Terror, too scary house, then…
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「うわ、ここはどこだ。」

気がつくと、俺は知らない部屋に閉じ込められていた。部屋だと分かったのは、自分の網膜のすぐそばに、バッファローの剥製が顔を覗かせていたからで、それ以外の視界はすべて、赤茶色のヘドロで埋め尽くされていた。これはまるで、アラスカで作るキビヤックのようだ。海鳥のケツから内臓を啜るのが流儀というが、あれはエスキモー族の付いた欺瞞だ。相棒のエスキモー犬ですら、あんな無様なむさぼり方はしなかった(俺は啜った)。22歳の冬、若き日の過ちである。

視覚情報から少し遅れて、匂いの感覚がどっと流れ込んだ。

「くさい!」

うんちの匂いがする。正確には、おしっこと血と汗と、あらゆる有機的汚物の混ざった匂いがするが、総合的に言えばうんちだ。

……俺はここで、死ぬのか?



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異常効果が発現する前のSCP-5417。












「俺は、ここで……死ぬのか?」



あれから2年と4ヶ月、17日と2時間が過ぎた。

ただ一言、"everyoneみんな"とだけ刻まれた墓標の前で、私はひとり、いつもの口癖を吐いた。それなりの月日が経っているというのに、惨劇が起きた屋敷の周りは、まだ微かに生臭さが漂っていた。島中の分解者が大挙してやってきては、大挙して死に絶え、それを糧に、新たな分解者が栄える。80億のうんちを土壌とする生態系が、そこではずっと、繰り返されてきた。

羽虫を狙う鳥のさえずりに混じって、どこからか嗤い声が聞こえてくる。


「その通り、貴様は死ぬのだ。」


声の主を探り、私は顔を見上げる。道路標識をクロスして作った、至極簡素な墓標の上に、誰かが絶妙なバランスで、片足立ちをしている。南国の日差しに照らされた面貌は、20人ぽっちの島民の1人、不幸にも館を追い出された、哀れな生存者のそれであった。

「ああ、またデス・ヨシオか。」

「こんにちは、デーモンマン。今日こそはお前の命をいただく。」

デス・ヨシオは下手くそな鼻歌を歌いながら、墓標の上で高速のタップダンスを始めた。財団の学者気取りが言うには、ヨシオは動きを切っ掛けに発動するキネト・グリフの使い手か何かで、デス・ビートと自称するその足捌きは、人の心に恐怖を刻む力があった。「コイツに関してはきっと、死んでたほうがマシだったな」──屋根に引っかかっていたオレンジの囚人が、開口一番にそう呟いたのを、私は今も覚えている。

私(デーモンマン)が言うのも何だが、デス・ヨシオはかなりの異常者だ。異常性を持った異常者である。あの日もヨシオは、両足が折れているにもかかわらず、生き残った面々に早速タップダンスを披露し、震え上がった心に追い打ちをかけてきた。だが、フィジカル・バリアで致命傷を免れ、ほうほうの体で這い出た直後の私にとっては、その懸命な足取りにどことなく希望を感じ、惨劇の恐怖を少しばかり忘れさせてくれた。


「やばい!スピリット・バリア!」
「甘いぞ!エンドレス・ダンス!」

タッタカ シャカシャカ

「「うわー!」」


あの日以来、私とヨシオは奇妙な縁で繋がり、交流を続けている。お互い異常性持ちゆえの親近感か、数少ない生き残りにもかかわらず、ノリが恐ろしいほど似通っていたからかもしれない。あるいは、こんな輩でも人間なのだから、可能な範囲で気にかけようという、マクロ的境地からの義務感、だろうか。


「これならどうだ!アームドフォーム・スピリット・バリア!」


新たに会得したスピリット・バリアは、精神攻撃から身を守る技だ。物資調達で島外に出た際は、フルパワーで酷使していたものだ。他方、ヨシオに対しては口上の威勢が良いだけで、バリアの出力は30.5パーセントも出していない。ヨシオもヨシオで、私を殺し切るほどのステップは踏んでいない。無論、若干のダメージを被ってはいるが、ヤツにかまわなければ最後、他の島民に殺人ダンスをひけらかし、人類滅亡が20年は早まるだろう──キビヤックを頭からかじるエスキモー犬のような視座で、私はデス・ヨシオのオモチャを引き受けていた。




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「うわ死ぬ。疲労が困憊だ。」

「フフフ。貴様はもはや、まな板の上なのだ。」

「む、うわー?」

恐怖の館から少し離れた、ハイカーの居ないダイヤモンドヘッド・マウンテンの野原。流石に遊びくたびれ、草むらで大の字になっていると、唐突に頭を起こされ、デス・ヨシオの膝に乗せられる。いまだかつてないヤツの奇行に驚くも、吹雪が吹き荒れる中、イグルーでそり犬達と共に寝るような、ぽかぽかとした心地よさがあった。

「デーモンマンよ。前から思っていたことがある。」

「なんだ。」

「俺はデス・ヨシオ。凶悪な殺人鬼だ。」

「そうらしいな。」

「だが、この星にはもう、人間が22人しかいない。つまり、21人しか殺せないのだ。」

「ああ。いや、人を殺すなよ。」

「そこでだ。貴方の人生をいただく。そして、人間を増やす。」

「なぜだ!?」

飛び起きる。よもやよもや、風雲急を告げる事態だ。自分としたことが、スピリット・バリアを弱めすぎていた。まさかそんな、心の準備が、何ら出来ていないではないか。そんな私を尻目に、デス・ヨシオは不敵な笑みを浮かべ、続ける。

「ふたりで文明を立て直し、そして、再び殺す。それが我らの、 mythology   」

「お前、狂ってるぞ。そんなこと、倫理道徳に反している。」

「釈迦に説法。なぜなら俺は、凶悪な殺人鬼だから。」

顔が湿り、恐怖で足が震える。私は身も心もエスキモー犬になって、ベーリング海目指して飛び出したくなった。

(だが私は、ただの人間だった。)



「改めまして、だ。俺は……吉尾ヒカリ、です。よろしく。」

「やめろ!やめい!お前はデス・ヨシオなのだ!!」

「おだまり!エンドレス・ダンス・エボリューション!一蓮托生」

「うわー!!」





無人のサイト-8181。すでにダウンした財団サーバーのアーカイブには、次のような証言が残されている。

「俺は、デーモンマン(属性:闇)。」

──Deleted: Tale-JP『恐怖!怖すぎ屋敷!!』Author: Genryu, 2024, CC BY-SA 3.0

デーモンマンの属性は、闇。光とは対極の位置にいながら、互いの存在なしには成り立たない関係でもある。







デス・ヨシオと結ばれました。

おめでとう!デーモンマン!






























Go to the next house…









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