物が大きく口を開けて唾液を垂らしながら迫り来るにつれ、その腐った息の臭いを嗅ぎ取った。

ドスン。

20トンの大型トレーラーが怪物に衝突し、それを横倒しにした。

トレーラーが道路脇に停められ、赤い野球帽とタンクトップを着た、背が高く屈強な男が運転席から降りてきた。

「ああ、それは、その、あんたの、ワニだったかい?」彼は心配そうに訊ねた。

「ああ、そんな感じです」ムースが返答した。

「ごめんな、そりゃあ俺のせいだったわ」

道路脇に伏した、力の抜けた湖の怪物を避けようと車が急旋回している中、ギアーズはその倒れた動物を検査した。「倒れてはいるが、まだ死んではいない。急いで行動するべきです。」彼は言った。

「ラドクリフ・ジェラルドだ」トラックの運転手は肉厚な手をムースに差し出し、ムースはそれよりはるかに細い指で握手した。

「私はティルダ・ムース。セーフ・クリーンアップ・プロフェッショナルズ勤務です。この動物の後始末をしているのだけれど… 君は今、仕事をしていますか?」

「いや、まだ探している最中なんだ—」

「よし、これで契約成立。この怪物をトラックの荷台に積むのを手伝って。」

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